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この件では、遺族も被害者なのだと思う。普通なら、当初は医師を恨んだとしても、時が経つにつれて死を受け入れていくものだ。それなのに逮捕・起訴となれば、やはり悪いのは医師だと言うことになり、何時までも恨みは消えないだろう。挙げ句の果てに無罪で、実は医師は悪くありませんでしたと言われても、素直に納得できないのはよく分かる。警察・検察は罪なことをしたものだと思う。これ以上罪を重ねることなく、控訴しないことを望む。医師、遺族 重苦しく 「無罪」に思いめぐる
「被告人は無罪」。20日午前10時すぎ、福島県立大野病院事件の判決公判が開かれた福島地裁1号法廷に鈴木信行裁判長の声が響いた瞬間も、業務上過失致死罪などに問われた加藤克彦医師(40)は直立のまま、前を見据え続けた。手術中の措置をめぐり産科医の刑事責任が問われた医療界注視の事件。地裁の外で判決を待った医師の支援者らには喜びが広がったが、死亡した女性患者=当時(29)=の遺族は傍聴席でハンカチを手に目をぬぐった。明暗が分かれた法廷を重苦しい空気が包んだ。
濃いグレーのスーツに赤系のネクタイ姿で法廷に現れた加藤医師。冒頭の主文言い渡しを聞き、被告席に戻った後も表情をほとんど変えず、背筋を伸ばしたまま判決理由の朗読に聞き入った。午後零時20分に言い渡しが終わり閉廷すると、遺族に一礼して法廷を後にした。
事件をめぐっては、医療界から「医師の産科離れなど、医療崩壊を加速させた」と厳しい批判の声が上がった。関心の高さを反映し、この日は25の一般傍聴席を求め、788人が抽選の列に並んだ。
地裁の外に無罪の知らせが伝わると、加藤医師の元患者らの中には「ほんとに良かった」と泣き出す人も。千葉県から訪れた男性医師(45)は「安心した。逮捕が行き過ぎだったと思う。医師側も異変があれば事実と向き合い、患者側に理解してもらう努力が必要だろう」と話した。
真相究明を待ち望んだ遺族には厳しい判決となった。血圧低下や出血量の増大など、つらい手術経過の事実認定が読み上げられていくと、女性患者の父親はうつむきながら耳を傾けていた。
2008年08月20日水曜日 河北新報社
今日の日記は、明日の福島県立大野病院産科医逮捕事件の判決を前に、被告医師と当日現地でシンポジウムを行う人々を応援するための運動の一環として書いています。
このブログのトップでも宣言しているように、被告の医師を私は支持しています。逮捕自体が信じられないような暴挙なのですが、明日、判決が下ります。よもや有罪にはならないと思いますが、民事ではトンデモ判決が珍しくない昨今の状況を考えると、安閑とはしていられません。リンク先にもありますが、こんな事件でした。
2004年12月17日、大野病院で帝王切開術が行われた。前置胎盤の妊婦だったので、慎重に胎盤部分を避けて手術をして、胎児は無事に生まれた。ところが胎盤がはがれない。術前に診断することは困難だが、極めて珍しい癒着胎盤だったのだ。胎盤がはがれないと子宮が収縮せず、大量に出血する。何とか胎盤を剥離し、子宮も摘出したが、それでも大量の出血があり、輸血もしたが、結局患者は亡くなった。
癒着胎盤に伴う大量出血という事例であり、残念ながら力及ばず亡くなりはしたが、医療ミスではなく、あくまで病死である。当然、警察への異常死の届け出ではしなかった。ところが、示談を急いだのかどうか知らないが、県はミスを認めるかのような報告書を作成し、医師も甘んじて処分まで受けた。この辺の事情を福島県立病院産婦人科教授の佐藤氏は、以下のように語る。
