第9回福山地区感染症制御研究会
【一般演題】
「新型インフルエンザに対するF医療センターの対応」
F医療センター皮膚科医長 S先生
【特別講演】
「感染症クライシス~新興・再興感染症の脅威にいかに対応していくべきか~」
T大学大学院医学系研究科感染制御・検査診断学分野教授 K先生
素晴らしいご講演でした。
参考:過去のK先生のご講演
2005年1月27日 http://www2.diary.ne.jp/logdisp.cgi?user=72095&log=20050127
2006年9月13日 http://blog.m3.com/magic/20060918/1
2008年2月4日 http://blog.m3.com/magic/20080204/1
本日の特別講演の内容は、
WHOの警告(1996年)
「我々は今や地球規模で感染症による危機に瀕している。もはやどの国も安全ではない」
読売新聞平成15年3月17日の記事
「ナゾの肺炎」(SARS)
猛威を振うSARS
(子供達全員がマスクを付けている写真)
WHO(WPRO)の対応
AIR CRAFT ASSOCIATED SARS
機内で、14人が感染
医療従事者への感染伝播拡大
院内感染、職業感染の率
シンガポール:75,2%、41%
香港 62%、22%
カナダ 51%、43%
感染症クライシス:感染症の脅威
○I.新型インフルエンザの現時点での総括
1)疫学的特長
新型インフルエンザの発生
インフルンエンザウイルスA(H1N1)
4月28日 WHO Phase4宣言
WHOによるパンデミック宣言
2009年6月11日
香港かぜ以来、41年ぶりとなるパンデミックインフルエンザ
パンデミック(世界的大流行)
↓
世界的な危機
日本でのインフルエンザの流行曲線
7月終わりから増加し、10、11月で急激に増加
2010年2~3月
現時点で、世界的な流行はほとんどみられなくなっている。
北アフリカ、南アジアでは流行続いているが、その他の国々では、大きな流行はみられなくなっている。
世界各国での感染者は、おおむね15%程度とみられる
世界各国での被害状況は異なっている
世界における新型・季節性インフルエンザの状況
・2009年11月の段階
→ほとんど新型(中国では、季節性が少しある。)
2010年1月の段階
→日本、ヨーロッパは、ほとんどが新型
アメリカ、カナダでは、一部にB型
中国では、B型が、新型よりも多い。A型も。
現時点では、ウイルスの変異はほとんどない。
日本(2月10日現在)
約2028万人以上が感染したと推計されている。(15%程度)
感染者の年齢
若年者の感染例が多く、高齢者は少ない。
高齢者が少ない理由
現時点では、はっきりとした理由はわかっていない。
高齢者は、若年者に比べ、これまでの感染による感染防御免疫のメモリーの蓄積があるためか。
細胞性免疫の関与か(新型とAソ連型との共通性あり。)
日本の患者の年齢層
5~9歳が最多、小学生中心の流行
感染性、伝播性:感染性は、通常のインフルエンザよりも、やや高いと考えられている。
Ro:1人から何人に感染するか
季節性1.3人
新型 1.2-1.8人(日本2-3人)
家族内二次感染発生率は、7~13%
病原性について
新型インフルエンザの病原性は、中等度
症例死亡率
スペインかぜ 1~2% 5%
アジアかぜ 0.5% (日本は、0.09~0.12%)
季節性インフルエンザ 0.05~0.1%
新型インフルエンザ 7/6時点 0.45% 7/27時点 0.61%
世界全体としては、スペインかぜほどではなく、アジアかぜ程度
実際には、大多数のヒトでは、季節性インフルエンザ程度
重症化する例がみられる
健康な比較的若いヒト(成壮年を含め)にも。
ウイルス性肺炎による急激な悪化の可能性
季節性と新型の死亡者の年齢分布
季節性:高齢者に多い
新型:年齢層が違う
重症患者の疫学
新型インフルエンザによる人口100万人あたりの死亡者数
日本0.2
カナダ2.8
イギリス2.2
アメリカ3.3
アルゼンチン14
日本(~2009.12.6)
