日本人の考古学者が、世界中で他国の王墓をあばいています。
それは、あくまで考古学研究を目的にしています。
そこに埋葬された人にとって、気分のいいものではないでしょうけれども、そのことによって、私たちは歴史的な事実を知る手がかりを得ることができます。
ひるがえって日本ではどうでしょうか。
宮内庁が、国内の古墳を宮内庁管理としているために、歴史学者や考古学者がその中へ入ることは許されず、確たる根拠のないままに、国がその墓の持ち主を勝手にきめてしまっているのです。
耳慣れない、箸墓古墳(はしはかこふん)。
宮内庁は、ここを、倭迹迹日百襲媛命大市墓(やまとととひももそひめのみことおおいちのはか)と呼び、第7代孝霊天皇の皇女の墓としています。
国立歴史民族博物館の研究チームが、放射性炭素年代測定で、この墳墓が西暦240~260年に築造されたと推定しているそうです。
卑弥呼が亡くなった248年ごろと年代が合致していて、これが卑弥呼の墓かもしれないという説を支持する結果となっているそうです。
それにしても…
墳墓の周辺の土器を調べた、というのが、何とも情けない限りです。
どうして、宮内庁は、研究に協力しないのでしょうか。
この墳墓の所在地、奈良県桜井市箸中をGoogleの地図検索で調べてみたら、この近辺の地図は「詳細画像が表示できない」と、ブロックがかかっていました。
宮内庁指定の陵墓なんて、たいして根拠がないそうです。
江戸時代に、国学者が、十分に研究もせずに政治的に定めたところが多いので、誤りも多いそうです。
そのうえ、幕末に、古墳を改修して形を変えてしまったものもあるのだとか。
世界のトップレベルの科学技術を誇る日本が、自国の歴史研究に、このような国家権力のタガをはめつづけるなんて、本気で古代史を明らかにする気があるのでしょうか。
新型インフルエンザがトップニュースの座を射止めてから、もうどれくらいたつのでしょうか。
日本国内での患者数が日に日に増加し、各事業所での安全衛生委員会の場で、新型インフルエンザについてのアドバイスを求められることが増えてきました。
医師として、わかることは答えたいと思うのだけれど、「インフルエンザ」という衣をまとった未知の病について―私は新型インフルエンザは未知の病に近いと最近感じています―、これまでの私の医師としての常識を根拠に、アドバイスしていいのかどうか、躊躇する場面が増えてきました。
今、判断に困っていることがいくつか…
●マスクは有効か、有効でないか。
あまり有効でないという意見があるようですが、政府や自治体の指導では「マスク、手洗い、うがい」が3点セットになっていて、マスクについては「ある程度の効果が認められている」と説明されています。
品薄になっているマスクについて、本当にマスクをつける意味がないのなら、血眼になってマスクを買う必要もないですし、どのくらいの予防効果を期待できるのかについて、もうちょっと科学的根拠を示してもらいのですが…
●今のうちにかかっておけば、免疫ができるからいい?
今のところ、かかったときの重さから言えば、季節性インフルエンザと同じくらいのようなんですが、その「軽症」をいいことに、今のうちにかかっておけば、今度ウイルスの病原性がより強くなった時に、免疫ができているので感染しないで済む、と言う従業員さんがいました。
遺伝子の変異は容易に起こるとされているA型のインフルエンザについて、今回の新型インフルエンザに対する免疫が、今後遺伝子が変異してより病原性が強くなったウイルスに対して有効なんでしょうか。
私は、そんなことはないと思っているので、安易に感染した方がよいと言ってはいけない、とアドバイスしているのですが…
でも、今政府が製造を急いでいるワクチンって、まだ遺伝子変異を起こす前の段階の、いわゆる「弱毒」の新型インフルエンザを元に作っているんですよね…
「強毒」になっちゃったら、効かない…?
