2007.07.26 12:30 |  診療  |  医療制度 / 行政  |  仕事 / 職場  |  三毛猫  | 推薦数 : 4

アメリカが良いのか。

10年も前の話です。

大学医局の大先輩に、アメリカで小児外科の教授をしている人がいました。そのころ勤めていたこども病院の小児外科グループ内ではカリスマのような存在でした。

ある日、その大先生が講演会をなさることになり、その前に読んでおくべき本、ということで、大先生ご執筆の御本を購入しました。

 

小児外科医をめざしていた私でしたから、読みたくて買ったわけでした。しかし・・・

途中で、もういやになって、やめてしまいました。

なぜって・・・

はじめから終りまで(・・途中でやめたので、終りまでかどうかは実はわかりませんが)、アメリカの医学教育がいかにスバラシイかを、アメリカの医学部がいかに合理的かを、説いているわけです。

そして、日本を飛び出してよかった、自分はアメリカという新天地で成功したんだと、誇らしげに書いてあるわけです。

日本なんかに残ってたら、まともな医者になれませんよ、といわれているような気すらしてきました。

 

大先生が病気をもつ子供たちのために、腕をふるっている様はよくわかるのですが・・

確かに医者は力がつくのかもしれないけど・・

アメリカに行けない私は、大先生のおっしゃる恵まれない日本で医者をするしかないのですよ・・

そんな気分にさせられる内容でした。

 

さて、講演会の日。

スライドを使ってアメリカでの小児外科医療を語る大先生。

気になったのは・・

アメリカでは入院すると、まず病院のクラークさんが来て(医師や看護師ではなく!)、

「あなたの入っている医療保険では、ここまでの医療しか受けられませんよ。」

と言うのだとか。そうして、あらかじめ作られた治療計画にのっとって治療が始まる、ということでした。

 

ある貧しい家庭のこどもが大学病院に入院してきた、

そのこどもの両親は医療保険に入っておらず、

治療には難しい手術が必要だったので、

大先生は大学の研究費を使って手術を施し、

その子は元気になって退院し、

お母さんからは、大変感謝された。

 

そういう美談も、紹介されました。

 

新自由主義の小泉政権以降、日本は最終的にはアメリカ型の医療制度をめざしているような気がします。

つまりそれは、患者の支払い能力に合わせた治療をするということであり、医療はあくまで商品、ということになる。

お金のある人は高い商品を買うことができ、お金のない人は支払うことのできる額の商品を選ぶ(・・安物でも我慢する?)ということになるのでしょうか。

 

そういう医療制度にしたほうが、医師に対して必要な給与と正しい労働条件が確保される、と言っていた仲間の医師もいました。

 

いやいや、その前に政府はもう大喜びでしょう。

だって、国民皆保険制度をやめてアメリカ式にしたとたんに、

医師不足や医師偏在の問題も、

財政難の問題も(・・本当に財政難なのかは疑ってみる必要はありそうですが)、

一気に解消してしまうではありませんか。きっと、政府はそういう誘惑にかられているんじゃないか、と私は勘ぐっています。

 

でも、私は、日本的と揶揄されようが、国民皆保険制度を堅持してほしいと思うのです。

情けないことに、その理由は理路整然と答えられません。頭の中があっちをたてればこっちが立たず、のような状態になって、湯気が出そうになってしまいます・・

 

ただ、あの大先生の著書を読んだ時の「嫌悪感」が忘れられない。

とても直観的ですけれど、アメリカ的医療従事者には、私はなりたくないのです。

(アメリカで真面目に医療をされている先生方、ごめんなさい。)

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