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政治家や官僚の批判ばかりしているので、たまには自分自身を振り返ってみようと思います。

 

いえ、別に普段まったく反省しないわけではないのですが―。

時々ふとした拍子に外科医時代のことを思い出して、歳の割に精神年齢の未熟だった自分を振り返ります。

あのとき、こうしていれば―。

今頃そう思っても仕方のないことだけれど。

 

外科医になって3年目ぐらいのころ、そこそこ手も動くようになって、意欲満々の時期でした。

受け持っていた患者さんの中に、肺がんの方がおられました。

といっても、私自身が手術に立ち会ったわけではなく、何年か前にその病院で肺がんの手術を受けていて、再発で入院されてきた方でした。

正確にいえば、再発だったのか、転移だったのか、良く覚えていませんが、とにかくもう気管支がつまってしまいそうなレベルでした。

だから、入院の時点で、外科医としてはもうどうしてあげることもできず、「ターミナルケア」が目的の入院でした。

 

こういうとき、外科医は、複雑な思いになります。

確かに、その病院の外科で診てきた患者さんかもしれません。

しかし、すでに外科治療の段階は過ぎてしまっています。

それでも、まだ当時は、外科医が最後を看取るというのが珍しくない時代でした。

 

今なら、ターミナルケア病棟とか緩和病棟とか呼ばれる専門の病棟があって、ペインコントロールを中心とした専門スタッフがケアしていくのが当たり前になってきていると思います。

患者さんにとっても、そのほうがずっと、快適であるに違いありません。

 

その患者Aさんは、ベッドの頭の方を少し上げて、酸素吸入をしながら、苦しそうにしていました。

呼吸器外科専門の先輩から、肺がんの末期は、「水に溺れるように亡くなる」と教わっていました。

まさに、Aさんは、水に溺れているぐらい苦しかったに違いありません。

 

毎日毎日、奥さんが付き添っていました。

しょっちゅう痰がつまって、ご主人が苦しそうにするので、よくナースコールを鳴らしていました。

 

ある日、夜中にナースステーションでカルテを整理していた時のことです。

Aさんの奥さんが、直接ナースステーションに来られました。

看護師さんはみな、巡視で出払っており、私ひとりでした。

 

「先生…」

 

ああ、嫌な予感がしました。

こんな夜中に何を言われるのか…

今カルテを整理しておかないと…

 

「先生…」

「なんですか!!!」

「…あのう、主人の痰が詰まって苦しそうなので、吸引して頂きたいんですが…」

 

内心、うっとおしいなあと思いました。

私が今吸引したとて、痰はあとからあとから、次々とAさんの気管支をふさぐに決まっています。

でも、吸引器は患者さんのご家族に使っていただくわけにはいきません。

しぶしぶ、Aさんの病室へ行き、喀痰吸引をしました。

 

奥さんは、何度も何度も頭を下げて、申し訳なさそうにしました。

私の態度は、面倒くささがあからさまに出ていたと思います。

 

今から思えば、お恥ずかしい限りです。

 

忙しすぎた、

夜中だった、

 

言い訳すればいくつか出てはくるけれど、苦しい患者さんの喀痰吸引にかかる時間は、そんなに長くはありません。

 

あのときもっと、快く病室に行ってあげていれば、と思う苦い思い出です。

 

 

 

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