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< 「お産の時、来て下さいますか?」 | メイン | 子供に返る時間 >
2006.08.22 04:26 |  診療  |  医療制度 / 行政  |  なな  | 推薦数 : 10

産婦人科撤退の経験

医局が、勤務先の病院を撤退する旨を知ったのは、撤退の10ヶ月前でした。

本当は1年前の時点で決まっていて、その病院の部長先生はご存知だったのですが、すぐには知らされませんでした。

「撤退と聞いた時、僕もがっくり来ました。先生に言うと、先生もやる気をなくしてしまうのでは、と思って、すぐには言えませんでした」

とおっしゃっていました。

部長先生は、赴任されるまでほとんどされてなかった手術を多数こなし、

一躍その地方の中核病院に仕立て上げた先生です。

 

私も、長期間勤務する予定で赴任したはずでした。

大学医局を出る時、敬愛する講師のK先生に

「部長を支えて、しっかりやって来るんだよ」と励まされ、

希望と使命感を持って、喜んで赴任しました。

それまでやっていなかった術式を導入し、

器具の選定から、業者の比較選択までしました。

一人一人の患者さんに時間をかけて診察することを主眼にした、新しい外来を開設して、

多くの患者さんを診て来ました。

それらを、全部あきらめなくてはならなくなりました。

 

産婦人科医が10人弱勤務する病院でしたが、

まずは人数を2人に減らされました。

でも、仕事量はそのままでしたので、

人員削減後は、地獄でした。

 

一番辛かったのは、途中まで診た妊婦さんたちに

転院してもらうしかなかったことです。

健診の日、一人一人の妊婦さんに事情を説明することを、

ひと月半くらい続けました。

「えっ・・・?!」と絶句して、 呆然と出て行かれる人。

どうしてもここでお産したい、と涙を流す人。

先生もご無念でしょう、どうかお身体を大切に、と目を真っ赤にしながら励ましてくれる人。

後で家族を連れて、抗議に来る人。

無責任です、と罵られたこともありました。

 

こちら側も、やりきれない思いでした。 

励ましながら不妊治療をした末、妊娠された方もいました。

心の不調を抱えたまま妊娠をし、泣きながらかけてくる夜中の電話を繰り返しながら、なんとかお産近くまでやってきた妊婦さんもいました。

度重なる病気の発作に苦しみ、一時は妊娠を中断しようかと思った妊婦さんもいました。

 どの妊婦さんも全員、よその病院に任せざるを得ませんでした。

「断腸の思い」という言葉がありますが、まさにそんな心境です。

医者があれだけ辛いのだから、患者さんの方は、どれだけ辛かったことでしょう。

 

あんな思いは、二度としたくありません。

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ご苦労様でした
9月1日の毎日新聞の記事です。   三重県尾鷲市の市立尾鷲総合病院の産科医不在を補うため、市が昨年9月から年間報酬5520万円で招いた男性医師(55)について、9月からの2年目の契 約を更新し... [続きを読む]
posted from Dr.Marketの資産倍増計画 2006.09.03 01:36

コメント

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なな先生、すいません。
せっかく先生のブログを無料レポートに紹介させていただける許可をもらったのに。
こちらの手違いで、先生のすばらしいブログが抜け落ちでしまいました。

先ほど、訂正して先生のブログも載せた無料レポートに差し替えさせて頂きました。

「医者のホンネが丸わかり!」
http://mailzou.com/get.php?R=2406&M=385

この度は、本当にありがとうございました。
今後ともよろしくお願い致します。

written by Dr. I / 2006.08.22 22:09
なな先生、お疲れ様です。
先生がぐっすり眠れる日が一日でもあればよいのですが…。

>産婦人科撤退のご経験

お辛かったでしょうね…。自分になんの落ち度もなく、
やる気充分なときに断念せざるを得ないのが悔しくて
たまらなかったと思います。
いつだったか、埼玉の総合病院で産科を閉鎖した…という
ニュースを見ました。
なな先生、頑張って!!
人の命のはじまりを見届ける、素晴らしいご職業である産婦人科医師。それを志してくださる人が増えることを願ってやみません。
written by 来夢 / 2006.08.23 16:56
なな先生、初めまして。大変申し訳ないのですが,実は、今日、初めて先生のブログを読ませて頂きました。過去の記事も読ませて頂きました。で、その感想は,悲しいけど温かい、涙が出そうになるけど勇気づけられる、とでも言いましょうか。すごく心に残る記事を書いておられますね。私もかつて20年近く勤務した病院が廃院となり、心に穴が空いた経験があります。医者としてできることと医者ではどうにもならないことがありますが、これ以上理不尽なことが増えないよう、ブログを通じて警鐘を鳴らして行くつもりです。また先生のブログを楽しみにしています。
written by Doctor Takechan / 2006.08.24 23:06
Dr.I先生、丁寧なメッセージ、ありがとうございます。
先生の人気ブログ、拝読しました。
すごい読み応えですね。
じっくり読ませて頂こうと思っています。
こちらこそ、今後ともよろしくお願い致します。
written by なな / 2006.08.25 21:15
来夢さん、心温まるメッセージをありがとうございます。
「撤退する方もつらい」という気持ちを汲んで下さる人がいて、
ほっとしました。

「好き」って、ものすごいパワーを生むものだと思うのです。
恋愛でも、職業でも。
幸い、産婦人科医療が好きで、
今のところ、パワーはしっかりあります。
頑張りますよ~(~~)//

written by なな / 2006.08.25 21:40
Dr.Takechan先生、コメントありがとうございます。
大先輩に褒めて頂いて、とても喜んでいます。

最近の、ブログの影響力を見ていると、
「ブログを通して警鐘を鳴らす」ということも、
大切で有効な手段と思います。
医師サイドからはあまり述べられていない産婦人科撤退について、あえて述べたところで
先生からこのコメントを頂戴し、「わが意を得たり」という気持ちです。
written by なな / 2006.08.25 21:51
なな先生、初めまして。
Dr.Marketといいます。
いつも読ませていただいておりました。
分娩時の大量出血のお話も感動いたしました。
尾鷲市の産婦人科医のことで、少し感じたことをブログに書きましたので、TBさせていただきました。
産婦人科医は、ますます激務となっていくことでしょうが、お体には気をつけて下さい。
なな先生を陰ながら応援してます。
written by Dr.Market / 2006.09.03 01:36
Dr.Market先生、コメントありがとうございます。
先生のブログ、拝読しました。
まさにjustなところにトラックバックして下さって、光栄です。


医療を取り巻く環境は、しばらく悪化する一方だと思います。
そんな中で、先生のような方が
motivationと誇りを失わずにやっていけることを
祈ってやみません。
written by なな / 2006.09.05 20:39

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