| 日 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 2 | |||||
| 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 |
| 10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 |
| 17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 |
| 24 | 25 | 26 | 27 | 28 | 29 | 30 |
| 31 |
もう始めからミスだと決めつけていたことが分かります。医師が気の毒です。原告側弁護士
9月1日、産婦人科医先生と師長さんがお悔やみにこられましたよね。「子供の養育費を払え」とか「病院をめちゃめちゃにしてやる」といって胸倉をつかんだというのは事実ですか?
高崎さん
お悔やみではなく、ミスを謝りに来られるということで私たちは理解していたので。そうではなくてお悔やみだときいて。。。「全財産を使ってでも裁判に勝ってやる」といった覚えはありません。胸倉をつかんだということもないと思います。でも、父が先生の両肩をもってゆすって「ミスやったんでしょ!?」と言った。胸倉をつかんだという記憶はありません。
なかなか手厳しい。でも、真実を知りたいのではなく、何が何でもミスと言うことにしたいだけであることが明白になった。実はこの質問の前にも、病院との約束を一方的に反故にしたやりとりもあって、かなり弁護側はポイントを稼いだと思われる。病院側弁護士(金)
先週ね、国循にみんなで揃っていって産婦人科の先生と脳外科の先生にお話をきいてきました。でもあなたはこなかった。どうしてですか?
高崎さん
。。。。仕事が入っていまして。。。。特別な仕事で。
病院側弁護士(金)
一ヶ月以上前から予定日は決まっていたはずです。予備日もあったはずです。シフトを変えてもらったりできなかったのですか?
高崎さん
。。。。仕事の日にちはかえられないものと私は認識していました。
病院側弁護士(金)
あなたは真実を知りたいと常々言ってきましたが、「真実より仕事」と言うわけですね。
高崎さん
。。。。。。
(裁判官にまぁまぁと言われる。)
危機に際して医師が冷静さを失うようじゃ困るのだが、冷静に対処すると必死さが無いと訴えられてしまうと言うことでしょうか。お気の毒です。また、父親が町議を動かして、事実がどうであれミスを認めるよう迫ったようです。病院側弁護士(米)
今回は救急システムが上手くいかなかったわけですが、雑誌などを見ると病院が悪いと言っておられますね。でも必死で病院スタッフが搬送先を探していたのはあなたもご存知だったはずです。ちょっとやりすぎではありませんか?
高崎さん
でも必死さがあまり伝わってきませんでした。産婦人科の先生の声が小さかったり。
病院側弁護士(米)
必死さは声の大きさなんですか?その「あまり」の部分が裁判なんですね。ところでお父さまのお仕事は何ですか?
高崎さん
。。。。いわなければならないのですか?
病院側弁護士(米)
いいたくなければ結構です。
高崎さん
建築業です。
病院側弁護士(米)
地元では相当大きな力を持った建築業者さんだそうですね。これは聞いた話ですが、大淀町の町議会議員の特定の方が、早く病院のミスを認めて謝罪しろ!とおっしゃっていたという話はご存知ですか?
高崎さん
ボクは知りません。
病院側弁護士(う)
0:14の意識消失から1:37の痙攣までの間が今争点になっていますよね。 素朴な疑問なんですけれどね、0:14の時点ではCTを撮らなくていい、脳疾患ではないと決めたのは内科医の先生なんですよね。1:37にはCTの話はともかく搬送の準備を始めています。 どうして訴えている相手が、内科医じゃなくって、産婦人科医なんでしょうか。
高崎さん それは。。。。。。。(黙り込む)
ここは私も疑問。何で産婦人科医を訴えたのだろう。前の方の質問で、家族がCTを撮ってくれと言ったのは2時過ぎであることに争いはない。この時点では搬送の方向で動いているので、結果として搬送までに時間がかかったとしても、CTを撮るより搬送を急いだことに問題があるとは言えないだろう。
夫の証言を見ると、この訴訟が無理筋だという印象が強い。医師の目からは前から分かっていたことだが、たぶん素人目にも無理筋なのではないだろうか。どう見ても夫の証言はボロボロなのだが、もちろん発端を作った新聞は、そのような報道はしない。
