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ここんところ集中治療医学会に出席していたため忙しく更新が遅れてすみませんでした。

 

久々に読み物風です。 

 

 ある日、休日当直をしているといつもはあまり搬送してこない救急隊からの要請。

「72歳女性、腹部膨満感と下腹部痛です。意識清明、血圧は140の80脈拍86、SpO2は97%です。収容よろしいですか?」

と切迫した救急隊の後ろから、

「ウー、痛い!!」という女性の声や

「早く何とかしろ!」

という興奮した男性の声がしました。

 

 現場は切迫しているな、と思う反面、何にかもめてるんじゃないか?と言う懸念がいろいろ交錯しましたが、

 「すぐに来てください!」と反射的に返事をしていまいながらも、一抹の不安がありました。 

さて、救急車が到着してみると、70台後半と見られるおじいさんが飛び降りて来て、

「早くなんとかしてくれよ、どこの病院も断りやがるんだよ!」とまくしたててきました。

分かりました、診させてもらいますから受付を済ませてください。」で、患者さんは?と振り返って診ると

「うー、ウンチが・・、ウーンお腹が痛い!」をおばあさんが繰り返すのみです。何かおかしいな?と思っていたら、救急隊員より

「ここのところ毎日、1日に3、4回同じような要請があり周辺の病院から断られちゃって困っていたんです。」

 

 ありゃー、こりゃ大変だ。と思いつつ診察を始めました。しかし、所見らしい所見はなく念のためレントゲンを撮って診たところ、便がたまっている様子はなくそのままを本人とおじいさんに伝えたところ・・・

「こんなに苦しがっているのはなぜだ!もう何日もろくに食べてないんだぞ。」

「今言えることは、少なくとも便は溜まっていないという事だけです。」

 あんまりのけんまくでおじいさんが食ってかかってくるので、ちょっと突っ慳貪に言ってみました。そうすると、突然おじいさんが。

「便がないことは分かってる、それはもうどこの病院でも言われてるんだ。でも、このまま帰ると家に帰ってからばぁさんが大変なんだ。」

「どういう風に大変なんです?」

「便が便がと言ってトイレに籠もりっぱなしなんだ。でも病院で浣腸をしてもらうと、その日一日は落ち着くんだよ。」

「便がないのに浣腸はねえぇ、身体には負担なんですよ。」

「助けると思って頼むよ!」

「じゃぁ赤ちゃんと同じ量を使いましょう。」

「助かるよ、恩に着るよ。」

 

案の定反応はなかったものの、おばあさんは落ち着きそれと共におじいさんも落ち着きました。

「家族は他にいらっしゃらないのですか?」 

 あまりに思い詰めていたのでつい聞いてみると、息子さんは横浜と仙台、娘さんは大阪と遠方にいるため、老夫婦二人で暮らしているとか。3年前から痴呆症状が出て来たとのこと。

「おばあさんのウンチ騒ぎは、ウンチが出ると心で感じ取っているものと考えられます。一度心の糸をほぐすという意味で、精神科を受診してはいかがですか?」

と言うと、おじいさんが見る見るうちに顔を真っ赤にして急に怒り始めました。

「うちのばあさんは、そこまで狂ってない!」

「狂ってるとかそんな意味ではなく、心のもやを解きほぐしてくれる専門家という意味です。」

「・・・でも・・・」

「紹介状を書きますから、家族の人と相談した上で決められたらいかがですか?」

「うーん、じゃあ頼むよ。」

 紹介状を持って帰っていただきましたが受診したかどうか、ただその後、当院に受診もなく、また搬送して来た救急隊に尋ねたところその後要請はないとのこと。まぁ、解ってくれたものと思っていました。

 

  半年くらいたって、内科外来で

「アレ見たことある名前?」と思っていたら、例の便秘で苦しんでいたおばあさんでした。風邪引いたとのこと、診察・投薬後に、 

「お通じいかがですか?」

「その節はどうも、今はすっかり調子がいいです。」

「受診されたのですか?」

「あの後、子供たちと相談し、受診して、薬をもらって落ち着きました。ついでに私もカウンセリングしてくれて、どうも年寄り二人で煮詰まってたようです。迷惑かけてすみませんでした。」

「とんでもない、落ち着いて良かったですね。」 正直ほっとしました。

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