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「かかりつけ医によるがん検診受診勧奨」研修会に出席した。国立がんセンターから斎藤博、濱島ちさと両先生をお招きしての研修会である。
彼らの主張は「有効性の確立した検診を、徹底した精度管理のもとに行うことで、集団のがん死亡率を減少させることが出来る」というものである。そして有効性の確立した検診として彼らが名前を挙げているのが、胃X線であり、免疫学的便潜血2日法である。
対策型検診の場合、がん発見と同じくらい、もしくはそれ以上に安価であること、安全であることが要求されるため、そのような検査でお茶を濁すしか無いのかもしれない。
研修会で配布された受診者用リーフレット「大腸がん検診を受けましょう」には、「安心・簡単・安い」などとどこかの牛丼屋みたいな宣伝文句が並んでいる。
「受診者の声」欄には「安価で安心を得られる」(40代女性)、「便を採取するだけでこんなに簡単」(50代女性)、「要精検で早期癌が見つかり完治」(60代男性)などと言った、いかにも制作者が勝手に作ったような文章が並び、「1ヶ月でラクラク10kgダイエット!!」みたいな折り込み広告でも見せられたような気恥ずかしさに襲われる。
そして下の方に小さく「ただし、便潜血検査は完璧ではありません。大腸がんの見逃しや・・・」の記述。早期癌の50%、進行癌の20%は便潜血で見逃される、受診者のほとんどはこの事実を知らされず、「便潜血陰性=ほぼ100%癌は無い」と思っているに違いない。きちんとインフォームド・コンセントを行わないまま、検診が行われていいのか?
彼らが言う「有効性の確立した検診」とは、RCTなどの手法を用いた論文で死亡率減少が確認された検診のことである。しかし第一線の臨床の場ではほとんど内視鏡が用いられ、きちんとした胃X線写真を撮れる医者も、読影できる医者も激減している現在において、論文が発表された当時と同等の有効性を期待するのは無理なのではないか。
内視鏡には死亡率減少のエビデンスが無いと言うが、それを検証する論文が無いのであって、正確に言えばエビデンスの有無は不明ということ、今までにきちんとした論文が発表されなかったのは我々の怠慢ということであろう。
かかりつけ医が検診受診を勧奨すると、受診率は有意に上昇するらしい。仮に医師自身が検診を受けるとしたら、果たして胃X線と便潜血によるがん検診を希望するだろうか?有効性を信じていないがん検診をかかりつけ医が自分の患者に積極的に勧奨するとは到底思えない。
第一線の臨床医と過去の論文だけで検診内容を決めている統計屋の間には、とても埋めることの出来ない、かくも深い溝が存在する。これではがん死亡率減少など夢のまた夢である。
「クリニックでの内視鏡診療と治療の現況と展望」
学会もいよいよ大詰め。学会というとどうしても大病院の医師が主役になるが、このワークショップは開業医にスポットライトをあてた内容。
まずは開業医の間で爆発的に普及している経鼻内視鏡。多くの医療機関が経鼻の方が検査が楽で、患者の受容性が高いと報告する。それは果たして本当か?単にその医者が内視鏡が下手で、苦痛の無い経口内視鏡を習得できていないだけなのではないか?ちなみに和歌山では経口内視鏡がそれほど苦しくないため、経鼻を希望する患者が少ないそうである。
一方で、全例ハイビジョン+拡大観察を行い、喉頭の小腺腫を見つけたと自慢する医師もいる。そんな患者の生命予後に全く影響を与えない、自己満足の検査をやってると、近藤誠氏のような健診不要論者に突っ込まれるね。
午後に施行する上部消化管内視鏡検査の報告。より良い観察のためには検査まで少なくとも7時間以上絶食させ、水分を400mL以上飲ませることだそうだ。以前勤務していた病院では午後の上部内視鏡なんて当たり前のようにやっていたので、別に目新しい話ではない。開業してからも、結構午後に検査を受けたいと希望する人は多い。
最後はクリニックでのEMR, ESD。勤務医疲弊の問題もあり、出血や穿孔の危険が少ない病変については、クリニックでの日帰り手術も積極的に考慮すべきと思われる。ただクリニックでESDまでやるのはどうかね?