患者の死亡後、県の医療事故調査委員会が設置され、当大学出身者以外も含め、3人の医師による報告書が2005年3月にまとめられた。今回の逮捕・起訴の発端が、この報告書だ。県の意向が反映されたと推測されるが、「○○すればよかった」など、「ミスがあった」と受け取られかねない記載があった。私はこれを見たとき、訂正を求めたが、県からは「こう書かないと賠償金は出ない」との答えだった。裁判に発展するのを嫌ったのか、示談で済ませたいという意向がうかがえた。私は、争うなら争い、法廷の場で真実を明らかにすべきだと訴えたが、受け入れられなかった。さすがにこの時、「逮捕」という言葉は頭になかったが、強く主張していれば、今のような事態にならなかったかもしれないと悔やんでいる。加藤医師は、報告書がまとまった後に、県による行政処分(減給処分)を受けた。
警察は、この報告書を見て動き出したわけだ。最近、医療事故では患者側から積極的に警察に働きかけるケースもあると聞いているが、私が聞いた範囲では患者側が特段働きかけたわけでもないようだ。警察による捜査のやり方には問題を感じている。例えば、当該患者の子宮組織を大学から持ち出し、改めて病理検査を行っているが、その組織も検査結果もわれわれにフィードバックされないままだ。捜査の過程で鑑定も行っているが、担当したのは実際に癒着胎盤の症例を多く取り扱った経験のある医師ではない。
(会員以外は読めない、日経メディカルの記事より引用)
こうして事を丸く収めるために、あえて責任を認めるかのような報告書が作成され、それが元で2006年2月18日 、担当医師が逮捕された。公判の模様は周産期医療の崩壊をくい止める会に詳しく載っている。あまりに詳しいので、全国の医師が症例検討会を行うことが出来るほどだ。その結果、多くの医師が被告に罪がないことを確信している。遺族は真実を知りたいと言うだろうが、真実は細かいところまですでに分かっている。(ただし、死因は狭義の失血死ではないと私は踏んでいる)
明日、8月20日に判決が出る。いてもたってもいられない医師達が、平日にもかかわらず現地に集まる。行けない私は、せめて会場に集まる医師達や被告医師への応援の意思だけは表明したいと思い、このブログを書いている。
万に一つも有罪判決が出るようなことがあれば、産科を辞めようと思っている産科医は多いだろう。私自身も、リスクを回避するような行動を取らざるを得ないだろう。
いろいろな指示を、何でもパソコンに打ち込まなければならなくなって、私のようなロートルは大変です。まだ電子カルテにはなっていないのですが、オーダリングシステムですら使いこなせていません。注射もすべてパソコンで指示を出すのですが、手術室での麻酔薬の注射は、事後登録でよいことになっています。
もし、何らかの処置のために静脈麻酔が必要になり、静脈麻酔薬をパソコン画面で指示を出したら、どんなことが起こりうるでしょう。点滴の指示などの場合、看護師が自分たちだけでやることはよくあることですから、それを見た看護師が、とにかく注射をすればよいのだと勘違いしたら、麻酔の知識のない人が意図せず麻酔をしてしまうことになります。
asahi.com> マイタウン> 青森> 記事 2008年08月09日
麻酔に医師立ち会わず
■協立病院意識不明 病院側が医療事故認める
青森市のあおもり協立病院(横田祐介院長)に入院中の男性患者が、7月に麻酔薬を投与された後、意識不明となっている問題で、同病院は8日、朝日新聞社の取材に対し、医療事故だったと認めたうえで事故の経緯を明らかにした。男性患者は主治医の指示を受けた看護師が麻酔薬「イソゾール」を投与した後、意識不明になったという。同病院では投与時に医師が立ち会うことをマニュアルで定めているが、この時は立ち会っていなかったという。