午前0時14分ごろにCTを撮らないことを決めたのは内科医だと言うことは全くスルー。むしろ逆であるかのような報道だ。遺族「診断に疑問」 主治医は過失を否定 奈良・妊婦転送死亡
記事:毎日新聞社 【2008年7月15日】
大淀町立大淀病院で06年8月、分娩(ぶんべん)中に意識不明となり、19病院に搬送を拒否された後、転送先で脳内出血で死亡した五條市の高崎実香さん(当時32歳)の夫晋輔さん(26)らが町と主治医だった産婦人科医を相手に起こした損害賠償請求訴訟の第3回弁論が14日、大阪地裁(大島眞一裁判長)で開かれ、晋輔さんや主治医らに対する尋問があった。主治医は「子癇(しかん)(妊娠高血圧症候群の一種)だと思った。あの時の(処置の)進め方に間違いはなかった」と過失を否定した。晋輔さんは「(妻は)頭が痛いと叫んだ。素人の判断でも、脳の血管が切れたのではないかと思った」と主治医の診断に疑問を投げ掛けた。【高瀬浩平】
原告側は「午前0時14分ごろに意識を失って数分後に頭部CT(コンピューター断層撮影)検査をし、脳内出血と診断していれば、実香さんは一命を取り留めた」などと主張。被告側は「主治医が子癇発作と判断し、安静を優先させ、CT検査をしなかったことは適切。けいれんを起こした直後に転送先を探すよう依頼した措置も適切」と反論している。
尋問で晋輔さんは「主治医は子癇だと言って、当直の内科医は『脳だと思います』と言っていた」と証言。一方の主治医は、内科医から脳の病気を疑ってCTを撮るよう進言を受けたかどうか問われ、「記憶にない」とした。子癇を止めるには帝王切開しなければならないという医学的知識を聞かれ、「帝王切開には産婦人科医2人が必要だが、私しかいなかった。高次の医療機関に搬送することを考えた」などと説明した。
昨日、大淀病院の産婦が病死した事例の民事訴訟の口頭弁論があった。そのもようが以下のブログにアップされている。それぞれ何部かに分かれてアップされているので、リンクはトップページに貼らせて頂いた。どうしてこんなに細かく正確に記録をとれるのだろうかと、驚くような出来映えです。それぞれのブログの著者に感謝いたします。大切な情報源です。
順不同
3大新聞と言われている新聞社の英語のサイトで、根も葉もないエロ記事が配信されているなどと言うことが信じられるだろうか。でも、本当らしい。今は批判を受けて削除したようだが、何ら責任を感じていないようで、謝罪の言葉はない。
また、悲惨な事件を題材にクイズを出すなど、人間性を疑うようなことを日本語のサイト(これも削除済み)でもやっているようだ。今までにも毎日新聞には色々と言いたいこともあったが、要するにこういう新聞社だったのね。まだまだ買いかぶっていたみたい。詳しくは以下のリンク先をごらんあれ。ちょっとあきれて声も出ない。
今日はいつもと違ってスポーツ記事について書いてみる。とは言っても、医療報道と言えないこともない。
一昨日の朝日新聞で陸上競技の絹川選手が原因不明のウィルス感染症にかかっているという記事を読んだ。いつも楽しいコメントをするので好きな選手なのだが、気の毒なことだ。でも、血液検査でウィルス感染症だと分かったらしいのだが、だったらどうして原因不明なのだろう。感染症には詳しくないのだが、ウィルス感染であることは間違いないが、どんなウィルスだか分からないと言う血液検査とは何だろう。そもそも未知のウィルスによる感染症なら、防疫体制も取らずに放置して良いものなのだろうか。
なんて言う疑問を持っていたら、読売新聞のトンデモ記事が見事に爆釣な件(幻影随想)と言うブログや真夜中は別の人と言うブログを見つけた。医療関係者によると思われる「未知のウィルス感染症」のことと言うブログもあった。主治医とおぼしき松元整形外科内科クリニックのサイトにも行ってみた。主治医の松元氏は確かに医師免許を持つ本物の医師のようだが、その主張は普通の医師の受け入れられるようなものではないようだ。有り体に言えばトンデモ。
最初に読んだのが朝日新聞なので、 asahi.com 内で検索してみた。でも、トンデモと気がついたのか、ヒットしない。毎日新聞のサイトではスポニチの記事が載っていた。
読売新聞はこんな感じ。絹川愛:18歳の女子長距離ホープが謎のウイルスで五輪断念
陸上女子長距離のホープで昨年の大阪世界選手権一万メートル代表の絹川愛=めぐみ=(18=ミズノ)が、北京五輪を断念することになった。原因不明のウイルス感染症のため、選考会を兼ねた日本選手権(26日開幕、等々力競技場)の欠場が決定。宮城・仙台育英高時代から指導する渡辺高夫氏は6日「回避します。回復はしてきたけど、戦えない」と明言した。
