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2010.03.04 19:06 |  診療  |  医療事故  |  その他(医療関連)  |  bamboo  | 推薦数 : 5

やっぱり産科医は危険だ

 ホメオパシーはそれ自体は本質的に無害なんですが、まともな医療の介入を阻むと悲劇的な結末を迎えることもあります。以下はそのような事例でしょう。これで訴訟に巻き込まれたのでは、産科医は浮かばれませんね。

 ヤフー知恵袋にこんな相談 が載っていました。おそらくは、しばらくすればリンクが切れるでしょうから、以下にまとめてみます。

 

相談内容は、助産師2名と自宅出産を試みたが死産となったので、助産師と提携病院を訴えたいというもの。どのような事例かというと、以下の通り。

41週3日にレメディで陣痛を起こした。

でも生まれず、陣痛に耐えながら42週0日目の深夜に助産師に頭を下げ『提携病院へ連れて行って欲しい』とお願いしたところ、「貴方は私を信じてくれないのね・・・」と言われ、却下された。

その後は浣腸されたり、レメディーを使ったりしたが出てこず、元々生まれなければ医療機関を受診する予定であった翌朝には胎児の心音を聴取できなくなった。

救急車を呼んだが、救急隊の到着前に生まれそうになり、助産師が押し戻した。

救急車で病院に搬送され、吸引分娩で胎児娩出。死産であった。


 レメディーというのはホメオパシーで使われる薬のようなもの。その実態はただの砂糖玉です。治療の元になるとされる何らかの物質を極限にまで希釈し、元の物質が全く含まれなくなったただの水をしみこませた砂糖玉ですから、本当にただの砂糖玉なのです。こんなものに治療効果があるはずはありません。要するに単なるおまじないにすぎないのです。

 こんなおまじないに頼って必要なな医療を受けなければ、 当然このような悲惨な結果を招くこともあるでしょう。はじめからまともな産科を受診していれば、おそらくは助かった命と思われます。生まれる前に命を奪われた赤ちゃんが気の毒です。

 関わった助産師を訴えることに異存はありませんが、どうして提携病院まで訴えたいのでしょう。自分たちの不始末の尻ぬぐいをしてくれた病院に対し、感謝することはあれ、訴えるという発想をすることが理解できません。厳しいようですが、赤ちゃんの死に対し、この親は助産師と同様の責任があるのではないでしょうか。

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 世の中には理不尽な訴訟がたくさんありますが、これほど理不尽なものも珍しいと思います。いつも参考にさせていただいていますサイト、“KALEIDOSCOPE WORLD"の中の「東京脳梗塞見落しカルテ改ざん訴訟」からの情報です。

 どのような事例かというと、以下の通りです。原告は患者遺族で、患者は脳梗塞のために亡くなっています。原告は、医師が脳梗塞を見落としたが見落としがないかのようにカルテを改竄したと主張します。その証拠としてメモを提示しました。ところが裁判では、改竄されたのはメモの方で、カルテは改竄されているような不自然なところもないし、改竄そのものが物理的に極めて困難であるとの認定が為されました。当然原告敗訴となり、控訴したものの、被告の完全勝利と言える内容での和解となった模様です。

 地裁の段階では原告側弁護士も良く分かっていなかったかも知れませんが、審理の過程で無理筋だと言うことは分かったのではないでしょうか。控訴を断念するよう説得しなかったのかな。それとも、無理筋でも敗訴でも金になればいいのでしょうか。

 地裁の判決要旨は同じサイトのここで読めます。

 私自身はリンク先を信用していますが、いわゆる裏は取れていません。他から判決文を入手しようとしたり、記事を探したりしたのですが、見つかりませんでした。客観的なソースをご存じの方がいらっしゃいましたらご教授願います。

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 比較的良質な医療を、誰でも安価に受けられる、世界でも希な国日本。その日本で、国民は医療費が高い、質が悪い、何時でも診て貰えないのはおかしいとクレームを言います。実際にクレームを言う人は少ないのかも知れませんが、役人や報道機関という声の大きいところではそのような発言が目立ちます。私自身は、日本の医療は一度崩壊するほか無いだろうとあきらめています。

 でも、崩壊を防ぐべく努力を続ける人を応援したい気持ちもあります。頑張って声を上げている人がいるなら、その声を伝えるお手伝いくらいはしましょう。と言うわけで、全文引用です。

