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4 将来性がない

 

ある土曜日、近くの病院に当直に行きました。

日曜の朝、勤務を終えて帰ろうとしたところに、交代の先生が来たのですが、

20年以上学年が上の、超ベテランの先生です。

驚いて、「えっ、先生が当直されるんですか」 とお尋ねしたら、

「そう。すごい病院でしょ」と、爽やかな笑顔が返ってきました。

つまり、「もう20年たっても楽にならない」 というわけで。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

以上何回かに分けて、産科勤務医が減る理由を

あるひとつの考えとして、述べてきました。

 

では何故、私は産婦人科勤務医を辞めないのでしょうか?

 

まず、いくつかの好条件(?)が重なっていることがベースにあると思います。

体力に恵まれたため、ハードな労働にも適応できます。

どこに行っても目をつむれば3秒で眠れる特技があります。

気ままな一人暮らしなので、自分だけ養える給料があれば何とかなります。

また、現在は都市部にいるので、地方に比べるとまだ楽、ということもあるでしょう。

 

でも、私が産婦人科医であり続ける一番の理由は、

仕事に誇りと愛着を持っているからだと思うのです。

料理人が料理にこだわることや

車のエンジニアがメカに異様に詳しいのとおんなじ。

産婦人科医の仕事にこだわりがあるし、

「このことだけは任せて!」と言えるものが、自分の中にあるのです。

 

ですので、言い換えると誇りを失った時、

つまり精魂籠めて仕事をしていても、無駄になってしまった時が、

産婦人科医としての人生を降りる時だと思います。

 

お産を終えた妊婦さんに

「よかった、なな先生がお産の時に来てくれて。」 と言ってもらっているうちは

きっとこの調子で仕事を続けるでしょう。

 

 

 

 

 

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3 訴訟のリスクが高い

 

今年に入って、私の知っているだけで、

別々の医療事故に際した産婦人科医局員が2人、警察で事情聴取を受けています。

その前の年まで、取調べを受けたという話は聞いたことがありません。

 2人とも、まだまだこれからの若手です。

逮捕もされていなければ、起訴もされていません。

でも、2人とも第一線から退いてしまいました。

 

民事訴訟に関しては、お互い話題にするわけではないので、 知らないことがほとんどです。

ですので、訴訟を抱えていることを知っているのは、ごく親しい人同士に限られているはずですが、それでも何人もいます。

膨大な量の書類を扱うのも、仕事を休んで裁判所に出向くのも耐えられるとしても、

法廷で、大切にしていたはずの患者さんと敵となって対峙する辛さは、

筆舌に尽くし難いものと思います。

 

親友の産婦人科医、郁子(仮名)が、医療裁判の被告になっています。

彼女は研修医の頃、閉所恐怖症のためにMRIの機械に入れない妊婦さんを抱いて、

自ら一緒にMRIの機械に入ったような医者です。

聡明で健康な心を持った郁子は、それでも産婦人科医を続けたいと言っていたのですが、

ご家族の大反対にあい、第一線から退いてしまいました。

 

激務でも働く医者はいっぱいいます。

給料が安くても働く医者はいるでしょう。

でも、一生懸命やっても結果が悪かったら、賠償責任を問われるばかりか、犯罪者にされるのだとしたら

働く医者はいなくなっても当然なのではないでしょうか。

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2006.10.19 06:31 |  診療  |  なな  | 推薦数 : 15

産科勤務医が減る理由を掘り下げて(2)

2  仕事に見合った報酬がない

時給に換算したら、コンビニのバイト並みでした。

この項、このひと言で充分な気がしますが、これだけだと寂しいので補足を。
うちの病院、時間外手当が出ないんです。
つまり緊急オペのために行っても、報酬はゼロ。
ちょっと例外的かも知れませんが。

例えば先日、午前0時過ぎに「緊急帝切なので、来て下さい」と病院から電話がありました。
20分後には病院に着いて、オペ室に直行しました。
当直の先生にお話を聞くと、常位胎盤早期剥離です。
手術台に横たわる妊婦さんの腰のあたりが、血液で真赤に染まっています。
開腹すると、子宮の中はあり得ないような量の血液で充満しており、
血性羊水というよりは、血液の中に赤ちゃんが浮いているような状態でした。
見た瞬間、気を失いそうになりましたが、
奇跡的に赤ちゃんは一命と取り留めました。
何故助かったのか、今でもわかりません。
全て終了したのは午前3時過ぎでしたので、
そのまま医局のソファで横になり、翌朝を迎えました。

