昨日は、ある会社のIさんと面談のある日でした。

Iさんは、うつ病をわずらってしばらく仕事を休んでいたのですが、ようやく出勤できるまでに回復し、数か月前に職場復帰を果たしています。

 

一時期体調を崩して業務時間を短縮していましたが、また通常勤務に戻してほしいとのことでした。

一番悪かった時に比べたら、ずいぶんと身体の調子はよくなったと思われましたが、心身共に健康な人と比べれば、やはりまだまだ、という感じです。

 

Iさんは、時々考え込みながら、話しはじめました。

「うつ病」というハンディキャップを抱えながら、これから生きていかなければならないという不安。

奥さんが共働きで、Iさん自身も仕事と家庭のはざまで悩んでいること。

かわいがっていた部下が自分から離れていってしまったことの孤独。

 

時々、Iさんの頑固さや、やや偏った考えが見え隠れするので、その都度交通整理しながら、Iさんの話に耳を傾けました。

Iさんをとりまく不安は、今すぐに解決できそうにはありませんでした。

また、そのことがIさんを耐えがたいほど追いつめているわけでもなさそうでした。

 

「あまり、考えても仕方がないのではないですか。急がずにそのままおいておきましょう。」

 

そういって、面談は終了しました。

Iさんの希望通り、就業時間は通常に戻すこととしました。

 

気がつくと、面談は2時間に及んでいました。

以前、他のうつ病の方から、私との面談はとても疲れるのだと指摘されたことがありました。

つい話にのめりこんで面談時間が長くなってしまうことが、かえって面談を受ける人にとって負担になることがある、とそのとき気づいたのでしたが、また同じことをしてしまったのかもしれません。

 

正直なところ、私には、Iさんの不安を取り除いてあげることはできません。ただひたすら、Iさんの話を聞いてあげることしかできないのです。

そんなことで、面談をする意味があるのかな、という疑問がないわけではありません。

唯一の救いは、Iさんが、部屋に入ってきたときよりも少し、表情が和らいだように見えた、ということでしょうか。

 

その後、会社の方と他のいくつかの問題について話し合い、会社を出た時には、あたりはとっぷり日が暮れていました。

見上げると、美しい中秋の名月が、こっちを見ていました。

 

私のやっていることは本当に役に立っているのだろうか。

お月さんを眺めながら、しみじみと、そんな思いにひたってしまいました。

産業医の職務は、病気を治したり、痛みをとってあげたり、というような、すぐに結果が出るようなものではありません。

結局、自己満足なのかもしれないなあ、ということを考えながら、帰路についたのでした。

 

 

 

 

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