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Screening colonoscopyの現状と将来
米国では大腸癌検診にsigmoidoscopy、さらにはcolonoscopyを行うケースが増加していると聞く。そういう意味ではこのようなシンポジウムはタイムリーな企画となるはずであった。
しかし採用された各医療機関の発表はどれも力不足で、完全に企画倒れ。だいたいこの手のシンポジウムは昔から圧倒的な症例数を誇る亀田総合と松島病院の独壇場で、しっかりしたデータを持って追従してくる医療機関がいまだに育っていないことが改めて浮き彫りにされた。
「対策型大腸がん検診におけるscreening colonoscopyのあり方」
亀田の発表であるが、何も目新しいものは無い。それどころか検討期間が2003年で終わっており、最近5年間のデータが入っていない。スライドの内容は私が亀田在籍時に作ったものとほぼ同じで、15年ほど前にマックで描いたつたない大腸の絵が寸分違わず出て来た時には思わず失笑・・・いくら国内の学会とはいえ、こういう発表は参加者に対して失礼きわまりない。
「大腸がん検診におけるスクリーニングコロノスコピーの有用性の検討」
検診分野では新参者の工藤氏のところの発表。抄録に穿孔3例とあったのでフロアから質問したところ、その後の見直しで結局直腸内反転で穿孔を起こした1例のみとの回答。まあ、どちらにせよ、スクリーニングで穿孔が起きるようでは近藤誠氏の思うつぼ、検診としては使えないという結論になってしまう。
「大酒家・アルコール症患者の大腸鏡による大腸癌検診」
共同演者が久里浜アルコール症センターのドクターだけにアルコールから攻めて来た。しかし自院のアルコール症患者と全国集計のデータを性別・年齢など何のマッチングもせずに比較するという無謀な研究では、アルコール症に大腸癌が多いという結論に信頼を置くのは難しい。
「便潜血検査に、2~3年毎の全大腸内視鏡検査を併用した大腸がん検診の評価」
演題名だけ見ると「おっ!」と思わせるが、検討対象はわずかに4年間のみ。そもそも大腸癌の治療歴のある患者が大腸癌ハイリスク群に入るのは間違いなく、積極的に内視鏡で経過を追う重要性は万人が認めるところであろうが、何とこの施設は大腸癌術後のフォローアップに内視鏡は便潜血以上の有用性を見いだせなかったと結論づけているのであった。
「適切なTCS間隔設定によるTCS処理能力向上法」
年間2万件の検査をこなしている松島クリニックでも、約5,000件のバックオーダーを抱えて困っているので、リスクに応じて適切な検査間隔を設定しようという試み。今回の演題の中では最もまともな発表。
「大腸内視鏡検査における大腸ポリープ見逃し率の前向き臨床的研究」
内視鏡を2回挿入して1回目の見逃し率を調べた発表。そもそも屈曲部やヒダ裏に内視鏡の死角があることは大昔からわかっており、今更何を言いたいのか?という感はある。
「Screeinig colonoscopyにおけるNBI観察と炭酸ガス送気の有用性」
演題名と抄録を見ただけで、このシンポジウムには不適当な発表内容であることがわかる。演者の先生はRCTを連呼する割には、RCTが何なのかもご存じないようで、なぜこのような発表が採択されたのか理解に苦しむ。
「スクリーニングコロノスコピーの費用対効果削減の試み」
自らが構築した胃がん検診でピロリ菌のデータが揃っているという理由で、おそらくピロリ陽性群と陰性群の間で大腸癌に有意差があるのか調べる気になったようであるが、最初の仮説が医学的に充分根拠があるかどうかを吟味せずに、ただ両群間で検定してpがいくつだからとか、相対危険度やオッズ比がどうだから有意差があるとか無いとか言うのは統計処理として最低である。
演者はピロリ陽性群に大腸癌が有意に多いとする論文があると必死に理論武装を試みていたが、ピロリと大腸癌に相関関係があると信じているのは会場の中でこの演者ただ一人であったに違いない。