▽ 「タブー」といえども医療費増加を叫ぶ ▽
  もはや限界の医療現場、これ以上の効率化は不可能

 武蔵浦和メディカルセンター
  ただともひろ胃腸科肛門科
     多田 智裕

2009年12月25日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp


 「医は仁術」ということで、今まで医者が医療行為に関するお金の話をするのは、タブーに近い雰囲気がありました。でも医療の現場では、医療費の増額が実現されないと、とても立ち行かない状況に追い込まれています。
 12月9日、中医協(中央社会保険医療協議会)総会は「2010年度診療報酬改定へ向けた意見書を厚生労働省へ提出しない」という決定をしました。これは、私たち現場の医師からすると、驚くしかない決定です。
 健康保険支払い側は、「診療報酬の引き上げを行なう状況になく、限られた財源を効率的かつ効果的に配分するよう見直していくべき」と主張しています。
 一方、診療側は、「過去のマイナス改定を回復し、診療報酬の大幅な引き上げによる医療費全体の底上げを行うべき」と主張しています。
 両者の主張が全く噛みあわず、意見がまとまらなかったのです。
 中医協は、健康保険制度や診療報酬の改定などについて審議する厚生労働省の諮問機関です。諮問機関が意見をまとめられなかったことで、2010年度の診療報酬改定は政治的な決着に委ねられることになったと言ってよいでしょう。
医療は人件費のかたまり、コスト削減には限界がある
 民主党は選挙の際に、次のようなマニフェストを掲げていました。「累次の診療報酬マイナス改定が地域医療の崩壊に拍車をかけました。総医療費対 GDP(国内総生産)比を経済協力開発機構(OECD)加盟国平均まで今後引き上げていきます」──。このように大幅な医療費増額を打ち出し、選挙に勝利 したのです。
 民主党が政権を取ったにもかかわらず、なぜ、これほどまでに医療費増額が進まないのでしょうか。背景には、「世の中はデフレなんだから、医療だって価格改善の余地があるはずだ」という国民感情が根強いのかもしれません。
 しかし、皆さんに知っていただきたいのですが、医療は人件費のかたまりです。いわばバリバリのサービス業です。小売業のように売り上げに占める人 件費率が10%台などということは到底あり得ません。人件費率は実に60%に達します(施設によっては80%を超えます)。ですから、外国から格安の原材 料や製品を仕入れて、患者がびっくりするくらい値下げする、といった戦略はとれません。
 この50~60%という人件費率は、業種で言うと美容室やエステとほぼ同じになります。例えば、1000円カットは洗髪やひげ剃りなどのサービスを廃止して価格を下げることに成功しました。
 しかし医療ではサービスの廃止や簡略化ができません。「医療の効率化によって医療費増加分を捻出せよ」ということは、「医療に関わる人たちの人件費を下げろ」または「もっと1人当たりの労働量を増やせ」と言っているのとほぼ同じことになります。
 つまり、「サービスのレベルを下げない」という前提に立つならば、医療費カットは医療従事者(医者だけでなく看護師、医療事務、看護助手などの「コメディカルスタッフ」も含む)の給料削減、または労働環境改悪に直結するということです。
人件費が安い海外に移転するしか手はない?
 ただでさえ、医師は過労死基準を超える過重労働にあえいでいます。これ以上人的資源の効率化を行なうことは、現実的には不可能でしょう。コメディカルスタッフの業務も似たような状況です。
 経済評論家の大前研一さんは著書『最強国家ニッポンの設計図』(小学館http://www.amazon.co.jp/gp/product/4093897166/)の中で、「今後の日本の高齢者問題を国内で解決するのは不可能であり、オーストラリアやフィリピン、タイなどで高齢者タウンや介護タウンを作るしかない」と喝破しています。
 要するに、他の産業と同じように人件費の安い海外に移転させれば、コストを下げてよい医療が提供できますよということなのでしょう。でも、逆に言うと、現実的に医療費を抑制しつつサービスも維持する方策は、いくら考えてもこれくらいしかないですよ、ということなのです。
 (ただし、高齢になったり介護が必要になってから海外に移住することをみんなが納得するのかどうか、そして、海外旅行に出かけないと親族に会えなくなってしまうという状況がみんなに受け入れられるのか、私には判断できません。)
すでに現場は限界を超えている
 以前、このコラムでも書きましたが、現在の日本の医療費は、医療の水準に対して、価格が世界で最も低い水準にあります。(http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/1337も参照ください)
 例えば、私が行なっている大腸内視鏡検査の代金は、日本では1万5500円です。ところが、同じ検査をアメリカで受けると100万円を超える施設も珍しくありません。良心的なところでも30万円くらいです。
 テレビで、したり顔で「混合診療は解禁して当然」と解説している経済評論を目にします。混合診療では、健康保険の範囲内の診療費は保険で賄い、範囲外の診療費は、患者が医者に支払うことになります。
 この経済評論家は、急増している大腸がんの予防的処置ができる大腸内視鏡検査が、1回30万円以上にまで高騰してもよいと本気で思っているのでしょうか?
 「医療費の安いタイなどの国に検査や処置を受けにいくメディカルツーリズムが流行っている」と紹介する記事もあります。ちなみに、大腸内視鏡検査 はタイで受けたとしても7万円くらいかかります。日本で受けた方がはるかに安いんですけど・・・と、私はツッコミを入れたくなります。
 もちろん、医療費は安い方がいいのが当たり前です。それでも、ここまで安いのにこれ以上効率化云々ということを言われても、「すでに現場は限界を超えている」というのが、私を含めた医療従事者の正直な実感です。
せめて世界の平均まで引き上げを
 医療従事者は、別に7000万円のボーナスが欲しいわけでも、200億円の退職金が欲しいわけでも決してありません。誰もが、安い値段で高水準の医療を提供したいと思っています。
 診療側が求めているのは、「医療行為に対する正当な評価と報酬」です。ただそれだけなのです。今、上がっている声は 「医療費があまりにも安すぎて、今の水準をとても維持できません」という悲鳴なのです。
 医療崩壊を食い止めるために、何よりも必要なものはマンパワーです。このままでは医療サービスの提供に最低限必要な人手を維持できないところまで来ています。
 日本の医療費は世界最低水準です。「せめてOECD加盟諸国の平均にまで上げてほしい」という要求(最終的には今と比べて50%くらいの増額になると思われます)は、まごうことなき正当な要求であると、私は個人的に考えています。
 冒頭の中医協総会後、診療側の辺見公雄委員は、会見で「(この内容で同意しては)全国で一生懸命働いている仲間を裏切ることになる」と語りました。現場に立つ者からすると、この一言だけで涙が出てしまうような発言です。
 感情論は脇に置いておくとしても、これまでのように、「上げるべきという意見もあれば、上げるべきではないという意見もある」という「両論併記」で、あいまいなまま流せる状況にないことだけは、皆さんに分かってほしいと思います。
 医療崩壊を阻止するためにも、そして、250万人の医療従事者たちが希望を持って働けるようにするためにも、最後の政治決着では、可能な限りの医療費増額が決定されることを期待しています。
 

