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2011.11.29 17:52 |  医療制度 / 行政  |  仕事 / 職場  |  医療事故  |  bamboo  | 推薦数 : 0

不起訴不当だって

 私はどうしても検察審査会というものを信用できません。人間というのはどうしても結果論で考えるものです。心理学では「後付けバイアス」と言うようです。司法関係者がどれだけいろいろなバイアスに通じているのかは疑問ですが、それでもずぶの素人よりはマシだろうと思います。

 日常では人が死ぬと言うことは大変なことですが、医療の現場では逆に死が日常なのです。そこで結果論で判断され、人が死んだのだから誰かの責任であるかのように思われたら堪りません。

 以上はあくまで一般論で、以下で紹介する記事の事例にも当てはまると言っているわけではありません。いつものように、記事からは何も分かりませんから判断のしようもないのですが、どうやらこの事例のようですね。

虫垂炎症状見逃し患者死亡 医師の不起訴「不当」…検察審議決


 患者の虫垂炎の症状を見逃して死亡させたとして業務上過失致死容疑で書類送検され、大阪地検が不起訴(嫌疑不十分)とした40歳代の男性医師について、大阪第3検察審査会が「漫然と診察し、血液検査など最低限の検査を怠った」として、不起訴不当を議決したことがわかった。

 10月26日付の議決などによると、医師は2006年11月、大阪府内の病院で当時43歳の男性患者を診察。風邪と診断したが、患者は翌日死亡した。解剖の結果、死因は虫垂炎による敗血症ショックで、診察時にすでに虫垂炎を発症していたとみられることがわかった。

 遺族は「診察時に腹痛を申告していた」と主張したが、地検は今年7月、カルテに腹痛の記載がないなどとして不起訴にし、遺族が同審査会に申し立てていた。

(2011年11月26日 読売新聞)

 この記事についてはYosyan先生のブログに詳しい事情があります。遺族側の情報はこれである程度分かるのですが、刑事被告人候補の医師の言い分が分からないので、ここでは判断はしません。

 この事例の是非はともかく、日常の診療を、刑事被告人にならないように気を遣いながら行うのはイヤだなあ。

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2011.11.12 19:09 |  診療  |  医療制度 / 行政  |  医療事故  |  bamboo  | 推薦数 : 2

診た者負け

 今までにも何度か書いたことと思いますが、日本の救急医療は「なんちゃって救急医療」です。第三次救命救急センターの看板を上げていても、夜間休日は救 急専門医ではなく、各科の医師が交代で救急医療を行っているところが大半です。しかも、夜間はシフト制の夜勤ではなく、本来診療を行ってはいけないはずの 宿直医が救急患者を診ているのです。

 こんな状況で理想的な医療を行わなければ保険会社からも訴訟を起こされるとなれば、もう診た者負けですね。おそらく被告の香川大学は、市中病院から見たら、ずっと高度な医療をしたのだと思いますが。

AIU保険、香川大を提訴

 香川大病院(香川県三木町)が適切な措置を怠ったため、交通事故の被害者に重い後遺障害が残ったとして、損害保険大手のAIU保険が同大学を相手取り、被害者らに支払った自動車保険金の半額約1億7500万円の損害賠償を求める訴えを高松地裁に起こしたことがわかった。

 訴状などによると、香川大病院は2003年9月、知人運転の車で事故に遭った20歳代女性の救急搬送を受け入れた。女性は入院後、首の脱臼が原因の手足 のまひを発症。女性は知人に対して損害賠償訴訟を起こし、高松高裁で約2億2600万円の支払いを命じる判決が確定した。AIU保険は判決確定までの医療 費などを含め3億4876万円を被害者らに支払った。

 AIU保険は「搬送時にまひはなかった。香川大病院が速やかに首を固定しなかったため、脊髄損傷が広がった」と主張、2分の1の負担を求めて提訴した。

 AIU保険の広報担当者は「個別の訴訟案件については答えられない」とし、香川大の担当者は「係争中で、具体的なことはコメントできない」と話した。

 医療事故情報センター(名古屋市)理事長の柴田義朗弁護士は「保険会社が医療過誤を問う訴訟は珍しい。同様の訴訟が増える可能性がある」と話している。

(2011年11月7日 読売新聞)