2月ごろに左ひざに痛みを訴えた絹川は、通常の外的治療では治らず、痛みの部位も転移。血液検査などでウイルス感染症と診断された。当初は歩くのも困難だった。血清治療を受けて現在は簡単なトレーニングができるまで回復したが、試合出場は厳しい状況だ。絹川はこの日更新した自身のブログで「私としてはやはり戦わずして負けるのは悔しいです」と苦しい胸の内を明かした。(スポニチ)2008年6月7日
絹川選手本人は何と言ってもまだ子供だ。大人であるコーチ陣がしっかりしなくてはいけないと思う。もちろん報道陣も、トンデモさんの言うことを真に受けて記事にするようじゃ情けない。陸上長距離・絹川、五輪出場厳しく…謎の感染症完治せず
昨年の大阪世界陸上女子一万メートル代表の絹川愛(ミズノ)が、今月末に行われる日本選手権を欠場する可能性が高いことが5日、明らかになった。
原因不明の感染症が完治しなかったため。同選手権は北京五輪代表選考会を兼ねており、絹川の五輪出場は厳しくなった。
指導する渡辺高夫監督によると、絹川は昨年12月から今年2月にかけ、右と左の骨盤を疲労骨折。その後、左ひざに痛みが出た。通常の治療で治癒せず、痛みの部位が次々転移したため、4月に放射性同位元素診療と特別な血液検査を実施。通常の血液検査で正常値だった血液に異常が見つかり、ウイルス感染と診断された。
担当医の松元司医師は、「未知のウイルス感染で赤血球と白血球が変形していた。国内では報告のない症例。中国の昆明合宿での感染が疑われる」として、昨年3月の昆明合宿中に感染、潜伏期間を経て発症した疑いを指摘する。7月に英国で開かれる学会で、症例の発表を予定しているという。 (2008年6月6日03時07分 読売新聞)
駆け込みの連作とか、ほぼ意見も出尽くしたと思いますので、このエントリーのコメントとトラックバックのフォルダーを間もなく閉じます。世の中、自分の思い通りでないといけないとされる方は、ご随意にされたらよいでしょう。使えるものならマスメディアでも使おうという方には、また別途、連絡を取らせていただきたいと思います。
結局一方的に発信して批判を受け付けないところがマスメディアの特性なのだろうなあ。発言するものの信頼性というのは、匿名か実名かではなく、どれだけ反論に対して誠実に対応するかで決まるのだろうに。
もちろん喧嘩腰のコメントにも対応しろとは言わないが、コメント欄には多くの見るべき反論があった。反論に対して再反論するにせよ、一部に同意して建設的な内容に収束させるにせよ、物書きとしてやり様はあったはずだ。反論されたくないのなら、コメント欄のあるブログなんてやらなければいいのに。ちょっと偉そうに言ってみただけなのに、反論されてうろたえちゃったのだろうな。
「世の中、自分の思い通りでないといけないとされる方は、ご随意にされたらよいでしょう」と言うことで、ご随意にしたのだろうけど、言論を扱う職業としては、かなりのダメージだと思う。
点滴バー自体は私でも以前から知っていることなので、今更ニュースバリューがあるとも思えない。それなのに何で記事にしたのかといえば、最後の電話番号がヒントになるだろう。つまり、これは記事の体裁を取ったCMなのだ。報酬を受け取るのが記者なのか共同通信社なのか知らないが、報道機関としては反則だろう。今までに問題記事を何度も書いているとは言え、落ちたものだ。昼休みに点滴はいかが? 東京・恵比寿にスペース
08/04/09記事:共同通信社
お昼休みやデート前のちょっとした時間に点滴はいかが-。疲労解消などのため、病院に行かなくても点滴が受けられる専門スペースが東京・恵比寿にオープン、「健康な人がより健康になるために」と効果をアピールしている。
「TENTEKI 10」。医療関連業務をフランチャイズ展開する東京都内の会社が、「恵比寿ガーデンプレイスクリニック」の全面協力で医師や看護師を常駐させ、医療行為の点滴を行う。点滴終了まで約10分かかるのが名前の由来だ。
肉体疲労やストレス解消に効果のあるビタミン点滴(税込み2000円)が基本で、二日酔い防止や滋養強壮に効く「レッドパック」(同2500円)、日焼けによるしみやそばかすを軽減する成分が入った「ホワイトパック」(同3000円)などオプションを追加できる。
担当者は「体のセルフメンテナンスへの意識が高まっている」と集客に自信を見せる。初回のみ医師による問診があり、初診料は1000円。携帯サイト登録で割引クーポンが携帯メールに届き、「健康メルマガ」配信サービスもある。土・日・祝日休診。問い合わせは03(5458)3128。