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 一応「嘘は言っていない」と言い逃れできるような表現をとってはいるものの、明らかにミスリードを意図した書き方はあります。交通事故の当事者が和解金として五千万円支払い、市が300万円払った場合に、和解金のすべて(あるいはほとんど)を市が支払ったかのような書き方をするのは意図的と見なされても仕方がないかと思われます。「など」と言う言葉を入れれば何でも許されると思っているのだとしたら、報道機関としては失格です。

 二つの記事を見比べてください。いつもは批判の対象としている毎日新聞の記事の方が、金額を明らかにしている分だけ、今回はまともです。

女児死亡訴訟 島田市などが5300万円支払い和解
12/22 20:33更新 産経新聞

 平成14年に交通事故で静岡県島田市立病院に救急搬送された女児=当時(3)=が死亡したのは、病院の対応が不十分だったためとして、両親が市などに約6500万円の損害賠償を求めた訴訟は22日、静岡地裁(三木勇次裁判長)で、市などが約5300万円を支払うことで和解した。「適切な医療行為ができるよう最善を尽くす」との謝罪条項も盛り込まれた。
 訴状などによると、市立島田市民病院は搬送された女児の出血性ショックを見逃し、輸血用の血液の手配を怠ったため、手術の開始が遅れた。女児は術中に出血多量で死亡した。
 女児の両親は「二度と同じ悲劇が繰り返されないようにしてほしい」とコメントした。

 この記事だと和解金を支払った主体は病院の開設者である市のように見えます。5300万円のうちの300万円だけを支払った様には読めません。以下の記事と比べると「嘘」と言っても良いレベルかと思われます。

島田市民病院訴訟:市が300万円支払いなどで和解 /静岡

 交通事故に遭った女児(当時3歳)が死亡したのは搬送先の島田市民病院(島田市野田)の緊急対応に問題があったためだとして、両親が島田市と、事故当時、女児を車に乗せていた知人男性に約6500万円の損害賠償を求めた訴訟は22日、和解した。

