2007.08.21 12:59 |  仕事 / 職場  |  生活 / くらし  |  その他(医療関連)  |  三毛猫  | 推薦数 : 1

残業

30歳の女性社員Eさんが、健康相談に来られました。

頭が痛い、ぼうっとする、おなかの調子が悪い・・・

身体のあちこち、調子が悪くてつらい、夜も眠れない、というのです。

すでに自分でいろいろな病院を受診していて、痛みどめや睡眠剤など処方してもらっていました。

担当の先生からは、ストレスも原因になっていると言われたそうですが、仕事を休むほどではないと助言をされたということでした。

 

Eさんは技術系の仕事をしていて、上昇志向の強い方です。休日もスキルアップのために勉強をしているために、心身の休養がとれていないようでした。

また、本人いわく、残業がとても多くていつも帰りが遅くなるとのこと。

 

産業医としては、やはりいったん休養を十分にとるために2週間でも仕事を休ませるべきだろうと思いました。このまま仕事をし続けても、ますます体調が悪くなる一方だと思われたからです。

Eさんは、他の社員に迷惑をかけてしまうことを心配し、また自分でなければできない仕事もあることを気にして、はじめは休むことを承諾してくれませんでした。上司も承諾してくれるはずがない、と。

でも、このまま無理をし続けて、うつ病などにかかったら、何か月も仕事を休まなければならなくなりますよ、と忠告をし、とりあえず1週間休むということで納得してもらいました。

 

ところが、です。

上司である課長さんをお呼びして状況を説明し、1週間休ませるようお話をしたところ、

「本人に過労になるほどの仕事はさせていない。」

とおっしゃるのです。

「ここで1週間も休まれたら仕事が進まなくなる。」

毎日どれくらい残業をしたかというデータも持ってこられました。確かに、数字上は目立った残業量ではないように見えました。1か月で45時間以内という数字です。数字で示された以上、仕事量が多すぎて過労になっている、と課長さんを説得することができません。

また、これまでも時々有給休暇をとって休んでいる、という事実も告げられました。

さらに、Eさんが自宅で勉強をしていることもご存じで、休日の過ごし方のほうに問題があるのではないか、とも言われました。

 

しかし、Eさんは実際に体調不良を訴えており、どういう理由があっても、休まなくてもよいという判断は、とてもできそうにありませんでした。

 

再度、Eさんと面談を行いました。

課長さんがもってきたデータでは、それほど残業が多くないことになっていて、少なくとも職場での仕事が原因で体調不良を起こすとは考えられない、と課長さんから説明を受けた、と率直にお話をしました。

おとなしい性格のEさんが、そのときばかりは、ちょっときついまなざしで私をみて、

「残業しても、全部は申告しないようにしているんです。」

と言うのです。

なぜ書けないのかについては、組合と会社との労働協約がある以上、それを超える数字を書きにくい、あまり残業数が多いと、自分に能力がないと判断されてしまう、などいくつか理由があるようでした。

 

私の説得力不足もあって、Eさんにはとてもかわいそうなことになりましたが、3日間の自宅療養と土日を入れて計5日、何とか休んでもらうことになりました。

Eさんには、自宅での勉強を控えるよう十分に注意をし、5日間の休養後は、少し回復したようでした。

 

この件では、いくつかの問題点がありました。

仕事量と労働者の能力のバランス・・

有給休暇と残業・・

上司と部下の信頼関係・・

 

上司は残業するほどの仕事を与えていると思っていなくても、部下にとっては息切れしそうなほどの仕事量として感じて毎日残業している場合、それは残業として認めるのでしょうか、認めないのでしょうか。

 

与えられた有給休暇を目いっぱい使っていながら、出勤してきた時には残業している場合、それも残業として認められるのでしょうか、認められないのでしょうか。

 

Eさんの場合は、能力が足りないというよりは仕事量が多すぎると私は判断しましたが、課長さんはそうではありませんでした。

 

産業医は、社員さんがどのような仕事をしているのか、頭ではわかっていても、仕事量の多い少ないや、質的な評価をすることには困難なことが少なからずあります。

そのため、Eさんのように明らかに休ませなければならないケースが発生したときに、会社側に問題があるのか社員の自己責任なのか、双方の意見が対立することがあって、大変困惑することがあります。

あまり強引に会社側の問題としてしまうと、かえって社員さんのほうの立場を悪くしてしまうこともあり、舵取りを間違えると、最後は感情のもつれに発展してしまうことさえあります。

 

病院では、患者さんの病気を治すことが医療従事者の唯一の共通目標でありえたのですが、産業医になって、様々な事情を加味しつつ判断していかなければならないことが多く、ある意味妥協の連続であり、時々気が滅入ります。

 

 

 

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