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医師で死後の世界を信じている人はどれくらいいるのだろうか?
このことは、いつも私の大きな疑問である。
死という言葉は、医師という職業では、気軽に口に出してはいけない言葉である。ましてや、死後の世界を語るなどというのは現場ではもっての他である。
しかし、医師という立場を超えて、一人の人間として、死や死後の世界の問題は考えなければいけないのではないか。
私が、この問題を考えるようになったのは、卒後2-3年の頃に、夜間当直にいった病院での体験にもとずく。
100床レベルの都内のA病院。毎週火曜日くらいに当直にでかけていた。
その病院の夜間はそれほど忙しくはない。寝当直のことが多いのだが、ある日から不思議と夜2-3時頃に目が覚めるようになるのである。それも、一人の女性のリアルな姿をみせられびっくりして起こされる。
はじめは、若い細身の女性のふりをしている、「助けてください」といってくる。白い薄手の着物をきてこちらを誘惑してくるそれに引かれて「どうしたのですか」と近づくと血まみれのおばあさんに姿がかわるのである。
いやな夢を見せられたとそのときおもったが、それは1回では終わらなかった。
次の週の当直にも同じような夢をみる。今度は別な女性の姿であらわれ、「足が痛い」とくる。近づくと以前みたと同じおばあさんの姿にかわり、がばっと目が覚める。 2回目にみたときは、これはいけない関わらないようにしようと思えたのでそれほどインパクトをもってあらわれなかった。
そしてこんどは、また別の週のある日そのおばあさんが、はっきりと自分の苦しみを訴えてでてきた。「この病院で手術が失敗して、こんな姿になった」といって、皮膚がただれて血まみれになった右足を自分に見せるのである。よくみると背中から足にかけて血まみれで、皮膚もただれている。「痛いから助けてくれ」と訴える。あまりの凄絶な姿に、目が覚め起き上がろうとするが体が硬くなって動かない自分にそのとき気がついたのである。「冷静になれ」と思ったとき体が動くようになり、当直室を飛び出てあたりをみまわす。特になにもない、当直室にも人の気配はない。「これが霊というものなのか」そう思った私は、当直室で休むのをやめ、医局のソファに寝てその日をすごした。
そんな体験があってから、その病院での当直をできる限り断るようにして回避したのである。
この体験は、いいかげんな医療をしてはいけないことや、死んでゆく患者さんにも最期まで真心をつくさなければいけないことを感じさせる体験となった。
いろいろな意見はあると思うが、
人間死んだらすべて終わるわけではないのだということや、もし、恨んで死んだ人がいればその思いは残るのではないかというのが、私の結論である。
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