同病院の宮本達也事務長は取材に対し、「医療事故があったことは事実」とする一方、医療ミスの有無については「調査中」とした。 宮本事務長によると、事故が起きたのは7月10日。この日は、不整脈で入院していた青森市の70歳代の男性患者に対し、心臓の動きを正常にするための電気ショック治療が行われる予定だった。心拍数が下がる傾向があったためだという。
意識がある状態で電気ショックを行うと患者は恐怖を感じるため、循環器内科の主治医がイソゾールの投与を決めた。
主治医は同日、電子カルテで看護師に指示を出し、この日の午前中、看護師が1人でイソゾールを静脈注射で投与した。午後に電気ショック治療を行う予定だったが、麻酔薬の投与後まもなく、男性の心拍数が下がったことを知らせる警告が出た。医師や看護師が駆けつけて救命措置をしたが意識不明となり、現在も意識が回復していない。
看護師による静脈注射は、保健師助産師看護師法で、医師の指示のもとで行うことが認められている。同病院は法律より踏み込み、医師が立ち会って実施するというマニュアルをつくっていた。だが、この日、医師は立ち会っていなかったという。
また、主治医が指示を書いた電子カルテには、薬剤の名前、量、注射の方法などが明記されていたという。
薬剤の量や投与する時間、方法などに誤りがあったかについて宮本事務長は「調査中だが、現段階で明確な間違いは見つかっていない」とし、意識不明になった原因は「現在調査中」と話している。
同病院は事故があった7月10日、平岡友良副院長を長とする内部の事故調査委員会を設置。同14日に県医療薬務課と東地方保健所に口頭で報告、同月下旬には文書でも報告した。今後、外部の有識者を招いて詳細な事故経過を調べる。
◇
県は、今回の事故にかかわった看護師らから事情を聴くとともに、今月中に同病院へ立ち入り検査をし、医療ミスがなかったか調べる。関係者によると、立ち入り検査では電子カルテに記載された医師による看護師への指示内容などを調べるとともに、同病院で看護師に対してどんな教育が行われていたかなども確認するとみられる。
おそらくは心房細動という不整脈の治療のため、電気的除細動という処置をしようとしたのでしょう。当然ですが、イソゾールは除細動の直前に麻酔のために投与するはずだったのです。指示を読んだ看護師が、イソゾールという薬について少しでも知っていれば、麻酔をする必要のない状況で投与することはなかったでしょう。
実際の医療の現場を知らない人であれば、知識不足の看護師を糾弾したくなると思います。でも、優秀な看護師がいることは事実ですが、たまたま免許を持っているだけの、素人と全く変わらない看護師も数多くいます。それらの看護師の力なくしては、日本の医療は成り立ちません。やはり、レベルが低いスタッフがいることを想定したシステムが必要なのです。
当たり前のことですが、主治医は除細動の際に使用する目的でイソゾールの指示を出しています。これが事前に投与されないような、フェイルセーフ機構はなかったのでしょうか。これから電子カルテ化する身として、とても心配です。
看護師のみなさんへ
この日記を読んで侮辱と感じる看護師の方もいらっしゃると思います。あなたが「自分のしている仕事の意味くらい理解している」と思っているなら、レベルの低いスタッフというのはあなたのことではありません。自分の受けた指示の内容を理解せず、ただ指示だからとやっているのだとしたら、あなたもとんでもないミスをする可能性があります。
奈良・妊婦死亡事件からあす2年 遺族は2次被害防止へ活動 (1/2ページ)
2008.8.7 13:42
奈良県大淀町の町立大淀病院で平成18年8月、同県の高崎実香さん=当時(32)=が分娩(ぶんべん)中に意識不明となり、19病院に転院を断られた末に後日死亡した問題の発生から、8日で2年。夫の晋輔さん(26)ら遺族は、周産期医療の充実に加え、ネット上での中傷という“2次被害”を防ぐための活動を新たに展開している。今春には、ほかの医療事故被害者や遺族とともに勉強会も発足。遺族は「いつか残された子に、お母さんのおかげで環境がよくなったんだと言いたい」と心に誓っている。
