メタボリックシンドロームの診断基準について、異論が出ているようです。
大方の意見は、「厳しすぎるんじゃないか」。
厳しすぎる診断基準の結果、病院へ行く人が増えて医療費が増える、という理論です。
私はその意見には、あまり賛同できません。
そもそも、メタボリックシンドローム診断は、内蔵型肥満を中心に置いていて、そこからおこってくる高血糖や高血圧、高中性脂肪、低HDLコレステロール血症などを、内蔵脂肪を減らすことによって予防しよう、ということだと理解できるからです。
何も、数値が悪ければ即病院へ行って治療しなさい、と言っているのではないと思います。
健康診断などでハイリスクの人をスクリーニングし、運動不足とカロリーオーバーを解消することによって、そこから起きてくる可能性のある生活習慣病が予防できれば、さらにその先に起こるかもしれない動脈硬化性疾患を予防できるのだとしたら、それはそれで理にかなっていると思うのです。
実際、健康診断結果を見ていると、肥満がある人が一つ二つ生活習慣病にかかっていて、減量すると数値が正常化する人って結構います。
もちろん、肥満があっても他に異常のない人とか、やせていていも異常のある人とかいますが、それはメタボの範疇ではないのでしょう。
どちらかというと、体質的な背景が強いと考えられます。
あるいは、肥満以外の原因で起きていると理解できます。
ことさらメタボを強調するのは、このごろ過栄養で運動不足の人が増えてきているからです。
医学雑誌などで調べてみると、2005年に日本の医学系8学会が共同で基準作りをした、ということです。
一応、多くの専門家が出した結論に、2年もたたないうちに異論が出る、というのはどういうことでしょうか。
私は、批判の背景にあるのは、来年4月から始まる特定健診の混乱ぶりにあると見ています。
行政の側が、医療費を削減する意図をむき出しにして、啓蒙活動もすっとばして、突然いつの間にか法律ができていた、という感は否めません。
もっとうがった見方をすれば、日本人のまじめな健康志向を逆手にとって、やれトクホだなんだといって健康食品に目を向けさせて、健康食品業界を潤わせておいて医療費を減らそう、などという、行政と産業界の思惑が一致した結果だったりして…
メタボ診断は、健康で元気な生活をするために必要な考え方であるというスタンスであれば、そんなに反発する人も増えなかったんじゃないのかな。
私は産業医なので、労働者の健康診断という視点で整理してみます。
労働者が受ける健康診断は、労働安全衛生法で定められている一般定期健診と特殊健診があります。
特殊健診は、いろんな有害な業務に従事している人が受ける健診なので、ここでは触れないでおきましょう。
その一般定期健康診断が、事業主(会社)に義務付けられている健康診断です。
その健康診断でメタボが疑われた人は(BMI25以上・高血圧・血清脂質異常・高血糖が全部そろった場合)、労災保険法で定められた二次健康診断を「受けることができる」となっています。
「受けることができる。」というのがとってもあいまいで、本人が希望しないと受けなくてもよいのかな、という感じです。
いや、私は受けることを勧めてますが、この制度を知らない健診機関が多すぎて、いろいろトラブルがありました。
以上の二つに加えて―二次健診さえ、まだまだ軌道に乗っていないのに―、来年4月から特定健診が始まろうとしています。
健診内容は、会社で受ける健診と大きく変わりませんが、会社勤めの人に加えてその家族(健康保険の被保険者)まで対象になり、本人も家族も74歳まで面倒をみる制度。
そして、健診後の保健指導が目玉、なんだろうなあ。
この制度を決めているのは高齢者医療法。
しかし、受診の義務が明記されていないそうです。
当然、義務違反の罰則規定もなし。
健診を実施する責任は医療保険者(会社でいえば健保組合)。
ひとりの労働者という視点で見れば、 会社で受ける健康診断(労働安全衛生法)、その後の二次健診(労災保険法)、今度始まるらしい特定健診(高齢者医療法)、三つ巴であります。
結局、こういう行政の混乱が、批判の根っこにあるんじゃないですかねえ。
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