最近病気で入院していたAさんが、具合が悪そうなので一度面談をしてほしい、と職場から要請がありました。
Aさんの話では…
人間ドックで異常があったのに、あまり気にも留めずに放っておいた。
ある日お酒を飲んだ時に尋常でないほどおう吐して、病院に行ったら、「がん」だと告げられた。
手術では取れないので、化学療法になると言われて、専門の病院に入院した。
ということでした。
化学療法が終了して、退院後職場復帰したものの、やはり体調はあまりよくないようです。
毎日痛みとの闘いで、何を食べても味がしないし、もう体重が何キロも減ってしまったと…
「おいしい」とわかっている食べ物が、今おいしくないことがくやしい、とAさんは言いました。
お寿司の好きなAさんは、一度回転寿司屋に行ってみたそうです。
でも、お皿の上にのった2貫のお寿司のうち、1貫を一口かじっただけで、もうおいしくなくて食べるのをやめてしまったのだとか。
健康な時なら、何皿でも食べて帰るのに、たった一皿、しかも1貫残して店を後にした時はとてもみじめだった、とくやしそうにしていました。
いろんな話をしていて疲れないだろうかと心配したけれど、「こうしてしゃべっている方が、気が紛れていいんです。」とAさんは言いました。
Aさんは、仕事だけでなく、いろんなボランティア活動もしているそうで、残された短い時間では、あれもこれもやりのこしていくしかない、と無念さを隠しませんでした。
あれこれ話している中で、Aさんは、こんなエピソードを教えてくれました。
がんの専門病院に入院している時、女性部屋からは笑い声が聞こえてくる。
男性部屋の患者は、みんなカーテンを閉めて、ベッドの上にこもっているのに―。
「女性は強いね。」
そこに入院している人は、みな「がん」だとわかっているのに、女性はそれでも同じ病室の仲間としゃべったり笑ったりしていることに、つくづく女性の強さを感じた、とAさんは話してくれたのでした。
もっとAさんの話を聞いていたかったけれど、次の面談が待っていたので、Aさんとの面談を終了しました。
幸い職場の理解があって、仕事は体調に合わせて配慮してもらっているし、家族は昼間働きに出ていて、一人家にいると痛みばかりがおそってきていやになる、ということで、面談はしたけれど、結局正式な就業制限は行わないことにしました。
淡々と話をしてくれたAさんの胸の内は、表にあらわれているほど平穏ではないはずです。
たぶん、1分1秒が自分との戦いであり、懸命に耐えているのでしょう。
ただ、社会とのつながりをもっていることが、Aさんを支えているのかもしれないなあと思う面談でした。
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