●インフルエンザウイルスは、あくまでインフルエンザウイルスなのでしょうか。
インフルエンザウイルスとしての振る舞いは、どんなに遺伝子が変異しても変わらないものなのか、それともやはり、ウイルスの専門家でも、今後どのようなウイルスに豹変するのか想像もつかないほどわからないものなのか、どっちなんでしょうか。
もし、遺伝子が変異しても、インフルエンザウイルスとして変わらない性質があるのなら、それを教えてほしいなあと思います。
多少なりとも、これはやっておく必要がある、とか、ここまでは心配いらない、とかある程度対策の参考にはなるのになあ。
ああ、もちろんウイルスの専門書でも読めば書いてあるのかもしれませんが、そこまで腰を落ち着けて、基礎から学ぶ時間が…
…困っております。
昨日は、厚生労働省の研究班が、インフルエンザに対する万能ワクチンの開発に、動物実験のレベルで成功したというニュースが、夕方から夜遅い報道番組まで、何回も流されました。
このワクチンが人間での安全性も確認できれば、新型インフルエンザも怖くない…
そんな話でしたが…
テレビの報道だけでは、詳しい免疫機序がわからないし、ネットで報道されている記事を見てみると、
「ウイルスに感染した細胞を攻撃することで、ウイルスの増殖を止める」
というさらっとした解説しかありません。
う~ん。
これ、考えようによってはとても怖い気がしました。
私も医者のはしくれなんで、あいまいなことは書けませんが、ウイルスに感染した細胞を攻撃するということは、自分の身体の細胞を、自分の白血球が攻撃してしまうということで、そうすると、ノドや気管、気管支といった呼吸器系の器官が、あれてしまうんじゃないかと思ってしまいました。
それとも、ノドや気管、気管支の細胞に広くウイルスが増殖する前に、たとえば細胞1、2個にウイルスが侵入したら、すぐさま免疫機能が働いて壊してしまうので、気道に広く炎症をおこすほどの状態にはならない、ということなのでしょうか。
なんか、そのあたりの説明が、まったくなされないまま、「新型インフルエンザは怖くない」みたいな調子で報道されるのも、どうかと思います。
医学研究に関する報道は、ありがちなんですけどね~。
ノーベル物理学賞の受賞が決定した益川敏英先生が語った言葉です。
益川先生は、「『九条の会』のアピールを広げる科学者・研究者の会」の呼びかけ人の一人だそうです。
詳しいことは、いろいろなメディアで紹介されいているから、ここで改めて紹介することはしないでおきたいと思います。
3人の日本人物理学者がノーベル物理学賞を受賞したことについて、その対象となった研究は、何十年も前のものでした。
彼らの携わったのは理論物理学だから、その証明には科学技術の発展を待たなければならず、そのことも受賞が遅れた原因だったのかもしれません。
でも、やはり基礎研究に光があたったことは、とてもよかったことだと思います。
今の日本の大学や研究所では、業績評価によって、とても短期間で出る結果を求められています。
通常、1年や3年といった単位です。
だから、どうしても実験室で細胞や物質、遺伝子を相手にする研究がもてはやされて、時間がかかったり、手間暇のかかったりする研究がおろそかになります。
そのことは、実は冒頭に出てきたような、人間としての成長をも妨げるのではないかと私は思うのです。
お金になる研究、すぐに結果の出る研究だけが評価されていけば、研究のための研究をする人ばかりが増えて、研究者の心はすさんでいくのではないかと思うのです。
出てきた業績は全部自分のもので、業績があげられずに落ちていく人など気になどしていられない空気。
社会貢献など考えても、自分に対する評価にはならないという空気。
こういう空気が充満した所では、人間形成など望めないのではないかと心配になります。
ノーベル賞受賞をただ祝うのではなく、日本の研究環境について、もっと議論すべきではないか、と私は思います。
某社の社内報に、毎月健康に関する小さな記事を書いています。
いまやネット時代で、健康に関する情報など、誰もが簡単に手に入れられる時代です。
普段そのような情報に積極的に触れている人でも読み応えがあるように、と、ひと工夫こらして原稿を書くようにしています。
それでも、圧倒的なネット上の情報につぶされるがごとく、毎月ネタ切れで、ふうふう言うような状態。
今月は、「夏バテ」予防について書こうかと思ったのです。
でも、どの医学書をくっても、「夏バテ」を医学的に解説したものが見つかりません。
熱中症とか熱射病とか、そういう激烈なものの解説は山と書いていあるのに…
要するに、「夏バテ」は医学的に病気ではないということなのですね。当たり前のことなのだけれど。
夏は暑い、暑さが人体に与える影響は何か。
でも、一日中暑い中にいることは少なく、むしろ冷房のきいた部屋にいたりする。
夏バテは暑さからくる影響だけと考えるのはいかがなものなのか。
いや、暑さと冷房の涼しさの間をいったりきたりするのが本質か。
それよりも単純に、暑さで食欲が落ちて、元気がなくなる状態と考えていいのか。
いろいろな側面から考えられそうでもあり、でも何となく推察の域をでない気もし、で結局原稿はまとまりません。
意外とこういう、昔から言われているような半分不健康状態というのが、一番医学的に分析されていないことかもしれないなあ、と思った次第です。
日本人男性はせっかちな人ほど心筋梗塞になりにくい、などという厚生労働省研究班の結果が報道されました。
ネットで検索した結果では、その記事の出所は毎日新聞です。
書いているのは社会部の記者のようです。
この記者さん、本当に論文を読んだのでしょうか。
うわっつらだけ読んでいると、せっかちであるほうが心筋梗塞になりにくくてよい、と結論付けられてしまう恐れがあります。
私は、少なくともこの記事には大いに疑問を抱いています。
8万6000人の地域住民にアンケートで自分の性格を答えさせている点。自己診断は果たして正しい?
