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先週手術の手伝いをするために、ある病院へ出張した。
私は、メスを握らない脳外科医なので、助手としてのお手伝いである。
このまえの脳外科総会の映像が仮想手術体験にはなったが、実際に目にするのは数年ぶりである。
手術は、前交通動脈動脈瘤である。
40代女性の未破裂症例である。
動脈瘤の向きが後ろなので、大脳半球間裂からアプローチするという。
未破裂とはいえ、Acomは破裂しやすいというし(大きさは5mmくらいか)、患者さんも術者もよく開頭手術を承諾したものだと思った。
手術は、順調にすすんではいったが、静脈が術野を邪魔する。はがしたり処理することで、約4時間を費やす。
やっと動脈瘤がみえたところで、クリッピング!。
未破裂だから、動脈瘤もしっかりしたもので、ブレブらしきものはみられず、すぐに破裂しそうな印象はない。
しかし、中枢側のネックが、確保されておらずクリップが入りそうにない。奥のほうで癒着しておりはがす操作にはいる。ネックは、Acom側に癒着していたのだ。
すると突然「アッ」と術者の先生の声。
私がちょうど、目をはなしていた瞬間であった。
顕微鏡をみると、きれいだった術野は血の海と化す。
「サクションをもたせて」
そうか、こうなったら術者が2本のサクションをもってポイントで吸わなければいけないのだ。
数年ぶりの手術で、さらに数年ぶり術中破裂体験である。
昔のいやな記憶がよみがえりそうになる。
でも考えれてみれば、術中の破裂は破裂動脈瘤がほとんど。未破裂例のこのような体験は、わたしもはじめてかもしれない。
そんなことを考えつつ、久しぶりの緊張と手の振るえをおさえながら手がでない私。必死にポイントでサクションする術者。
破裂のポイントは動脈瘤ではなく、Acomそのものである。
動脈瘤のネックがさけたわけではなく、まったく関係のないAcomの動脈壁の薄くなったところが破裂したようであった。
「サージセル」という指示で、それを術野にいれ、小さな綿片をさらにいれて圧迫。
さすがに術者はなれている。
数分の圧迫で、出血は止まった。
術野は血に染まったが、生食で洗いながし、もとの術野にもどってゆく。
出血部位は動脈瘤とは関係がないものの、クリップをかければ薄いAcomの壁にストレスがかかって裂けるかもしれないという危険性がでてきた。
どうしたらよいか
結局、コーティングを施すことになり、手術を終えた。
後味の悪い結果にはなったが、患者さんの術後の覚醒はよく後遺症もなく経過しているようである。
動脈瘤の手術は、何がおこるかわからない。
何が結局悪かったのか?
その後の検討会にも私は参加していないのでわからなかった。
「脳動脈瘤に一つとして同じかたちのものはない」とおっしゃる先生がいた。
「これはあの時のと同じだから・・・」と安易に軽くみてはいけないという。
「ここで破裂したらどうするか」という考えを常にもって手術するようにとかつて私を指導してくれた先生の言葉も思い出す。
助手として、それなりの働きはほとんど何もできず術者の先生に心でわびながら、病院をあとにした。
未破裂の動脈瘤は、血管内塞栓術で対応することが多くなってきていると思っていたが、
静岡県内は、手術をする先生が多いようである。
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