 原告側の弁護士によると、和解は男性が5000万円、島田市が300万円をそれぞれ支払う内容。

 訴状などによると、女児は02年3月30日、県中部の国道で、両親の知人男性の車に同乗していた際、別の車と正面衝突。女児は島田市民病院に運ばれたが、肝臓破裂などによる出血多量で死亡した。

 原告側は「病院側が肝臓破裂などを見落とした。血液型の確認も行わなかったため、特殊な血液型だと気付くのが遅れ、手術中に出血多量で死亡した」と主張していた。

 病院側は和解を受け「救命救急全般に問題点を十分検証し、救急患者の治療に最善の努力を尽くしたい」とのコメントを出した。【山田毅】

毎日新聞 2009年12月23日 地方版

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2009.12.09 18:52 |  診療  |  仕事 / 職場  |  その他(医療関連)  |  bamboo  | 推薦数 : 3

最近切れたこと

 なんだか知らないうちに、いつの間にか患者からの苦情係になってしまいました。このようなブログを書いているのですから、医療安全には関心があり、実際に不手際があって患者に謝罪するのは仕方がないと思っています。私自身のミスでもないのに罵倒されるのも辛いものがありますが、実際に患者に迷惑をかけたのであれば職務ですから我慢もします。

 ところがですねえ、最近は理不尽なクレームも多いのですよ。それでも、素人故の勘違いだと思って我慢してきました。勤務時間中は麻酔業務に忙殺されながら、何とか時間を作ってトラブルになっている事例の検討をし、必要があれば対策を練ったり、患者や家族に会って説明をしたりしてきました。何で私がこんな仕事をしなければならないのだと思い、いい加減嫌になってきたときに、こんな事例がありました。

 形成外科で顔面の小さな良性腫瘍(直径2mmくらいのイボのようなもの)を取った患者が苦情を言ってきました。傷のあたりがふくれているような気がするので誠意見せろ(金返せ)と言うのです。術者は「何の異常もないので返金は出来ない」と断りました。そうしたら、「院長を出せ」と言い始めたというわけです。

 カルテには写真が貼ってあり、ほとんど傷跡も残らない綺麗な仕上がりで、クレームを受けるいわれはありません。対応した職員は、院長は会わないので私に会えと言います。実際にミスがあったのであれば、あるいは、ミスがあったと誤解されやすい状況なら会っても良いのですが、これは完全に言いがかりです。貴重な時間を割いてまで会うのはゴメンだと断りました。

 そもそも皮膚の腫瘍の切除は綺麗な傷跡にする義務はありません。あくまで病院と医師の好意によってコストをかけて美容整形手術のような縫合をしているのです。腫瘍が取り切れていれば手術は成功です。保険診療なのですから、保険診療で決められた要件を満たしていれば文句を言われる筋合いはありません。定食屋の料金で好意で十分高級な料理を出しているのに、自分の考えるフルコースの料理と違う気がするから金返せと文句を言われるのは腹立たしい限りです。

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2009.11.21 11:35 |  診療  |  医療制度 / 行政  |  その他(医療関連)  |  bamboo  | 推薦数 : 2

貴方のお好みは

 最近目を引くような記事がないので、どうしても更新が滞っています。今日はアメリカ型・イギリス型・日本型の医療について考えることで、更新不足を補うことにします。なお、リンク先はググって見たら最初の方にヒットしたところであって、吟味して選んだわけではありません。

アメリカ型医療

 何しろ高額な医療であり、お金持ちか大企業に勤めていて十分な保険に加入していないとまともな医療は受けられません。患者の権利意識も強いでしょうが、医療従事者の権利意識も更に強いので、日本の「患者様」のように偉そうにはしていられないでしょう。経済的理由から低アクセスであり、高負担は言わずもがなですね。


イギリス型医療

 税負担が大きいだけあって、公的医療だけに限れば自己負担はゼロ。ただし、自分のプライマリードクターを決め、そこでしか初診を受けられません。プライマリードクターが高度専門医療機関に紹介してくれなければ、専門医療を受けられない制度です。ちょっとした風邪くらいでは(おそらくはインフルエンザでも)家で寝ているように言われるだけで、治療はして貰えません。いよいよ症状が無視できない状況までは放って置かれる可能性が高いのではないでしょうか。低医療費低アクセスの典型と思われます。