10/17ランチョン「GERDの病態とPPIの光と影」
PPI登場以降、潰瘍、逆食、除菌などの治療は大きな変貌を遂げた。その圧倒的な薬効は今更言うまでもないが、今回はそれだけでなく、特に「光と影」の影の部分についても説明があった。
具体的には
抗血小板薬の作用増強・減弱
顕微鏡的大腸炎、collagenous colitis
胃底腺ポリープ
などがPPIが原因で生じるというものである。
原因不明の慢性下痢や巨大胃底腺ポリープが、PPIの内服中止によって改善・消失したという報告もあり、使用については十分な考慮が必要であることを再認識させられた。
「消化管内視鏡における安全・危機管理の実際」
「大腸内視鏡検査の安全・危機管理における当施設の取り組み」
大腸内視鏡は他科医師にとってはいまだ充分特性が理解されていないため、外来患者においては必ず消化器内科外来を受診させ、消化器内科医以外が直接検査依頼できないようにする。入院患者は検査当日、内視鏡センターの医師が患者を診察して、検査可能かどうかチェックする体制をとっているという内容。
正直、この程度の内容で学会ワークショップに通ってしまうところが哀しいが、それだけ大腸内視鏡、特に経口洗腸液を使った前処置がまだまだ理解されていないということであろう。
大病院なのに、トイレが足りないなどといった情けない理由で洗腸液を家で飲ませるのは、現場の責任放棄と言うしかあるまい。
「消化管内視鏡の際に必要なインフォームド・コンセント」
前投薬によるショックや、誤飲した義歯の内視鏡的除去術がうまくいかずに開胸を必要とした訴訟事例を検討。確かに今までは検査前に十分な説明がなされていたとは言いがたい。しかしマンパワー不足の現場で全員に充分な説明を行って、患者から承諾書にサインしてもらうことが果たしてできるのか?というジレンマに陥る。
「消化器内科ー循環器内科での院内合同ワークショップの試み」
「内視鏡関連手技における抗血栓薬のマネジメント」
生検、EMR, ESD施行前に抗凝固薬、抗血小板薬をどうするかという問題。結局は原疾患や内視鏡手技から、ケースバイケースで抗凝固薬をどの程度休薬するのか、決めることになるんだろうが。
「大腸内視鏡における安全・危機管理の実際」
「消化器内視鏡センターにおける内視鏡医教育とリスクマネージメント」
大腸内視鏡医の教育・育成についての発表。検査での穿孔症例がなかなか減らないのは、いかに大腸内視鏡をやっちゃいけない医者が現場で内視鏡をやっているかの現れであろう。
「大腸内視鏡検査におけるAir/CO2使用の前向き臨床試験の検討」
今度は検査後の苦痛を軽減する試みで、通常の空気ではなく、速やかに吸収されるCO2を送気することで、検査後の腹満を少なくしようというもの。CO2群がAir群と比べても遜色無く、安全に検査ができると言う結論は非常に心強い。
ほか、ESDにおける麻酔4演題。興味ないので割愛。
何は無くてもランチョンの整理券奪取
10/16のランチョンは炎症性腸疾患の第一人者日比紀文先生による「潰瘍性大腸炎における新しい治療戦略」
重症度による違い、病変部位による違い、寛解導入と寛解維持の違い、治療の副作用などにつき、当然ながら良くまとまった完璧な内容。初学者にとってはこれほどためになる講演は無い。
ただし、今までの集大成と言うだけで、結局はこの日製造承認が降り、12月頃に発売予定となったアサコール錠の宣伝になってしまった感は否めないところ。
今年のDDW-Jは京都で10/14~17の4日間にわたって開催された。
3日目から参加。
まずシンポ17「大腸内視鏡検査の偽陰性と対策」
かなり無謀なタイトルである。それと言うのも、正確に偽陰性の数を把握するのはかなり困難な作業だからである。8施設が発表したが、癌研病院は症例数が多いものの、ほとんどは他院で大腸癌と既に診断されての紹介例、大企業の健康管理センターは逐年の社員データがしっかり蓄えられてはいるが、例数不足。
結局は症例数が飛び抜けている亀田総合病院と松島クリニックに頼らざるを得ず、真に内視鏡健診としての逐年データがとられているのは、多分亀田総合病院だけであろう。亀田の大腸内視鏡健診は1983年にスタートしているので、仮に毎年ドック入りしている人がいるならば、26年に及ぶデータが蓄えられていることになる。
どの施設も結論としては上行、直腸、肝弯曲、脾弯曲などの見逃しが多いという、聞き飽きた内容に終始した。
長時間労働とストレスから鬱病を発症し、自殺した外科医が労災認定されたという報道があった。38歳という働き盛りでの死に対し、心からお悔やみ申し上げたい。
ただ、そのストレスの原因が2年間に2回、大腸内視鏡による穿孔を起こし、上司に叱責されたこと、という部分がひっかかった。
厳しい言い方になるが、2年間で2度も穿孔を起こすということはきわめて異例の高い確率であり、この医師は大腸内視鏡について正規のトレーニングを受けていなかったものと推察される。
青戸病院事件以来、内視鏡手術については医師の育成システムが取り沙汰されるようになった。しかし胃や大腸のルーチン検査については、医師免許さえあればきちんとトレーニングを受けていない者がやっても何ら罰則規定は無く、毎日日本のどこかで穿孔が起きているといった燦々たる状況である。
