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「クリニックでの内視鏡診療と治療の現況と展望」
学会もいよいよ大詰め。学会というとどうしても大病院の医師が主役になるが、このワークショップは開業医にスポットライトをあてた内容。
まずは開業医の間で爆発的に普及している経鼻内視鏡。多くの医療機関が経鼻の方が検査が楽で、患者の受容性が高いと報告する。それは果たして本当か?単にその医者が内視鏡が下手で、苦痛の無い経口内視鏡を習得できていないだけなのではないか?ちなみに和歌山では経口内視鏡がそれほど苦しくないため、経鼻を希望する患者が少ないそうである。
一方で、全例ハイビジョン+拡大観察を行い、喉頭の小腺腫を見つけたと自慢する医師もいる。そんな患者の生命予後に全く影響を与えない、自己満足の検査をやってると、近藤誠氏のような健診不要論者に突っ込まれるね。
午後に施行する上部消化管内視鏡検査の報告。より良い観察のためには検査まで少なくとも7時間以上絶食させ、水分を400mL以上飲ませることだそうだ。以前勤務していた病院では午後の上部内視鏡なんて当たり前のようにやっていたので、別に目新しい話ではない。開業してからも、結構午後に検査を受けたいと希望する人は多い。
最後はクリニックでのEMR, ESD。勤務医疲弊の問題もあり、出血や穿孔の危険が少ない病変については、クリニックでの日帰り手術も積極的に考慮すべきと思われる。ただクリニックでESDまでやるのはどうかね?
10/17ランチョン「GERDの病態とPPIの光と影」
PPI登場以降、潰瘍、逆食、除菌などの治療は大きな変貌を遂げた。その圧倒的な薬効は今更言うまでもないが、今回はそれだけでなく、特に「光と影」の影の部分についても説明があった。
具体的には
抗血小板薬の作用増強・減弱
顕微鏡的大腸炎、collagenous colitis
胃底腺ポリープ
などがPPIが原因で生じるというものである。
原因不明の慢性下痢や巨大胃底腺ポリープが、PPIの内服中止によって改善・消失したという報告もあり、使用については十分な考慮が必要であることを再認識させられた。
「消化管内視鏡における安全・危機管理の実際」
「大腸内視鏡検査の安全・危機管理における当施設の取り組み」
大腸内視鏡は他科医師にとってはいまだ充分特性が理解されていないため、外来患者においては必ず消化器内科外来を受診させ、消化器内科医以外が直接検査依頼できないようにする。入院患者は検査当日、内視鏡センターの医師が患者を診察して、検査可能かどうかチェックする体制をとっているという内容。
正直、この程度の内容で学会ワークショップに通ってしまうところが哀しいが、それだけ大腸内視鏡、特に経口洗腸液を使った前処置がまだまだ理解されていないということであろう。
大病院なのに、トイレが足りないなどといった情けない理由で洗腸液を家で飲ませるのは、現場の責任放棄と言うしかあるまい。
「消化管内視鏡の際に必要なインフォームド・コンセント」
前投薬によるショックや、誤飲した義歯の内視鏡的除去術がうまくいかずに開胸を必要とした訴訟事例を検討。確かに今までは検査前に十分な説明がなされていたとは言いがたい。しかしマンパワー不足の現場で全員に充分な説明を行って、患者から承諾書にサインしてもらうことが果たしてできるのか?というジレンマに陥る。
「消化器内科ー循環器内科での院内合同ワークショップの試み」
「内視鏡関連手技における抗血栓薬のマネジメント」
生検、EMR, ESD施行前に抗凝固薬、抗血小板薬をどうするかという問題。結局は原疾患や内視鏡手技から、ケースバイケースで抗凝固薬をどの程度休薬するのか、決めることになるんだろうが。
「大腸内視鏡における安全・危機管理の実際」
「消化器内視鏡センターにおける内視鏡医教育とリスクマネージメント」
大腸内視鏡医の教育・育成についての発表。検査での穿孔症例がなかなか減らないのは、いかに大腸内視鏡をやっちゃいけない医者が現場で内視鏡をやっているかの現れであろう。
「大腸内視鏡検査におけるAir/CO2使用の前向き臨床試験の検討」