これに対する報酬が、ゼロ円。
ほんと、「やってらんない」と言いたいところですが……

でも。
オペ室に飛び込んだ時、
それまでの急な事態に気持ちがついて行けず、
恐怖に顔をこわばらせていた妊婦さんが、
私の姿を見た途端、安堵して涙を流されるのです。

「辞めてはならない」と、何者かに言われている気がして……

(追伸)
前項へのコメント、ありがとうございます。
後ほどレスしますので、お待ち下さい。

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毒、吐きます。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
医療崩壊、医師不足と言われています。
もう少し端的に言うと、開業医の不足ではなく、勤務医の不足、
つまり、24時間体制のひとこまとなり得る医者の不足、ということです。
そして、特に産科・小児科でその傾向が著しく、
地域別に見ると、都心より地方でその傾向が顕著なのだそうです。

何故、そんな事態になったのか。
これまで言われている理由は、主にこんなところです。

1 過重勤務、拘束時間の長さ、プライベートタイムのなさ
2 見合わない報酬
3 訴訟のリスクの高さ。最近は民事のみならず、刑事・逮捕に及ぶ
4 将来性のなさ(これはオリジナルかも知れません)

理由は既に言い尽くされていると思いますが、
以下、現場からの、ひとつのつぶやきです。

1 過重勤務云々

あえてつけ足すとすれば、こんなことを。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
先日、当直中にテレビをつけると、現代医療の問題点に関して議論する番組が写りました。
ほう、と思ってみていると、勤務医の過酷な現状として描かれているドキュメントが放映されていました。
十余年のキャリアの医師が、1泊2日の当直勤務をこなし、
オペ数件をはさみながら、深夜に仮眠する姿が描写されていました。
当直明けの21時に、ようやく勤務を終えて帰宅、という設定でした。
これが、激務として描写されていました。
この先生は、外科医です。
侵襲的な治療行為が多く、その分のリスクを背負う外科系のドクターは、
ここ数年で一気に大変になってきました。
それに、産婦人科とちがって、多種多様な病態の患者さんが来ますから、
その緊張の度合いは、計り知れません。

一方、外科当直よりは、病態にバラエティーが少ないという点では楽ですが、
産婦人科当直は、拘束時間は長くなります。
このドキュメントの外科の先生と同年代の産婦人科医である私は、
週に3、4泊当直しています。
もちろん決して私が特異な例ではなく、我々のような産婦人科医はごろごろいるし、
地方の一人医長の先生は、我々よりもっと大変なはずです。

一部の公立病院で、当直の翌日は必ず休暇を取るよう義務づけることになったのだそうです。
これで少しは身体が楽になる先生も、いらっしゃることでしょう。
でも、もしこれが産婦人科医にも適応されたら、
現行のままの当直回数をこなした場合、日常勤務をしなくていいことになってしまします。
それに、慢性疾患や悪性腫瘍の患者さんをいっぱい抱えた内科の先生たちだって、
当直明けだからといって、おいそれと休めるとは思えないのですが。

「当直翌日の休暇制度」。
一体誰が、活用できるのでしょう。

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2006.10.09 04:36 |  診療  |  なな  | 推薦数 : 7

あのママと赤ちゃんを思うと

私は、ごく普通の家庭で育ちました。
あいさつは大きい声で、みんな仲良く、食べ物は大事に、と育てられました。
兄弟でおやつの取りっこをし、
欲しいものを買うためにお小遣いをため、
たまに風邪でもひいて学校を休むと、ちょっと嬉しかったりしました。
なので、サンタクロースはいると思っていたし、
神様もいると思っていました。

でも、産婦人科医になってから、神様はいない、と思うようになりました。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