実香さんは18年8月8日未明、分娩中に突然意識を失い、奏太ちゃんを出産して8日後に脳内出血で死亡した。
悲しみがやまない中、同年秋には、横浜市の医師による医師限定サイトの掲示板に晋輔さんを中傷する内容の書き込みがあることが判明。さらに実香さんの病歴情報、看護記録の流出も起こって、遺族の心に追い打ちをかけた。
カルテ内容を流出させた開業医は今年7月、晋輔さんや義父の憲治さん(54)に直接謝罪。その際、開業医は「医学的な検証をし、産科医を守りたかった」と話したという。 「婦人科のカルテには、親族にさえ知られたくないような秘密が書き込まれており、流出は女性を裸以上にするもの」
本当に医療環境を良くしたいのなら、即座に提訴を取り消すべきでしょう。どうしても提訴したいのなら、相手は国や自治体と言った行政のはずです。救命すること自体は無理だったと思いますが、まともな医療体制があったのであれば、もっと早く治療ができたはずです。貧弱な医療体制の責任は行政にあります。攻撃の矛先を医師や病院に向けるのは筋違いです。
また、「裸以上にするもの」を見て感じたのですが、「被害者」の憎悪は理不尽なものです。理性をかなぐり捨てたむき出しの感情であることもまれではありません。それ自体は無理からぬものがあるでしょう。でも、それをそのままメディアで垂れ流すのはいかがなものでしょうか。裸の心は、裸体以上に見ていて恥ずかしくなります。
残念ながら、現状は良くなっているとは言えません。完全に方向は逆で、奈良の産科医療を崩壊させてしまったと言って良いでしょう。一度恨みに凝り固まってしまうと、簡単には修正できないのでしょうが、医療を崩壊させている本当の敵は誰なのか、もう一度真剣に考えて欲しいと思います。奈良・妊婦死亡事件からあす2年 遺族は2次被害防止へ活動 (2/2ページ)
2008.8.7 13:42
憲治さんら遺族はやり場のない憤りを抱える中で、ほかにもネット被害に苦しむ医療事故の遺族らがいることを知り、勉強会の開催を発案した。
今年4月、大阪市内で開いた初会合。晋輔さんは「妻を亡くした上、さらに妻を傷つけられた」と悲しい思いを打ち明けた。7月には2回目の会合も開き、痛みを共有しながらさらなる情報交換を進めている。
一方、晋輔さんは周産期医療の充実を訴え、これまで約10回の講演を重ねた。「素晴らしい技術を持ったゴッドハンドと呼ばれる医師がいるが、誰の手でも握ってあげられるような優しい医師が増えてほしい」と各地で呼びかけてきた。
奏太ちゃんは、8日で2歳を迎える。屈託なくすくすくと育ち、自分の意思を伝えたり、はしを使ってそうめんを食べたりできるようにもなった。
ただ、晋輔さんは、奏太ちゃんの成長にしたがって新たな悩みも感じている。「やがて物心つく奏太に、実香の死のことをどうやって伝えようかと…」 遺族はジレンマを抱えながらも、悲しみや苦しみを教訓に、医療の充実やネット中傷防止になお強い思いを向けている。
「自分たちも、医療を改善させる方策を医師や行政と一緒に考えたい」と晋輔さん。憲治さんは「カルテの流出やひどい書き込みは捜査の対象になるほか、医療界の信頼失墜にもつながることを考えてほしい。そして、奏太にいつかお母さんのことを話すとき、お母さんのおかげでこんなによくなったよと言いたい」と話した。
手術ミスで娘死亡と提訴 富山県に約5750万円請求
記事:共同通信社【2008年8月6日】
2000年に富山県立中央病院で心臓の手術を受けた生後約2カ月の長女が死亡したのは、病院が注意義務を尽くさなかったためとして、金沢市の両親が富山県に対し、慰謝料など約5750万円を求める訴訟を、5日までに金沢地裁に起こした。
