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2008.09.10 20:46 |  診療  |  開業 / 病院経営  |  医療制度 / 行政  |  bamboo  | 推薦数 : 2

医療安全のために

 MRIC医療メルマガ通信からいつものように転送歓迎の記事が届きました。医療安全のためにはとても重要な意見だと思うので、転載します。

【はじめに 医療安全委員会の設立に向けて】

医療事故や医療過誤、そして相次ぐ医療訴訟を背景に、日本でも現在、医療安
全調査委員会の試案が厚生省の会議で議論されており、この試案(第三次試案)
を基にした法案の作成と国民からの意見聴取が予定されています。これに際し、
日本が世界標準の医療安全委員会を設立する基準たりうるのが、アメリカ合衆国
・連邦復員軍人局の患者安全ナショナル・センター(1999~)が掲げる医療安全
のポリシー(1)です。同センターは全米の復員軍人病院を運営し、医療安全シ
ステムの重要な世界的モデルのひとつとされています。

それでは、連邦復員軍人局の患者安全ナショナル・センターのホームページか
ら、医療安全システムの基礎となる考え方をご紹介致します。


【Culture Change:Prevention,Not Punishment(文化の変化:予防、刑罰を与えない)】

「復員軍人病院の患者安全へのアプローチ」

1999年に出版された医学研究所(the Institute of Medicine)の画期的な報
告である「人間は間違えるものである(To Err is Human)」に先立って、事実
上、全てのヘルスケア機関は患者に害を及ぼした原因の調査を行ってきた。しか
しながら、体系的に問題を解決しようと試みるアプローチはほとんど存在しなかっ
た。

従来の調査では、有害事象に関係した個人と失敗に焦点を当ててきた。それに
より個人の名前を挙げて罪を負わせるもので、有害事象の予防よりも処罰(刑罰)
を強調したものだった。

復員軍人病院では、「エラーをなくすこと」から「患者への害を減らすあるい
は害をなくすこと」へそのゴールを変換し、個人の行為に焦点を当てるよりも医
療ケアシステムの存立可能性を調べることで、多くのことが成し遂げられた。

我々のゴールは単純である:ケアの結果として、患者に対する不意の(=故意
でない)害を減らし、予防すること。

患者への害を減らすあるいはなくすことが、患者安全のための本当の鍵である。
エラーをなくすことだけに焦点をあてた試みは失敗に帰するであろう。個人のエ
ラーをゼロにすることは無理である。ゴールは"誤りに寛容な"システムの構築
である。たとえ個人が誤りを犯しても患者への害につながらないシステムである。

こうして我々は復員軍人病院の患者安全プログラムの基盤を、処罰(刑罰)で
はなく予防に焦点をあてるような問題解決型システム・アプローチに置いた。我
々はシステムの脆弱さに照準を定め、それを排除するために、航空機産業や原子
力発電のような"高信頼性"(を要求される)組織からの方法を学び、その考え
方を応用している。

例えば、"誤りへの寛容"の原理も、"高信頼性"組織がそのシステムを構築
する際に長年使ってきたものである。そして安全性も、ヘルスケア組織のものを
圧倒的に凌駕している。

我々は人々を標的にはしない。個人の名前を挙げて、罪を負わせる過去の文化
に加わるつもりはない。我々は繰り返し発生する問題、すなわちシステムに端を
発し、無視されたり気づかれないままとなっている問題の連鎖を断ち切る方法を
探している。

これを実行するための最も重要な方法の一つは、時にニアミスと呼ばれる身近
なサインから学ぶことである――それらは実際、有害事象よりももっと高い頻度
で起こっている。このような方法で問題点に取り組むことは、結果として安全な
システムであるばかりか、起こりうる問題を継続的に明らかにしては解決してい
る全ての人々の努力に焦点をあてることになる。

だからといって、このことが在郷軍人病院が全くの処罰(刑罰)なしの組織だ
というわけではない。我々はどの行為が処罰(刑罰)の対象になるのか、ならな
いのかを線引きするシステムを持っている。故意に安全でない行為を行ったと判
定された有害事象だけが、処罰(刑罰)の対象となる。患者と関係を持つという
ような、故意に安全でない行為をしたときは、刑法、患者との不適切な(肉体)
関係法、アルコールもしくは薬物濫用や患者虐待などに関係する法律の対象とな
る。

こうしたアプローチを組織横断的に統合させることで、一定レベルの信頼と、
安全の文化の永続につながる努力の焦点が創出される。


【Root Cause Analysis(RCA、基にある原因の分析)】

上記の患者安全のアプローチへの基本的な考えに続き、有害事象やニアミスに
関して「どんなことが起こったのか」「なぜ起こったのか」を見いだし、再発予
防のためにできることを決定するRoot Cause Analysis(RCA、基にある原因の分
析)と呼ばれる集学的チームアプローチのプロセスが記載されていますので、以
下にご紹介します。

通常、臨床の第一線で働く現場の人間こそ、問題点および解決法を見いだす一
番良いポジションにいるので、復員軍人病院でもRCAチームが患者安全の改善を
図るために必要な解決法、検査、医療機器を考案し、結果を見極めることとなっ
ている。

*RCAのゴールは、

・何が起こったか
・なぜ起こったのか
・再び起きないよう予防するためになすべきこと

を見いだすことである。

RCAは、予防戦略を明らかにする手段であり、罪を負わせる文化を越えて「患
者安全の文化」を構築する努力の一過程である。RCAでは、常に再発防止を念頭
においたゴール設定がなされるという点で、病気の診断に似たプロセスで根本原
因を見いだす。


*RCAは

1.第一線のサービスから専門家を参加させる学際領域である。
2.その状況に最も精通した人を参加させることである。
3.個々の原因や効果のレベルで「なぜか」を尋ねることによって、継続的により深く掘り下げることである。
4.システムを必要とされる変化を明らかにするプロセスである。
5.できる限り公平なプロセスである。

*完璧である為には、RCAは以下の内容を含んでいなければならない。

1.人あるいは他の因子を決める。
2.関係するプロセスとシステムを決める。
3.「なぜ?」という質問を繰り返すことにより、基礎のある原因と効果システムを分析する。
4.プロセスやシステムをどれだけ改善できるかを決める。

