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< 生活保護の不公平に思うこと | メイン | 精神科医になろうと思う人に助言 >
2008.07.03 19:45 |  診療  |  仕事 / 職場  |  なし  | 推薦数 : 4

スキルを学ぶということ

精神科医として能力が高い面白い同僚がいる。

根は暗いんだと思うけど、表現型は明るくてオーバーアクション。

ちょっとこっけいな仕草で笑いをさそいつつ、

看護師さんやコメディカルを上手に使う。

僕は、「変ったやつだなあ」と思っていたんだけど、

先日、いろんな意味でなぞが解けた。

 

彼が師匠とあがめていた先輩ドクターを見る機会があって、

大笑いしてしまった。

仕草がそっくり。言うことがそっくり。

オーバーアクションにちょっと自慢を交えて周囲の笑いを誘う。

なるほど、僕の同僚は本当に師匠に憧れてたんだな、

憧れに身を任せた過去があったんだなと思った。

 

僕も僕の先輩ドクターそっくりらしい。

残念ながら先輩の足元にも及ばないレベルだけど、

しゃべり方とか、字の下手さとか、話を聞くときの微妙によじれた姿勢とか

そういったものが、コピーみたいとか言われる。

僕には自覚がないのだけれど。

 

たぶん、技術を学ぶということはそういうことなんだと思う。

知識は、本を読めば仕入れることが出来る。

でも、本を読んで仕入れた知識をスキルとして

そのまま実際の生活の中で役立てることって難しい。

役立てるには、使えるように加工するプロセスが必要になる。

そして加工するには、その知識に対するリスペクトが必要

 

たぶん、技術というのは枝葉なのだと思う。

精神医療における患者のキャラクターの捉え方の技術。

患者を治療に導入する技術。

こじれたケースを修正して最悪の事態を回避する技術。

そういったものは、わかりやすい言葉で後輩に教えることはできるけれども、

教えたって、何年かかっても出来ないやつは出来ない。

学ぶ側から考えたら、それを現場で生かすには、

その枝葉を茂らせるための新しい幹が必要という気がする。 

           

昔僕が学ぶ側だったとき、

ただただ先輩がかっこよかった。

僕が1時間四苦八苦するケースを10分で笑顔にして帰したり、

さっぱりわからないケースを30秒で解説したり、

そういう能力がかっこよくて、

気がついたら、先輩のすごく下手な字そっくりになって、

今看護師さんたちに「先生の字は読めない」とか怒られてるけど、

ああいう先輩にあこがれて、自分より彼が正しいと全部肯定した。

先輩の教えてくれる知識に対するリスペクト。

たぶんそれが僕の中の新しい幹になってる。

 

あの先輩の姿勢は全面的に正しいという確固たる思いがあって、

その上で枝葉を茂らせようとするから

スキルはすんなり自分の中で消化できた。

「スキルアップ」とか「スキルを学ぼう」とか

そういう言葉を聴くたびに感じる違和感は

たぶん、それを学ぶためのベースに誰も言及しないから。

自分を肯定するだけで、

そのままの姿勢で学べるスキルはたかがしれている

 

精神科の治療でも、認知行動療法とか、スキルを学ばせるとか、

いろんなことが巷で言われているけど、

スキルだけ学ばせるなんてこと出来るはずがない。

教えてくれる医者が好きになって、この人の言うことなら

きいてみたいと思うから上手くいく。

新しい幹というのは、自分以外の人を肯定する感情

自分以上に正しいとか、自分以上に信頼できると思う人に向かう憧れ。 

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コメント

コメント一覧

示唆に富むすばらしいエントリーありがとうございました。
わたしは人事屋ですが、スキルに関して考えていたことの霧が晴れる思いがしました。
written by ushiuma / 2008.07.04 07:34
本当に素晴らしいと思います。ただ人によっては(自分もそうかもしれません)まず自分を否定するところから始めなければならないことも多く、それがスムーズにいく場合と自己否定が延々と続きかえって悪影響をおよぼしかねない場合もあるかと。もちろん先輩や他の人にはなんの責任もないわけですが。しいて言えば、自然に自主的に尊敬してそうなればいいのですが、強制されると話がおかしくなるかもしれない、ということはあるのではないかと。うまく表現できなくてごめんなさい。
written by Paul Carpenter / 2008.07.04 09:04
ushiuma さま
過剰なお褒めの言葉ありがとうございます。
またそういってもらえるよう頑張ってみます。
written by なし / 2008.07.05 00:26
Paul Carpenter さま
いつもコメントありがとうございます。
僕もまったくそう思います。以前に「上手な人の叱り方」で書いたのですが、今回の話の裏があれなんだと思ってください。
written by なし / 2008.07.05 00:28

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