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2006.09.21 21:32 |  診療  |  なな  | 推薦数 : 8

スピード違反で捕まった話

あるんです、はい。

その日は、同期のSくんと、ちょっと離れたところにドライブに行きました。
2人とも病院に呼ばれないはずの日に会えるのは、
数年ぶりだったと思います。

今頃と同じ、季節は秋でした。
高い空。
少しひんやりし始めた空気。
車窓から見える植物は、すすきに、コスモス。

近くに砂浜があったので、出ました。
ジーンズをまくり上げて、足首まで海に浸かって、
Sくんも私も、大はしゃぎ。

ひゃあひゃあ言いながら車に戻って砂を払い、タオルで足を拭いていると、
鳴らないはずのSくんの携帯が鳴りました。
一瞬で空気が緊張します。
「えっ?    うん、うん……わかった、すぐ行く」
聞くと、常位胎盤早期剥離だそうで、
携帯がつながる医者には、全員に連絡しているようでした。

一秒でも早く、ope室に行かないとなりません。
いいからスピードを出しました。
緊張してハンドルをさばいていると、近い距離に警官の姿。
当然、車は止められました。
そしてもちろん、事情を話しました。
「XX病院のS先生と、私はT病院のななです。
S先生が緊急事態です。後で出頭しますので、行かせて下さい」。
ところが、Sくんや私よりも10歳は若そうな警官は
それを許してくれませんでした。
「規則は規則ですから」。
止められること、約5分。

以下は、後でSくんに聞いた話です。
緊急帝王切開でしたが、赤ちゃんは亡くなりました。
ope室に入室して、消毒をする直前の胎児心音確認の時は、
遅めながらも、心拍が聴取できたそうです。
この後、ope開始から児娩出まで、3分。
つまり、消毒から児娩出までの数分の間に、
赤ちゃんは亡くなったことになります。

誰も、悪くありません。
あの若い警察官は、法律を、職務を守りました。
警察官が、我々を行かせてくれたところで、
赤ちゃんの救命はできなかったかも知れません。

でもこれを、ひとつの真実として、あの若い警察官に知らせるべきか否か。
Sくんも私も、ことの重大さにどうしていいかわからず、立ちすくんでいます。

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