日本型医療

 自己負担があるとはいえ、元々の医療費が極端に安く、また、自治体による補助などもあるため、低負担と言って良いでしょう。基本的にはどの医療機関を受診するのも自由ですから、アクセスは抜群です。このような低医療費高アクセスを実現している国はほとんど無いでしょう。新型インフルエンザの死亡率が日本だけ低いのは、このような事情があるからだと見なされています。

 しかしながら、日本型医療のリンク先にもありますように、医療費の低い日本でありながら、医療費を押し上げる日本独特の要因があります。以下に引用します。

B.わが国特有の医療費増加要因
 1.病床数が多い、在院日数が長い
 2.薬剤価格が高い、薬剤使用量が多い
 3.医療材料価格が高い
 4.検査が多い
 5.受診回数が多い
などです。


 元々病床あたりの医師・看護師の数が欧米に比べて桁違い(本当に桁が違う)に少ないのに、少ない診療報酬が薬剤や医療材料に消えてしまい、労働環境の整備には投資できません。医療が高度になり、以前なら助からない患者にも濃厚な医療が施されるようになって人手は必要なのですが、増員のないままに労働だけが強化されています。リンク先ですらあきらめムードで「労働基準法は医師には適用されないのです」等と誤った認識を垂れ流しています。医師自身が要求しなければ誰も助けてくれないと言うだけで、医師にも労働基準法は適用されます。

 海外からは高く評価される日本の医療ですが、団塊の世代が高齢化するに従って黙っていても医療費は高騰します。ところが誰も負担を引き受けようとはしません。医療従事者に奴隷労働を押しつけようにも、もはや限界です。このままでは必ず日本型医療は崩壊します。

 日本型医療が崩壊したとき、どのような方向を模索したらよいでしょうか。今のまま放置すればアメリカ型になりそうです。また、行政はイギリス型を目指すかも知れません。私自身は本当に重大な病気になったときにだけ援助して貰えば良いので、入院患者と(治療が必須の)慢性疾患の外来患者を除いて健康保険を使わないような制度を支持します。

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2009.11.09 20:55 |  医療事故  |  生活 / くらし  |  その他(医療関連)  |  bamboo  | 推薦数 : 1

タブロイド紙の男の記事

 現場を見ていないので軽々しく批判することは出来ませんが、あくまで一般論としては、カテーテル検査の時にガイドワイヤーの位置を確認しないのは初歩的な過ちです。でも、今回記事をご紹介するのは、内容ではなく、書き方に違和感を感じたからです。タブロイド紙は、今後このような表記が標準となるのでしょうか。

医療過誤で死亡 2医師書類送検 千葉北署
2009年11月6日 提供:毎日新聞社

 心臓の検査時にカテーテルの操作を誤って患者を死亡させたとして、千葉北署は5日、医療法人社団「有相会」最成病院(千葉市花見川区柏井町)に勤務する非常勤医師の女(30)と医師の男(50)を業務上過失致死容疑で書類送検した。

 送検容疑は、08年12月3日、同区の男性会社員(当時50歳)の心臓血管カテーテル検査をした際、本来は心臓付近に到達させるカテーテルのガイドワイヤを誤って脳血管に進め、脳血管損傷によるくも膜下出血を引き起こし、同9日に死亡させたとしている。ともに容疑を認めているという。【神足俊輔】

(該当部分を強調しています)

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2009.09.12 18:05 |  診療  |  仕事 / 職場  |  その他(医療関連)  |  bamboo  | 推薦数 : 1

舌癒着症

 いつも勉強させていただいている“kikulog" で、一部の医師が舌癒着症という概念を主張していることを知りました。以前から「舌小帯短縮症」などの病名で知られているものとは異なる疾患で、呼吸障害を起こし、乳児突然死症候群との関連も取りざたされています。ただし、小児科学会の委員会は明確にこのことを否定しています。(サイト内を「舌小帯」で検索してください)

最初と最後だけ引用します。
 母乳栄養促進などの目的から,新生児および乳児の舌小帯に小切開を加えること は,日本のみならず諸外国においても古くから習慣的に行われてきたが,その医学的意味がないことが示されており,現在はほとんど行われなくなった 1)~4).このような病棟や外来で助産婦や医師によって行われていたレベルの舌小帯の切開とは異なり,一部の医師によって,先天性舌癒着・喉頭蓋・喉頭 偏位矯正術の名称で舌小帯に対する本格的な手術が行われている5).高度な舌小帯の短縮が上気道の変異をもたらし,呼吸障害を引き起こすと言う考えの基 に,先天性舌癒着・喉頭蓋・喉頭偏位症の診断名がつけられ,舌低部を切開し頤舌筋を切断する手術である.その手術の目的は,吸啜障害の矯正のみならず,呼 吸障害やそれに伴う低酸素血症を改善して乳幼児突然死症候群(SIDS)の発生を予防するというものである.

