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縁のある後期研修医が、やっかいなケースを抱えて右往左往してる。
実戦経験が少ないのだから仕方ないのだけれど、
そこで教科書や、雑誌を一生懸命読んでる彼は間違っていると思う。
それを奨励して「実戦経験を積めば何とかなる」
ってのたまう偉い先生もちょっと違うんじゃないかって思う。
実戦経験ってなんだろうって考える。
僕もいろんな先輩から「たくさん患者さんを診ないと
本物になれない」って言われた。
たしかにそうだと思うんだけど、たくさん診て、何が変わったんだろう。
その5年目の後輩はいいやつ。真面目だしたぶんIQは130くらいある。
僕よりずっとアタマがいいのに、
患者さんに振り回されてて、上手く症状が聞き出せない。
患者さんがしたい話をべらべらさせてて、
ただただそれに振り回されて、肝心のポイントが押さえられない。
聞いてて歯がゆいものがある。
たぶん、診療をたくさんやった経験は、場を上手に仕切るというか、
相手にいうことを聞かせるとか、
そういった「場の統括能力」に結びつくんだと思う。
研修医は知識は最新のものを仕込まれているけど、
大事な症状をつかみ出すような、場の仕切りが出来ない。
患者さんとやりあって、駆け引きをすることが出来ない。
結局、医者がいう「たくさんの患者さんに教えてもらえ」っていうのは、
病気を教えてもらうという以上に、
診療という名の患者さんとのバトルで、ちゃんと駆け引きをして
どう負けない戦いをするか学べってことなんだと思う。
負けないためには負けないシステムが必要。
病院という場のルールに従った、
負けないシステムを自分の中に作るということ。
世の中には、「経験を積んだら、薬の使い方のカンとかコツとかが
わかって自分独特の薬の使い方が出来るようになる」とかいう医者がいる。
たしかにそれは一面の真理なんだと思うけど、
出来るようになった人間のそういう言葉は何の役にも立たないどころか、
まだその「カン」とか「コツ」とかをつかんでいない初心の医者には
害にしかならない。
だってそれはその医者独特の患者統括の仕方であって、
薬理作用にその医者のキャラクター、影響力があいまって、
治療効果を生んでいるだけだからだ。
だいたい、検証不能な特殊な薬の使い方なんて、
それだけ取り出して論じれば、科学的ではないし。
だから本当は、そういう「カン」とか「コツ」とか言う偉い先生達が、
自分なりの患者統括の仕方をわかりやすく教えてくれればいいのに。と思う。
なのに、偉い先生ほど話すことは精神論で、
まるでプロ野球の長○監督が「こうしてググっと腰を入れれば
勝手に打てるはず」みたいな指導法が幅を利かせている。
真面目くさった「正しい治療法」なんて、
もはや学生じゃなくて前線に出てしまている医者に言うべきではないと思う。
すくなくとも、現場に出た初心の医者にとって意味がない。
もっと裏技を、場をどうやって仕切るかを、技術として継承すべき。
こんな話を書くのも、一昔前は大学にそういう裏技使いがいて、
教科書的な保守本流を歩むわけじゃなくて、
医局の端っこにいるんだけど、いざというときに
「悪いやりかた」「言うことの聞かせ方」を教えてくれてた。
そういう人が、偉い先生の抽象的なお話を、
「具体的な勝ち方」に変換して教えてくれていた。
今はそういう人がどこにいったんだろう。
それは一見くだらない、医学的には意味のないやり方だけど、
こと前線で戦うことになった新兵には大事な金言。
しょうがなから、振り回されて困っている後輩には
メンタルの問題以前にケースワーカーをかませて問題を散らせとか、
診察は個室じゃなくて、看護がいて人の目があるところでやれとか、
入院や転院をちらつかせつつ限界設定しろとか、
そんな姑息なアドバイスばかり送ってる。
教科書を読む暇があったら、生き残るための工夫をすべき。
でないと「カン」とかつかむ前に潰されてしまう。
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コメント
コメント一覧
この言葉には納得です。
私はパーソナリティーに問題があり8年間、適応障害で通院していますが、主治医にも似たようなところがあり、決してこうすればいいとか、良くなるだろう・・などという安易な見通しは立てません。
このブログは偏ったところがなく、中立的な立場で淡々と書かれているので、とてもすんなり入ってきます。
精神科医のブログは見てきましたが、このブログほど納得のいくようなものはありませんでした。
追記;
本サイトをブックマークさせてもらいました。
難しい記述を避け、患者の立場で読んでもわかりやすいように、また患者が知りたい内容が書かれており飾り気が無く誠実で秀逸なブログだと感じます。
お忙しいでしょうが更新を楽しみにしています。
コメントありがとうございます。
けなされると素直にへこみますが、ほめられると素直に嬉しくなってしまいます。単純ですが。
お元気だったのですね。よかったです。
えらく忙しい日々が続いてました。
やっと抜けそうですので、ぼちぼち更新してみます。
気にかけていただいてありがとうございます。
この本によると、その崩壊の主な責任は、医療行政の問題にあると指摘しています。つまり、医療費など年間2200億円削減のしわ寄せを、地域の医療現場に押しつけているとのことです。
このような、一開業の方々を含めて、現場の医療関係者から様々な議論が巻き起こってくることを期待したいところです。
『医は仁術か算術か―田舎医者モノ申す』(定塚甫著・社会批評社・1500円)
http://www.alpha-net.ne.jp/users2/shakai/top/80-9.htm
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