年齢が上昇するに従い、死亡率は高くなる。
高齢者で基礎疾患を持ってる人
基礎疾患を持たない青壮年も
まとめ
若年者に多い
感染性やや高い
大多数は、季節性と同程度で、ほとんど重症化しない
基礎疾患ある人、妊婦では、重症化の可能性も
基礎疾患ない人でも重症化することあり
2)危機管理対応
1.感染拡大防止
WHO:標準予防策+飛沫感染対策
手洗い+咳エチケット、サージカルマスクの着用
消毒剤使用機会の増加
医療機関だけでなく、ホテル等にも消毒剤を設置
→手洗いするコンプライアンスが上昇
市民・企業の感染症対策への関心の高まり
医療施設における呼吸器衛生、咳エチケット
呼吸器系ウイルス感染の防止に総合的な対策は有用
1日10回以上の手洗い
マスク、手袋の着用
パキスタンカラチ
石鹸による手洗いが、急性呼吸器疾患、膿か疹、下痢の発生率を低減させる
→呼吸器感染症における手洗いの効果
手洗いは肺炎の予防効果あり。呼吸器感染症だけでなく、下痢や膿か疹も減少
新型インフルエンザ対策の波及効果
→12の感染症が激減
2.重症化阻止
死亡率と抗ウイルス薬投与の関連
重症例では、抗ウイルス薬の投与が遅れていることが多い
アメリカ死亡症例
抗ウイルス薬を投与されていないか、発症8日目以降の投与
→抗インフルエンザ薬の投与の有無、開始の時期が予後に関係していると考えられる。
抗インフルエンザ薬は、重症化防止に有効
抗ウイルス薬の早期投与が必要→タミフル早期に
マクロライド薬の有用性に注目
インフルエンザの重症化阻止における有用性
局所免疫を上げる、過剰な炎症の軽減
肺炎球菌ワクチンの重要性
二次性細菌性肺炎への抗菌薬使用
インフルンエンザによる重症化と細菌感染の関連
29%に細菌感染、特に肺炎球菌
スペインかぜの死亡原因
原因のほとんど(96%)は、二次性の細菌性肺炎が原因
積極的な抗菌化学療法を
3.医療体制
医療現場の混乱(発熱外来)
新型インフルエンザ対応
2009年6月19日 全医療機関で対応
パンデミック時の地域の医療体制
役割分担が必要
地域医療圏での、役割分担、連携協力
・軽症インフルエンザ(初期対応)への対応
・重症インフルエンザの入院診療を担当
・非インフルエンザの診療を担当
日本の対策の評価
入院率0.1%以下
致死率0.0007%(16万人に1人)
参考(他国の致死率)
香港0.005%
シンガポール0.006%
アメリカ0.007%
→日本は、世界的にみても、極めて低い致死率
○Ⅱ.新興・再興感染症に対する危機管理対応の課題
危機管理対応の課題
1.サプライ体制・対応施設の充足
確実なサプライ体制の構築
治療薬剤:抗ウイルス薬、抗菌薬
PPE(個人防護器具):手袋、マスク、ガウン、エプロン、ゴーグル、フェイスシールド
消毒薬:ヒビテンアルコール
香港Princess Margaret Hospital
1220床、感染症専門病棟、17階建
陰圧室 108ベット
香港の人口800万人に対し、日本は、1億2750万人
→日本では、同規模の施設が15棟必要。
今後、感染症専門施設の増設、現存の医療施設のハード面での改築が必要
2.危機管理インテリジェントネットワークの構築
感染症危機管理インテリジェントネットワーク
1.情報の収集と共有化
2.情報の解析と判断(決断)
3.連携協力の実施
感染症情報の共有化
→初期対応として非常に必要
症例:髄膜炎菌の皮膚感染
Webによる情報の共有化
最新情報の入手・共有化が不可欠
仙台方式
仙台市医師会、仙台市、東北大学の連携
新型インフルエンザ研修会の開催
スペインかぜの時代とは違うことを認識して、できるかぎりリスクを下げることを目指す
発熱外来構想は間違っているという認識
軽症インフルエンザを診療所で診る。
100%防げない
リスク軽減という考え方
感染症診療地域連携
感染症は全ての壁を越える
社会全体の危機
社会からの差別、圧力から、弱者を守ることが必要
東北感染症危機管理ネットワーク
http://www.tohoku-icnet.ac/ 社会全体の感染症危機管理
→感染症危機関連インテリジェントネットワークこそが、一番のワクチン