「無症状者に対する大腸癌スクリーニング目的の全大腸内視鏡検査は妥当か?」
50歳未満の無症状者にscreening colonoscopyを行うことは無意味と結論づけている。コストがかかり過ぎることを問題視している。でありながら、50歳未満の無症状者何名を対象とした研究なのかを最後まではっきり示さなかった。おそらく口に出せないほど数が少なかったのだろう。この集団に進行癌は1名も含まれなかったようであるが、腺腫・早期癌は2%に発見されたとも述べている。これをきわめて低率の一言で片付けていいものか?血の通っていない後期高齢者医療を生み出した官僚のような発想を医療者側が持ち出して来たのは大変残念なことである。
「大腸内視鏡挿入法の研修システムについて」
現実にscreening colonoscopyを行うとしたら、今のままではcolonoscopistの絶対数は不足しており、医師を養成するための研修システムは重要課題である。しかし上部消化管内視鏡で大腸内視鏡の疑似体験を行うというこの発表はかなり無理があろう。
現行の便潜血による大腸癌検診は死亡率低下についてのエビデンスはあるが、そのターゲットは転移の無い進行癌の発見であり、今後内視鏡によるスクリーニングが必要になってくることは間違いあるまい。そのためには母集団からハイリスクグループを絞り込んだり、内視鏡医を養成し、都会と地方の格差を無くすなどの手段が必要になってくる。
しかし今回のような各医療機関の身勝手な発表内容からはなかなか内視鏡検診の実像が見えてこなかった。今後はしっかりとした臨床データに基づいて相当気合いを入れて取り組む姿勢が無いと、ますます大腸癌死亡が増加して行くことだろう。
下部消化管感染症の内視鏡診断
感染性腸炎などほとんど議論し尽くされたように考えている人もいるだろうが、ファーストフードの台頭や肉の生食いなど、食環境の変化につれて感染症も様変わりしていると言える。
感染性腸炎の患者は腹痛、発熱、血便などを訴え、状態の悪い人も多く、速やかに適切な治療を施すことが要求されるが、便や粘膜を培養に出しても結果が帰ってくるまでに4~5日かかるため、内視鏡所見や罹患部位から病原体を推量する技量が重要となる。そのため、開業医など第一線で働く者には、がんよりもむしろこのような腸炎のセミナーの方が役に立ったりする。
アメーバやスピロヘータなど、直接鏡検が決め手になるような場合には日頃から臨床検査のテクニシャンと良好な関係を構築しておくことが重要だろうし、虚血性腸炎と診断している症例の中にはウイルス感染が関与している可能性を示唆する発表もあり、今後の発展が期待された。
早期がんと闘う内視鏡治療ー術前診断から治療、そして病理確定診断までー
誰がどんな内容の話をするのか事前に全くわからず、タイトルだけを見て参加したが、スポンサーがJ&Jだけあって、見事にムコアップの宣伝に終始する内容で、正直落胆。
最後の国立がんセンター病理の下田先生の話は、臨床と病理をつなぐ古くて新しい話。昨今きちんと自分で内視鏡診断を下せる医師が少なく、内視鏡が単なる生検マシーンと化し、診断を病理医に委ねる嘆かわしいケースが後を絶たないが、そんなことではきちんとした診断を下せないとする下田先生の話は、若手医師にぜひ聴いてほしい内容であった。
10/3ランチョン大腸内視鏡前処置のUP to DATE
本邦で経口洗腸液が保険収載されて15年以上経つ。それに対して新たな選択肢になりうるリン酸ナトリウムの錠剤の使用経験報告である。
発表した二人のドクターの話を聞く限り、最大の売りである錠剤化が同時にセルロースの塊を大腸内に生じて観察の妨げになるという弱点にもなっていることがわかる。
メーカー側はセルロースは吸引できるから問題ないと言うが、実際に自院で使用した時も回盲部にセルロースがたまっていて、観察しづらかった経験が脳裏に浮かぶ。
そんなわけで、今回の発表は何と、「如何にしてビジクリアの量を減らすか」ということに終始していた。