発症したのは669人という少なさ。
そのうち男性発症者は何人だったのか。
さらにその男性発症者は、「せっかち」グループと「せっかちでない」グループを段階的に分けたようなので、各グループの発症者はさらに少なくなる。
記事に書いているのは、一番「せっかち」と一番「せっかちでない」の両極端のグループを比較したら、発症の傾向???が32%高かったとか。
いったいいくつのグループに分けたのか。
文句言う前に、自分で論文読んだら、って言われそうですが、その論文がのってる国際疫学会雑誌って、周りに転がっている雑誌ではなさそうです。
何より、社会部の記者さんが、(おそらく)論文も読まずにただ報告者の流す情報だけで、記事を書くなと言いたいのです。
誤った受け取り方されたらどうするんですか。
せっかちなおっさんばっかり増えたらどうするんですか。
私も医者のはしくれなんで、この論文はきちんと手に入れて読んでみようと思いますけど… ただの受け売りだけすればすむ仕事なんですか、新聞記者って。
横浜市立大学の医学部で、学位を授与された大学院生から、教授に支払っていたという謝礼金。
ふ~ん、まだそんなことやってる大学あったのね。でも昔は当たり前だったんじゃあないのかな。
私の感想はそういう感じでした。
少なくとも10年前、まだ外科にいるときは、学位をとったら教授にウン十万円、払うらしいと聞いていました。
そのウン十万円という金額も、教授によって違っていて、高いとこだと100万円、とか聞いたこともありました。
私がいたところは、退官前になると大量に学位を乱発し、たんまりお金をもらって引退するなんていうアホな教授でした。
そのお金が教授の家の改修費に使われた、といううわさがまことしやかに流れましたっけ。
幸い私は、大学医局を出たので、そういう馬鹿らしいことをせずにすんでいますが…
誰も払いたくて払っているんじゃないんだろうと思います。
今まで払ってきたよ、と先輩から言われたら、払わなかった場合にどうなるか(へき地の病院に何年も飛ばされる、とか大学病院でずっと丁稚奉公とか・・)わからないので、みな、なけなしのお金を包んで、へへ~っと奉納してしまうのでしょう。
そうして、支払わなかったときにどうなるか、誰も知ることがないままに、悪しき習慣となるのでしょう。
教授の言い分は、「強制したわけではない。むこうがくれるって言うんだから…」てなもんでしょう。
新臨床研修制度が始まって、そういう大学医局の悪い面は、なくなったと信じたいです。
年末年始、新聞やテレビで地球温暖化を含めた環境問題が、去年にもまして取り上げられているように思います。
じりじりと地球の平均気温が上がっており、それに伴って様々な気象変動や生物界の異変など起きていて、その元凶が二酸化炭素だといいます。
確かに地球上の二酸化炭素の濃度は高くなっているらしいです。
そして、その二酸化炭素を消費するために必要な植物が圧倒的に足りていないらしいです。
でも、のどに刺さった魚の小骨のように気になっていることがあります。
ものすごくばかばかしい話かもしれませんが、小学生ぐらいのころだったか中学生頃だったか、星の一生について教えてもらったことがあって、太陽はだんだん膨張して、そのうち水星も金星ものみこんで、やがて地球も太陽にのみこまれるのだという話を聞いた覚えがあるのです。
だから、当然地球上の気温は将来高くなっていく、と教えられたような記憶があります。
今起きている地球温暖化の原因は、太陽が膨張しているから、という理解は間違いでしょうか。
やっぱり二酸化炭素が犯人ですかねえ…
メタボリックシンドロームの診断基準について、異論が出ているようです。
大方の意見は、「厳しすぎるんじゃないか」。
厳しすぎる診断基準の結果、病院へ行く人が増えて医療費が増える、という理論です。
私はその意見には、あまり賛同できません。
