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今では手術とほとんど縁がなくなった私だが、総会に参加した。
エキスパートの先生方や神の手をもつ言われる先生方の手術ビデオを午前午後にわたって見続けた。
「メスをにぎることはない」と思うのだが、手術の感覚くらいは頭に焼き付けておきたかったから。
そして、エキスパートの先生方が主張する手術のスタンダードを見たかったからである。
ひさしぶりにみる術野、手術もきれいである。
先生方の事細かな説明。
初心者にも本当にわかりやすく説明してくれる。
今の脳外科の先生方は恵まれていると思った。
でも脳外科をめざす若い先生は減っているという。
一昔前は、こんなところまで教えてくれるような学会の雰囲気はなかった。
というか、スタンダードな手技というものがなく、皆が試行錯誤の状態だったのかもしれない。
自分のやり方が一番良いと思っていた。
でも、今はだれもが認めるスタンダードな手技がある。
その存在事大がすばらしくもあり、恵まれているとも思った。
神の手をもつF先生がおしゃっていた。
「世界からみて日本には、手術をきれいにおこなう先生方が多い」 と。
それは日本の先生方が、良いものを柔軟にどんどん取り入れて、自分の手技に改良を加えていったからだという。
確かにいつまでも、古いオーソドックスな方法だけに固執してはいけないのだと思う。
自分のやり方が一番だといって誇る時代も終わった。
そんなことを感じながら、学会会場をあとにした。
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昨年につづいて、今年も京都で行われた抗加齢医学会に参加した。
「脳外科医が参加してどうすんだ。」と言われそうだが、脳卒中が日本人の死因の第3位である以上は、アンチエイジング医学という学問を通じてできる限りの治療と予防の啓蒙をおこなわなければいけないと思う。
きまり文句的な指導ではなく、その人の事情にあった具体的プログラムが組めればもっとよいだろう、そんなことを思いながら、この医学会を通じて勉強してきたつもりである。
今年は、興味あるテーマのほとんどは第1日目に集中していたのだが、事情あり第2日目からの参加になってしまった。
私の今回の主たる目的が、3日目の抗加齢医学専門医の試験を受けることにもあった。
脳外科専門医の試験も、「これくらいのレベルならばよいのになあ」という感想をもちつつ、2時間の試験問題に取り組み会場をあとにした。
結果は10月1日に発表のようである。
アンチエイジングは、あらゆる科目の垣根をこえて取り組まなければいけない、健康長寿をめざす医学である。
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「健康食品のすべて」と題して、米国版のナチュラルメディシン・データーベースの監訳版がでたので購入した。
この本の中身をみてびっくりしたのは、世の中に健康食品と言われるものがいかに多いのかということである。こんなサプリやら健康食品もあるのかと関心してしまうものもある。米国版の監訳なので、日本では手に入らないものまで網羅してある。
しかし、日本や中国産の漢方薬系統のものは情報不十分ではある。しかし、年間4冊のアップデータも発行するというから、内容は充実してゆくこと間違いないだろう。
最近患者さんは、飲んでいる薬は教えてくれても、健康食品については教えてくれないことが多い。医療者サイドも、あまり注目していない場合がある。ねほりはほりよく患者さんに聞いてみると、かならず健康食品に手をつけている人がいる。この冊子には、医薬品との相互作用の情報も満載してあるので、注意を促すことが可能である。
しかし、あくまでも米国仕様であるから、日本独自のものも是非出版していただきたいところである。
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新しい職場にきて、ほとんど手術をしなくなったため、思い出の手術をときどき頭に描く。
