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くも膜下出血の頭痛は、見落とすとたいへんなことになる。
しかし、もう一つ忘れてはいけない頭痛に、脳静脈洞血栓症による頭痛がある。
先月末、頭痛を訴えてやってきた体格の良い40代男性の患者さんがいた。
聞くと来院する4日前から頭痛があって、近くの脳外科専門病院を受診。MRIの検査などでSAHではないということで、その日は帰宅。しかし、薬でも頭痛は改善せず。嘔気、嘔吐もあり、同じ病院を再診。 MRIの検査をおこなったが、やはり、結果は同じで、問題なし。
緊張型頭痛であり糖尿病もあるから、内科にみてもらうように指示され、内科を標榜するクリニックに入院。
2日ほど入院したが、まったくよくならないので、その病院を自主的に退院。
そんな経緯で当院にかけこんできたわけである。
最初に診た脳外科病院で撮影したMRIとMRAの写真を持参してきたので、みてみると確かに特別な所見はみられない。出血ではなさそうである。
MRAでも動脈瘤はない。
解離性脳動脈瘤などもなさそうである。
脳動脈が解離した際に、突然の頭痛を訴えて来院した症例の経験もあったので注意してみたが、まったくそのような所見はない。
2つの病院で緊張型頭痛と診断されただけあり、肩や首の緊張が強い。でも、おかしなことは首を曲げるだけでも痛みを訴えるのである。いわゆる項部硬直のような印象である。
体温は37.0度である。
神経学的な所見は特にない。眼球運動も正常である。
「鎮痛剤を使っているので、炎症があるのかも?」と考え、採血と腰椎穿刺をおこなうことにした。
しかし、腰椎穿刺は大変苦労することに・・・。
体重が100kgある患者さんだったので、7cm腰椎穿刺針が到達しない。しかも、患者さんは首を曲げると痛がるのでうまく体位もとれない。
「それ以上長いものはないのか!」と看護士さんに院内中をさがしまわらせて、8cmの針をみつけてきた。
それにより根元いっぱいいれて何とか先端が到達。痛がる患者さんをなだめながらの採取である。
圧は測れないが、髄液生化学は正常である。細胞数も10個以下。
7ccほど髄液を採取したが、患者さんは採取後頭痛が随分と楽になったという。
「脳圧が高かったのだろうか?緊張型にしてはおかしいかな」と思ったが、とりあえず安静にして帰宅させることに。
しかし、患者さんはこれでは仕事もままならないということで入院することになった。
この際だから、糖尿病のことも含めて治療することにもなった。
入院後も頭痛の訴えは続くが、きくと血管性頭痛のような訴えもある。 眼がチカチカすることがあるというのである。
閃輝性暗点のようでもある。
糖尿病もあるからここで眼底写真もとってみようと考えた。
すると、きれいなうっ血乳頭が両側にみられる。
「しまった眼底をみていなかった」と思ったが、これで思いついたのが脳静脈洞血栓症である。
急いで、初診病院で撮影したMRIをもう一度みなおしたところ、無信号であるべき小さな上矢状静脈洞が白くうつっている。
他の患者さんの写真と比べてみるが、そこがおかしい。
さっそく、当院でMRを再検。MRAも静脈にターゲットをあてて撮影してみる。
すると、上矢状静脈洞から右S状洞にかけてが消失している。
それに伴い、脳表の静脈が多数出現している。
脳血管撮影は当院ではできないのだが、これだけの情報でも十分である。
MRIでも右S状洞に血栓の所見がT1強調画像でみられている。
診断に間違いなさそうである。
放射線医や他の先生方にも画像を確認してもらい、脳静脈洞血栓症で確定した。
原因は何か?
感染症の既往は無い。アレルギー性鼻炎がみられる。
頭痛があってから食事や水分が十分にとれていなかったためか?
いろいろな考察、検討が必要そうな症例である。
そのためには当院規模では、非力である。
診断はついたものの、現在も他院にて治療を継続中である。
結局診断までに7日以上を要した症例である。
この疾患も見落とせば命にかかわるもの。
今まで、脳出血や脳浮腫で亡くなった患者さんばかりをみてきているので、頭痛とうっ血乳頭のみの軽い症例ははじめてである。
「頭痛の患者さんには、できれば眼底もみる。」
ということを教訓づけた症例であった。
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