最初の調布東山病院のドクターは自らビジクリアを飲んで経時的に大腸内を調べた結果、30錠飲んだあたりで検査すると残便もセルロースもあまり見られず、良好な結果が得られたと報告していた。
何度も大腸に内視鏡を入れられた上、同時に胃の中まで内視鏡で観察するという体当たりの発表には敬意を表するが、日本人用にわざわざ錠剤を小型化して50錠飲むという用量設定がされたビジクリアを本当に30錠で腸管がきれいになるのか?という疑問が残る。
次の愛知医大のドクターの発表は、さらに困った内容であった。まず、このドクター、大腸検査のとき、全例に前日検査食を食べさせていたのである。この段階で普通ならこの発表は却下である。さらにこのドクター、前日に加えて当日もラキソベロンを飲ませることでビジクリアの量を減らせると報告していた。忍耐強い司会の日比教授もさすがにこれには・・・
大学のお偉い先生が全く大腸内視鏡の前処置の何たるかを理解していなかったという現実は、我が国の大腸内視鏡普及に向けて越えるべきハードルがいかに高いかということを痛感させられた。
昨年のJDDWでの上野文昭先生の発表が、いかにも第一人者にふさわしい究極の内容で、1年経過して何か新しい知見が積み重ねられたのかと期待したが、今回の発表は残念ながら収穫ゼロであった。
少なくともセルロースをもっと減らした製剤を開発しない限り、ビジクリアが生き延びる道はないであろう。
パネルディスカッション15
「大腸腫瘍の内視鏡的治療の選択と問題点」
特に面積が広いわりに深達度が浅いと言われる結節集簇様腫瘍に対するEMR, ESD, 腹腔鏡手術の発表が相次いだ。
各施設とも通常観察による存在診断の後に、NBIによる質的観察を行い、さらに色素撒布後拡大観察を行うとしているところが多かった。
まあ、こんなチマチマしたことを研究する人も少しは必要であるが、日本の内視鏡医全てがこんなことばかりやっていたら、決して大腸癌の死亡率を減らすことなどできない。要は腫瘍が内視鏡で切除できるSMチョロまでなのか、外科に依頼するSM massive以深なのかさえわかれば臨床的には十分なのであり、熟練した目を持った内視鏡医にとって、NBIだのピオクタニン染色だのは不要なのである。
K氏が出演したNHKのプロフェッショナルで、他院で外科手術・人工肛門造設が必要と診断された患者に対して拡大内視鏡をやるくだりあるが、検査費用も時間も患者さんにとって無駄であり、茶番以外の何者でもない。患者に変な期待を持たせた結果がやはり進行癌で、内視鏡切除不能・・・そんなことは患者が持って来ていた内視鏡写真を一目見ればまともな医者なら診断がついたはず。
内視鏡か外科手術か治療方針に悩む腫瘍はごく一握りであり、通常観察でほとんどの腫瘍の治療方針が決められるような内視鏡医を育てて行かなければ癌の撲滅はあり得ない。
10/1~4にプリンスホテル高輪で開催されたDDWに
3日、4日の2日間参加。
3日朝は8時前に会場に入って受付
ブレックファーストセミナー
「今だからこそ防御因子増強剤ーテプレノンの可能性を探るー」
に滑り込む。
演者は大阪医大の樋口和秀氏。
胃潰瘍ガイドライン第1版では無用の長物と烙印を押された防御因子増強剤。
タイトルから受ける印象としてはブレックファーストセミナーの中で最も退屈で、腹ごしらえ以外に得るものが無いように思われたがさにあらず。
確かに胃十二指腸潰瘍についてはもはや研究し尽くされたところがあり、防御因子増強剤が果たす役割は多くない。
しかし、小腸潰瘍・びらんの治療についての話は非常に有用であった。
脳梗塞・心筋梗塞などで抗凝固剤、抗血小板剤を長く飲んでいる人で、胃を調べても大腸を調べても出血源を認めない、原因不明の鉄欠乏性貧血の患者にたまに遭遇する。
今までブラックボックスだった小腸も、カプセル内視鏡など新しい検査の普及で徐々に疾病が明らかにされつつあるが、意外と頻度が高いかもしれない小腸潰瘍の治療に防御因子増強剤が有用だとしたら、普段の臨床に即応用できると思われた。