大学病院にいた時に出会った、優子さん(仮名)。
遅い結婚をされて間もなく、赤ちゃんを授かりました。
落ち着いた、素敵なご夫婦です。

妊娠後期になって、超音波検査で赤ちゃんの心臓の異常が疑われて、
詳しい検査のため入院されました。
外来でやる簡単な超音波検査だけではなく、
小児循環器専門医による、詳しい超音波検査などがなされました。
その結果、赤ちゃんの心臓に、致命的な異常が見つかりました。
生まれて数時間で心不全になってしまう、重篤な病気です。
非常に残念なことに、現代の医学では、なす術がありません。

産婦人科医、小児科医、小児循環器外科医、各科ナースたちを交えて、
ご夫婦に詳細な説明がなさました。
「生まれて数時間で、赤ちゃんは亡くなります」
そんな内容の説明でしたが、
ご夫婦は涙を流しながら、静かに聞かれていました。

数日後、優子さんの陣痛が始まりました。
胎内での検査は間違いであってほしい、という、一縷の望みもあって、
分娩室には、産婦人科のスタッフに加えて
小児科医、小児循環器外科医も待機していました。
娩出直前に心音が落ちたので、迷わず急速遂娩したら
多めの羊水が、ザバッと出ました。
生まれてきたのは、ちょっとちっちゃくて、かわいい赤ちゃんです。
すぐに小児科の先生たちの手に渡り、検査がなされましたが、
やはり、お腹の中にいた時と、診断は同じでした。

産後の処置が終わると同時に、赤ちゃんは優子さんの胸に抱かれました。
優子さんはこぼれるような笑顔で、赤ちゃんに夢中です。
「かわいいかわいい、かわいいっ!」
ナース達は、涙ぐんでいました。

ご夫婦と赤ちゃんを残して、スタッフは全員外に出ましたが、
たまに様子を見に入りました。
「ちっちゃくって、かわいいわあ。
陣痛も短かったし、ママ思いで、いい子ね」
微笑む優子さんと赤ちゃんを、ご主人が何枚もカメラにおさめています。
お産で乱れた優子さんの髪を、ポケットにあった櫛でそっと整えると
「わあっ、先生、ありがとう。
あなたもほら、先生ありがとうね〜」
赤ちゃんのちいさい手を取って、ふって見せてくれました。

でも、その時は来ました。
赤ちゃんの顔色が、少しずつ紫色になってきました。
モニターをつけると、血中酸素濃度は落ち、心拍数も低下しつつあります。
「ありがとう。生まれて来てくれて、ありがとう……」
笑顔のままの優子さんの胸の中で、
赤ちゃんは、動かなくなりました。
小児科の先生が診察をして、言いました。
「小さな身体で、よく頑張りましたね」。

生まれて、7時間後のことでした。

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「神様はいない」と思ってしまうのです。


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キャッシュカードをなくしました。
翌日に気づいて、すぐに銀行に届け出ました。
それにしてもどこで落としたのか、見当がつきません。
数日後、「カードが見つかった」と銀行から連絡がありました。
ほっとしながら状況を聞くと、
カードはキャッシュディスペンサーの中にひっかかっていたのだそうです。
……えっ?  じゃあ私は、お金をおろした時に
カードが出てこなくても、何の疑問も持たずに行っちゃった、ってこと??

手続きを済ませて、後は手元にカードが戻るのを待つばかりですが、
それまでの間、現金がありません。
仕方なく、普段は使っていない銀行のカードで、現金をおろしました。
よかった、これで帰りに八百屋に寄って行ける、とほっとしていると
「お〜い姉ちゃん、金、金!」
(えっ、 姉ちゃんって、私のこと(嬉)?)
振り返ると、今使ったキャッシュディスペンサーの現金取り出し口に
おろしたお金が置いたままになっていて、ピーッ、ピーッという音が。
……最近疲れ気味なのかな、ハハ。

回収したお金を持って、スーパーに寄りました。
かごにいっぱい買い物をして、支払いを済ませ、買ったものを袋に詰めました。
買い物かごを所定の位置に返して、うちに向かって歩き始めました。
数分したところで、はっと気づきました。
「あっ、買ったもの、置いてきちゃった!」
あわててスーパーに戻ったら、袋に詰められた私の買い物が
周囲の喧噪をよそに、そのまま置かれていました。

少しお休み取った方がいいかな……

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