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< 踏みとどまるのは3年後の自分のため | メイン | 八つ当たり殺人を裁くこと >
2008.10.12 21:34 |  診療  |  なし  | 推薦数 : 2

技と術

休みの間、剣術小説読んでてなるほどと思ったことがある。

技と術ってちがうんだってこと。

技って教えられるけど、術は自得するしかない。

技って「教えるため(伝えるため)の理屈」だけど、

術は「相手に勝つための理屈」。

技って誰にでも学べるものだけど、それは個々の条件を無視したもの。

術は勝つために個の経験を集積したものだけど、

そこには自分らしさが強く反映するから、簡単に教えられない。

小説読んでて自分の中の疑問がすこし形になった。

 

精神科の医療って、診断基準なんかはそれなりに整備されていて、

それを大学病院道場で一生懸命修行して、

「目録(指定医)」とか「免伝(学位)」とかさずかっていく。

学会では授かった人たちが幅を利かせているんだけど、

学会で聞くえらい先生の話は当たり前すぎてあまり臨床では役に立たない。

 

というか、どう考えても学会場の偉い先生より

自分のほうが強いとか思えてしまう。

たぶん彼らは人を斬るということより、

(斬って斬って勝ち続ける中で、「勝つための理屈」を探るより)

自分が教えられた普遍的な技を、上手に伝えることに本分をもつ

「剣術道場の道場主」なんだなと思う。

 

学会のスーパーバイズとか聞いていると、聞くに堪えないものが多い。

相手を斬ろうと思ったら、相手の変化を上回る運動性を

自分が持たなきゃいけないのに、自分を動かすという視点がなさ過ぎる。

まあ、僕が聞いた一部の先生方だけで、

他は立派な人も多いのかも知れないけど。

たぶん、臨床で毎日人を倒してる先生方は

学会を苦い思いで見ていらっしゃるんじゃないかな。

初心のうちは意味があるけど、目録が取れるレベルになったら

みんなバカらしくなって・・だからあまり参加しないのかなと思う。

 

今回読んだ峰隆一郎先生の本に

「人を倒すのは技じゃない。術だ。」と書いてある。

技で真っ当に闘おうとすれば、それで勝とうとすれば、

患者さんが自分の技に「あわせてくれないと」斬れないとある

たしかに川べりでの果たしあいで、唐竹割りをしようとしても、

相手が寝転んでごろごろ川に落ちてしまえばきれない。

むしろ、川の中から足をすくわれてこっちが斬られてしまう。

つまり、診察室で話しにあわせてくれなくなって

「先生は私の気持ちなんてわかってくれないじゃないですか!」

とかふいにやられて斬られて(治療にならない)しまう。

(まあ、それを斬られたと感じない幸せな医者も多いけど)

 

だから医者は、経験的に「診察室」という場を大切にするんだろう。

それは患者さんに自分の技をくらってもらいやすくするため。

自分のテリトリーで道場剣法を全うするため。

ごろりと寝転んで「わかってくれない」とかごね出した患者は

道場からほうりだす。

自傷やら過食やら、大量服薬やら。

道場の約束事を守れない人は患者じゃない!とかやりだす。

 

でも、そういう患者さんをちゃんと斬れなきゃプロとして悲しい。

だからたくさん人を斬らなきゃいけない。

そして一人斬るたびに、そのなかに自分だけの術理を求めて、

次に切る一人にその術理をいかし、自分だけの術をつくる。

いや創り続ける・・・というところか。

僕も上手くいかなくてへこむことは多いけど、創り続けてる。僕は指導医に受けた指導はそんな感じだったなあ。

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コメント一覧

自分のこと書かれているようで無茶苦茶心拍数あがりました。
わたしは何処行っても放り出される患者なので。
でもなし先生なら放り出されないのかな、そんな気がします。
「先生にわたしの気持ちなんてわからない」
何度言ったことか。

大病院の理事長であるエライ先生に大量服薬のこと告げたら「他行け!」と放り出されました。
初老の医師で、二言目には「鬱は休んで薬を飲む」
と同じことばかり言う先生だったのでこっちもウンザリでしたが。
肩書きなんて関係ないですね。

話が逸れましたが、踏みとどまる・・と少し傷つく・・の記事にはスゴク納得しつつ勉強だなと思いました。

何か此処のブログを読んでると、それ自体が治療になるような気がします。
だから反復して何度も何度も読み返します。
written by しぎ / 2008.10.12 23:24

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