 整形の専門医によると、麻痺の程度は打撃時にほぼ決まっていて、早く固定しても関係がないそうです。たとえ裁判で負けなくても、訴訟につきあうだけでも気が萎えるでしょうね。

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2011.08.19 13:00 |  診療  |  医療制度 / 行政  |  医療事故  |  bamboo  | 推薦数 : 3

事件にはならないだろうけど

 以下の記事の事例はNATROM先生の「NATROMの日記」で知ったのですが、「ぐり研ブログ」や告発者である本澤氏のブログなどを読む限り、告発された医療関係者が気の毒でなりません。

「医療ミスで次男が死亡」 政治評論家の本澤二郎さんが東芝病院を刑事告訴 
2011.8.15 17:28 産経ニュース

 東京都品川区の東芝病院で昨年4月、入院中の次男が死亡したのは病院側の過失が原因として、政治評論家の本澤二郎さん(69)が15日、同病院の男性院長や女性看護師ら計4人を業務上過失致死罪で警視庁大井署に刑事告訴した。

 東芝病院は「通常の医療の範疇(はんちゅう)で、医療事故ではなかった」とコメントしている。

 告訴状などによると、死亡したのは本澤さんの次男の正文さん=当時(40)。別の病院で脳手術を受けた後、植物状態となっていたが、昨年4月7日、誤嚥性(ごえんせい)肺炎の疑いで東芝病院に入院。午後7時40分ごろ、院内の個室で死亡しているのが見つかった。

 死因は、たんがのどに詰まったことによる窒息死だったが、告訴状では、看護師が約1時間40分にわたって巡回に行かず、異常を知らせる警報装置などを取り付けていなかったことが原因と主張している。


 この記事や本澤氏のブログその他を読んだ私なりの事実経過の理解は以下のごとくです。

他の病院で次男の正文さんが脳膿瘍を脳腫瘍と診断され、対処が遅れた。
結果として、次男の正文さんが植物状態となった。
嚥下障害のために胃管を通して流動食を与える経管栄養を行っていた。
本澤氏が経管栄養を拒否し、退院させ、自宅で口から食べさせていた。
一口ごとにむせる状況で、私から見たら完全に虐待ですが、続けていた。
当然のことながら誤嚥性肺炎となりますが、入院させてくれる病院が見つからない。
そうした中、東芝病院が引き受けてくれた。
最終的に誤嚥性肺炎で死亡。

 どう見ても東芝病院には感謝することはあっても非難することはあり得ないと思うのですが、どうして刑事告発なんかになってしまうのでしょう。誰かが正文さんの死に責任があるのだとしても、それは東芝病院ではないような気がします。

 脳膿瘍を正しく診断できなかったことが本当に初歩的なミスであり、それがもとで植物状態となったのであれば、そのときに関わっていた主治医に責任があると言うことはできるかもしれません。もちろん刑事罰が相当とは思いませんが、民事による賠償責任が問われることはあるでしょう。

 一方、嚥下障害があり、口からの食物摂取が無理だとされている患者に、無理矢理口に食物を押し込み、毎回むせるような状況を繰り返した行為は、誤嚥性肺炎での死亡という現実を見れば、重大な過失と言えるのではないでしょうか。過失を刑事罰で裁くことの是非は置いておくとして、現実に過失致死という罪名がある以上、刑事罰を受けるに値するとしたら、告発者本人ではないかと私は思います。

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2011.06.08 03:45 |  診療  |  医療制度 / 行政  |  医療事故  |  bamboo  | 推薦数 : 1

医療崩壊待望論復活?

 日本の救急医療は、救命救急センターを含めて、言わば「なんちゃって救急医療」です。本来であれば専門の救急医が24時間対応するか、各科の医師を24時間絶え間なく配備するかして行うことが理想ですが、その様な体制の取れるところはほとんどありません。実態は、休日夜間は各科の医師が交代で日直・宿直をし、労働基準法で禁じられている通常業務の医療を行うことでまかなわれています。当然、専門外の疾患を診ることになります。

 このような体制で、ひとりひとりの高齢者に24時間万全の医療を行うことは不可能だと私などは思うのですが、世間の常識はそうでもないのでしょうか。不可能なことを求められたとき、やめるという選択肢は当然ありますが、まだまだ日本の医師は頑張っています。

