m3.com編集部
Profile

ブログ内検索

カレンダー

<< 2009/07 >>
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31

新着コメント

新着トラックバック

トップページ

Doctors Blog

ブログの購読

< 「いい医療を受けたいがお金出さず」(下)... | メイン | 「公共事業のムダ省け」では埒が明かず(下... >

 「公共事業のムダを削れ」「埋蔵金を医療費」などと、他の分野の歳出を削減し、医療費に充てる議論は、やめた方がいい――。慶應大・権丈善一氏はこう指摘します。虎の門病院・小松秀樹氏もこの意見を支持。ムダがあるのならば、そのムダは徹底的に削りながら、医療費を増やすことは可能だからです。「いったいどのくらい医療費が必要か」、その試算のための「見積書」が不可欠だそうです。


◆m3.com「医療維新」のURL
http://www.m3.com/tools/IryoIshin/080619_1.html
-----------------------------------------------------------

医療再生にはなぜ負担増が必要か◆Vol.5

――日本では医療に関する満足度は高くはないのに、負担感は強い。それは正しく情報が伝わっていないことが理由ということです。


 小松 費用負担について、大学教育にどうしても触れたい。日本では、大学教育のための費用は低く、OECD28カ国中24番目です。しかもその内訳がいびつです。多くの国で公費負担が大半を占めますが、日本は私費が半分以上です。

 権丈 私費の負担、つまり親のがんばりで、なんとかこれまである程度の水準を維持してきましたが、それも既に限界に達し、今は教育に歴然とした格差がでてきています。私は、教育は既に混合診療化していると言っているわけです。

 小松 このため、親が貧しいと大学に進学できません。貧困の再生産ですね。

 権丈 となれば、少子化問題や格差の固定化問題の緩和にかなりの効果が見込まれる。私がよく教育の話を持ち出すのは、「(公費の少なさや費用負担のあり方が問題になっているのは)医療だけじゃない」ことを言うためです。医療は社会保険という手段を持っていますが、教育はそうした手段もありません。

 ですから、医療費増の必要性を主張する際、「消費税の引き上げは、絶対反対」という医療者がいますが、それでは教育や少子化対策など、保険財源を持っていない他の分野に、しわ寄せが行くことになります。教育については、高等教育だけではなく、義務教育を含めた教育全体で見ても公費負担の割合は低く、悲惨な状態です。

 小松 2007年度の一般会計の歳出を見ると、国債費と社会保障費がそれぞれ約4分の1で、約21兆円。残りのうち、地方交付税が18%。防衛費は5.8%で約5兆円なので、削減できても1兆円程度でしょう。知り合いが自衛隊にいて、先日韓国に行ったのですが、韓国と比べると、日本の自衛隊は、節約に節約を重ねているので、宿舎などの設備はとても貧弱だそうです。

 権丈 医療関係者を対象とした講演に行くと、「防衛費を削って、医療費に当てればいいじゃないか」とよく質問されます。そもそも防衛費の場合、GDP比に占める割合という相対的な数字には意味がありません。絶対額に意味があるわけで、それも先進諸国の中でそんなに高くなく、隣の大国と比べれば半分程度です。仮に防衛費の約5兆円を全額医療費に充てても、まだ欧州の医療費の水準には到達しません。

 小松 公共事業も同様に、削減して医療費に充てるべきと主張する意見がありますが、最近は減少傾向にあります。ある意味、公共事業は、地方の社会保障です。

 権丈 公共事業は1998年度以降は、減少の一途です。

 にもかかわらず、公共事業が多かった1990年代のデータのみを示して、「削減すべき」と言うわけです。その上、2006年の政府の「骨太の方針」では、プライマリー・バランスを黒字化するために、社会保障を上回る割合で公共事業を削減していくことになっています。

 小松 公共事業が削減されたら、そこに従事する多数の人の雇用を確保する必要があるわけです。建設業は9年間で就業者が126万人減少しています。急すぎると死人がでます。

 権丈 講演のたびに、「外為特会(外国為替資金特別会計)にムダがある」「埋蔵金がある」といった声が上がります。だいたい毎年、一つ二つ、新たな「財源」が発見されるわけですが、いまだかつてそれらに大きな財源があったためしがない。去年は、特別会計の経常経費、すなわちフローに埋蔵金があるという説が流行しましたけど、すぐに珍説だということが理解されて、この話は静まりました。今は、埋蔵金の積立金、ストックで盛り上がっています。もしそこにムダがあるというのならば、「ストックはストックに」の原則の下、莫大な政府の累積債務への返済に使うのが自然です。

 もちろん、「ムダ」という言葉には強い力があり、ムダの排除を継続していくことは、いついかなる場合でも必要です。しかし、「他の財源を削減し、医療に充てる」という発想はいい加減、やめた方がいいでしょう。それに、現在のように医療不信が強い現状にあっては、「ムダをなくすまでは負担増はなし」という考え方を強調しすぎると、すぐに「医療にこそ、ムダがあるはずだ」とそのまま医療界に跳ね返ってきます。

 医療以外の分野について、「どのくらいのムダがあるか」、私のような社会保障や財政の研究者を含めて、本当は、医療者にも分かっていないはずです。ムダと呼ばれているものは、研究者の間でも意見が分かれているのが多い。政府支出のムダは会計検査院がチェックしていますが、彼らが出してくるムダの額は、毎年本当にわずかな額です。

  しかし、少なくとも言えることは、この国の幸運は、「小さな政府」であることです。フランスやスウェーデンのように、国民負担率が高い状態で、今のような閉塞感が生じていたら問題ですが、日本の負担水準はあまり高くはありません。特別会計を含めても国の支出そのものが諸外国と比べて相当に低い状況にあるのですから、負担増、すなわちもっと多くの公共サービスを求めるという選択肢が普通にあって良いと思います。

 小松 その「小さな政府」のひずみが、医療以外にも、教育などあちこちに出ている。

 権丈 教育と医療と、どちらが重要なのかという「予算の争奪戦」をやったら、どちらが勝つか分かりませんよ。

固定リンク | コメント (0) | トラックバック (0)

トラックバック

この記事のトラックバック URL

http://blog.m3.com/m3com/20080704/1/trackback

コメント

コメントはまだありません。

コメントを書く

ニックネーム*
メールアドレス*
URL
内容*
※「利用規約」をお読みのうえ、適切な投稿をお願いします。