*信頼できるためには、RCAは、

1.組織のリーダーシップとプロセスとシステムに最も密接に関連した人を参加させなければならない。
2.本質的に首尾一貫していなければならない。
3.関係する論文を考慮しなければならない。


【結論 罪を負わせる文化からの離脱】

既に欧米の先進国は罪を負わせる文化を超えて、医療安全システムを構築に取
り組んでいます。医療安全システムに関して2006年に発表されたイギリス議会の
報告書「患者のためのより安全な場所:患者安全を改善するために学ぶこと」
(2)でも、患者安全ナショナル・センターの医療安全のポリシーは紹介されて
います。そして同報告書は、「毎日、NHS(National Health Service)は100万
人を超える人々を首尾よく診療している。しかしながら、ヘルスケアは国民、技
能、テクノロジー、そして医薬品を含むある種の複雑な相互関係に依っている。
時には、外科的治療は悪い方向に進み、医薬品投与の際のエラーは起き、患者は
他の有害事象をこうむる。患者の安全を改善する為の動きは、2000年に保健省大
臣のリポート『記憶のある組織』に始まった。罪を負わせる文化と、学んだ知識
を共有するシステムの欠如が、医療安全の個別の事象を明らかにしてその数を減
らすことの重大な障害となったことが、このリポートで明らかになった。」と結
論付けています。罪を負わせる文化からは、医療安全のためのシステムは生まれ
ないのです。

翻って、これから法案化の手続きに入る日本の第三次試案は、いまだに罪を負
わせる文化から抜け出せていない内容です。日本の医療安全委員会のシステムを
世界標準から逸脱させず、正常に機能させるためには、モデルとしての欧米の先
進国の医療安全の文化を学び取り、拙速ではない十分な議論を重ねてから法案の
作成に着手することが不可欠かつ最重要といえるでしょう。

参考資料
(1)アメリカ合衆国復員軍人局・患者安全ナショナル・センター
  「文化の変化:予防、処罰(刑罰)なし」
  http://www.patientsafety.gov/vision.html

(2)イギリス議会・「患者のための安全な場所:患者安全を改善するための学習」
A safer place for patients: learning to improve patient safety
  http://www.publications.parliament.uk/pa/cm200506/cmselect/cmpubacc/831/831.pdf


著者経歴
関根 利藏
1988年 神戸大医学部卒
1989年 国立国際医療センター内科
1991年 東京医科歯科大学医学部循環器内科
2001~2002年 オランダ国立エラスムス大学メディカル・センター(心臓移植ユニット)
2006年 葛西循環器脳神経外科病院内科
日本内科学会認定総合内科専門医、日本循環器学会認定循環器専門医

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2008.06.27 05:38 |  診療  |  開業 / 病院経営  |  医療事故  |  bamboo  | 推薦数 : 1

謝罪と遺憾の意の違い

 「謝罪」を辞書で引くと「罪やあやまちをわびること」とある。つまり、謝罪するということは罪や過ちを認めることなのだ。でも、「申し訳ない」とか「済みません」と言ったからといって、罪や過ちを認めたとは限らない。たとえば金メダルを期待されているアスリートが敗れたとき、「期待に応えられなくて申し訳ありません」と言ったとしても、何らかの罪や過ちを認めたわけではないだろう。それはただ単に、遺憾の意(残念な気持ち)を表明しているだけなのだ。

 医師だって、患者が亡くなれば「亡くなったのは私の責任ではありません」などといきなり言ったりはしない。「お役に立てなくて申し訳ありません」とか「大変残念です」などの遺憾の意を表明する医師が多いだろう。法的責任を問われかねない局面では、謝罪と遺憾の意の表明の区別は重要だと思う。

医療事故「謝罪マニュアル」 社会保険連52病院で導入へ

 全国で52の社会保険病院を運営する「全国社会保険協会連合会」(全社連、伊藤雅治理事長)は、医療事故が起きた際、患者本位の姿勢で対応する方法を示した米国の「医療事故・真実説明・謝罪マニュアル」をグループ病院で実施することを決めた。医療事故の際、患者側に十分な説明をしない病院が少なくない中、大手病院グループが謝罪マニュアルの実施に踏み切るのは初めて。 患者側に十分な説明 「謝罪マニュアル」は米国のハーバード大医学部の関連16施設で用いられており、昨年3月に発刊された。日本では同11月に翻訳されている。

  同マニュアルは、医療事故が発生した際は、隠さない、ごまかさない、逃げない姿勢が正しいと強調。〈1〉過失の有無が不明な段階でも、分かる範囲で状況を説明し、責任があることを表明する〈2〉遺憾の意を表す〈3〉過誤が判明した時は謝罪する〈4〉再発防止策を示す――などの対応方法を具体的に示している。

  マニュアルに従って行動したことで、米国ミシガン大病院と関連施設では、4年間に訴訟やクレームの件数が56%減少し、訴訟費用も300万ドルから3分の1に削減されたという。訴訟になった場合でも、謝罪したことを法廷で医師に不利な材料としないよう州法で定めた州もある。

  読売新聞社が先月、52の社会保険病院にアンケート調査したところ、39病院(75%)が既に「読了」し、いずれも「賛同する」と回答。「既に実施」が9、「今後実施する」が29、無回答が1病院だった。実施した際の効果については、以前から同様の方針で患者に対応してきたという病院を含め12病院が「大変効果がある」、15病院が「少し効果がある」と答えた。全社連は9月の各病院の管理者会議などで実施を徹底する。

  全社連の今年3月の統計では、1998~2006年度の9年間で計407件の医療事故などが報告され、28件が係争中、87件で患者側と交渉が続いている。

  伊藤雅治理事長の話「医療事故の民事訴訟は、患者、病院側双方が納得のいく解決方法にはなりえない。事実を隠さずに伝え、患者側と対話することで決着を目指す医療を進めたい」