 一時期、医療崩壊は秒読みだと思っていましたが、最近は持ち直してきました。でも、このような訴訟が増えてくると、医療崩壊待望論が息を吹き返してきそうです。もちろん記事からは詳細が分かりませんので、実際にどのようなレベルの医療が行われたのか不明ですが、このような記事を見ると、医師のやる気が削がれることは間違いありません。本当に訴訟にいたって当然のような低レベルの医療が行われたのだとしたら、その詳細まで書いた方が良いと思います。

損賠訴訟:別府医療センターを提訴 /大分 

 急性心筋こうそくで死亡した別府市内の女性(当時81歳)の遺族が約4100万円の損害賠償を求め、地裁に。訴状によると、女性は1月30日、胸の痛みで受診。専門外の当直医が検査し、異常なしと診断。指示に従って翌日に循環器科を受診したが、急性心筋こうそくと診断され心破裂で死亡した。原告側は「早期に正しく診断されれば命は失わなかった」と主張。センターは「訴状内容を検討し、考えを主張したい」としている。


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2011.03.08 18:20 |  診療  |  医療制度 / 行政  |  仕事 / 職場  |  bamboo  | 推薦数 : 2

あわわ

 昨日の夕方、愛読しているブログ「NATROMの日記」を読んでみたら、重度外傷の搬送前の輸液の害を示唆する記事(日本語)や論文要旨(英語)が紹介されていた。

 困るんだよねえ、こういうことされると。昨日の朝のエントリがバカみたいじゃない。もう、余計なことしてくれるなあ。と言うのはもちろん冗談ですが、若いころ教育され、長いこと信じてきたことが否定されるような気がして、にわかには信じられない気持ちです。

 「NATROMの日記」のコメント欄を見ても、どうも搬送前の輸液は分が悪そうです。輸液して全身状態を改善したいとしても、その後の医療行為が可能になってからするべきなのかも知れません。

 昨日のエントリは、輸液して良いことはあっても、悪いことはないという立場で書きましたが、その部分には修正が必要なようです。ただし、多くの医師が輸液が有用だと考え、救命士にそのように教育していることを考えると、医師と相談の上でよかれと思って輸液した救命士を擁護する立場は変わりません。

 参考に、日本語の記事の方を全文引用しておきます。

搬送前の静脈内輸液により外傷患者の死亡リスクが増大する可能性も(2011.1.17掲載) 
(HealthDay News 1月6日)

重症外傷患者を病院に搬送する前に現場で静脈内輸液(IV fluid)を行う処置が長年施行されているが、実際は死亡リスクを増大させる可能性のあることが新しい研究で示唆された。

約77万7,000人の外傷患者を対象に分析したデータから、搬送前に静脈内輸液を受けた患者の死亡率は、受けていない患者よりも全体で11%高いことが判明。搬送の遅れだけでなく、輸液による血圧上昇に伴う出血リスクの増大も死亡原因になると考えられている。米ジョンズ・ホプキンズ大学(ボルチモア)医学部准教授のElliott R. Haut博士らによる今回の研究は、医学誌「Annals of Surgery」2月号に掲載された。

分析の対象となった患者の多くは40歳以下の白人男性であり、約半数が外傷センターに搬送される前に静脈内輸液を受けていた。輸液を受けた患者の死亡率が高いことに加え、外傷の種類によってはさらに予後が悪化することもわかった。例えば、刺し傷や銃創を負った患者に輸液を実施すると、実施していない患者に比べ死亡リスクが25%増大。重度の頭部外傷を負った患者や、後に病院で緊急手術を受けた患者では死亡リスクが35%増大した。「この研究が最終的な結論であるとは考えていないが、輸液は必ずしも有益ではなく、むしろ有害である場合もある」と同氏は述べている。

米サンタモニカUCLAメディカルセンター(カリフォルニア州)のWally Ghurabi氏は、「患者を病院に搬送するまでは、患者の状態を現状のまま保つよう努める必要がある」と指摘。このため、病院がすぐ近くなのか、遠く離れた場所にあるのかなどの状況を考慮に入れて対応を決定する必要があるとしている。また、今回の研究をきっかけに、この問題について十分に議論すべきであると同氏は付け加えている。


