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< 医者って上から目線 | メイン | 診断は感情で行う >
2008.05.15 17:51 |  診療  |  なし  | 推薦数 : 2

行為障害と自傷と

この前、非行臨床の講演を聞いた。

まあ、10年位前は非行なんて医療が関わること自体

「おかしい」といわれていた分野。

そりゃそうで、傷害犯とか強姦魔を薬やカウンセリングで

治療できると思うほうが「おかしい」と思う。

でも、何故だか最近は医療の枠組みのなかで捉えて、

「治療すべき」とか言う話が増えている気がする。

 

それは行為障害という診断のためなんだけど、

欧米の人たちが作った診断マニュアルには

「反復し持続する反社会的行動パターン」というのが

行為障害という名前で、精神障害のひとつとして記されている。

そのマニュアルはICDとかDSMとかいって、

いまどきの精神科医なら誰もが持っているもの。

 

こんな立派なマニュアルがそんなこと書いてるなんて

不思議だなと思っていたんだけど、

よくよく考えてみると、人種が違うんだなと思った。

欧米の人たちって、「私とあなたは違う」ということが前提。

「みんな一緒」が前提の日本の常識で考えるとおかしくなっちゃう。

だから、差別というか、区別が当たり前の人たちのものを

あいまいな関係を好む人たちの中に持ってくるから、違和感があるんだ。

 

つまり行為障害という診断は、自分たちのコミュ二ティから、

そういう人たちを排除するための診断なんだと思う。

ここには「違う」というラインがありますよ!ということ。

日本はもうそういう方向に舵を切っていて、

医療観察法とか、精神鑑定とか、国が試行するレベルで

線引きが強まっている。日本の精神医療のアメリカ化。

 

患者を守りたい立場からは、そういう線引きって

精神医療を犯罪者の排除に使われるみたいですごく嫌。

でも、見方を変えると新しいラインが増えるのって、

その周辺にまつわる思考が深まるので、

いい変化を起こす可能性があるのかも。

 

たとえば自傷。

今では普通に精神科で対処するようになっているけど、

よく考えると、DSMが境界性人格障害というラインを引いてくれたから。

 

10数年前の精神科では、自傷を見ない人のほうが圧倒的に多かった。

「自分で勝手に切るやつは治療できない」

「治す気のないやつに医療は出来ない」

そういって追い返される患者は多くて、

まじめに付き合う医者は物好きなやつと思われてた。

線がすごく大まかで「精神病」「神経症」「心因反応と正常」

これを分ける2つくらいのラインしかなかったから。

 

新しいラインが引かれた当初は、先輩のドクターたちは

「俺には納得できない」とかいろいろ聞かされたけど、

感情とは別に、新しいラインの周辺で「嗜癖モデル」みたいな

アプローチが生まれて、脚光を浴びた。

ストレスに対処しきれないと、病的反応が起きるから

それをフォローする必要があるんだよ!って、

正常から切り離す新しい切り口が治療法と一緒に確立して、

今ではみんな自傷をちゃんと見るようになっている。

 

ラインを引いて、人を区別したり差別したり。

そういうのは副作用も大きくて、大まかにあいまいに扱いたいんだけれど、

ちゃんと区別してしまうと、それに応じなくちゃいけなくなってよく考える。

それが治療を進歩させる面もあるのかなあと思って非行臨床の話を聞いてた。

非行の子も、たとえば自傷と同じく嗜癖モデルで捉えて

治療するって事が出来るのかもしれない。限定的ではあっても。

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