訴状によると長女は2000年9月に出生。先天性心疾患と診断され、11月11日に同病院で心臓手術を受けたが、6日後に急性心不全で死亡した。両親は「病院が呼吸管理などの術前管理を十分に尽くさず、症状を悪化させた」などと主張している。
同病院は「8年前のことで驚いており、弁護士と対応を協議している」とコメントしている。
せめて病名と、どのような手術だったのかと、具体的に呼吸管理がどのように悪かったのかくらい書いてくれないと判断のしようがありませんが、まあ、いつものことです。
手術は8年前です。今ほどリスクを説明していなかったかも知れませんが、それなりに生命の危険の説明はあったのではないでしょうか。だからこそ、しばらくは納得して提訴など考えなかったのでしょう。
何故今になっての提訴なのか分かりませんが、誰かが入れ知恵したのでしょうか。「昨今の情勢なら、高額の賠償金も夢ではないよ」と。「刑事訴訟をちらつかせれば、公立病院なら和解に応じるよ」と。
あながち間違いじゃないのが悲しい。
救急医療事故:医師の刑事免責を検討 患者側から反発も--自民私案
自民党は29日、救急救命に関係した医療事故について、事故を起こした医師らの刑事責任を免除する刑法改正の検討を始めた。党の「医療紛争処理のあり方検討会」で、座長の大村秀章衆院議員が私案として示した。免責の範囲などを今後議論するとしているが、患者側から反発も出ている。
医師らは、通常の医療行為で患者が死亡したり障害が残った場合は罰せられないが、必要な注意を怠ったと判断されれば業務上過失致死傷罪が適用される。医療界から「刑事罰は医療の萎縮(いしゅく)を招く」との批判も出ていた。
座長私案は、刑法の業過致死傷罪の条文に「救急救命医療で人を死傷させた時は、情状により刑を免除する」との特例を加える。厚生労働省が導入を計画する死因究明の第三者機関「医療安全調査委員会」の設置法案とセットで、議員立法による改正を目指す。
医療安全調査委の検討会委員で、小児救急の誤診を受け息子を亡くした豊田郁子さん(40)は「まず免責ありきという考えはおかしい」と指摘している。【清水健二、石川淳一】
毎日新聞 2008年7月30日 東京朝刊
今回は「人を死傷させた時」に絞って書こうと思います。故意や誰もしないような馬鹿な過失で「人を死傷させた」のであれば、刑事免責にしろと言う医師はほとんどいないでしょう。でも、治療の甲斐もなく亡くなることはありますし、正しい診断が困難な事例もあります。後からなら「ああすれば良かった、こうしたら良かった」と言うことは可能ですが、最近は「れば・たら」で過失認定される恐れが大きくなってきました。その様な不適切な過失認定をそのままにして、「人を死傷させた悪い奴だけど情状酌量で許してあげよう」と言われても嬉しくありません。
誰でも犯しやすいミスを防ぐためのチェック体制や重大な結果を招かないためのフェイルセイフ機構、ミスを誘発しやすい労働環境の改善など、医療安全のための方策はいろいろあります。人は誰でもミスを犯すものですが、金をかけて対策を取れば、重大な結果を減らすことは可能です。そのためのコストを不可能にしている医療行政そのものに刑事罰を与えるような、そんな法改正を私は望みます。それなら患者側も反発しないでしょう。するのかな。
私の勤務先でも、ご多分に漏れず医師の逃散が続いている。その理由の一つが当直だ。眠れずに次の日も仕事をする、いわゆる32時間連続勤務がつらいと言うこともあるだろう。でも、本当につらいのは、救急医としての訓練も無しに救急医療をさせられることのようだ。