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 たとえば、山の中に赤ん坊が捨てられていたとしましょう。放置すればおそらく命を失うことになるでしょう。でも、助けるためには国境を越えなければならず、それは違法行為なのだとしたら、あなたはどうするでしょうか。国境警備の軍人に射殺されるような心配はなく、同行者にあとで告げ口をされて新聞種になる心配くらいはあるという想定で。

 もう少しマシな例えはないものかという自覚はあるのですが、以下の記事を読んで思い浮かんだのはこれだけなので、ご容赦願います。

救急救命士、「生命の危険」で患者に違法点滴 

 愛知県常滑市は6日、同市消防本部の男性救急救命士(38)が、交通事故負傷者を搬送中に、救急救命士法に違反する点滴を行っていたと発表した。

 同本部は当時の状況をさらに詳しく調査をしたうえでこの救急救命士を処分する方針。

 同本部によると、救命士は先月7日、常滑市内で起きた交通事故現場に出動。負傷した男性(35)に、救急車内で血流確保のための輸液を静脈に点滴した。救命士は「大量出血で意識がもうろうとしていたため、搬送先の常滑市民病院の医師と連絡を取りながら輸液を行った」と説明したという。負傷した男性は病院で治療を受け、現在は快方に向かっている。

 救急救命士法の施行規則では、心肺停止状態の患者に限って医師から具体的な指示を受けながら、点滴や気管にチューブを挿入して酸素を送ることができるが、男性は心肺停止状態ではなかった。

 同本部の事情聴取に対し、救命士は「施行規則のことは知っていたが、生命の危険があると思ったので輸液を行った」と話しているという。救命士は2004年に資格を取得した。石川忠彦消防長は「救命のためだったが、違法行為は遺憾。病院とのやりとりを含めて、当時の状況を検証していく」と述べた。

(2011年3月6日19時02分 読売新聞)

 きちんと教育を受けている救命士であれば、大量出血の際には血管確保や輸液が重要だと言うことは理解しているでしょう。また、心肺停止状態で点滴の出来る技術があれば、心肺停止に至らない患者に点滴をすることは、より容易です。

 記事の救命士の行為は、違法ではあっても、医療行為としては妥当なものでした。成功すれば救命の確率を上げ、例え失敗しても放置した場合と比べて悪いことはありません。人命救助は何よりも優先されるべき課題ですから、杓子定規に非難するようなことではないと思います。

 もちろん、立場によっては非難して見せなければならないこともあるでしょうし、形だけでも処分をしなければならないこともあるでしょう。でも、メディアや一般の市民は賞賛しても良いのではないでしょうか。

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 最近は癌の終末期を自宅で過ごされる患者さんも増えているようです。このような患者さんは、生前から近くの診療所の医師に看取りの依頼をし、臨終の際にはその医師を呼ぶのだと思っていました。ところが、このような患者さんが実際に亡くなるときには、具合が悪くなったことに驚いた家族が救急車を呼んでしまうことがあります。

 呼ばれた救命士にとっては、癌末期の患者であろうと、心肺停止の重症患者として扱わなければなりません。また、運び込まれた救急病院にとっても、ただ死亡確認というわけにも行かないでしょう。

 元々日本の救急医療は医師たちのボランティア精神で支えられた、きわめて脆弱な基盤で成り立っています。不要不急の症例はできるだけ救急医療を利用しないように心がけなければなりません。

 癌やその他の死病の終末期の患者が心肺停止に陥ったとしたら、それは寿命が尽きたということなのです。救急医療の対象にはなりません。決して救急車を呼んだりしないでください。

 中には、DNR(蘇生不要)の意思表示をしている患者の家族が救急車を呼んだ事例もあります。救命士としては、呼ばれた以上は蘇生術をしないわけにも行かず、人工呼吸と心臓マッサージをしながら病院に搬送しました。そのときの救命士の困惑ぶりは、メディカルコントロール協議会の検証票の記録として残っています。

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2011.02.26 18:18 |  診療  |  医療制度 / 行政  |  医療事故  |  bamboo  | 推薦数 : 3

湯水のごとく注ぎ込みますか?