中略

結  語

 今回の調査および文献的な考察から,乳幼児の突然死を予防するという目的で舌小帯に手術的侵襲を加えることの正当性を認めることはできなかった.本調査 の結果を踏まえ,小児の医療に携わる小児科および耳鼻咽喉科さらには口腔外科や小児外科の専門家により,舌小帯短縮症の手術の適応やその効果等に関し真摯 な議論がなされ,受け身である乳幼児を不当な麻酔や手術という侵襲から守るための措置を考えるとともに,子育て中の母親に適切な情報を提供してその無用な 不安を軽減をする努力をなすべきである.


突然死の予防手術だけでなく、哺乳や発音障害改善のための舌小帯手術についても否定的だということが分かります。

 ところが、何でもかんでも舌小帯のせいとして手術を勧める(歯科)医師もいるようです。乳児なら普通に見られるようなことを「症状」とし、手術の必要な人が95%に上るというのです。実際にはほとんどの人が手術を受けていないのですから、日本人の95%は特定の病人と言うことになります。挙げ句の果てにこんなのまであります。

 総合的に判断して、一部の医師が言う「舌癒着症」という概念は誤りであると思われます。成人が自分で進んで手術を受けるのであれば、まだ、自己責任といえるでしょうが、抵抗できない乳児に怪しげな手術をするのは許されない行為と言えるのではないでしょうか。

 以前ホメオパシーと助産師の関わりについて書いたことがありましたが、舌小帯についても助産師の関わりが大きいようです。このブログの記述を見ると、舌小帯の存在そのものが問題とされている疑いすらあります。

該当部分を引用してみます。
舌の裏側にスジがあるのは当然と思っていたら 違うんですね!
夫の舌を見せてもらったら つるんとしていました。


たいていの人にはスジがあります。ブログの著者に上記のように思わせる発言をしたのであれば、その助産師の言動は問題です。 

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2009.08.24 16:26 |  生活 / くらし  |  その他(一般)  |  その他(医療関連)  |  bamboo  | 推薦数 : 2

聞いてないよ

 すでにshy1221先生がつっこみを入れていますが、とんでもない間違いが広まるのも困るので、私も取り上げることにします。

 押尾学容疑者、起訴される見通し
8月24日9時29分配信 デイリースポーツ

 合成麻薬MDMAを使用したとして、麻薬取締法違反容疑で逮捕された俳優の押尾学容疑者(31)は、拘置期限を迎える24日に起訴される見通し。逮捕後 の供述が二転三転している押尾容疑者だが、専門家は、容体が急変した女性を放置した「保護責任者遺棄致死」での再逮捕の可能性も濃厚と断言。薬物使用だけ でなく、重罪に問われる可能性を指摘した。
  ◇  ◇
 「錠剤は違法な薬物とは思わなかった」と逮捕直後からの供述を一転、20日に「違法なものと知っていて飲んだ」と容疑を認めた押尾容疑者。尿検査で合成麻薬の陽性反応が出ていることに加え、違法性を認識していたことで、起訴は間違いないとみられる。
 起訴により拘置された場合、一緒にMDMAを使用し死亡した銀座のホステスの女性(31)の死因と薬物の関係、薬物の常習性や入手ルートなど厳しく追及されることになる。
 筑波大学の斉藤誠二名誉教授(77)(刑法、刑事訴訟法専門)は、本紙の取材に「麻薬取締法違反で起訴された後、保護責任者遺棄致死で再逮捕されるのではないか」とみる。
 斉藤氏によると、緊密な関係にあった人間とともに行動し、相手が何らかの形で生命の危機に陥った場合に放置して立ち去ったとすれば、保護責任者遺棄致死 罪が成立するという。押尾容疑者の場合、知人女性と同じ部屋に入り、その間に重篤な症状に陥った女性を見て「恐くなった」とマネジャーを呼んだ上で部屋を 立ち去ったことから「法律的に考えれば、保護責任者遺棄致死罪は十分成立する」と断じた。
 次に考えられるのは、(1)薬物については処分保留とし、遺棄致死で逮捕する場合(2)薬物で起訴されるのみ-だが、(2)の可能性は少ないという。
 さらに、「これだけの状況を見れば、(女性の死に)事件性がないとは考えにくい。警察ははっきりした証拠がないから発表していないが、現在も捜査を続け ているのではないか」と分析。コロコロ変わる押尾容疑者の供述について「助けようと心臓マッサージをしたなどという証言も怪しく聞こえてくる。マッサージでろっ骨が折れるなどという話も聞いたことがないし…」と指摘し、疑問を呈した。単なる麻薬取締法違反のみで決着する可能性は低い-とみられる。

