19時半よりTVシンポジウム
テーマ
嚥下性肺炎の予防と治療のニューパラダイム
ー口腔ケアと抗菌薬を使わない肺炎治療の重要性ー
T大学医学部付属病院老年病科講師 T先生
肺炎は、日本人の死亡原因の第4位だが、65歳以上に限れば第1位。
高齢者の肺炎をみたら、誤嚥性肺炎と考える。
胃管を入れても、不顕性誤嚥は起こる。(誤嚥対策ではない。)
管を減らすほど良い。不顕性誤嚥対策が必須。
誤嚥性肺炎は、脳卒中後に生じる意識障害、あるいは上気道反射の低下に伴う嚥下障害を背景に起こる。
脳卒中後の急性期~亜急性期では意識障害が著明のため、誤嚥が明らかな「顕性誤嚥」によるものが多いが、慢性期になると、脳神経機能、全身機能、上気道反射の低下が全面に現われ、知らないうちに誤嚥を来す「不顕性誤嚥」による肺炎が増加する。
誤嚥性肺炎の問題点
1)診断基準がない
2)日本の研究が最も進んでいる。(教科書の不在)
3)誤嚥性肺炎のリスクを調べる検査法がない。
嚥下性肺疾患の診断と治療(嚥下性肺疾患研究班)
嚥下性肺疾患の概念と分類
概念:嚥下機能障害によって発症した肺疾患
分類
嚥下性肺炎
VAP(人工呼吸器関連肺炎)
メンデルソン症候群
びまん性嚥下性細気管支炎(DAB)
診断フローチャート
Leopoldの摂食・嚥下機能の分類
↓
摂食・嚥下リハビリ⇔顕性誤嚥対策
↓
嚥下・呼吸のリハビリ⇔不顕性誤嚥対策(肺炎を起こさせない対策)
嚥下機能の評価には、VF検査が行われているが、この検査は、嚥下障害の部位やメカニズムを評価するもので、誤嚥性肺炎のリスク検査ではない。
感度が高すぎて、摂食可能な患者までも食事を止められてしまう可能性がある。
VFをたくさんやっても、肺炎は減りません。
座って行う検査では、寝ている間の嚥下機能異常はわかりません。
簡易嚥下誘発試験ー東大法(STS-SPT)
咽頭まで挿入した小児用鼻腔チューブ(5Fr)を介して, 仰臥位でまず,蒸留水または5%グルコース液を0.4mL注入する。(第1段階)
・0.4mlで3秒以内に嚥下反応が認められれば正常と判断し、経口摂取開始。
3秒を超えても嚥下反応がなければ,第2段階として蒸留水または5%グルコース液を2mL注入し, 嚥下反応の有無を観察。
・2mlで嚥下反応が認められれば、軽度の嚥下障害ありと判断し、 嚥下リハビリを開始。
・2mlでも嚥下反応が認められない場合は嚥下機能が異常であり、ほぼ間違いなく不顕性誤嚥を起こしていると考える。
S-SPTを用いると,第1段階の試験により感度100%, 特異度83%, 第2段階の試験により感度76%, 特異度100%で嚥下性肺炎を検出できる。
夜間は嚥下反射が低下しやすく、不顕性誤嚥が恒常的に起こっている→高齢者の誤嚥性肺炎は夜作られる→予防が大切
食事のときの誤嚥を減らす。
ただし、これだけでは、肺炎の発症は防げないことが多い。
→不顕性誤嚥が肺炎の発症に関して重要である証拠
誤嚥を完全にゼロにすることは不可能
良い誤嚥↑→誤嚥性肺炎↓
誤嚥しても、誤嚥の中身を良くすればよい。
食事以外の不顕性誤嚥の中身を改善する→口腔ケア
なぜ口腔ケアは、肺炎発症を減らすのか
→肺炎が不顕性で起こるからです。
口腔ケアは、誤嚥を良い誤嚥にする。
現状の嚥下リハは、顕性誤嚥対策である。
誤嚥性肺炎の診断が遅れる理由
→診断の遅れが、難治化、重症化を招く
発症からの時間経過
・通常の肺炎:24~72時間であっという間に悪くなる。
・誤嚥性肺炎:7~21日。不顕性誤嚥がゆっくりと肺炎まで育つ。
すべての高齢者を肺炎予備軍と位置付け、常に肺炎の可能性を念頭に。
→どのタイミングで胸部X線を撮るか
誤嚥性肺炎の治療は、クリンダマイシン、カルバペネムの併用と勘違い
高齢者の誤嚥性肺炎であると疑ったら、起因菌の第1位は、肺炎球菌。
寝たきり高齢者の肺炎球菌ワクチンの入院減少効果
誤嚥性肺炎の初期治療レジメは、
アンピシリン・スルバクタム(ユナシンS)6g/日
アンピシリン・スルバクタムだけで肺炎球菌はもとより、嫌気性菌にも十分対応できる。
ユナシンSが効かなかった場合、嫌気性菌以外の菌、病原体による感染症と考えたほうが良い。
誤嚥性肺炎の治療は、ユナシンS単独でよいのか
→全く問題ございません。
肺炎は、ペニシリンの原則に戻るべき。
抗菌薬を使わない誤嚥性肺炎の治療の早期導入はもっと重要
治療したのに、経過中にまた悪化した
↓
治療中に続発肺炎に通ずる誤嚥を繰り返している可能性が高い。
(特に、脳卒中直後は必発)
抗菌薬で治療中から,誤嚥予防を図る必要が高い
抗菌薬を使わない誤嚥性肺炎の治療
→誤嚥内容物の改善(不顕性誤嚥起こしても肺炎にならないように)
1)口腔内細菌叢の改善
・口腔内清拭(うがい、歯磨き)
・嚥下リハビリ
2)恒常的な不顕性誤嚥の減少
・ACE-I
・プレタール
3)ベッドアップ(20度以上)
なぜ、口腔ケア、嚥下リハが、肺炎予防に有効なのか
1)誤嚥の予防と減少
顕性誤嚥だけでなく、不顕性誤嚥も作らない
2)誤嚥内容物の改善
不顕性誤嚥を起こしても、肺炎にならないようにする。
誤嚥性肺炎は、脳血管障害を背景とする全身性疾患
→誤嚥性肺炎をなくそう
高齢者は肺炎予備軍として、診療にあたる
誤嚥性肺炎の発症メカニズム
→単純ではない。たくさんの要因がある。
不顕性誤嚥は、すべての高齢者に
脳卒中後は特にひどい
悪い不顕性誤嚥を減らす→予防になる
肺炎を予防する誤嚥対策
1)不顕性誤嚥対策
2)顕性誤嚥対策
とても有意義でした。
参考:過去の先生のご講演
http://www2.diary.ne.jp/logdisp.cgi?user=72095&log=20050112 http://www2.diary.ne.jp/logdisp.cgi?user=72095&log=20041125