 少子高齢化に伴い、医療費の増大は大きな問題です。本当に必要な医療を確保する一方、切り捨てるべき所は切り捨てないとやっていけないでしょう。高齢者の老化による機能不全に対してまで公費を使って濃厚な治療をしている国は日本以外にはないのではないでしょうか。

 実態がどうであったのかは分かりませんが、このような判決の記事が出ると、高齢者への濃厚な医療をやらざるを得ないのでしょう。

1500万円支払い命じる 地裁判決 熊本・氷川の医療過誤訴訟 
2011年2月24日 提供:毎日新聞社

 症状改善のための措置を取らずに男性(当時85歳)が死亡したとして遺族4人が氷川町の病院を運営する医療法人に慰謝料などを求めた訴訟の判決が23日、熊本地裁であった。長谷川浩二裁判長は「適切な治療がされたとは認められない」として計約1500万円の支払いを命じた。

 判決によると、男性は05年11月、肺に異常があったことから検査のため入院した。血清ナトリウムの濃度が低下したが注意義務に違反し、食塩水を輸液するなどの適切な治療をしなかったという。同年12月に意識を失うなど急変し、06年2月に転院先の病院で死亡した。長谷川裁判長は「病院に注意義務違反があったと認めざるを得ず、症状急変との因果関係もあった」と指摘した。【遠山和宏】


 記事そのものについても一言言っておくと、こんな病名も分からず、低ナトリウム血症の原因も分からないような記事を書かないで欲しいと思います。対処すべきだったのかどうかの判断に全く役に立ちません。

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2011.02.08 22:28 |  医療制度 / 行政  |  仕事 / 職場  |  医療事故  |  bamboo  | 推薦数 : 4

システムエラー

 いくら結果が悲惨であろうと、うっかりミスに刑事罰を与えることには反対(行政処分なら可)なのですが、システムで防げる事故は、やはり防いで貰いたいですね。

 手術の際に、患者の取り違えや左右の取り違えというミスは何度か起きています。そのようなミスを他人事にしないで再発防止に役立てれば、被害を受けた人も少しは救われるでしょう。

 今では多くの病院で患者取り違えや手術部位の間違いを防ぐ手段が講じられていると思います。うちの病院でも患者にはネームバンドを着けて貰い、手術室に入室するときには患者が自分で名乗り、受ける手術(左右を含めて)を言い、看護師が二人でネームバンドと手術申し込み票を確認することになっています。

 麻酔導入前には麻酔科医が患者を確認し、手術前には術者、麻酔科医、看護師が全員で患者名と術式(左右の確認も)を確認するタイムアウト制を採用しています。それで完璧かどうかは分かりませんが、出来ることはするべきなのでしょう。

 以下は一年前に起きた事故の記事です。健常な腎を摘出され、癌を残されたのですから堪りません。チェックシステムがなかったのだとしたら、医療安全に対する意識が低いと判断されても仕方がないでしょうね。現場の個人に任せていたら、必ずうっかりミスは起きますから。

医師2人を書類送検 左右取り違え腎臓摘出
2011年2月7日 提供:共同通信社


 栃木県警小山署は4日、腎臓がん手術の際、左右を取り違えて正常な腎臓を摘出したとして、業務上過失傷害の疑いで、小山市民病院(同県小山市)に勤めていた男性医師2人を書類送検した。2人は容疑を認めているという。

 送検容疑は昨年2月10日、同病院の泌尿器科長で執刀医だった男性医師(49)と別の男性医師(40)は、小山市の男性患者(70)の手術で健康な左の腎臓を誤って摘出、損失させた疑い。

 小山署によると、執刀医は手術箇所の皮膚に印を付け忘れ、もう1人の医師はコンピューター断層撮影写真の裏表を間違えて示したため、左側を摘出したという。

 同病院は、男性患者は転院先で抗がん剤治療を受けており、容体は安定していると説明している。

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2010.11.30 17:29 |  診療  |  医療制度 / 行政  |  医療事故  |  bamboo  | 推薦数 : 4

鑑定次第

 机上の空論の鑑定で涙を流した医師も多いことと思いますが、実情を反映した鑑定さえしてもらえれば裁判官もきちんと判断してくれるようです。まずは判決前の記事を全文引用します。