強調は引用者による


 押尾容疑者がどうなろうと私には関わりはありませんが、心臓マッサージで肋骨が折れるはずがないなどと言うことになれば、肋骨を折ったから死亡したと言 われかねません。心臓マッサージをするような患者は、実際にはほとんど助からない患者ですから、もう危なくて、有効な心臓マッサージをすることは出来なく なりそうです。

 肋骨を折ってしまえば有効な心臓マッサージとはなりにくいので、折らないように気を付ける必要はあります。でも、骨折を恐れてしっかりと押さないようで あれば、有効な心拍出量を得られません。上手い下手もあるでしょうから、技術によって確率は異なりますが、心臓マッサージでは肋骨骨折を起こすことがある のは常識です。

 「マッサージでろっ骨が折れるなどという話も聞いたことがないし…」と言う発言を本当にしたのだとしたら、門外漢としては相当に傲慢だと思います。言ってもいないことを書くのはメディアの常套手段ですから、記事の通りとは限りませんけどね。

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2009.08.14 10:06 |  医療制度 / 行政  |  仕事 / 職場  |  その他(医療関連)  |  bamboo  | 推薦数 : 2

ハラハラしちゃう

自らも厚労省の医系技官でありながら、新型インフルエンザの厚労省の対応を痛烈に批判して物議を醸した木村盛世氏ですが、またまた歯に衣を着せぬ語り口で同僚を批判しています。軟弱者の私など、ここまで言っていいのかしらと心配になってしまいます。

 MRIC のメールマガジンより、全文を転載します。

▽ 「平成の大本営」 医系技官問題を考える(1) ▽
     妊婦は新型インフルエンザ重症化のハイリスクか?

厚生労働省医系技官 木村盛世(きむら・もりよ)
2009年8月14日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行

 新型インフルエンザの話題は主要ニュースから姿を消し、あたかも患者は発生していないように見えるが実はそうではない。5月には発表された新規患者数が いったん下火になったようであったが6月には盛り返し、2009年7月24日現在の新型インフルエンザ患者数は累計で4986人である。果たして次の流行 がいつ来るのかは誰にもわからないことであるが、今回のインフルエンザよりは致死率が高い流行があるとして備えるのは必ず必要な事である。

 インフルエンザの対策の基本は「一人の患者も国内に入れない、一人の死亡例も出さない」のではなく「国内に入るのは当然で入ったら必ず広がるが、その広がりをなるべく小さくする」ことである。そのための対策として重症化しやすいグループを重点的に保護するのは理にかなったやり方である。果たして新型インフルエンザで重症化しやすい人たちとは誰なのだろうか。WHOも米国CDCも糖尿病、呼吸器疾患などの基礎疾患を持つ人と妊婦と言っている。日本もそれにならって基礎疾患を持つ人と妊婦がハイリスク集団だといっている。基礎疾患を持つ人はさておき、なぜ妊婦が重症化しやすい集団なのだろうか。実のところ妊婦がハイリスクであるかどうかは本当のところ分かっていないのである。分かっているのはかつてアメリカで豚インフルエンザ(H1N1)が流行した際、妊婦が死亡したということだけである。ヒポクラテスの時代におそらくH1N1型インフルエンザであろうと予測される流行があるが、その当時の症例報告をみても出産すぐの女性の死亡例の記載はあったが妊婦は出てこない。米国CDCでも妊婦の重症化に関するエビデンスは増えていると言及しているが、先日Lancetに、米国13の州から報告された34例の妊婦の新型インフルエンザによる入院率は一般集団より高かったという研究結果がだされたが、この論文が初めての学術的考察と言ってよいであろう。

