2008.05.30 19:22 |  診療  |  生活 / くらし  |  恋愛 / 結婚  |  三毛猫  | 推薦数 : 2

夜の生活

医者をしていると、たまにどきっとするような質問を受けることがあります。

 

以前、公立病院で外科医をしていたときのこと。

定年退職してやっとゆっくりできると思っていたのに、大腸癌がみつかってしまったある男性が入院してきました。

仮にその患者さんをDさんとでもしておきましょう。

Dさんの癌は進行癌でしたが、幸い組織は進行の遅いタイプで、一応手術で取りきることができました。

 

術後特にトラブルもなく、もうそろそろ退院、という時期になりました。

当時は今のように癌の告知を患者さんにすることはあまりなく、術前や術後の説明は、たいていご家族にすることが普通でした。

Dさんの場合も、うすうす自分が癌だと知っておられたとは思いますが、退院の前に奥さんに来ていただいて、今後の見通しや生活面での注意についてお話しました。

 

そのときでした。

Dさんの奥さんに、こんなふうに質問されたのです。

 

「先生、癌はうつるんですか? 主人が求めてきたら、どうしようかと思って…」

 

Dさんの奥さんは、夜の生活で夫の癌がうつるんじゃないかと心配していたようでした。

一瞬戸惑いましたが、癌はそういうことでうつるものではないことを説明し、Dさんの奥さんは安心されたようでした。

 

 

その後、大学病院に戻ってからも、同じようなことがありました。

その時は、30代の男性患者Eさんで、感染性の弁膜症で緊急手術となり人工弁に置換する手術を行った方でした。

若かったのと、循環器内科の先生が迅速に診断してくださったおかげで、手術は無事に成功しました。

 

退院が決まって、Eさんの奥さんにも来ていただいて、退院時の説明を行ったときのことです。

担当の看護師さんと、なぜかその日は病棟の看護師長も同席しての説明となりました。

Eさんご夫婦はおとなしい方たちで、私が一方的に話すのを、ふんふんとうなづいて聞いておられるばかりだったのです。

ところが、看護師長がえらくはりきっており、眉間にしわをよせながら、私に言いました。

 

「先生、夜の生活は制限なくやってもいいんですか。やっぱりまだお若い夫婦だし、そういうこともきちんと説明してあげないと…」

 

えっ、あっ、うっ…

このときはあわてました。

そりゃああまり心拍数が上がると人工弁が機能しなくなるでしょうけれど、そのご夫婦がどれだけ激しい状態になるのかわからないわけですし…

正直、なんて答えたのかよく覚えていません。

よく覚えていないぐらい、内心は動転していたと思います。

なんとかその場をやり過ごしたのか…

 

あとで、同期の医師に「どう思う?」と聞いてみました。

 

「そんなん、しんどなったら自然にやめるやろ。」

 

はあ、そうですか。

そんなもんですか。

 

医者は何でも知っとかなあかんのですね。

 

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