  謝罪マニュアル 原題は「When Things Go Wrong:Responding ToAdverseEvent」(トラブルが起きた時~医療事故にどう対応するか)。翻訳した埴岡健一・東大特任准教授らのグループは、原著の趣旨をくみ、邦題を「医療事故・真実説明・謝罪マニュアル」とした。

 (2007年8月14日 読売新聞)

 この「医療事故・真実説明・謝罪マニュアル」の肝は、責任逃れをせずに、過誤があれば素直に認め謝罪するということだろうと思う。当然のことながら、何ら過誤がない場合には謝罪ではなく、遺憾の意を表明するだけだ。その違いを知らないのか、知っていてもミスリードするつもりなのか、こんな記事を書く新聞社がある。

医療事故マニュアル:まず患者に謝罪 過誤判明前でも--全社連採用

  全国52カ所の社会保険病院を経営する全国社会保険協会連合会(全社連、伊藤雅治理事長)は、医療事故が起きた際に、過失の有無に関係なく患者側にまず謝罪することを柱とした「医療有害事象・対応指針」を策定し、今月から運用を始めた。責任が明らかになるまで謝罪はしない多くの医療機関とは正反対の対応で、病院グループ全体でマニュアル化した例はないという。全社連は「患者本位の医療への一歩」と説明している。

  指針の基になったのは、米国ハーバード大医学部が06年に刊行した「真実説明・謝罪マニュアル」。東京大の研究者グループが翻訳し、全社連が日本の病院向けに修正したうえで大手病院グループで初めて採用した。  指針は「隠さない、逃げない、ごまかさない」が基本方針。過誤の有無が明らかでない段階でも、患者の期待に反した結果になったことへの「共感表明謝罪」をするとしたのが特徴だ。

  具体的には、従来は「院内で十分検討した後、病院の統一見解を患者に説明する。親切心や同情で、安易に責任を認めたり補償を表明するのは慎まねばならない」としていた点を、「何が起こったかを直ちに説明し、遺憾の意を伝える」と改めた。最初の説明役についても、「診療科の責任者や病院管理者が複数で」としていたのを「治療を実行した担当医が適任で、担当看護師の出席も患者の助けになる」と変更した。

  同様の対応を04年から実践していた社会保険相模野病院(神奈川県相模原市)では、職員からの有害事象(患者に望ましくない事態が発生すること)の報告が倍増し、透明性が飛躍的に高まったという。指針策定の中心になった沖田極・下関厚生病院長は「医療事故の紛争の多くは、最初のボタンの掛け違いが原因。患者と医師の仲立ちをするメディエーターの養成も進め、新たな医療安全文化を育てたい」と意気込む。

  「謝罪マニュアル」の普及を進めている埴岡健一・東京大特任准教授は「患者と医療側が同じ目線に立った画期的な取り組み。国立病院機構なども追随してほしい」と話している。【清水健二】

 毎日新聞 2008年6月25日 東京夕刊

 読売新聞の記事は10ヶ月前の記事で、まだマニュアルを採用するかどうかの検討段階のものだから、その後最初から謝罪するように変更になったのかと思った。でも、記事を読み進むと、やはり「遺憾の意」と書いてある。見出しは明らかに「遺憾の意」を「謝罪」にすり替えている。おそらくマニュアル自体は以前と大きな変更はないのだろう。そうすると、「遺憾の意」と「謝罪」を番号まで振って区別しているのに混同したことになる。実際には署名記事でありながらマニュアルそのものを読みもせずに記事を書いているのだろう。読んでいてこんな見出しを付けたのだとしたら、よっぽどの間抜けか悪意の持ち主だと思う。

  マニュアルはここで読めます。私には「責任を取る」のニュアンスが英語と日本語ではだいぶ違うのではないかと思われました。また、「過誤」の定義にも違和感があります。

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2008.06.20 17:43 |  診療  |  開業 / 病院経営  |  医療事故  |  bamboo  | 推薦数 : 3

点滴事件

 いつもは医療に警察が介入することに批判的なのだが、伊賀の点滴による集団感染については筆も鈍る。そのことを非難する某掲示板での書き込みもあるが、要するに、今回の事件は身につまされないのだ。 

  福島県の大野病院や、奈良県の大淀病院の事例なら、専門は違っても、自分ならもっと酷い対応しかできなかったかも知れないと思う。また、たとえ致命的な失敗だったとしても、ついうっかりすることは自分にもあることなので、当事者を罰してお終いにするのではなく、うっかりミスが重大な事態にならないようなフェイルセーフシステムの構築を望みたい。 

 詳しい分析はDr. I 先生の点滴作り置きは、「悪」か?でなされているので、興味のある方はご覧ください。リンク先はシリーズの現時点で一番新しいエントリです。出来れば最初からどうぞ。

  当ブログでは、さらっと流す予定ですが、最新の情報では、作り置き以外に清潔操作に重大なミスがあった模様です。

残液と消毒綿容器からセラチア菌検出 三重・点滴事故

 2008年6月19日13時31分 asahi.com

 三重県伊賀市の診療所「谷本整形」(谷本広道院長)で鎮痛薬の点滴を受けた患者が相次いで体調を崩し、1人が死亡した医療事故について、三重県は19日、同診療所で汚染された点滴液による院内感染だったと断定した。15人の患者が出た9日の被害について、患者の血液や使用済みの点滴液の空容器の残液点滴液の調合の際に使う消毒綿の容器から同じ種類のセラチア菌を検出。消毒綿の汚染と点滴液の長期の室温保管で、点滴液内に菌が増殖したことが原因としている。

  県保健環境研究所による検査で、9日に点滴を受けた患者6人の血液、点滴液の容器7パックの残液、消毒綿の容器から、セラチア菌の一種、「セラチア・リクファシエンス」が検出された。

  県によると、同診療所では点滴液を調合する際、点滴容器の注入口を消毒綿でふいていた。消毒綿には、アルコールではなく、本来10~50倍に薄めて使う消毒液「グルコン酸クロルヘキシジン」を千倍にして使っており、県は殺菌効果がなかった可能性が高いとみている。消毒綿は日常的に作り置きされ、看護師らは、素手で脱脂綿をつかんで容器の中に入れて作っていたという。不衛生な環境での点滴液の作り置きが常態化していたとみている。

