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医療再生にはなぜ負担増が必要か◆Vol.6

◆m3.com「医療維新」のURL
http://www.m3.com/tools/IryoIshin/080619_1.html
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 ――医療は患者やその家族にならないと、現実問題として捉えにくい一方、教育問題は誰でも直面する問題です。

  権丈 だから教育の方が、勝つかもしれません。以前、あるインタビューで「5年で1兆円の財源があったら、何に使うべきですか」と聞かれたことがあります。その時は答えなかったのですが、5年で1兆円使えても、医療はどうなるものでもありません。それなら、教育や環境の問題に使い、医療については負担増の必要性を国民に訴えていくべきですし、それを訴える正当性が医療にはあると思っています。

 そのためには、「いったい、どのくらい必要なのか」、その「見積書」を出す必要があります。例えば100億円や1000億円といった単位で医療の問題が解決するのならば、今の運動方針を続けられても良いと思う。しかし、日本の医療を再建するには恐らく兆の単位が必要ですね。兆の単位になると、他の支出から持ってくることは難しい。

 ――「見積書」はどのように作成すればいいのでしょうか。 

 権丈 前期高齢者については、来年から窓口負担が1割から2割に上げることになっていますが、その見直しが検討されています。では、1割に抑えるためにはいくら財源が必要か、その中で国庫負担をどうするか。救急、産科、小児科医療を再建するには、何をやる必要があり、それには幾らかかるのか。

 人件費については、積み上げが必要です。例えば、医師の場合、勤務時間を法廷労働時間内に抑えるためには何人の増加が必要か、夜勤明けに医師が休むことができるようにするには医師が何人必要でそのためにはいくらかかるのかなどの検討を行うことです。何十年も前に決めた医療法標準の医師数すら満たしていない医療機関が多いのですから、これを満たすためには何人必要なのかです。労働条件の改善は急務です。「昔は。少ない人数でこれだけ当直をこなしたんだ」などと言われても、若い人たちはかわいそうです。

 目に見える、国民に分かる形で「見積書」を提示することです。「見積書」を作ると、必要な医療費の「単位」が分かります。今までは、こうした計数感覚を踏まえずに議論してきたわけです。

 小松 「実は最近、権丈先生から、「医療費を7兆円増やすなら、何に使うか」と聞かれました。

 権丈 日本のGDP比の医療費は8%ですが、そのうち公費負担は6.6%です。それをドイツ並みの8.1%に上げるには、7.5兆円必要です。フランスレベルだと10兆円の財源が必要。そこまでは無理でしょうから、7兆円の財源が回るとしたら、何に優先的に使っていくかを小松先生にお聞きしたわけです。「ヨーロッパ標準の医療費を」ということは、医療政策の研究者や医療者が揃って言ってきたことですけど、それが幾らなのかはあまり意識されてこなかった。7兆円の公的医療費の使途を小松先生が知り合いに聞いてくださったところ、本当に詳細な試算が返ってきました。お持ちしたのはその一部です。

 小松 この試算が当たっているかどうかは分かりませんが、議論のたたき台にはなるわけです。ただ、「見積書」を作るのは、そう簡単な作業ではありません。例えば、私は急性期病院のことしか知りません。臨床を何年かやって、さらに医療制度や臨床に精通した方が何人か集まって、急性期から慢性期まで幅広い視点から作る必要があります。

 権丈 そのようにしてたたき台を作って、議論していくことが必要です。「医療費を増やすべき」という点では、私と小松先生と意見は一致しているのです。

 医療は、一つのサービスを購入することでもあります。その負担を上げるためには、「購入できるものは何なのか」をある程度、納税者に見える形にすることが必要なのです。年金だったら、「6万6000円を7万円にします」と言えば、どれくらい恩恵を受けるかは想像できます。一方、医療の場合は、「医療費を、国民1人当たり年間4万4000円増やして約5兆円必要です」と言われても、どんな医療を受けられるようになるかは分かりません。

 確かに「見積書」を作るのは簡単ではありませんが、医師や経済学者をはじめとした社会科学者、そして官僚を含めて、何人かの専門家が協力すればできると思います。「見積書」の作成と並行して、医療不信や政府不信をどう払拭するかが課題になってきます。

 

見積書のイメージ
 まず、診療報酬です。日本の病院の平均利益率は小泉政権登場前の段階で3~4%台でした。入院医療は現在実質的に利益が出ていません。かと言って、全ての医療機関が黒字転換するというわけにも行きません。キリがないからです。8~9割の医療機関が安定経営に戻るのを目標にするのが順当でしょう。取りあえず、小泉政権前の水準に戻すために、入院医療費15兆円を5%プラスするのに7500億円弱必要です。

 さらに急性期病院については、小泉政権以前から概ね赤字ベースでした。安定した経営のためには、10%程度の利益が必要と考えます。全国約2000の急性期病院……(中略)。

 非医療専門職員(無資格者)の増員は短期で達成可能です。急性期病院だけでなく、あるいはむしろ慢性期病院や福祉施設の方がその効果は大きく期待できます。医療・福祉関連の就業者数は既に600万人弱で、全就業人口の9%前後を占めています。非専門職は500万人弱です。そのうち病院での就業者は170万人ほどで、看護助手が20万人、事務職員が15万5000人、その他の非専門職が9万人います。合わせて45万人です。病院勤務医数を約18万人として、医師1人当たり非専門職を1人ずつ増員すると考えて、約18万人増やすには、1人当たり年間人件費平均500万円として9000億円で充分です。(中略)

 以上、経営安定化に1兆5000億円、非専門職に1兆円、研修医養成プログラムに1兆円。存亡の危機にある診療科に対して1兆円で、総計4兆5000億円です。

 当座、これだけあれば日本の病院医療の建て直しはできます。

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