日本の救急医療は、実際には行政が病院に頼み込んで行われている。きちんとした体制を整えた病院が申請して救急指定病院の許可を受ける建前になってはいるが、実際には建前だけで、救急病院等を定める省令を満たす施設はほとんど無い。特に第1条の1の「救急医療について相当の知識及び経験を有する医師が常時診療に従事していること」と言うのは、ごく一部の施設を除いて実現不可能だ。
多くの施設では、救急医療は救急医療の訓練を受けていない各科の医師が行っている。眼科医や耳鼻科医と言った、いわゆるマイナー科の医師が行うこともあるだろう。あるいは経験不足の、後期研修医が行うこともあるかも知れない。そうでもしなければ回らないのだ。建前通りの医師をそろえることは不可能なので、それを強制するのであれば、救急医療をやめるほか無い。
もう医師は救急医療を辞めたくて仕方がない。でも、病院自体は行政と事を構えるわけにはいかない。行政の要請とは、様々な縛りの結果、実質的には強制なのだ。病院当局は何とかなだめすかして当直という名の実質夜勤を維持しようとしているが、専門外の誤診を責められるようでは、もう逃げるしかないだろう。
以下の記事の事例は、結果として誤診であったわけであるが、もちろん実際に非があるかどうかは詳細が分からないので何とも言えない。単に正確な診断が付けられないと非難される実例だと思って欲しい。
「不完全検査が死亡原因」 栗林病院のミスと賠償命令
記事:毎日新聞社【2008年7月24日】
医療訴訟:「不完全検査が死亡原因」 栗林病院のミスと賠償命令--地裁判決 /香川
04年に背中の痛みを訴え社会保険栗林病院(高松市栗林町3)に搬送された高松市内の女性(当時55歳)が半日後に大動脈解離が進行して死亡したのは、同病院で十分な検査がなく大動脈解離を発見できなかったためとして、女性の夫(58)らが、同病院を経営する全国社会保険協会連合会(東京都港区)を相手に、約5380万円の損害賠償を求めて起こした訴訟の判決が23日、高松地裁であった。森実将人裁判長は「検査の不完全な履行と女性の死亡との間には相当な因果関係がある」として、同連合会にほぼ請求額に近い約5193万円の支払いを命じた。
判決によると、04年1月18日朝、女性は背中の痛みを訴えて同病院に搬送された。同病院の医師は、尿路結石と診断。大動脈解離などの診断に必要なCT検査などをしなかった。女性は帰宅後の同日夕、呼吸停止のような状態となり、高松市内の病院で死亡した。死因は胸部大動脈瘤破裂とされた。
判決について同連合会は「判決文が届いていないのでコメントできない」と話している。【吉田卓矢】
救急医や循環器の専門家が診ていれば、おそらく診断の付いた症例なのだろう。でも、それらの専門医を常時そろえることは不可能だ。実現不可能な質を求めるのなら、もう、救急医療をやめるほか無い。
不完全な救急医療でもあった方が良いのか、全く無くなってしまった方が良いのか、どちらを選びますか。
医療事故調/捜査とどう距離を置くか
診療行為で患者が亡くなったとしよう。病院はミスを否定するが、遺族は納得しない。公正・中立な機関が原因究明に乗り出し、結果を公表する。再発防止にとどまらず、医療への不信解消にもなるだろう。
これが、厚生労働省が設置しようとしている医療事故調査委員会である。
現在はそんな組織がないから、遺族は裁判で争うか、泣き寝入りするしかなかった。それが深刻な医療不信を招いたことは、いうまでもない。 そうした意味でも、信頼の置ける第三者機関を設けることに異論はないだろう。問題は中身であり、どんな機能を持たせるかである。ところが、厚労省の試案や論議に目を向けると、期待よりも医療現場の委縮につながらないかと心配が先に立つ。
試案によると、事故調は医師や法律関係者らで構成し、「診療行為に関連した予期しない死亡」を扱う。現在は医師法に基づき警察への報告を義務付けているが、これを事故調への届け出に一本化する。
