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2007.03.18 17:55 |  診療  |  なな  | 推薦数 : 5

産婦人科医の醍醐味 (1)

前期破水で入院された元美さん(仮名)は、2人目のお産です。

破水すると、ほどなく陣痛がくることが多いのですが、

元美さんの場合、一晩入院して、ようやく陣痛が始まりました。

いったん陣痛が始まると、経過は順調で、

時間で分娩室に移動になりました。

 

 分娩の体位を取って消毒した頃、ご家族が到着されました。

ご主人と、2歳半になるお兄ちゃんの一馬くん(仮名)の2人です。 

ところがお兄ちゃん、近くまで来たのがわかるくらい、大泣き。

陣痛の合間の、元美さんのお話によると、

ママと離れて過ごしたのは、生まれて初めてだったそうです。

前の晩もご自宅で大泣きし、泣き疲れて眠るまで、パパがほとほと困ったのだとか(笑)。

 

お産が終わるまでお待ち頂いたのですが、

壁一枚隔てた向こうから、一馬くんの泣きじゃくる声が聞こえて来ます。

ほんとにママが大好きなんですね~」と、

助産師も私も、ほのぼの。 

 

玉のようなお嬢ちゃんが無事生まれたその途端、

疲労の残ったままの顔で、元美さんは、「息子、入れてもいいですか」。

産後の処置がまだなのですが、ご本人の希望なので、

一馬くんを分娩室に呼びました。

ママの顔を見るなり、一段と大泣きしながら駆け寄ってきた一馬くんは、

自分で分娩台に登ろうとするのですが、高くて登れません。

看護師に抱きかかえられて、元美さんの隣に横になると、

ぴたりと泣き止みました。

元美さんは、胎盤を出されたり、局所に麻酔や縫合されたりしているのに、

慈母のようなやさしい表情で、「一馬、えらかったね、ママいるからね、よしよし」と、

下半身とは全く別の、完全に子供を慈しむだけの、ママの顔になっています。 

 

一方、赤ちゃんの清拭が終わったので、

ママに抱いてもらうために、一馬くんに分娩台から降りてもらおうとしたら、

再び火がついたように泣き出しました。

もう、到底引き離すことはできません。

かくして、元美さんの胸の上に赤ちゃん、右脇に一馬くん、

局所は縫合中、元美さんは慈母のような微笑み、という、不思議な光景。

 

 母性の神々しさに、ただ圧倒されました。 

 

さらに、所在なさ気に立ち尽くす、パパ(笑)。

溶けるような笑顔で元美さんと一馬くんに見とれる、若い看護師。

お産の前、泣きじゃくる一馬くんをあやそうとしてくれた、他の赤ちゃんのおばあちゃま。 

 

普通の生活をしていたら見るはずもなかった、

こんな人間味あふれる光景に出会えること。

これも産科医の醍醐味と思うのです。

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