現在総合病院では、内視鏡を含めた術前検査は内科医が、手術は外科医が担当するといった役割分担がなされていることがほとんどと思われる。そのように勤務医時代にほとんど内視鏡経験の無い外科医が、開業した途端に自院で内視鏡を始めるケースが、自分の周囲でも後を絶たない。
やったことのない糖尿病等の治療を外科系開業医が見よう見まねで行っているのも問題と言えば問題ではあるが、いろんな文献に目を通して勉強していただければできないことはない。しかし内視鏡技術は本を読んだだけでは習得できないのだ。
亡くなられたドクターにはお気の毒だが、正規のトレーニングを受けていない医師の内視鏡検査で腸に穴をあけられた患者さんの方がもっとお気の毒であるということを決して忘れてはならない。
NHKで7/3に放映されたプロフェッショナルに出演された幕内雅敏氏。
「とにかくとる」
患者からも患者を外科に紹介する我々内科医からも
絶大な信頼を得る外科医というのは
このように絶対に「とれません」とは言わない外科医である。
放送終了後、ブログでもいろんな方が
「神の手」を絶賛、褒めちぎる中、
大ブーイングを浴びることを覚悟の上で
番組の中でさかんに口にしていた
「365日24時間医者であれ」
について述べてみたい。
私も研修医時代に
「いい医者とは常にベッドサイドにいてあげる医者」
と当時の教授や指導医から教育を受けたし、
正月だろうがゴールデンウィークだろうが
入院患者がいる限り回診するのは当然だし
救急患者が来る限り救急当直にもあたってきた。
しかしそれは決して自分ひとりで
全てをこなしたわけではない。
仲間の医師たちとチームを組んで
交代で勤務する。
いや、医師だけではない。
看護師、臨床放射線技師、臨床検査技師など
いろんな職種の人たちも含めてチームを作り
一丸となって診療にあたるのだ。
人間は機械ではない。
365日、24時間休み無く働くことなど
到底不可能である。
多くの医者が当直明けの連続勤務など
過重労働に苦しみ、
過労死したり、鬱病になったりといった犠牲の上に
ようやく医師の勤務体制を見直そうとする
動きが出てきたこの時期に
なぜあのような無神経な言動が
公共の電波上で繰り返されたのか。
この番組の前身、プロジェクトXは
物語をドラマチックにするため
最後には事実と異なる話をでっち上げて
打ち切りになったはず。
番組のタイトルは変わっても
医師の過重労働をまるで美談のように
放送するNHKスタッフ。
その単細胞で良識のないサマには
昨年の紅白以来
さらに受信料不払いに転じたくなる一夜となった。
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消化器内視鏡業界では、最近経鼻内視鏡が大きな話題になっている。経口内視鏡の経験者に経鼻内視鏡を行ったところ、90%以上の人が経鼻の方が楽と回答したという報告もあり、目ざとい病院は早速「経鼻内視鏡導入しました」などと宣伝をうって、増患を目論んでいる。
しかし、経鼻の方が経口より楽であるときちんと証明するためには、全く同じ内視鏡を使って調べる必要があるはずだ。直径10mmの経口内視鏡と直径5mmの経鼻内視鏡を受けた患者が経鼻の方が楽と言ったとしても、それは単に細径だから楽なのであって、経鼻だから楽という証明にはならない。
経鼻の方が楽と主張する人たちは、その理由として経口だと内視鏡が舌根を圧迫するため、嘔吐反射が出現しやすいことを挙げている。しかし、毎日の医療現場においても、他のドクターに頼んで自ら検査を受けた場合でも、苦しいと感じるのは食道入口部付近を内視鏡が通過する時であり、舌根云々の説明には全く賛同できないというのが正直なところだ。
経鼻内視鏡を導入している医院の門前薬局で調剤している同級生に先日会って話を聞いてみた。彼女曰く、「凄く楽だった」という人と、「二度とやりたくない」という人が、ほぼ半々とのこと。
医者の前では本音を言わないのが患者の常、そんな心情を省みずに医者が自己満足だけで経鼻内視鏡を導入すると手痛いしっぺ返しを受けかねない。
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患者のほとんどは痛みや苦しみを取り除いて欲しくて医者にかかるわけだから、良い臨床医とはどんな些細な訴えにも耳を傾け、細かいところまで丁寧に対応してくれる人のことだと思う。
しかし、最終的に病気を治すためには、あえて動かないこともある。感染性腸炎と思われる下痢の場合、下痢を止めてくれと頼まれても止瀉薬は出せないし、インフルエンザで高熱を出していてもボルタレン坐薬は出せない。
何とかしてあげたいという気持ちはあるが、あえて安静、クーリング、水分補給などで様子を見ようと言うしかない時がある。
慢性疾患の高齢者などで、それだけでお腹が一杯になりそうなほど薬が処方されているケースがある。薬ひとつひとつはそれぞれ理由があって処方が開始されたのだと思うが、薬をやめたらそれまで認知症だと思われていたお年寄りが元気になった、なんて話も良く聞く。
先日24時間以内に2回痙攀を起こして救急車で搬送された6歳の子供は、数日前から熱が出て、主治医から小児には禁忌であるクラビットのほか、ジスロマックも同時に処方されていた。薬を全て止めさせたら、痙攀の再発もなく、39℃台あった熱さえも下がってしまった。
何とかしてあげたい、でもしてはいけない、そんな葛藤が毎日の診療にある。
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