個別の評価は委員会の下に設ける地方ブロックが行い、遺族からの申し出による調査も可能とする。遺体の解剖、診療記録の評価、遺族への聞き取りなどから、死因や死に至る経緯、要因を突き止め、調査報告書にまとめて公表する。
調査の手順を明確に示したのは評価できる。だが、調査報告書が刑事手続きで使用されることもあるとした点は、事故調のあり方にかかわる重大な意味を持つ。捜査との関係はより慎重にすべきだろう。
組織の中立性が疑われるだけではない。訴追の恐れがある中で、真実を話せるだろうか。責任追及に傾けば、真相究明という本来の設置目的から大きく外れる。
医療事故調の設置論議は、二〇〇四年の妊婦死亡事件がきっかけになった。帝王切開で出産した妊婦が死亡し、医師が逮捕された。「不可抗力ともいえる事例に結果責任だけで医療に介入するのは好ましくない」と日本医学会が抗議し、中立的な届け出機関の設置を求める声が高まった。
厚労省の試案は、届け出機関の設置には応えたが、捜査とどう距離を置くかという点で、なお議論の余地を残している。
事故調を厚労省の下に置けば、組織としての独自性が問われる。また、遺族に参加してもらうなら、どういう形がいいのか。こうした点についても、もっと踏み込んだ議論がほしい。
検討が始まって一年。法制化を急いで不十分なものにするより、医療への影響を見極めてからでも遅くない。
(2/11 08:51)神戸新聞社説
もう始めからミスだと決めつけていたことが分かります。医師が気の毒です。原告側弁護士
9月1日、産婦人科医先生と師長さんがお悔やみにこられましたよね。「子供の養育費を払え」とか「病院をめちゃめちゃにしてやる」といって胸倉をつかんだというのは事実ですか?
高崎さん
お悔やみではなく、ミスを謝りに来られるということで私たちは理解していたので。そうではなくてお悔やみだときいて。。。「全財産を使ってでも裁判に勝ってやる」といった覚えはありません。胸倉をつかんだということもないと思います。でも、父が先生の両肩をもってゆすって「ミスやったんでしょ!?」と言った。胸倉をつかんだという記憶はありません。
なかなか手厳しい。でも、真実を知りたいのではなく、何が何でもミスと言うことにしたいだけであることが明白になった。実はこの質問の前にも、病院との約束を一方的に反故にしたやりとりもあって、かなり弁護側はポイントを稼いだと思われる。病院側弁護士(金)
先週ね、国循にみんなで揃っていって産婦人科の先生と脳外科の先生にお話をきいてきました。でもあなたはこなかった。どうしてですか?
高崎さん
。。。。仕事が入っていまして。。。。特別な仕事で。
病院側弁護士(金)
一ヶ月以上前から予定日は決まっていたはずです。予備日もあったはずです。シフトを変えてもらったりできなかったのですか?
高崎さん
。。。。仕事の日にちはかえられないものと私は認識していました。
病院側弁護士(金)
あなたは真実を知りたいと常々言ってきましたが、「真実より仕事」と言うわけですね。
高崎さん
。。。。。。
(裁判官にまぁまぁと言われる。)
危機に際して医師が冷静さを失うようじゃ困るのだが、冷静に対処すると必死さが無いと訴えられてしまうと言うことでしょうか。お気の毒です。また、父親が町議を動かして、事実がどうであれミスを認めるよう迫ったようです。病院側弁護士(米)
今回は救急システムが上手くいかなかったわけですが、雑誌などを見ると病院が悪いと言っておられますね。でも必死で病院スタッフが搬送先を探していたのはあなたもご存知だったはずです。ちょっとやりすぎではありませんか?
高崎さん
でも必死さがあまり伝わってきませんでした。産婦人科の先生の声が小さかったり。
病院側弁護士(米)
必死さは声の大きさなんですか?その「あまり」の部分が裁判なんですね。ところでお父さまのお仕事は何ですか?