思えば、術前のイメージと術中のイメージがぴたっとあった手術は少なかった。まだまだ未熟だったと思うが、メスをほとんど下ろしたような今の立場に何の悔いも残っていない。
一番の思い出ふかい手術は、28時間にもおよんで摘出した比較的深部のAVM。
AVMの手術は予定では、12時間であり、大きさ約3cmでガンマナイフの選択肢もあったが、患者30台後半の女性は「一気にすっきりと消失してしまったほうが気が楽だといい」手術治療を選択した。
AVMは、右前頭葉中心前回近傍にあり、出血発症ですでに左片麻痺を後遺症としてのこしている。脳表からのfeederが2-3本であるが、深部feederも1本くらい。dorenarは脳表に太いのが1本、ほか2本くらい。深部ドレナーはなかった。
ナイダスも比較的、脳表に近いが、中心前溝および上前頭溝を割ってひっくり返せば見えるはずであった。ところが、いざ開頭するとでてきたのは、確かに太いレッドヴェインのみ。その先にナイダスがあるはずと思いきや、まったくわからない。脳表に顔をだしているわけではなかったので、ドップラーで手探り状態でオペに突入した。
ナイダスが含まれているはずだと脳回切除術がはじまった。8時間かけて摘出してもレッドヴェインの色は変わらない。おかしい、しかたがないので、レッドヴェインの先にナイダスがあることはわかっていたので、レッドヴェインを手がかりにナイダスを探りにゆくことになった。ほってもほってもそれらしきものはない、顕微鏡でみると3cmというのがものすごく深く感じる。
この頃には、夜の10時を過ぎていたので、家族から心配の連絡がナースよりはいる。手術はこれからだったので、大丈夫と連絡をかえす。
根気よくほってゆくと、ナイダスらしきものが出現。次にナイダスの底部を追ってゆく。深さは4-5cmくらいまで達する。非常に深いところに位置したナイダスだ。周囲を掘り起こしながらも小さなfeederの処理や出血の処理に7時間以上かかる。太いfeederには、ウェックのクリップで対応する。不注意に血管をつつくと出血してしまう、コントロールは難しくはないが、何度もおこると気持ちはくじけそうになる。家族に大丈夫と言った手前もあり、思い直してわれを忘れて止血と掘り起こしに打ち込む。上司が、「術者に水をやれ」と指示があり、スポーツドリンクの差し入れがくる。これによって、力が再びよみがえる。
上司は、「セカンドステージもあるぞ」と助言をくれるが、患者との約束もあるので、ひたすらナイダス露出とfeeder処理に力をつくす。
朝10時ころから手術をはじめて、翌日の10時にナイダスをすべて露出し、最後のfeederとおぼしきものを焼く。すると、レッドヴェインが、通常の静脈の色に変わってゆく。最後にドレナーをカットして、ナイダスをゆっくりと取り出す。やっと終わった、死に物狂いでとにかくやった手術だった。
それから閉頭して、手術が終わったのは摘出2時間後の12時である。術後は、ICU管理となった。
手術椅子から降りたときは、足に力が入らずの状態だった。しかし、やりとげた達成感があったので明るい気持ちで手術をでた。術後CTでも、出血などはみられなかった。
その日の仕事(病棟管理)を終え、フラフラになりながら帰宅。疲れは溜まっていたが充実感はあった。しかし、これから重症がきたら、手のうち用がないと思いながらバタンキュ状態であった。
患者が覚醒するまで、わからないと思っていたが、翌日には鎮静剤を切り、徐々に覚醒、抜管もされる。
患者の回診にゆくと、半覚醒ながら私の手をにぎり「先生ありがとう」の一言をいただく。この言葉に、私の眼から自然と涙が流れてしまった。「死にもの狂いでがんばった甲斐があった」。
上司曰く、「このような長時間の手術経験は最近は少なくなっているが、脳外科医ならば一度は経験しなくてはいけない」とのことであった。
「これで脳外科医の手術の世界に少しでも近づけたかな」と思った瞬間でもあった。
術前の検討や手術のストラテジーなど問題はたくさんあり、反省点も多くあった。決して、人に見せられるような手術内容ではないが、自分には多くの学ぶものがあり脳外科の手術の世界に触れる貴重な時間でもあった。
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