 はたしてどの集団化がハイリスクなのかを調べるためにはハイリスク集団とそうでない集団との疾患の新規患者発生率を比べる相対危険度と呼ばれる指標が必要だが、新規患者発生率は前向き研究のみしか計算できない。
Lancetに出された論文における後ろ向き研究では果たして妊婦というステイタスのみで疾患の重症化しやすさを結論するのは難しい。妊娠したということでつわりがひどく食事が満足に摂れなかったかもしれない。あるいは運動不足になって体力が落ちた可能性もある。以上のべた可能性は妊娠という因子ではなく妊娠によって生じた二次的な状況である。となれば、「食事接取量が減り栄養状態が悪化した」、あるいは「運動不足により体力が低下した」がインフルエンザの危険因子であって妊娠そのものがリスクファクターではないことになる。栄養状態の悪化、口腔内状況の悪化、体力低下はインフルエンザに対するリスクと示唆されている項目である。こうした事項(交絡因子という)全てをインタビュー形式で定量化して調べるのは限界がある。後ろ向き研究が決定打とならない一つの理由はそのためだ。インフルエンザのように複数の型のウイルスによる混合感染も考えられる場合、前向きに追っていったとしても結果の解釈が難しくなる可能性はあるがやってみる価値はあるであろう。また後ろ向きであっても前向きであっても1つの研究だけでなくたくさんの場所で違う集団を使った研究結果が必要である。実際結核は白人よりも黒人が発病しやすいという研究結果は何十年にわたる複数の前向き研究から生まれた結論である。実際我が国では重症化した妊婦の報告は報告されていないようなので日本人とアメリカ人の違いがあることも十分考えられる。

 研究論文は星の数ほどある。疫学研究者個人やマスコミにとっては1つ1つの結果が大切かもしれないが、それを政策に反映するには、果たして研究結果から得られた結論が正しいかどうかの見極めが必ず必要である。その見極めをするのが公衆衛生のプロである。CDCもWHOも全能ではない。時には不十分な研究報告を出す可能性もある。疫学研究でいう「バイアス」という専門用語があるが「因果関係調査のいかなる過程においても生じるシステマティックエラー」と定義されている。例えばある小児がんと放射能汚染との因果関係を調べるため、症例(小児がんに罹った子供たち)と対照(罹らなかった子供たち)の母親にインタビューをした結果、小児がんに罹った子供たちの母親のほうが高率に放射線による検査を受けていたという研究結果が出たとする。果たしてこの因果関係は事実なのであろうか?自分たちが小児がんの子供を持ったと仮定してほしい。「私が何かいけないことをしたから子供はがんにかかったのではないか」と母親は思うであろう。そして健常な子供たちをもった母親以上に「X線写真を歯医者でとった」とか「胸のレントゲン写真をとった」ということが記憶として強くして残 ることが言われている。これをリコールバイアスというのだが、バイアスの種類も山ほどある。バイアスは統計学的処理でもコントロールすることはできない。 見つけられるか否かは専門家の優れた「鼻」にある。

 我が国では大規模な疫学研究という、公衆衛生にとって必要不可欠な研究がほとんど行われない。それは、自称公衆衛生のプロと言ってはばからない医系技官が公衆衛生のプロではないからだ。彼らたちが自国での疫学調査を行わない理由は、自分たちで調査研究ができないからだ。データに関して言えば、臨床現場を
使ってかなりの数を集めているはずであるが、集めた目的も分からず解釈もできなければ宝の持ち腐れと言えよう。自分たちで何もできないのであればデータを公表して、できる人たちに解析して論文を書いてもらえばよい。データを開示すると自分たちの権限が弱まるとでも考えているのだろうか。そうだとしたら、まるで「指輪物語」の世界である。WHOとCDCのデータを鵜呑みにして政策に反映させるやり方は誰にでもできるであろう。言い方を変えれば医系技官の公衆衛生の技量はその程度だということだ。「新型インフルエンザ予防にはヨーグルトが効果的」という研究が海外で出たとしたら、国民すべてにヨーグルト摂取を義務付ける局長通知でも出すのであろうか。その時は牛乳アレルギーに対して十分配慮をしないといけない。


著者紹介
筑波大学医学群卒、ジョンズホプキンズ大学公衆衛生学修士(MPH)
専門は感染症疫学



 ご覧のように、内容は疫学の初歩的な注意点です。よく言われるように、統計的に有意差があることと因果関係があることは別だというようなことです。本来 なら疫学のプロであるべき厚生技官が、初歩的な分析力もないのだとすればお寒い限りです。でも、ジャーナリストを自認する人々の世の中の出来事に対する対 応を見ると、まあ、そんなものかも知れません。

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