愛育病院が総合周産期母子医療センターの指定を返上したいと、東京都に申し出たそうです。

東京都の周産期母子医療センターの要件として、常勤医師2名体制の当直、ということがあったそうです。

ところが、医師の労働時間が労働基準法違反であると、労働基準監督署から指摘されたため、労働基準法を順守するためには、夜間の常勤医師当直2名体制が維持できなくなり、東京都の要件を満たせなくなったのだとか。

 

過去に労働基準監督署が医師の労働時間について、指導したなどと言うのはあまり聞いたことがありません。

愛育病院の先生方のコメントは、「倫理的・同義的に必要だと思ってやってきたのに、法律違反と言われてしまうと、もはやそのモチベーションは維持できない。」というような内容でした。

 

愛育病院の先生方の倫理観は素晴らしいと思います。 

しかし、私は、医師の労働問題について行政が動かなかったこと自体が問題だと思っているので、労働基準監督署の今回の指摘は、正しいと思っています。

 

労働基準法では、労働者を1週間あたり40時間、1日8時間を超えて労働させてはいけないことになっています。

でも、やむを得ず週40時間を超える労働をさせる場合には、労働者の過半数で組織する労働組合か、組合がない場合は従業員代表との間で、労使協定を結ばなければなりません。

労働基準法36条に規定されているので、その労使協定を三六協定(さぶろくきょうてい)と言うのです。

 

週40時間をどのくらいまで超えてよいか、は一応基準が示されています。

1カ月で45時間まで、1年で360時間までです。

でも、これも「法律」ではなく、あくまで労働大臣の「告示」のレベルだそうで、これを超える三六協定を結んでも、法律違反にはならないそうです。

 

さて、問題はここからです。

愛育病院が東京都の周産期センターの指定を返上しようとしていた時、厚生労働省が、労働基準法の「特別条項つき労使協定」と言う方法もある、と愛育病院に助言したというのです。

愛育病院側が、なんとかならないかと聞いたからなのか、東京都側が指定取り下げをやめさせようとしたのか、厚生労働省が積極的だったのかは定かではありません。

このことは、今朝の朝日新聞にのっています。

 

特別条項付き労使協定…

これは、特別の事情が生じたときに限定して、特別に時間外勤務をさらに伸ばすことができるという法律です。

その上限は、1カ月95時間、年6回までです。

これが非常に巧妙にできています。

 

1カ月45時間の残業をしたとします。でも、12ヶ月連続してしまうと540時間となり、1年の360時間までという上限を超えてしまいます。

だから、たとえ1カ月45時間の残業をしても、それを年がら年中させてはいけないことになっているのです。

 

では特別条項ではどうでしょうか。

95時間で6回まで、最大で年570時間までいけてしまいます。

この特別条項では、1年360時間までという決まりはないわけです。

 

サービス残業をなくすという意味では、少しは役に立つのかもしれませんが、なんとなく、経営者側のご都合が透けて見えるような法律です。

 

こういうものを持ち出して、特別条項つき労使協定を結んでまで周産期センターの機能を維持させようとする厚生労働省は、本気で医師の労働問題を改善しようという意識はないとしか思いようがありません。 

 

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