「がんになっても、あわてない」という本があります。著者は同名のブログを開設している平方眞先生です。ブログでのプロフィールには「諏訪中央病院緩和ケア科部長(ただし部下なし)」とあります。何度もブログにおじゃましているうちに、何時か読んでみようと思っていました。このたび機会があって、読ませていただきました。
緩和ケアの専門家の書いた本ですから、ガンについても、緩和医療についても、必要な情報は書かれています。でも、著者のメッセージを一言で言えば、「死は誰にでも必ず訪れるのだから、まだまだ死が先のことだと思えるとき、冷静に死について考えられる今、死への準備をしておきませんか」ということだと思いました。そして、準備をするための参考資料として、著者の専門とする情報が提供されているように感じました。
驚いたのは、読みやすさです。家内も一緒に読んだのですが、やはり読みやすく分かりやすいと言っていました。専門家が一般向けに本を書くのは難しいことだと思っています。私もブログを書いていて、「何でこんな表現しかできないのだろう」と自己嫌悪に陥ることはたびたびです。でも、この本は、一般の人にも分かりやすく、疲れない文章で書かれています。文章のプロでもない医師が、このような本を出せることに驚きました。元々才能がある上に、仕事で丁寧な説明をしていることが役に立っているのでしょうか。
すでにガンにかかってしまった人には、情報源として有用です。また、今は健康で、何の心配もしていない人にも、一度じっくりと行く末を考えるために読んで欲しい本だと思いました。
医者というのは基本的には世間知らずだと思う。今までは医療に警察が乗り込んでくることがなかったから、あまり問題にならなかったが、これからは取り調べについても学ぶ必要があるだろう。前のエントリでも、「結果的に誤診だった」と言えば誤診と扱われることを書いた。大淀病院の事例でも、院長が「結果的にミスだ」と言ったために、ミスを認めたと報道された。世間というのは、決して善意で動いているわけではない。自分の身を守るには、自分で行動する必要があるだろう。警察は、世間以上に危険なところだと、あなたは知っているだろうか。
医療に関わる以上、患者の死は日常だ。そのうちのいくつかは、問題にしようと思えば問題になりうるだろう。遺族がその気になれば、今の時代、警察を動かすことは難しくない。そうなれば、あなたも取り調べを受ける可能性がある。準備しておいた方が良くないですか?
そこでお勧めなのが、「取調べを受ける心がまえ」という弁護士の書いたアドバイス。取り調べ調書を書くのは警察官で、警察官の仕事はあなたを有罪にすることです。不用意な発言や安易な妥協で、自らを窮地に立たせることの無いようにしましょう。
産経新聞の論説副委員長の『【経世一言】診療報酬 納税者もモノ申す 』と言う文章が医療系ブログで袋だたきに遭っている。中身を見れば無理もない。悪意と捏造による全くの世迷い言と言って良い。こんな文章を書くのはどんなバカだと思う気持ちもあるのだが、単なるバカでは論説副委員長は務まらないだろう。実際の所は、内容がでたらめなのは十分に承知の上で、世論をミスリードするために故意に刺激的な文章を書いたのだろう。社会保障費を減らすことで利益を受ける一団の提灯持ちと言ったところか。とんだ狸だ。
つっこみどころは満載なので、いちいち反応していたのではきりがない。反論しているブログはいくらでもあるので、ググればすぐに見つかる。興味があればそれらを読んで欲しい。ここでは他のブログであまり触れられなかったことを書こうと思う。私自身がいくつかのブログを読んで気になったのはこの部分。
果たしてそうだろうか。例えば、保険料や税で負担している公的医療費は、GDP(国内総生産)比で経済協力開発機構(OECD)の平均を上回っている。医師数も毎年、3500~4000人も増えている。
多くのブログで日本の医療費はOECD各国の中で最低レベルであること、医師数も人口比で最低レベルであることが指摘されている。それでは上記の文章はでたらめなのだろうか。よく読むと、でたらめではないのかも知れない。もちろんミスリードを目的とした卑劣な文章ではあるのだが。
事実がどうなのか私は知らないが、公的医療費は本当にOECDの平均を上回っているのかも知れない。もちろん自己負担額がその分少なくて、トータルの医療費は最低レベルなのだが。文章全体としても、税金を投入していることをことさら強調していて、医者を税金で喰わせてやっていると言わんばかりなのだが、税金が投入されたことによる受益者は自己負担の減る患者。税金の分だけ医療費が増えているわけではない。