  看護師らは作り置きした点滴液が少なくなると追加で調合。診療終了後の余りは捨てずに、日常的に冷蔵庫でなく机の上で保管して翌診療日に持ち越していた。7日以前に作られ、月曜日の9日に持ち越されたのは20本以上あった。ただ、点滴液に調合日の記載がなく、何日に調合されたものか分からないという

 実を言うと、最初にこの事件を知ったとき、朝作った点滴を夕方使用したのだと思っていた。それで敗血症になることがあるとは信じられないと思っていた。麻酔導入に使用するプロポフォールという静脈麻酔剤はとても腐敗しやすいのだが、それでも注射器に詰めてから8時間までは使用可能となっている。特に感染の危険のある高カロリー輸液であっっても、清潔操作を心がければ24時間くらいかけて輸液しても問題ないはずなのだ。

  でも、徐々に情報が出てくるに従い、これはとんでもないことが行われているのかも知れないと思うようになった。その後の院長の弁明を見ても、なんだか胡散臭い。「うちには風呂がないんです」と言うのを聞いて、「何だろうこの人は」と思った。

  あくまで上で示した報道が正しいという前提だが、この診療所の衛生観念はあまりにも酷い。セラチア菌は何処に出もいる常在菌で、水たまり=セラチア菌 と言っても間違いではないくらいだ。最近は消毒用アルコール綿は単包装になっているものが多いが、作り置きのアルコール綿によるセラチア菌感染が教訓になっている。それがこともあろうに効果がありそうもない濃度の消毒薬内でセラチア菌を繁殖させ、点滴内容を汚染し、更に数日放置して繁殖するに任せたのが事実なら、あまりにも酷い。

  と言うわけで、今回の事例はちっとも身につまされない。自分なら決してしないことだからだ。だからといって、警察に任せるべきだと思っているわけでもない。やはり罰するためではなく、真相を究明し、再発防止に役に立つ調査機関が欲しいことに変わりはない。只、今回は声高に言いにくいだけなのだ。

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2008.05.16 12:43 |  開業 / 病院経営  |  医療制度 / 行政  |  医療事故  |  bamboo  | 推薦数 : 9

研修医を守れ

 しばらく看板に偽り有りの日記が続いていたが、今回は久しぶりに医療報道について。始めに共同通信の記事を読んだのだが、何がなんだか分からなかった。書いた記者には分かっているのだろうか。

男性医師を書類送検 適切な検査せず女性死亡

記事:共同通信社 【2008年5月14日】

 長野県警南佐久署は13日、適切な検査や治療をしなかったために頭痛を訴えて来院した女性=当時(55)=が死亡したとして業務上過失致死の疑いで、同県佐久市の男性医師(29)を書類送検した。

  同署の調べでは、医師は2004年10月23日午後2時ごろ、長野県佐久市の佐久総合病院に救急外来で来院した女性が激しい頭痛とくも膜下出血の可能性を訴えたにもかかわらず、CTスキャンなどによる検査や治療をしなかった疑い。女性は翌年1月、くも膜下出血で死亡した。医師は「判断ミスだった」と認めているという。

 医師は当時、2年目の研修医。05年1月、夫が県警に告訴していた。  佐久総合病院の夏川周介(なつかわ・しゅうすけ)院長は「病院側の教育、管理体制上の問題もあり、本人の責任ではないと考えている」と話した。

 受診したのが2004年10月で、クモ膜下出血を患者または家族が疑っているのにCTなどの検査をしなかったところ、翌年1月にクモ膜下出血で亡くなったらしいことは分かります。これではクモ膜下出血が起きたのは1月で、受診時には何ともなかったような書き方ですが、だったら書類送検されるわけがありません。詳しい情報を探してみたら、次のような記事を見つけました。

くも膜下出血見逃し女性死亡 佐久病院医師を書類送検

 信濃毎日新聞 5月13日(火)

  県厚生連佐久総合病院(佐久市臼田)で2004年10月、頭痛を訴え受診した佐久市岩村田、主婦小林美幸さん=当時(55)=がくも膜下出血で死亡し、夫の哲さん(59)夫が医療ミスがあったとして告訴していた問題で、南佐久署は13日、診察した同病院の深沢正之医師(29)=佐久市中込=を業務上過失致死の疑いで地検佐久支部に書類送検した。

 調べによると、深沢医師はくも膜下出血の初期段階を疑い、適切な検査と治療をしなければならなかったのに怠った過失により、05年1月12日、同病院で小林さんを死亡させた疑い。同日、告訴状を受理し、捜査をしていた。深沢医師は過失を認めているという。

  同署などによると、小林さんは04年10月23日、後頭部に急激な痛みを感じ、同病院の救急外来を受診。「肩凝りによる頭痛」と診断され帰宅したが、数時間後に意識不明になって同病院の集中治療室(ICU)に入院し、意識が戻らないまま死亡した。受診時に小林さんはくも膜下出血の恐れを伝えたが、深沢医師はCT(コンピューター断層撮影)検査などをしなかったという。深沢医師は研修2年目で、当日は土曜日だった。

 同病院の夏川周介院長は「結果的には判断ミスだった。今後の経過を見守りたい」としている。

 哲さんは「医師はくも膜下出血の症状をよく知らなかったようで憤りを感じる。病院側は示談を申し込んできたが断った。起訴されるか経過を見守りたい」と話した。

 今度は帰宅後に意識不明となったことが分かる。その後の入院時にクモ膜下出血の診断がついたのだろう。なぜ最初に「肩凝りによる頭痛」と診断したのか知りたいところだが、その点は不明である。実際にクモ膜下出血を疑うような項部硬直などの症状があったのかどうかなど、ミスかどうかの判断に役に立つ情報は、いつもの通り無い

 それでも実際の所、医師が未熟であったのは事実なのだろう。何しろ2年目の医師なのだ。問題は、なぜ2年目の医師が診察し、そのまま帰してしまったのかと言うことだろう。自分だけのかってな判断で帰してしまったのなら、やはり責任を問われても仕方がない気もする。でも、頼る指導医もいない状態でやらされていたのであれば、この医師を責めても何にもならない。問題はその様な体制を取らせた病院、その様な体制を余儀なくさせている医療環境にあるからだ。

  記事にするのであれば、受診時の医療体制について突っ込んだ取材をして欲しかった。誰かの発表を只垂れ流すのであれば、報道とは言えない。取材あっての報道ではないのだろうか。自分に高度な救急医療をする実力がないことが分かっていながら、当直表で割り振られ、強制的に救急医療をさせられて、放射線技師もいない状況で、CTを取ることもままならないという環境だったのなら、この医師も被害者だ

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2008.04.12 00:49 |  開業 / 病院経営  |  生活 / くらし  |  その他(医療関連)  |  bamboo  | 推薦数 : 2

記事でCM?