医療事故:専門外の診療で急死 当直医の責任どう判断 あす控訴審判決--福岡高裁
毎日jp
 胸痛を訴えた男性が大分県宇佐市の病院で当直医の診断を受けた後に急死した医療事故を巡り、1審大分地裁中津支部が病院の過失を認め遺族に約5100万円を賠償するよう命じた訴訟の控訴審判決が26日、福岡高裁(広田民生裁判長)で言い渡される。病院側は控訴審で「地方の病院は当直医の確保がやっと。夜間・休日の救急医療を担う当直医に専門医と同レベルの注意義務を課せば、地域医療の崩壊が加速する」と主張しており、高裁の判断が注目される。【岸達也、高芝菜穂子】

 1審判決によると05年11月18日夕、胸部に痛みを訴えた男性会社員(当時42歳)が救急病院を受診。病院は当直態勢で、内科の医師が心電図などを基に逆流性食道炎の疑いと診断し、胃薬を処方した。男性は病院を出た約10分後に倒れ、別の病院に搬送されたが、急性心筋梗塞(こうそく)で死亡した。内科医は急性心筋梗塞の治療経験がなかったという。

 心電図の自動解析装置は「異常なし」と判定していたが、1審は、心電図検査が急性心筋梗塞の所見を示していたと認定。循環器の専門医への相談や血液検査、超音波検査をすべきだったとして病院側の過失を認めた。病院側は判決を不服として控訴した。

 控訴審で病院側は循環器病の専門医、木村剛・京都大教授の鑑定書を提出。木村教授は当時発症していたとみられる心臓疾患と逆流性食道炎などの症状が酷似しており「専門外の当直医に、専門医でなければ気づかない軽微な心電図の変化などから診断を要求するのは無理」と指摘した。病院側の弁護士は「高裁の判断が1審同様なら、専門医がそろわない救急病院は難しい患者を引き受けづらくなる」と話している。

 一方、遺族側の弁護士は「事故が起きた病院には循環器の医師もおり、適切な措置を講じていれば救命できた」としている。


 自動解析装置が当てにならないこともあるのはその通りですが、専門外の医師の判断だって、専門家から見たら当てになりません。当該病院に循環器の医師がいたことは事実でしょうが、24時間いつでも配備できるほどいたはずはありません。

 そもそも日本の救急医療は、宿直扱いの当直医によって支えられています。毎日いろいろな科の医師が交代で行い、徹夜で働いても、宿直扱いなので次の日も通常業務です。休日や夜間に急病になったからといって、専門医に診て貰える診療体制ではないのです。その代わり、安上がりでコンビニ並みのアクセスが可能となっています。よその国だって、初診で専門医に診て貰えることはないでしょう。

 専門医にいつでも診てもらえるのは、昔風に言えば、王侯貴族だけです。国民全部にそれだけの医療を保証するなんて事は不可能です。高裁でも病院敗訴となれば、専門外は診ないという風潮が加速するでしょう。救急の現場に各科の専門医をそろえることは不可能ですから、要するに救急医療が崩壊すると言うことです。

 そして判決は、以下の通りです。木村剛教授の鑑定がものを言ったのでしょう。 

診断めぐり遺族が逆転敗訴 「当直医に専門判断は酷」
10/11/29 記事:共同通信社

 大分県宇佐市の佐藤第一病院を受診した男性会社員=当時(42)=が帰宅途中に急性心筋梗塞(こうそく)で急死したのは診断ミスが原因として、遺族が同病院を経営する医療法人明徳会(宇佐市)に損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、福岡高裁は26日、約5100万円の支払いを命じた一審大分地裁中津支部判決を取り消し、請求を棄却した。

 広田民生(ひろた・たみお)裁判長は判決理由で、男性を診断した当直医の専門が一般内科で、急性心筋梗塞の治療に携わった経験がないと指摘。「循環器専門医と同等の判断を要求するのは酷で、心電図で急性心筋梗塞の疑いを見逃したことはやむを得ない」と遺族の主張を退けた。

 一審判決は「心電図が急性心筋梗塞の所見を示しており、当直医が見落とした」として、病院側の過失を認めていた。

 判決によると、男性は2005年11月18日夕、胸の痛みを訴えて佐藤第一病院を受診。当直医が心電図検査で逆流性食道炎の疑いがあると診断し、男性を帰らせた。男性は帰宅中に倒れ、別の病院に搬送されたが、急性心筋梗塞で死亡した。


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