このサイトのブログで、書いていいものかどうかわからなくて、あまり触れてこなかったのだけれど、昨今、日本の医療の質が落ちていると言われていることには違和感を感じ続けています。
それは、「質が落ちていない」というのではなく、「もともとそんなに質は高かったわけでもないし、今も高いわけでもない」、というのが本音です。
先天性の病気を患って長く患者をしてきたので、その体験から言えば、不満がなかったわけではありませんでした。
途中で医療をする側にはなったものの、私はどんなにがんばっても患者であるキャリアを、医師としてのキャリアが超えることはなく、だから、患者としての自分と、医師としての自分が時に又裂き状態になることだってありました。
日本の医療は、大都会でも夜になると無医村になる…
極端な言い方かもしれませんが、患者としてはずっとそう思ってきました。
もちろん、夜の医療を懸命に支えてきた医師がいて、現在もいるのだとは思います。
しかし、圧倒的に数は足りていなかったんじゃないかと思っています。
私が子供のころ、病状が悪化するたびに、診察を受け入れてくれる病院を探すのに親が苦労しているのを何度も見てきました。
特に中学生を過ぎて高校生になってくると、担当科が小児科から内科に変わり、小学生の時に外科治療を受けていた私は、小児科でもない、内科でもない、外科でもない、というような、中途半端な立場にあって、夜間救急での受診となると、「小児科医しかいない」「普通の内科では対応できない」というような言われ方をして、病院探しに困ったのでした。
いざ自分が医師になってみると、大学病院での研修1年目から、夏を過ぎると当直アルバイトに強制的に行かされるようになりました。行かされる、というのは半分間違っていて、アルバイトをしないと生活できないぐらいのお給料だったという理由もあります。
とにかく、点滴の入れ方、基本的な縫合の仕方ぐらいを覚えておいて、あとは救急マニュアルを抱えて、「今日はどうか重症の患者さんが来ませんように」と、祈るような思いで当直をしていたし、その日の大学のオンコールの先生をつかまえて、「今日アルバイトで当直なんです。困ったら助けて下さい。」と、約束を取り付けておくことも大事でした。
自分で判断できなければ、オンコールの先生に電話をし、場合によっては大学病院で受け入れてもらう…
そういう「安全保障」を取りながら、のアルバイトでした。
大学病院から市中病院へ出ると、アルバイトはいろんな理由からできませんでしたが、やっぱり夜の医療を支えているのは私たち若い医師たちだったし、規模の大きい公立病院などでは、40歳以上の先輩先生は当直業務を免除されているところも多かったのです。
もちろん、自分の手に負えない場合に備えて、オンコール制を敷いていて、先輩先生のバックアップはあったわけですが…
そういうふうに、どうにかこうにかやってこられていた「夜の医療」は、新臨床医研修制度の導入で、とうとう壊れてしまいました。
卒後2年間は、厚生労働省の作った研修プログラムに従って、多少の選択制はあるものの、メインの科をすべて回ることになりました。
(私から言わせれば)一人前の給料が支払われる代わりに、2年間のアルバイトは禁止、自分が研修を受けている病院の当直も認められておらず、あくまで当直医が監視しているところでの医療行為のみ認められる、という厳密さ。
研修医が自律的に医療行為をすることは、認められなくなってしまいました。
そこで何が起こるかは、簡単に想像できます。
若い医師が支えていた夜の医療は、あっという間に担い手を失ってしまいました。
そうして、研修医を抱えた病院は人数ばかりが増えても、日常診療と研修医の指導の両方を中堅以上の医師が支え、さらに当直業務もこなし、当直翌日も通常業務が待っている…という過酷な労働が、以前にもまして強いられるようになってきたのではないでしょうか。
夜の医療を、経験のある医師が担うようになったことは、患者さんにとっては正しいことかもしれません。
しかし、その代わりに、夜の医療を受けられるところを極端に減らしてしまいました。
そのうち、地方に派遣していた医師も大学病院を守るために引き上げざるを得なくなり、昼間の医療でさえも危うくなってきています。
その現象が顕著に表れているのが、産科、小児科、外科…いえ、いまや内科も医師不足に陥りつつあります。
私の分析は間違っているでしょうか。
新しい制度を導入するとき、そのメリットとデメリットを把握して、デメリットの部分をいかに小さくするかのセーフティネットを張っておくべきだったのに、なぜか厚生労働省はそこのところを全くしてこなかったとしか思いようがありません。
挙句の果てには、やれ勤務医に比べて開業医が楽して収入が高い、などとわざと医師同士の争いに仕向けられようとしてる気がしてなりません。
問題点はそういうところにあるのではなく、研修医の指導はどうするのか、日常診療をどうするのか、当直業務をどうするのか、その医師の労働条件の部分をきちんとしない限り、医師の収入論争をやっていても意味はありません。
開業医の先生が楽して収入だけ高いと言うのなら、一度開業医の先生が全員いなくなった時のことを想像すればいいのです。
そうすると、開業医の先生方が支えている医療も相当多岐にわたっていて、無くてはならない存在だと言うことが分かるでしょう。
私が経験した阪神淡路大震災の時、かばんに薬を詰めて、被災地の患者さんを1軒1件探して歩いていたのは地元の開業医の先生方だったことを忘れてはなりません。
ああ…
それに比べて産業医とは!
予防医学と偉そうに言うけれど、結局私は何をやっているんだか。
企業だって、法律に決められているから産業医を雇っているだけで、産業医の意味など感じているところは少ないのです。
そういうことをつらつらと考えいてたら、「深夜食堂」というドラマが始まりました。
好きな俳優の小林薫が主人公。
昨日は魚の好きな少女とか、かつ丼を食べるボクサーが出てきました。
そこから始まる恋の話。
あ、いや少女とボクサーではなく、未亡人である少女のお母さんとボクサーの恋の話。
深夜にこんなドラマをやっていたんだと思いながら、ぼんやりと、とうとう最後まで見てしまいました。
う~ん、なんか疲れております。
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