今度は検査後の苦痛を軽減する試みで、通常の空気ではなく、速やかに吸収されるCO2を送気することで、検査後の腹満を少なくしようというもの。CO2群がAir群と比べても遜色無く、安全に検査ができると言う結論は非常に心強い。
ほか、ESDにおける麻酔4演題。興味ないので割愛。
何は無くてもランチョンの整理券奪取
10/16のランチョンは炎症性腸疾患の第一人者日比紀文先生による「潰瘍性大腸炎における新しい治療戦略」
重症度による違い、病変部位による違い、寛解導入と寛解維持の違い、治療の副作用などにつき、当然ながら良くまとまった完璧な内容。初学者にとってはこれほどためになる講演は無い。
ただし、今までの集大成と言うだけで、結局はこの日製造承認が降り、12月頃に発売予定となったアサコール錠の宣伝になってしまった感は否めないところ。
今年のDDW-Jは京都で10/14~17の4日間にわたって開催された。
3日目から参加。
まずシンポ17「大腸内視鏡検査の偽陰性と対策」
かなり無謀なタイトルである。それと言うのも、正確に偽陰性の数を把握するのはかなり困難な作業だからである。8施設が発表したが、癌研病院は症例数が多いものの、ほとんどは他院で大腸癌と既に診断されての紹介例、大企業の健康管理センターは逐年の社員データがしっかり蓄えられてはいるが、例数不足。
結局は症例数が飛び抜けている亀田総合病院と松島クリニックに頼らざるを得ず、真に内視鏡健診としての逐年データがとられているのは、多分亀田総合病院だけであろう。亀田の大腸内視鏡健診は1983年にスタートしているので、仮に毎年ドック入りしている人がいるならば、26年に及ぶデータが蓄えられていることになる。
どの施設も結論としては上行、直腸、肝弯曲、脾弯曲などの見逃しが多いという、聞き飽きた内容に終始した。
研修医がますます都会に集中して、都会と地方の格差が広がる中、途方ではあの手この手の医師獲得作戦が展開されている。
山形県では将来残ってくれる医師に奨学金を出すそうだし、引き止め作戦の多くは給料を高くしたり、休みを多くしたりといった待遇の改善である。
しかしこれらを見るたびに、頭をかしげたくなるし、医者を馬鹿にするなと言いたくなる。
そりゃ、給料は安いよりは高い方がいいけど、多くの研修医が都会に集中するのは、都会の病院の方が最新の医療技術を学べる、自分のキャリアアップに繋がると考えているからではないのか。
特に気管内挿管、中心静脈ライン確保などの救急処置を覚えるためなら、多少睡眠時間を削ってもと考える研修医は多いに違いない。
そういうことから考えると、高給厚遇なんてことをいくら掲げても研修医は集まらないのではないか。山形や秋田は消化器癌の死亡率が非常に高い地域であり、いくら便潜血で一次スクリーニングを行っても大腸内視鏡の処理能力が低いため、検診異常者は二次検査まで1〜2ヶ月待ちになっている。
これを逆手に取って、山形に来たら飽きるほど内視鏡も、EMRも、ESDもできる、一生食べて行けるくらいのテクニックを習得できると大々的に宣伝したら、やる気のある研修医が全国からかなり集まってくると思うのだが。もちろんそのためにはしっかりした教育体制を作らなければいけないけどね。
Screening colonoscopyの現状と将来
米国では大腸癌検診にsigmoidoscopy、さらにはcolonoscopyを行うケースが増加していると聞く。そういう意味ではこのようなシンポジウムはタイムリーな企画となるはずであった。
しかし採用された各医療機関の発表はどれも力不足で、完全に企画倒れ。だいたいこの手のシンポジウムは昔から圧倒的な症例数を誇る亀田総合と松島病院の独壇場で、しっかりしたデータを持って追従してくる医療機関がいまだに育っていないことが改めて浮き彫りにされた。
「対策型大腸がん検診におけるscreening colonoscopyのあり方」
亀田の発表であるが、何も目新しいものは無い。それどころか検討期間が2003年で終わっており、最近5年間のデータが入っていない。スライドの内容は私が亀田在籍時に作ったものとほぼ同じで、15年ほど前にマックで描いたつたない大腸の絵が寸分違わず出て来た時には思わず失笑・・・いくら国内の学会とはいえ、こういう発表は参加者に対して失礼きわまりない。