そもそも、メタボリックシンドローム診断は、内蔵型肥満を中心に置いていて、そこからおこってくる高血糖や高血圧、高中性脂肪、低HDLコレステロール血症などを、内蔵脂肪を減らすことによって予防しよう、ということだと理解できるからです。
何も、数値が悪ければ即病院へ行って治療しなさい、と言っているのではないと思います。
健康診断などでハイリスクの人をスクリーニングし、運動不足とカロリーオーバーを解消することによって、そこから起きてくる可能性のある生活習慣病が予防できれば、さらにその先に起こるかもしれない動脈硬化性疾患を予防できるのだとしたら、それはそれで理にかなっていると思うのです。
実際、健康診断結果を見ていると、肥満がある人が一つ二つ生活習慣病にかかっていて、減量すると数値が正常化する人って結構います。
もちろん、肥満があっても他に異常のない人とか、やせていていも異常のある人とかいますが、それはメタボの範疇ではないのでしょう。
どちらかというと、体質的な背景が強いと考えられます。
あるいは、肥満以外の原因で起きていると理解できます。
ことさらメタボを強調するのは、このごろ過栄養で運動不足の人が増えてきているからです。
医学雑誌などで調べてみると、2005年に日本の医学系8学会が共同で基準作りをした、ということです。
一応、多くの専門家が出した結論に、2年もたたないうちに異論が出る、というのはどういうことでしょうか。
私は、批判の背景にあるのは、来年4月から始まる特定健診の混乱ぶりにあると見ています。
行政の側が、医療費を削減する意図をむき出しにして、啓蒙活動もすっとばして、突然いつの間にか法律ができていた、という感は否めません。
もっとうがった見方をすれば、日本人のまじめな健康志向を逆手にとって、やれトクホだなんだといって健康食品に目を向けさせて、健康食品業界を潤わせておいて医療費を減らそう、などという、行政と産業界の思惑が一致した結果だったりして…
メタボ診断は、健康で元気な生活をするために必要な考え方であるというスタンスであれば、そんなに反発する人も増えなかったんじゃないのかな。
私は産業医なので、労働者の健康診断という視点で整理してみます。
労働者が受ける健康診断は、労働安全衛生法で定められている一般定期健診と特殊健診があります。
特殊健診は、いろんな有害な業務に従事している人が受ける健診なので、ここでは触れないでおきましょう。
その一般定期健康診断が、事業主(会社)に義務付けられている健康診断です。
その健康診断でメタボが疑われた人は(BMI25以上・高血圧・血清脂質異常・高血糖が全部そろった場合)、労災保険法で定められた二次健康診断を「受けることができる」となっています。
「受けることができる。」というのがとってもあいまいで、本人が希望しないと受けなくてもよいのかな、という感じです。
いや、私は受けることを勧めてますが、この制度を知らない健診機関が多すぎて、いろいろトラブルがありました。
以上の二つに加えて―二次健診さえ、まだまだ軌道に乗っていないのに―、来年4月から特定健診が始まろうとしています。
健診内容は、会社で受ける健診と大きく変わりませんが、会社勤めの人に加えてその家族(健康保険の被保険者)まで対象になり、本人も家族も74歳まで面倒をみる制度。
そして、健診後の保健指導が目玉、なんだろうなあ。
この制度を決めているのは高齢者医療法。
しかし、受診の義務が明記されていないそうです。
当然、義務違反の罰則規定もなし。
健診を実施する責任は医療保険者(会社でいえば健保組合)。
ひとりの労働者という視点で見れば、 会社で受ける健康診断(労働安全衛生法)、その後の二次健診(労災保険法)、今度始まるらしい特定健診(高齢者医療法)、三つ巴であります。
結局、こういう行政の混乱が、批判の根っこにあるんじゃないですかねえ。
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