さらに言えば、日本のようなフリーアクセスの医療環境はOECDの中でも特異な存在だろう。医療行為を受けるのべ患者数は日本が圧倒的に多いはずだ。日本での医療行為一回あたりの医療費は目も当てられないほど低いと言うことだ。医療関係者、とりわけ医師がべらぼうな労働をして、やっとOECD諸国の最低レベルの医療費を稼いでいると言うことになる。
あまりにもばかばかしい内容に、これ以上つきあう気も起きないので、関連するブログを貼っておきます。
http://tsukinohikarini.blog41.fc2.com/blog-entry-363.html
http://d.hatena.ne.jp/Yosyan/20071201
http://trias.blog.shinobi.jp/Entry/31/
http://skyteam.iza.ne.jp/blog/entry/405731/
11月22日の日記で麻酔科医の自殺という痛ましい事件について書きました。この件に関して、某医師向け掲示板で信じられない書き込みを見ました。この件は麻酔科医の薬物乱用だというのです。もちろん多くの医師から反発を受け、今ではこの書き込みは削除されています。
実際には医師ではない者が紛れ込んだのかも知れませんが、医師向けの掲示板でこのような書き込みがあるのでは、一般の方たちがどのように思っているか心配になります。ある麻酔科医からも、このブログで解説をして欲しいという依頼がありました。私と同じ心配をしているのかも知れません。
記事によると、「使われた筋弛緩剤は粉末のバイアル一本(十ミリグラム)で大人一-二人分の致死量にあたるという」とのことなので、マスキュラックスの10mgのバイアルが使われたのでしょう。以下、マスキュラックスがどのような薬で、どのような目的で使われるのか少し述べてみようと思います。
マスキュラックスは随意筋(自分の意志で動かせる筋肉)の収縮を妨げる薬です。要するに、筋肉が動かなくなる薬なのです。心筋や腸管の筋肉は随意筋ではないので動くことが出来ます。呼吸筋は随意筋なので動くことが出来ず、人工呼吸をしなければ窒息死します。そのため毒薬に分類されています。意識には影響がないので、乱用しようにも苦しいだけで楽しくはありません。おまけに命を失う可能性が高いので、乱用することは不可能です。
我々麻酔科医がどうして毒薬であるマスキュラックスを使うのかといえば、もちろん必要があるからです。どのように使うのか、開腹手術を例に見てみましょう。
痛みを抑えたり意識を失わせたりする薬だけを使って開腹すると、腹壁の筋の緊張によって、内臓が飛び出してきます。これではとても手術どころではありません。そのために、どうしても筋弛緩薬が必要になります。腹壁の筋肉が弛めば、腹壁を広げることが出来、腹腔を広く使うことが出来て都合がよいのです。
筋弛緩薬を使えば呼吸が出来ませんから、人工呼吸が必要です。人工呼吸をするためには気管に挿入した管を利用すると便利です。というわけで、麻酔導入時に気管挿管(気管に人工呼吸用の管を通すこと)をします。麻酔導入は静脈麻酔薬を使うことが多いのですが、それだけでは気管挿管時の咳などの反射を押さえられません。咳反射を押さえるためにも筋弛緩薬は有用です。結局麻酔導入時から筋弛緩薬を使います。
麻酔導入時に使われるマスキュラックスの量は、患者の体格にも依りますが、5mgもあれば十分です。つまり、それだけ投与すれば咳も出来なくなると言うことです。咳も呼吸の一つの形態ですから、咳が出来ないと言うことは呼吸筋が麻痺していると言うことに他なりません。つまり、人工呼吸をしなければ死亡すると言うことです。もちろん麻酔中には人工呼吸をしますから、問題はありません。
マスキュラックスのような毒薬以外にも、麻酔には危険な薬をたくさん使います。だからといって麻酔そのものを怖がる必要はありません。危険な薬を使うからこそ、麻酔科という分野が独立して、麻酔業務を専門に行う科が出来たのです。そのため、現在では麻酔は医療行為の中でも極めて安全な分野です。元々患者の側に危険因子があれば別ですが、麻酔そのものが原因で命を落としたり、重大な後遺症を残すことはほとんどありません。ほとんど無いと言うことは、ほんのわずかあると言うことではありますが、日常生活にも様々な危険が潜んでいます。麻酔だけを怖がる必要はありません。むしろ、手術の合併症の方が危険性が高いのではないかと思っています。
以上は分かりやすさを優先して書いています。医師から見たら細かいところに異論があるかも知れませんが、ご容赦ください。