比較的小規模の会社でも、ISO取得、というのが当たり前のようになりました。中でも、ISO9000シリーズ(品質ISO)、ISO14000シリーズ(環境ISO)というのは、私が産業医をしている事業所でもこぞって取得されています。
今や環境問題に関心を持ち、環境に配慮することが会社のステータスになっています。
でも、ちょっと疑問に思うことがあります。
たとえば・・・ ある金属部品工場での話です。
社員が工場内でひどい騒音にさらされていているのに、こちらが耳栓着用を一生懸命説得してもなかなか着用率が上がらない上に、会社のほうでも設備投資で騒音削減の努力をしてくれることはありませんでした。社員のために環境を整備する、という動きは非常に緩慢です。いつも、「そんなお金はない。」と言われておしまいです。場合によっては、
「社員にお給料が払えなくなってしまう。」
「ボーナス、出せなくなってもいいの?」
などと、脅迫めいた話も飛び出します。
ある日、ひどい騒音を発生させていたある工程が全面中止となりました。工場近くの土地が宅地造成されることになり、工場周辺の騒音が問題になるから、でした。
「えっ、社員のためじゃないの?・・・」
思わず私の口から出た言葉です。
もちろん、工場周辺の住民への配慮は当たり前のことで、騒音削減の努力は必要です。でも、今まで社員がさらされてきた騒音には全く手をつけず、環境問題に発展しそうになったとたんに、製造工程まで変更するなんて。
環境ISOでは、工場周辺の騒音測定を行います。極端な話、工場内でどんなにひどい騒音が発生していても、敷地と外部との境界での騒音が基準値以下なら、問題になりません。
労働環境は、労働安全衛生法によって規制されており、平成4年には快適職場づくりについての指針が、旧労働省から出されています。
でも、努力義務の色合いが強く、快適職場作りに尽力したからといって、会社のブランド力にはならないのです。
最近では病院も病院評価機構の認定を取ることが、一種のブランドになっています。病院経営者は外部監査の入る日にはかなり神経をとがらせているようです。
しかし、病院評価機構の認定が下りたからといって、労働条件や労働環境がよくなった、という実感のないところがほとんどだろうと思います。
むしろ私は、労働者が気持ちよく働けるほうが、結果的に、良い製品づくり、よいサービス提供につながるのではないか、と思うことが多いです。
工場の入り口に、
「ISO14000取得」
と誇らしげに掲げてあるのを見て、複雑な気持ちになります。
病院のホームページに、
「病院評価機構認定施設」
などと表記されていると、むなしい気持になります。
その向こう側で働く人たちの姿は、そこからはうかがい知ることはできません。
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