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< 「公共事業のムダ省け」では埒が明かず(下... | メイン | 「負担増に向けた戦略を早急に立てよ」(下... >

 財政再建も重要だが、まずは医療・介護、さらには教育の再建を進め、若い人が便益を受ける形にする。「安心して生活できる社会」を作り、消費税・社会保険料率引き上げなどの負担増に対する理解をいかに得るか。その戦略を立てることが今、求められている――。これが、虎の門病院・小松秀樹氏と慶應大・権丈善一氏の対談の結論だ。 

◆m3.com「医療維新」のURL
http://www.m3.com/tools/IryoIshin/080623_1.html

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医療再生にはなぜ負担増が必要か◆Vol.7

 ――どんな財源を医療費に充てる場合でも、国民の理解を得るためには「見積書」が必要になると。

 権丈
 「公共事業から持ってくるべき」という意見を否定するわけではありません。持ってくることができれば、それに越したことはありません。

 医療費に占める租税の割合は約35%、保険料が約50%。高齢者医療制度では国庫負担の割合が大きいので、高齢化の進展に伴い、租税部分が増えていきます。したがって、租税と社会保険料の両方を増やさざるを得なくなります。

 消費税は社会保障に不向き、医療費も不向きという方もいらっしゃいますが、今の社会保障、医療はかなり消費税に依存しています。まず、消費税5%のうち、1%が地方消費税として地方に行くことが決まっていて、残る4%のうち0.295の割合が地方交付税に使われます。つまり、「1%+4%×0.295=2.18%」は地方に行くことが既に決まっています。

  5%の消費税のうち国税分、つまり2.82%(5%―2.18%)は高齢者三経費――介護、高齢者医療、基礎年金――に充てられることが決まっています。要するに消費税の国税分は、今でも社会保障目的税なんですね。高齢者三経費は、2007年度では12.8兆円、2008年度には自然増0.5兆円を上乗せして13.3兆円が見込まれています。しかし、国税分の消費税で三経費を賄っている割合は、6割を下回っています。消費税の国税分は高齢者三経費に使うべしというルールが予算総則に明記された1999年には、高齢者三経費が賄われる率は8割以上ありました。

 

 ――その賄い率を上げるためには、消費税の引き上げが必要になると。

 権丈
 高齢者三経費を賄うための消費税の引き上げは、財務、厚労双方の利害が共通する側面だと思います。ですから、次の税制改革で増税路線が選択されるとなれば――これ自体が難しいところですけど――、かなり高い確率で起こり得る事態と予測されます。2007年度予算では、三経費12.8兆円のうち、実際に消費税で賄っているのは7.5兆円でした。残りの5.3兆円は消費税国税分以外の一般税収、もしくは赤字国債で賄っているわけです。

 例えば、「高齢者三経費をすべて消費税で賄う」と決めるとします。実は2009年度は基礎年金への国庫負担引上げで新たに2.3兆円、消費税1%弱が必要になります。これが今年度中に抜本的な税制改革を避けがたいものにしているわけです。そこにさらに高齢者医療、介護の自然増もあるでしょう。となれば、来年度は、いまの高齢者三経費と消費税国税分との間のスキマ5.3兆円に基礎年金分2.3兆円と昨年度と同様の自然増0.5兆円ほどを加えた8兆円強が、高齢者三経費と消費税国税分のスキマとして計上されます。このスキマ8兆円強を消費税で賄うためには3%程度の税率が必要になります。ここで消費税率3%の増税をすると、これまで高齢者三経費に使われていた一般税収8兆円ほどが浮くことになる。この浮いた額のいくぶんかを医療に持ってくることができないか。おそらくこういう流れで医療の財源調達問題を考えていくことになると思います。

 とはいえ、8兆円のすべてを医療費に充当することはできないでしょう。一般会計の公債依存度が30%強なのですから、8兆円のうち2.5兆円ほどは国債発行の抑制に使いたいという理屈は十分に説得力を持ちます。

 さらに疲弊した教育は教育振興基本計画の下、文部科学省がGDPに占める公的教育費の割合をOECD加盟国平均の5%にする必要、そのためには7.4兆円ほどの財源が必要との見積書の作成を進めています。少子化対策も昨年2月に開始された「“子どもと家族を応援する日本”重点戦略検討会議」が、昨年12月に最低でも1.5兆円、できれば2.4兆円が必要という見積書を報告書として提出しています。さらに目も当てられないくらいに衰退している地方の結束の固さは、道路特定財源の時に見た通りですし、彼ら地方は、消費税の新たな増税分がなぜ国税にすべて使われ地方分が無視されたのかという姿勢を示すでしょう。また、今はやりの地球温暖化対策に使えという議論すら出てくるかもしれない。

 となれば、高齢者三経費を消費税で賄うために上げた3%の消費税で浮いた財源で、医療にいくら回ってくることになると考えられるか。今のような財源獲得への準備不足、負担増への断固反対姿勢では、望みはかなり薄いでしょう。さらに言えば消費税増税反対を唱える人の多い医療関係者の政治力が何かの拍子で高まりでもしたら、高齢者三経費を賄うための消費税引上げの段階で阻止されてしまう恐れもある。さらにここで、望みの綱となる社会保険料の引き上げさえも否定してしまえば、医療財源調達の将来には希望は持てません。

 もっとも、高齢者三経費は年々増加します。それとともに消費税率をさらに引き上げたりするなどの仕組みを導入しないと、将来的には対応できなくなります。

 小松 そもそもEU(欧州連合)では、「消費税は15%未満」の国は加盟できないことになっています。近代国家として社会保障を維持するためにも、消費税はこの程度が必要だということです。

 権丈 もちろん、プライマリー・バランスを黒字にする、財政再建を進めることは必要です。しかしそれも、社会保障関係費2200億円の削減ではなく、負担増で達成しても良いわけです。そしてまずは医療・介護、さらには教育を建て直し、少子化対策も積極的に展開しながら若い人にも便益が見える形にし、中長期的に財政再建の重みを増していくという「作戦」を考えることもできると思います。

 昨年公開された米国の映画「SiCKO」に、印象深いシーンがあります。米国に実家があり、フランスに移住してきている若い人たちが登場します。彼らが、米国に住む親たちに「申し訳ないと思う」と言うのです。彼女たちはフランスにいて、こんなにいい生活をさせてもらっているのに、米国にいる親は生涯働きづくめでも、自分たちのような豊かな生活ができないと。フランスでは子供が生まれたら、国が子育ての面倒を見てくれる、学費もほとんどかからない。社会保障、福祉政策の「便益」が若い人まで行き渡っているので、負担に対する抵抗が少ないみたいなんですね。

 日本でも、政府を利用すれば楽に、安心して生きていくことができるという「政府の利用価値」を分ってもらうまで、どう国民を説得していくかが課題です。

 小松 大枠のところから考えていくことが必要ですね。

 

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