 点滴自体は医療行為だが、病気というわけでもなく、経口摂取が可能で脱水状態でもない人に行う点滴は医療と言えるのだろうか。何らかの暗示効果はあるのかも知れないが、医学的に見て、何か意味があるようには思えない。それでも「点滴バー」でググるといろいろなサイトがヒットするので、それなりに商売になっているのだろう。逃散した医師の選択肢の一つなのかも知れない。

昼休みに点滴はいかが? 東京・恵比寿にスペース

08/04/09記事:共同通信社

  お昼休みやデート前のちょっとした時間に点滴はいかが-。疲労解消などのため、病院に行かなくても点滴が受けられる専門スペースが東京・恵比寿にオープン、「健康な人がより健康になるために」と効果をアピールしている。

  「TENTEKI 10」。医療関連業務をフランチャイズ展開する東京都内の会社が、「恵比寿ガーデンプレイスクリニック」の全面協力で医師や看護師を常駐させ、医療行為の点滴を行う。点滴終了まで約10分かかるのが名前の由来だ。

  肉体疲労やストレス解消に効果のあるビタミン点滴(税込み2000円)が基本で、二日酔い防止や滋養強壮に効く「レッドパック」(同2500円)、日焼けによるしみやそばかすを軽減する成分が入った「ホワイトパック」(同3000円)などオプションを追加できる。

  担当者は「体のセルフメンテナンスへの意識が高まっている」と集客に自信を見せる。初回のみ医師による問診があり、初診料は1000円。携帯サイト登録で割引クーポンが携帯メールに届き、「健康メルマガ」配信サービスもある。土・日・祝日休診。問い合わせは03(5458)3128。    

 点滴バー自体は私でも以前から知っていることなので、今更ニュースバリューがあるとも思えない。それなのに何で記事にしたのかといえば、最後の電話番号がヒントになるだろう。つまり、これは記事の体裁を取ったCMなのだ。報酬を受け取るのが記者なのか共同通信社なのか知らないが、報道機関としては反則だろう。今までに問題記事を何度も書いているとは言え、落ちたものだ。

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2008.04.04 11:41 |  診療  |  開業 / 病院経営  |  医療制度 / 行政  |  bamboo  | 推薦数 : 6

麻酔科医のモチベーション

   頑張って困難な仕事を続けるにはモチベーションが必要だ。給与はモチベーションの一部にはなるだろうが、それが全てではない。私にとって最も大きいのは、必要とされているという実感だろう。

  国立がんセンター中央病院の麻酔科医が相次いで辞め、半減した。癌診療の面ではブランド病院だから、給料が安くても勤務したがる医師は多い。技術や知識の習得の面で有利だったり、キャリアとして認められたりするからだろうと思う。でも、麻酔科医にとってはそんなの関係ない。少なくとも、ブランド病院だからといって、麻酔科医としての資質の向上が図られるというわけではない。

  ブランド病院が本当に高度な医療を行っているとして、私がモチベーションを保って安い給料で働くとしたら、何が必要だろう。おそらく、本当に患者のためになる手術に参加しているという満足感ではないかと思う。もちろん只単に手術を可能にしていると言うだけでなく、出来るだけ安全に低侵襲の周術期を提供出来ているという自負と、それに対する評価も必要だろう。国立がんセンター中央病院のなかで、麻酔科医に対する評価はどうだったのだろう。麻酔の質には関心が無く、「とにかく手術さえ出来れば良いんだ」という空気はなかっただろうか。

麻酔医、相次ぎ退職 10人が5人に、手術にも支障 国立がんセンター中央病院

 記事:毎日新聞社【2008年4月3日】

国立がんセンター:麻酔医、相次ぎ退職 10人が5人に、手術にも支障

  ◇厚遇求めて転籍

  国立がんセンター中央病院(東京都中央区、土屋了介院長、病床数600)で、10人いた常勤麻酔医のうち5人が昨年末から先月までに相次いで退職し、1日の手術件数が2割減る異常事態になった。より待遇の良い病院への転籍などが退職理由で、「がん制圧のための中核機関」を理念に掲げる日本のがん治療の“総本山”に、全国的な医師不足が波及した形だ。【須田桃子】

 がんセンター中央病院は常勤医師約150人、1日当たりの外来患者約1000人と、国内でも最大級のがん治療専門施設。これまでは、1日当たり約20件の外科手術をしてきたが、術中の麻酔管理を担当する麻酔医が半減したことで、3月末から1日約15件しかできなくなった。

  手術までの待ち時間も今後、長引くことが予想されるため、特に急ぐ必要のある病状の患者に対しては、都内や患者の自宅周辺の病院の紹介を始めた。院内にも、麻酔医の不足を知らせるお知らせを掲示し、患者に理解を求めている。

  関連学会や各地の病院を通じ、麻酔医確保を図っているが、「すぐには解決のめどがついていない」(土屋院長)のが実情だ。

  土屋院長によると、退職の主な理由は、待遇の良い民間病院や都立・県立病院への転籍だ。同病院の職員は国家公務員で、30代の中堅医師の場合、給与は年間700万-800万円程度。一方、都立や県立病院は1000万円台、民間病院なら1000万円半ばから数千万円になるという。

