派遣労働者のCさんは、30代男性の働き盛り。
定期健康診断で胸部レントゲン検査に異常所見が見つかりました。
「大動脈拡大」
という所見でした。
精密検査が必要、ということで、派遣会社のマネージャーさんを通じて、Cさんに循環器科あての紹介状をおわたししました。派遣労働者の多くは、紹介状をわたしても医療機関をなかなか受診してくれない人が多い中、Cさんは比較的早めに総合病院の循環器内科を受診してくれました。
しかし、そこで行われた精密検査で、解離性大動脈瘤が見つかってしまいました。すぐに手術を要しないが、自宅での安静が必要と判断され、その日から仕事を休まなければならなくなったのです。
大血管が裂けているというのに、本人は自覚症状らしいものがなかったそうです。
それまで何事も起きなかったことが不幸中の幸いでしたが、Cさんの仕事は工場内での肉体労働ですから、仕事中に血圧が上がって動脈が破裂してしまったら命取りになるので、主治医からドクターストップがかかってしまいました。
マネージャーさんに、デスクワークのような肉体労働でない仕事はないものだろうか、と相談してみましたが、工場での肉体労働の経験しかないCさんは、パソコンが上手に使えず、デスクワークをするスキルがないから難しい、というお返事。また、派遣先の工場では、デスクワークの仕事は回ってこないということでした。
結局Cさんは、その派遣会社を辞めてしまいました。
病気が早くみつかったので、破裂して大出血をして命の危険にさらされるよりはよかったのだ、と私としては思いたいのですが、結果的にCさんは職を失うことになりました。正社員なら、病気休暇が認められて、治療が終わったらまた復職も可能です。病状によって、仕事の内容を軽減したり配置換えをしたりすることもできます。でも、派遣社員はそうはいきません。
とても複雑な気持ちでした。
ある派遣労働者は、50代になって、迫ってくる「老い」と「病」に将来を悲観し、社員寮で首をつって自殺をしたそうです。
厳しい見方をする人は、「自ら望んで派遣社員になったのだから、それは自己責任だ。」と言います。
一方で、再チャレンジというけれど、「年齢」は確実にハンディキャップになります。だから、ある程度歳をとってしまうと、再チャレンジの機会さえ得られないこともあります。
これから社会に出ていく人たちには、今無縁に思えるかもしれない「老い」というものが、すべての人に平等に訪れるということを、どうかわかってほしい、と思います。
もしかしたらCさんのように、働き盛りの年齢で、病に倒れてしまうこともある、ということも。
そして、今や日本の産業を下支えする労働力になっている、そのような派遣労働者のセーフティネットを、会社の経営者にも政治家の方々にも、考えてもらいたいのです。
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