高崎さん
。。。。いわなければならないのですか?
病院側弁護士(米)
いいたくなければ結構です。
高崎さん
建築業です。
病院側弁護士(米)
地元では相当大きな力を持った建築業者さんだそうですね。これは聞いた話ですが、大淀町の町議会議員の特定の方が、早く病院のミスを認めて謝罪しろ!とおっしゃっていたという話はご存知ですか?
高崎さん
ボクは知りません。
病院側弁護士(う)
0:14の意識消失から1:37の痙攣までの間が今争点になっていますよね。 素朴な疑問なんですけれどね、0:14の時点ではCTを撮らなくていい、脳疾患ではないと決めたのは内科医の先生なんですよね。1:37にはCTの話はともかく搬送の準備を始めています。 どうして訴えている相手が、内科医じゃなくって、産婦人科医なんでしょうか。
高崎さん それは。。。。。。。(黙り込む)
ここは私も疑問。何で産婦人科医を訴えたのだろう。前の方の質問で、家族がCTを撮ってくれと言ったのは2時過ぎであることに争いはない。この時点では搬送の方向で動いているので、結果として搬送までに時間がかかったとしても、CTを撮るより搬送を急いだことに問題があるとは言えないだろう。
夫の証言を見ると、この訴訟が無理筋だという印象が強い。医師の目からは前から分かっていたことだが、たぶん素人目にも無理筋なのではないだろうか。どう見ても夫の証言はボロボロなのだが、もちろん発端を作った新聞は、そのような報道はしない。
午前0時14分ごろにCTを撮らないことを決めたのは内科医だと言うことは全くスルー。むしろ逆であるかのような報道だ。遺族「診断に疑問」 主治医は過失を否定 奈良・妊婦転送死亡
記事:毎日新聞社 【2008年7月15日】
大淀町立大淀病院で06年8月、分娩(ぶんべん)中に意識不明となり、19病院に搬送を拒否された後、転送先で脳内出血で死亡した五條市の高崎実香さん(当時32歳)の夫晋輔さん(26)らが町と主治医だった産婦人科医を相手に起こした損害賠償請求訴訟の第3回弁論が14日、大阪地裁(大島眞一裁判長)で開かれ、晋輔さんや主治医らに対する尋問があった。主治医は「子癇(しかん)(妊娠高血圧症候群の一種)だと思った。あの時の(処置の)進め方に間違いはなかった」と過失を否定した。晋輔さんは「(妻は)頭が痛いと叫んだ。素人の判断でも、脳の血管が切れたのではないかと思った」と主治医の診断に疑問を投げ掛けた。【高瀬浩平】
原告側は「午前0時14分ごろに意識を失って数分後に頭部CT(コンピューター断層撮影)検査をし、脳内出血と診断していれば、実香さんは一命を取り留めた」などと主張。被告側は「主治医が子癇発作と判断し、安静を優先させ、CT検査をしなかったことは適切。けいれんを起こした直後に転送先を探すよう依頼した措置も適切」と反論している。
尋問で晋輔さんは「主治医は子癇だと言って、当直の内科医は『脳だと思います』と言っていた」と証言。一方の主治医は、内科医から脳の病気を疑ってCTを撮るよう進言を受けたかどうか問われ、「記憶にない」とした。子癇を止めるには帝王切開しなければならないという医学的知識を聞かれ、「帝王切開には産婦人科医2人が必要だが、私しかいなかった。高次の医療機関に搬送することを考えた」などと説明した。
昨日、大淀病院の産婦が病死した事例の民事訴訟の口頭弁論があった。そのもようが以下のブログにアップされている。それぞれ何部かに分かれてアップされているので、リンクはトップページに貼らせて頂いた。どうしてこんなに細かく正確に記録をとれるのだろうかと、驚くような出来映えです。それぞれのブログの著者に感謝いたします。大切な情報源です。
順不同