  日本麻酔学会が05年にまとめた提言によると、日本では約4000施設で全身麻酔が実施されているが、同学会の会員が常勤でいる病院は約半分にとどまる。手術中の患者の麻酔管理に加え、患者の痛みを除く「ペインクリニック」や「緩和ケア」などに麻酔医の担当領域が広がっており、全国的な需要も高まっている。

  がんセンター中央病院も、「緩和ケア」研修を09年度から全研修医に義務付けることを決めたばかりだった。

  土屋院長は「中央病院は、医師が勉強する環境は十分整っているが給料は並以下で、施設の努力で確保するには限界がある。医師の絶対数を増やす政策が不可欠だ」と話す。

  乳がん患者団体「ブーゲンビリア」の内田絵子理事長は「国立がんセンターは全国の患者の精神的なよりどころでもあり、医師不足で手術件数が減ることは、患者にとって不安を駆り立てられる話だ。麻酔医不足は、緩和ケアの充実にも悪影響を及ぼす」と懸念する。

 ◇医療崩壊のサイン--医師不足問題に詳しい本田宏・医療制度研究会副理事長の話

 がん患者にとって最後のとりでとも言える国立がんセンターにまで医師不足の波が押し寄せた。大変憂えるべき状況で、医療崩壊が日本に起こりつつあるというサインだ。

 仕事から得るものは給料だけではない。給料以外に得るものの多い職種は安い給料でも人は集まるだろうが、特にその病院でなければならないという理由がない職種にとっては、安い給料に我慢する理由はない。そして、麻酔科医にとって、国立がんセンター中央病院という病院は、特別に得るものの多い病院ではなくなったということだろう。あるいは、元々得るものはなかったが、勤務を強制するメカニズム(医局制度)が破綻したのだろう。

  ところで、麻酔医という呼称はどうにかならないだろうか。この記事中にも「麻酔科医」と「麻酔医」が混在しているが、やはり「麻酔医」の方が多い。わざわざ麻酔科だけ「科」を抜く理由は何だろう。麻酔医と呼ぶ人も意識していない、潜在的な悪意があるのではないかと、私は疑っている。医師専用掲示板では、麻酔科医を挑発するために、わざわざ麻酔医と書くバカ医者もいるのだ。

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2008.01.23 20:52 |  診療  |  開業 / 病院経営  |  医療事故  |  bamboo  | 推薦数 : 1

ヘルニアで卵巣摘出

 昨日の朝、テレビを見ていたら「ヘルニアで誤って卵巣摘出」と言うアナウンサーの声が聞こえた。女の子の場合、ヘルニア嚢の中に卵巣が入っていることは時々ある。確かめもしないで取ってしまったのならうかつなことだと思った。でも、病院側は、特殊な例であってミスとは考えていないと説明しているようでもあった。何しろ朝の忙しい時間帯だったもので、あまりじっくりとは聞いては居なかった。記事を読んだのは今日になってから。

女児から誤って卵巣切除 三重病院がヘルニア手術で

 記事:共同通信社 【2008年1月22日】

  津市の国立病院機構「三重病院」(庵原俊昭(いはら・としあき)院長)で2005年、三重県内の生後9カ月の女児に鼠径(そけい)ヘルニアの手術をした際、誤って卵巣ごと患部を切除していたことが22日、分かった。  鼠径ヘルニアは脱腸とも呼ばれ、足の付け根付近で袋状に突出した腹膜に腸や卵巣が入り込み腫れる病気。

  病院によると、05年2月上旬、女児に全身麻酔をして開腹手術をしたが、執刀した小児外科医長の男性医師がヘルニア部分と一緒に2つの卵巣のうち1つを切除した。

  卵管と卵巣が離れた状態になっていたといい、手術中に触診するなどしたが、卵巣がヘルニア部分に入り込んでいることには気付かなかったという。

  術後の病理検査で、切除した患部に卵巣が含まれていることが判明。病院側が女児の家族に事故の詳細を説明した。

  22日、記者会見した井口光正(いぐち・こうせい)副院長は「まれなケースで、避けられなかった」とコメントした。残りの卵巣が機能しているかどうかは、患者が幼いため確認が難しく、誤切除の影響も現時点では不明としている。

 ほとんど3年前の出来事なのに、何故今報道するのだろう。そもそも「誤って切除」という表現が正しいのか疑問だ。専門家である小児外科医の執刀で、手術中に触診して内容を確かめても分からなかったとすれば、ミスではなく、起こりうる不幸な合併症だと思う。あるいは、病理検査で初めて分かったとのことなので、卵巣と言っても、未発達の機能の期待できない小さなものだったのかも知れない。だとしたら、残すよりは取って正解だろう。

  記事だけからは実際の所は分からないが、麻酔科医の私より、外科医の方が良く分かっているだろう。Atsullow-s caffee氏の医療事故?それとも学会報告?が参考になると思う。

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2007.11.16 23:26 |  診療  |  開業 / 病院経営  |  医療制度 / 行政  |  bamboo  | 推薦数 : 1

混合診療解禁なら

 勤務医はあまり経営のことは考えない。職人気質の医師が多いから、利益よりは仕事のできばえを優先する。手術の傷は安い糸で粗く縫っても、とりあえず傷がふさがれば規定の保険診療分の料金は貰える。でも、私立病院で利益をあげることを強制されているような場合を除いて、そんなことはしない。

  手術内容によって様々だが、みんな出来るだけ傷が綺麗に付くように努力する。高い糸を使ったり、手間暇かけて埋没縫合にしたり、スキンステープラーというホッチキスのようなものを使ったり、医療用接着剤を使ったりする。これらはみんな病院の持ち出しなのだ。混合診療が全面解禁なら、もう持ち出す必要はない。患者に請求すればよいのだ

規制改革会議 「混合診療」全面解禁へ意欲 第2次答申案重点項目に

11月16日8時32分配信 フジサンケイ ビジネスアイ

  政府の規制改革会議(議長・草刈隆郎日本郵船会長)は15日の会合で、年末までにまとめる第2次答申案の最重点項目に保険診療と保険外診療を組みあわせた「混合診療」の全面解禁を盛り込むことで合意した。厚生労働省は原則として混合診療を認めていない。規制改革会議では、医療技術の向上につながると判断。医療改革の柱に据えることにした。

