みなさんは、性器ヘルペスって知ってるかな?
なんとなく名前だけは、っていう方も多いと思うけど、遺伝子学的に調べてみると、
単純ヘルペスウィルスは、ヒトという生物に、かなり大昔から普通に感染していた病原体でした。
その超長い歴史ゆえ、ヒトの免疫系(自分の体に侵入してくる病原体をやっつける働き)との親和性が高く、
(つまり、やっつけられないってことね。)
一度、人体に感染すると、病原体であるこの単純ヘルペスウィルスは、その人体が
生存し続ける限り、体の中に居座り続けるのです。
まあ、簡単に言えば、感染すると、一生、完全には治らないってことです。知ってましたか?
ということを踏まえたうえで、今日は、Uさん32歳♂のお話を。
一日の診療が、終わりにさしかかる頃(うちのクリニックでは、18:30までなので、それくらい。)、
彼は、やってきた。
しかも、問診票の「今日はどうされましたか?」という質問に、
「自分で話す。」とだけ、ちょっと乱暴に書いてあった。
『今日はどうしたんですか?』
「実は、2~3日前から、ペニスが痛いのです。」
『どう、痛いんですか?』
「シャワーがしみる部分があって、そこがジンジンと痛いんです。」
さっそく、その部分をみてみると、彼が痛いと言っていた場所に、直径2mm程度の浅い潰瘍が
2つ認められた。これはいわゆる性器ヘルペス潰瘍の活動期(Active Fhase)のもので、
皮膚の表面の、「上皮」といわれる薄皮よりも下の層の「真皮」まで達している、
ちっちゃいけどちょっと深い「けが」のようなものだ。
まさに、けがに置き換えてみればよくわかるのだが、上っ面の傷はすぐ治る。でも、
かなり深くすりむいた時は、化膿する確率も高くなるし、何といっても、
欠損してしまった真皮と上皮を再生させるか、肉芽で置き換えるか、しなきゃいけないので、
治るのに時間がかかる。それゆえ、一般に、性器ヘルペスの潰瘍は2~4週間で治癒するとされている。
『性器ヘルペスですね。』
「えっ、ほんとですか。」
『うん。きちんとした診断をつけるべきだけど、いつ感染したと思う?』
「たぶん3週間前だと思います。」
『そんで、2、3日前から、なんとなく赤くなって、水疱ができて、やかて、それが破けて、
傷みたいな痛みになってきたんでしょ?』
「まったくその通りです。」
性器ヘルペスとは、単純ヘルペスウィルスによる性器への感染症であり、ボクが所属する
日本性感染症学会でも、川名先生というヘルペスの大御所の先生がいらっしゃるのだが、
(産婦人科学会でも世界的に有名な先生です。)
もしこの先生が、いらっしゃらなかったら、我々日本人はみんな、性器ヘルペスにかかった時に、
どうしていいかわからず、自殺者続出、なんてことになっていたかもしれない。
かつて本当にそういうことがあったということも、聞いたことがある。
(確かに、30年位前は、現在の抗ヘルペスウィルス薬なんていうのはなくて、
性器ヘルペスの治療→ガンマグロブリン投与なんていう時代だったらしい。)
川名先生、ほんとうに、ありがとうございます。
さて、この性器ヘルペスの基礎知識ね。
まず、病原体である単純ヘルペスはその核型により、Ⅰ型とⅡ型に分けられる。
よく、Ⅰ型が口型、Ⅱ型が性器型なんていわれているが、これだけ世の中オーラルセックスが
普通に行われていれば、ⅠとⅡの垣根はあまり重要でないかな。
でも、それぞれに特徴があるんだけどね。
次に、発症のパターンなんだけど、
初めて症状の出た人は、初発型
症状が出たのが2度目以降の人は、再発型
って言うんだ。
さらに、初発型は、2つに分けられて、
ウィルスが初めて体に入ってきた時は、急性型
以前にもうウィルスは体に入ってたんだけど、今回はじめて症状が出たぞっていうのが、誘発型
というのです。
ここでクイズです。
きょうの主人公のUさんのものは、
1、急性型
2、誘発型
3、再発型
どれだと思いますか?
と、クイズを出しつつ、次回へ続くのだ。
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コメント一覧
ヘルペスって口の周りに出来るものかと思っていました。
私も、たまにですが、口の周りに出来ることがあります。
疲れが溜まっている時などに出てきますが、他の場所にも出来るんですね。
すごくためになりました。
また、読みに来ます。
わざわざありがとうございます。
そうなんです。現在の感染症学は、ウィルスの時代といわれるほど、
ウィルス研究に力をいれていますが、
そうした流れの中で、ヘルペスウィルスというものがよくわかってきたのです。
またぜひ、今回のように下品じゃない時にお越しくださいね。
この患者様、再発型でしょうか?
初めての発病ならもっとうろたえるかと思いました。
女性ならどんな風に潰瘍ができるのですか?
オイラ、一応女性なので気になります・・・。
はたして再発型かな?答えは次回明らかになるのだ。
女性の場合は、程度が様々なんだけど、ひどい場合になると、
おしっこもできなくなるし、歩けもしなくなるという、小陰唇あたりが、ぐちゃぐちゃ、
っていうのもあるし、軽ければ、小陰唇、大陰唇、または肛門付近に、1から数個の水疱ができて、
潰れた後にそこがヒリヒリ痛い(SORE)っていうだけのものもあるよ。
難しいね。
ちなみに友人は口内に出来たと言ってました!口に出来ることもあるのでしょうか(?-?)いきなり質問で申し訳ありません。。。。
お返事遅れてすみません。
おっしゃるとおりで、ヘルペスは口型、性器型とありますが、
昔のように、DNAがⅠ型のものが口で、Ⅱ型のものが性器などというわけ方は、
ちょっと意味がないように感じます。つまり、その旦那さんが、どのような行為から、
感染に至ったのかということが大切なのです。
ヘルペスウィルスを排泄している女性と、キスをしたのか、
性器をなめたのか、
膣とペニスで性交を行ったのか、ペニスをなめられたのか、
いずれかの方法で、
ヘルペスウィルスの感染が完成したはずです。
さらに、旦那さんの感染部位は、わかりませんが、その奥さんは、
自分の口に、ウィルスを入れてしまい、さらにお子さんにマウスtoマウスでうつしたか、
旦那さん自身が、マウスtoマウスでお子さんにうつしたかってことでしょう。
このようにウィルスの感染は、連鎖していきます。
ただ、症状が、はっきりしているものが、奥さんとお子さんに連続して見られたのであるならば、
統計的に、そのヘルペスウィルスはⅠ型のDNAタイプの可能性が高いといえます。
そうなんですか!(@@;ビックリです。
私にはSTDって性行為で感染するイメージしかなくて、
友人の話を聞いていて「どうしてコドモとえっちしてないのにコドモにまで感染するの!?」と不思議でならなかったのですが、先生のお話を聞いて納得しました。
うーん、でもコワイですね。
これからますますビョーキを持ってないひとと恋人になるのが難しい世の中になってくるのかぁ。。。恋愛難民な私。
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