「大腸がん検診におけるスクリーニングコロノスコピーの有用性の検討」
検診分野では新参者の工藤氏のところの発表。抄録に穿孔3例とあったのでフロアから質問したところ、その後の見直しで結局直腸内反転で穿孔を起こした1例のみとの回答。まあ、どちらにせよ、スクリーニングで穿孔が起きるようでは近藤誠氏の思うつぼ、検診としては使えないという結論になってしまう。
「大酒家・アルコール症患者の大腸鏡による大腸癌検診」
共同演者が久里浜アルコール症センターのドクターだけにアルコールから攻めて来た。しかし自院のアルコール症患者と全国集計のデータを性別・年齢など何のマッチングもせずに比較するという無謀な研究では、アルコール症に大腸癌が多いという結論に信頼を置くのは難しい。
「便潜血検査に、2~3年毎の全大腸内視鏡検査を併用した大腸がん検診の評価」
演題名だけ見ると「おっ!」と思わせるが、検討対象はわずかに4年間のみ。そもそも大腸癌の治療歴のある患者が大腸癌ハイリスク群に入るのは間違いなく、積極的に内視鏡で経過を追う重要性は万人が認めるところであろうが、何とこの施設は大腸癌術後のフォローアップに内視鏡は便潜血以上の有用性を見いだせなかったと結論づけているのであった。
「適切なTCS間隔設定によるTCS処理能力向上法」
年間2万件の検査をこなしている松島クリニックでも、約5,000件のバックオーダーを抱えて困っているので、リスクに応じて適切な検査間隔を設定しようという試み。今回の演題の中では最もまともな発表。
「大腸内視鏡検査における大腸ポリープ見逃し率の前向き臨床的研究」
内視鏡を2回挿入して1回目の見逃し率を調べた発表。そもそも屈曲部やヒダ裏に内視鏡の死角があることは大昔からわかっており、今更何を言いたいのか?という感はある。
「Screeinig colonoscopyにおけるNBI観察と炭酸ガス送気の有用性」
演題名と抄録を見ただけで、このシンポジウムには不適当な発表内容であることがわかる。演者の先生はRCTを連呼する割には、RCTが何なのかもご存じないようで、なぜこのような発表が採択されたのか理解に苦しむ。
「スクリーニングコロノスコピーの費用対効果削減の試み」
自らが構築した胃がん検診でピロリ菌のデータが揃っているという理由で、おそらくピロリ陽性群と陰性群の間で大腸癌に有意差があるのか調べる気になったようであるが、最初の仮説が医学的に充分根拠があるかどうかを吟味せずに、ただ両群間で検定してpがいくつだからとか、相対危険度やオッズ比がどうだから有意差があるとか無いとか言うのは統計処理として最低である。
演者はピロリ陽性群に大腸癌が有意に多いとする論文があると必死に理論武装を試みていたが、ピロリと大腸癌に相関関係があると信じているのは会場の中でこの演者ただ一人であったに違いない。
「無症状者に対する大腸癌スクリーニング目的の全大腸内視鏡検査は妥当か?」
50歳未満の無症状者にscreening colonoscopyを行うことは無意味と結論づけている。コストがかかり過ぎることを問題視している。でありながら、50歳未満の無症状者何名を対象とした研究なのかを最後まではっきり示さなかった。おそらく口に出せないほど数が少なかったのだろう。この集団に進行癌は1名も含まれなかったようであるが、腺腫・早期癌は2%に発見されたとも述べている。これをきわめて低率の一言で片付けていいものか?血の通っていない後期高齢者医療を生み出した官僚のような発想を医療者側が持ち出して来たのは大変残念なことである。
「大腸内視鏡挿入法の研修システムについて」
現実にscreening colonoscopyを行うとしたら、今のままではcolonoscopistの絶対数は不足しており、医師を養成するための研修システムは重要課題である。しかし上部消化管内視鏡で大腸内視鏡の疑似体験を行うというこの発表はかなり無理があろう。