  混合診療では、保険外診療部分が全額患者負担になる。欧米で認められた未承認の治療薬の服用などを自己負担で受けるなどの選択肢が広がるが、裕福な人ほどこうした治療を受けやすくなる。しかし、医療の安全性や有効性が十分立証されておらず、医療制度の荒廃につながったり、診療に格差が生まれたりするとの懸念も強く、厚労省は一部の診療を除き、禁止してきた。

  しかし、東京地裁は7日、混合診療原則禁止を「違法」と判断。15日の公開ヒアリングでも「患者団体のほか、大学病院や勤務医からも解禁の希望が強い」(松井道夫委員・松井証券社長)との意見が強く、全面解禁を答申に盛り込むことにした。

  厚労省や日本医師会では全面解禁に反対姿勢を強めているが、草刈議長は「舛添要一厚労相に直接働きかけていきたい」と語り、全面解禁に強い意欲を示した。

 本当に混合診療が解禁されたら、とりあえず傷がふさがるような医療が標準となるだろう。たとえ醜いケロイドになったとしても、追加料金を払わないのなら仕方がない。綺麗な傷跡にしたいのなら、自由診療で追加料金を払うようになる。なぜなら余分な経費がかかるからだ。

  今までは混合診療が禁じられていたから、たとえ余分な経費がかかろうとも請求できなかった。経費をケチって醜い傷跡を残すような医療を強制すれば、腕の良い医者は辞めてしまうかも知れないので、病院幹部も口を出さなかった。でも、自由診療として上乗せして請求できるのなら別だ。医者だって、自分の技術に対して正当な評価が下され、その分の金を払って貰うのは誇らしいだろう。こんな時代が、もうすぐやって来る

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2007.11.15 16:24 |  診療  |  開業 / 病院経営  |  医療制度 / 行政  |  bamboo  | 推薦数 : 2

置き去りは許されないが

 自分の年金を家族に横取りされ家にも入れて貰えない人が、料金も払わずにホテルに居座り、ホテルのレストランで只飯を食べ続けることは不可能だろう。すぐに警察に逮捕されるだろうし、ホテル側がたたき出しても非難されることはないだろう。でも、同じことでも、病院だと警察は逮捕してくれないし、たたき出したら非難轟々で、保護責任者遺棄の疑いで捜査されたり行政指導を受けたりする。

保護責任者遺棄:堺の病院、全盲患者を公園に放置 糖尿病で入院、職員が連れ出す

 記事:毎日新聞社【2007年11月14日】

 堺市北区の新金岡豊川総合病院(豊川元邦院長)の職員4人が9月、糖尿病で入院していた全盲の男性患者(63)を連れ出し、大阪市西成区の公園に放置していたことが分かった。職員らは放置直後に匿名で119番通報し、男性は救急隊に保護された。患者は治療費を滞納していたほか、トラブルも多かったといい、職員らは「退院可能なため知人に引き取らせようとしたが、断られたので放置した」と説明。病院側も事実を認めている。大阪府警西成署は既に保護責任者遺棄容疑で同病院を捜索し、カルテなどを押収している。

 同病院や堺市保健所によると、男性は約2年前から入院費用など治療費を滞納。約3年前から退院可能な病状だった上、自宅が判明したため、職員4人が9月21日午後1時ごろ、男性を車に乗せて大阪市住吉区内にある男性の自宅を訪れた。しかし、同居する前妻が本人の持病を理由に引き取りを拒否したことから、同2時20分ごろ、西成区内の公園で男性を降ろして放置した。

  職員らはその際「60代の男性が公園で倒れている。目が見えないらしい」と119番通報し、男性は保護された。救急隊員が同病院に問い合わせ、職員が放置を認めた。

 男性は約7年前に入院。治療費が滞納状況となり、備品を壊すなどトラブルもあったという。豊川院長の次男の泰樹薬局長は「職員の判断でやったことだが、とんでもないことをした。申し訳ない」と話している。  また、同保健所は、院長らが従業員の監督を怠った行為が医療法違反にあたるとして先月、改善策を提出するよう病院を行政指導した。

  同病院は83年に開設。病床数183床。【高田房二郎、花牟礼紀仁】  ◇「誰も指示せず」現場の判断強調??病院会見  堺市北区の新金岡豊川総合病院では、体調を崩したという豊川元邦院長に代わり次男の泰樹・薬局長らが会見した。何度も頭を下げたが「なぜ放置したか分からない。誰も指示していない」と、あくまで現場の職員の判断だったと強調した。一方で「放置するくらいなら、自宅に男性を降ろした方がよかった」とも発言し、患者軽視の姿勢も見え隠れした。男性にはまだ謝罪していないという。

 確かに放置した職員は悪いと思うけど、「何とかしろ」と言う圧力はあったのではないかと思う。確かに「捨ててこい」とは命令してはいないだろうが、相当の圧力がなければ放置などしないのではないか。4名の職員だけに責任を押しつけることにはもちろん反対だが、病院の窮状を放置して責任だけを押しつけている行政やメディアにも苦言を呈したい。

  入院している必要もないのに居座り、料金も払わず、傍若無人な態度で他の患者も居着かないような状況が事実なら、謝罪などしたくないだろう。私は医療関係者だから病院の事情もよく分かるが、毎日新聞の記事だと、患者にも多少問題があったかも知れないが、なんて酷い病院だろうと言う感想を持つ人も多いのではないかと推察する。同じ事例でも、視点が異なるとこれほど違う記事になるものかという実例をお見せしよう。

「患者置き去り」の深刻背景 医療費不払い、退院拒否に暴言

jcastニュース 2007/11/14

 大阪府堺市の私立新金岡豊川総合病院の職員らが全盲の入院患者男性(63)を公園に置き去りにした「事件」は、入院費用の不払いなどのトラブルが背景にあった。置き去りについては府警が捜査しているが、全国の病院では最近、治療費の不払いが深刻になっている。回収できなければ病院の負担になる。単純な患者虐待事件ではないのだ。