現行の便潜血による大腸癌検診は死亡率低下についてのエビデンスはあるが、そのターゲットは転移の無い進行癌の発見であり、今後内視鏡によるスクリーニングが必要になってくることは間違いあるまい。そのためには母集団からハイリスクグループを絞り込んだり、内視鏡医を養成し、都会と地方の格差を無くすなどの手段が必要になってくる。
しかし今回のような各医療機関の身勝手な発表内容からはなかなか内視鏡検診の実像が見えてこなかった。今後はしっかりとした臨床データに基づいて相当気合いを入れて取り組む姿勢が無いと、ますます大腸癌死亡が増加して行くことだろう。
下部消化管感染症の内視鏡診断
感染性腸炎などほとんど議論し尽くされたように考えている人もいるだろうが、ファーストフードの台頭や肉の生食いなど、食環境の変化につれて感染症も様変わりしていると言える。
感染性腸炎の患者は腹痛、発熱、血便などを訴え、状態の悪い人も多く、速やかに適切な治療を施すことが要求されるが、便や粘膜を培養に出しても結果が帰ってくるまでに4~5日かかるため、内視鏡所見や罹患部位から病原体を推量する技量が重要となる。そのため、開業医など第一線で働く者には、がんよりもむしろこのような腸炎のセミナーの方が役に立ったりする。
アメーバやスピロヘータなど、直接鏡検が決め手になるような場合には日頃から臨床検査のテクニシャンと良好な関係を構築しておくことが重要だろうし、虚血性腸炎と診断している症例の中にはウイルス感染が関与している可能性を示唆する発表もあり、今後の発展が期待された。
早期がんと闘う内視鏡治療ー術前診断から治療、そして病理確定診断までー
誰がどんな内容の話をするのか事前に全くわからず、タイトルだけを見て参加したが、スポンサーがJ&Jだけあって、見事にムコアップの宣伝に終始する内容で、正直落胆。
最後の国立がんセンター病理の下田先生の話は、臨床と病理をつなぐ古くて新しい話。昨今きちんと自分で内視鏡診断を下せる医師が少なく、内視鏡が単なる生検マシーンと化し、診断を病理医に委ねる嘆かわしいケースが後を絶たないが、そんなことではきちんとした診断を下せないとする下田先生の話は、若手医師にぜひ聴いてほしい内容であった。
10/3ランチョン大腸内視鏡前処置のUP to DATE
本邦で経口洗腸液が保険収載されて15年以上経つ。それに対して新たな選択肢になりうるリン酸ナトリウムの錠剤の使用経験報告である。
発表した二人のドクターの話を聞く限り、最大の売りである錠剤化が同時にセルロースの塊を大腸内に生じて観察の妨げになるという弱点にもなっていることがわかる。
メーカー側はセルロースは吸引できるから問題ないと言うが、実際に自院で使用した時も回盲部にセルロースがたまっていて、観察しづらかった経験が脳裏に浮かぶ。
そんなわけで、今回の発表は何と、「如何にしてビジクリアの量を減らすか」ということに終始していた。
最初の調布東山病院のドクターは自らビジクリアを飲んで経時的に大腸内を調べた結果、30錠飲んだあたりで検査すると残便もセルロースもあまり見られず、良好な結果が得られたと報告していた。
何度も大腸に内視鏡を入れられた上、同時に胃の中まで内視鏡で観察するという体当たりの発表には敬意を表するが、日本人用にわざわざ錠剤を小型化して50錠飲むという用量設定がされたビジクリアを本当に30錠で腸管がきれいになるのか?という疑問が残る。
次の愛知医大のドクターの発表は、さらに困った内容であった。まず、このドクター、大腸検査のとき、全例に前日検査食を食べさせていたのである。この段階で普通ならこの発表は却下である。さらにこのドクター、前日に加えて当日もラキソベロンを飲ませることでビジクリアの量を減らせると報告していた。忍耐強い司会の日比教授もさすがにこれには・・・
大学のお偉い先生が全く大腸内視鏡の前処置の何たるかを理解していなかったという現実は、我が国の大腸内視鏡普及に向けて越えるべきハードルがいかに高いかということを痛感させられた。
昨年のJDDWでの上野文昭先生の発表が、いかにも第一人者にふさわしい究極の内容で、1年経過して何か新しい知見が積み重ねられたのかと期待したが、今回の発表は残念ながら収穫ゼロであった。
少なくともセルロースをもっと減らした製剤を開発しない限り、ビジクリアが生き延びる道はないであろう。