 3年前には退院できる状態に

 患者男性の公園置き去りがあったのは、2007年9月21日。各紙の報道などによると、豊川総合病院が男性の退院を決めたことを受けて、職員4人が本人の意思に反してこの男性を車に乗せ、大阪市住吉区のマンションの男性宅に連れて行った。が、男性の障害基礎年金などを管理していた前妻(63)がいて、男性の帰宅を断られた。前妻は自らの持病を理由にしたという。そこで、4人は、西成区の公園に連れて行って男性をベンチに座らせ、救急車を呼んだうえで男性を置き去りにした。 不審に思った救急隊員が男性に聞いたところ、置き去りが分かり、連絡を受けた府警西成署が保護責任者遺棄の疑いで捜査している。男性は、その後別の病院に入院しているという。 堺市保健所が病院側から受けた説明などによると、患者の男性は7年前に糖尿病の治療でこの病院に入院したが、3年前には退院できる状態になった。病院側は、退院して自宅から通院するか全盲の入所施設に移るよう促したが、男性は「自分がなぜ動かなければならないのか」と退院を拒否。看護師やヘルパーに対し度々暴言を吐いたり、ベッド近くの備品を壊したりするようになった。あまりに大声を出したり暴れたりするため、病院側が他の患者への迷惑を考えて、6人部屋に移したという。 さらに、男性の前妻が2年前から入院費用を男性の年金で払わなくなった。未収金は、185万円に上っているという。豊川総合病院総務課の鈴木信夫次長は、J-CASTニュースの取材に対し、「前の奥さんとなかなか連絡が取れなかったと聞いています。なぜ払わなくなったか詳しい事情は分かりません。男性本人は、払われていると思っていたようです」と説明する。

 未収金が増え、病院によっては経営に影響

この置き去り問題は、話をまとめると、退院拒否や入院費未納、暴言などのトラブルに困った病院職員らがなんとか自宅に帰そうとして失敗。苦肉の策として、救急車を使って他の病院に移ってもらおうとしたらしい。

 全国の病院では最近、暴言など患者のモラル低下のほか、治療費の不払いが問題になっている。特に、未収金の問題は、病院を悩ませているようだ。不払い分を回収できなければ病院が負担することになるだけに、日本医療法人協会などからなる四病院団体協議会が06年12月、保険者である自治体などの肩代わり請求を求めて集団訴訟を起こす動きを見せたほどだ。協議会関係者は、「推計では、ここ3年間で未収金が増える傾向になっています。病院によっては経営に影響が出るほど、かなり深刻と言えます。なんとか対策を考えなければ」と話す。

 厚生労働省でも07年6月、こうした動きを受けて、未収金問題に関する検討会をスタートさせ、対策を練り始めている。 豊川総合病院でも、未収金の問題はやはり深刻なのか。総務課の鈴木次長は、患者男性のケースについて、「(前妻との)交渉が甘かった」と反省したうえで、「一般的な話ですが、医療保険の個人負担分が増えたこともあって、未払いのケースが出ているようです。未集金に悩んでいるのはうちだけではありません」と明かした。

 ただ、患者男性を置き去りにしたことに対しては、鈴木次長は、「起こしてはならないことで、お詫びしたい。前の奥さんと自宅で十分に話し合いをして、理解されるようにもっと努力すべきだった」と話している。

堺市保健所でも10月末、医療法に定められた職員の監督を怠ったとして、文書で病院を行政指導している。

 この記事だと、最終的に行ったことは非難されても仕方のないことだが、病院もまた被害者であることがよく分かる。むしろ、患者や、年金を管理している前妻は善意の被害者などではないことが分かる。黒字の病院でも利益率は微々たるものだ。未収金があればすぐに赤字に転落するだろう。まして、営業妨害まであれば、どうにかして追い出したいのは当然だ。その様な状況を放置しないですむシステムを構築するのが行政の役目ではないのか。自分たちの怠慢を棚に上げて行政指導とは何事だろう。いかん、また血圧が上がってきた。

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2007.08.16 22:12 |  診療  |  開業 / 病院経営  |  医療事故  |  bamboo  | 推薦数 : 3

事実が明らかになるまで待てないの?

正確な 情報得てから 書きなさい

  警察の発表と病院の発表が異なるのならば、どちらが正しいのか取材するのが報道機関というものなのじゃないのか。よく分からないまま、警察の発表を垂れ流す見出しを付けるのはいかがなものか。 

術後ミスで医師書類送検 適切な治療欠き男性死亡

 記事:共同通信社 【2007年8月16日】

 栃木県足利市の足利赤十字病院で、手術後に気胸を発症した男性患者=当時(74)=に適切な治療行為を欠き死亡させたとして、足利署は16日までに業務上過失致死容疑で担当した男性医師(34)を書類送検した。

  調べでは、患者の男性は2004年6月、別の医師による心臓のバイパス手術を受けたが、3日後に肺から漏れた空気が胸にたまる気胸を発症した。男性医師はエックス線を撮っただけで経過観察とし、適切な治療行為を怠った疑い。患者は発症の約15時間後に呼吸不全で死亡した。

  足利赤十字病院は、男性医師が胸から空気を抜くチューブ取り付けなどの措置を取ったと説明。「ミスがあったかどうかはこれからの捜査を見守りたい」と話している。医師は既に別の病院に移っている。

 書類送検されるのは、たいてい死亡の原因を作った医師なのだと思うのだが、今回は治療をするべきと見なされた医師だ。気胸を作った医師はお咎め無しで、気胸の治療がまずかったと見なされた医師が刑事責任を問われている。なんだかいつもと違う。どうしてなのだろう。きっと基準なんて無いんだろうな。

  警察は気胸の患者を放置したと見ているようだが、病院はきちんと処置をしたと反論している。どちらが正しいのか取材したようには、記事を見る限り、思えない。それなのに、見出しは「適切な治療欠き男性死亡」だ。何で断定できるのだ。記事にする以上、事実関係が理解できるような情報を提供する義務があるのではないのだろうか。この見出しを見る限り、何でもいいから医者を悪者にしておけばいいという意図を感じてしまう。

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