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2012.02.23 17:50 |  生活 / くらし  |  その他(一般)  |  bamboo  | 推薦数 : 4

その自信、錯覚では?

 「錯覚の科学」と言う本があります。内容は、人間の認知機能のいい加減さや、自信の裏付けの脆弱さを示したものです。明らかに異質で目立つ存在が見えなかったり、9.11多発同時テロのような大事件の際の記憶がでたらめだったり、現に話している相手が入れ替わっても気づかなかったりする実例が示されています。

 もちろん誰もが存在するものを見ていると思っていますし、自分の記憶は正しいと思っています。話している相手が別人に変われば、当然気がつくと思っています。心理学の講義で実例を示されても、納得しない学生も多いようです。その納得しない学生も、あっさりと騙されます。

 認知機能のテストでは、「見えないゴリラ」が有名です。これは半世紀ほど前から行われている実験で、二チームに分かれてバスケットボールのパスをしている動画を見せます。そして、片方のチームのパスの回数を数えるように指示します。

 動画の途中では、ゴリラの着ぐるみが登場し、胸を叩いた後に退場します。動画が終わり、パスの回数を答えたところで何か変わったことはなかったかを訪ねます。ゴリラに気づいた人は半数くらいと言うことです。

 ネット上には同様の動画がいくつかあります。必ずしもゴリラとは限りませんが、何か出てくることは分かっているのですから気がつくと思いきや、画面が見にくかったり、パスが速かったりする場合には見逃しました。また、ゴリラに気をとられると、パスの回数を正確に数えられませんでした。

 パスがゆっくりで画面も見やすいサイトではパスの回数も正確でゴリラの登場も確認できたのですが、そのほかに二つ変化があったのに気がつきませんでした。私がこのようなブログを書いてミスをした人を擁護しているのは、自分の認知機能に自信がないからかもしれません。皆さんも試してみませんか。

http://www.break.com/index/awareness-test.html
http://www.youtube.com/watch?v=nkn3wRyb9Bk
http://www.youtube.com/watch?NR=1&feature=endscreen&v=1D07neiB7HI
http://www.youtube.com/watch?v=LmnXHYLgp8w&feature=related
http://www.youtube.com/watch?v=vJG698U2Mvo&feature=related
http://www.youtube.com/watch?v=IGQmdoK_ZfY&feature=related

 自分で試すことはできませんが、話し相手のすりかわりはこちら。
http://www.youtube.com/watch?v=38XO7ac9eSs
http://www.youtube.com/watch?v=4-HxtKgKrL8&feature=related
http://www.youtube.com/watch?v=X0PHp-UbHdY&feature=related
相手の性別が変わったり人種が変わったりするケースもありますが、本当に気がつかなかったのだろうか。

 人間の認知機能がいい加減という話だけではなく、自信には裏付けがないと言うこともこの本は示しています。何かあれば気がつくはずだという思いこみも誤った自信ですが、それ以外の能力に対する自信も危ういものです。

 チェスには厳密な順位付けがあるそうなのですが、多くのプレイヤーは自分の順位はもっと高くて当然だと思っています。でも、客観的な実力は順位付けの通りです。私の実感でも、多くの医師は他の医師よりも能力が高いと思っています。医療事故は能力の欠如によって起こり、自分なら起こさないと考える医師は結構います。

 この本を読むと、裁判というものがいかに危険か分かります。気づいたはずだという思いこみ、証言(記憶)の信憑性、私なら出来たという観点からの鑑定、どれも実際には危ういものだからです。

 それなのに客観的な物証や科学的なデータを重視することなく、誤った判断をすることはしばしばあります。もちろん本の中でも冤罪の実例を挙げて論証しています。事故や犯罪の調査に関わる人はもちろん、様々な権限を持つ人にとって、必読の書だと思います。

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2012.02.20 17:47 |  診療  |  仕事 / 職場  |  医療事故  |  bamboo  | 推薦数 : 4

妊婦死亡の資料

 岡崎市の子宮外妊娠による妊婦死亡に関する判決について、以前書きました。この事例について、地裁の資料を閲覧に行って内容をエントリに上げたブログがあります。産科医療のこれからと言うブログです。

 亡くなった方やご遺族には本当にお悔やみを申し上げますが、リンク先を読む限り、誰の責任というわけではないと思います。

 リンク先から「事実経過」を引用します。

事実経過:

初診は平成19年8月
その時の主訴は不妊だが、他院への紹介状取りに来ず

平成19年10月3日
12:40 外来診察
0経妊0経産 最終月経8/23→ 5週6日相当
基礎体温表はなし

カルテ記載によると、

 
・子宮内に胎嚢らしきものあるがpseudo GSか?
・右卵管周囲にあやしいmassあり
・左卵巣正常
・ダグラス窩にエコーフリースペース少量あり
 (1cm程度、右附属器周囲にはなし)
・出血や腹痛なし

 
子宮外妊娠の可能性と腹痛や出血時の説明あり
「子宮外妊娠が否定できないので、
 出血や腹痛等があればいつでも早めの受診を」
と説明している。

流産の可能性のみカルテ記載にないが、
・正常妊娠の可能性(排卵が遅れた)
・流産の可能性
・子宮外妊娠の可能性と対処

についてこの時点で説明したものと裁判所は認定している。

尿中hCGを測定に出したが、
3-4時間かかるために帰宅をさせた
「何かあれば電話連絡を入れる」とその際説明している。

その後、医師はほぼ休みなく外来を行い
検査結果が異常でも知らせてくれるシステムがないため
時々、患者さんのカルテを見ながら診察をすすめていた。

16:03 尿中hCG 25290mIU/mlの記載
16:30まで外来続いていた
この時点で子宮外妊娠の可能性を念頭においた

その時双胎児間輸血症候群の搬送あり、
他の産婦人科医師はオペ中。

患者さんと連絡を取ることを考えたが、
もし来院してもらっても産婦人科で
患者対応できる医師がいないために、
この搬送患者さんにかかりきりになってしまった
そのままオペ段取りして終わった時点で10時過ぎ

電話をかけるには非常識な時間である上に、
 今まで腹痛の連絡もないから明日連絡を入れよう」
と考え、 この日は連絡を入れなかった

   

10月4日
9:30頃 本人から「腹痛」の電話が入る。
外来看護主任が電話に対応。
カルテコピーはみたものの、hCG値は見なかったと。

  
患 「腹痛がするんですが」
Ns 「症状が出て、強くなるようなら受診を」
患 「昨日受診したばかりでよくわからなかったから、
   今日受診しても同じですよね」
Ns 「(カルテの子宮外妊娠の記載目に入る?)
   子宮外妊娠であれば手術する場合もあるし
   早めに受診してください
患 「もう少し様子を見ます」
Ns 「何かあったら電話してください」

その頃、担当医は外来クラークに患者さんに電話を
いれて来院してもらうように指示をしていた。
ちょうど電話があったころで、
「それなら先ほど電話があった人です」
と担当医に伝えた。
担当医はもう一度電話、すぐ受診するよう指示。
外来クラークは電話をし、通じた。
「11時が外来受付締切りなので、
 それまでに来院できますか?」
「大丈夫です」との返事あり。
(この頃の時間は9時40分以降10時くらい?)

   

前後して患者さんは実母と電話で話している。
その時間が10時頃で、
「病院にいく話は聞かなかった。
 痛みはあるけれど車なら会社にいける」
と話をしている。

   

11時になっても患者は来院せず、
担当医は何度かクラークさんに尋ねている。

12時になっても来院せず、
12:20(この時間も正確ではない)-13:00
携帯や自宅番号に5回以上電話を
入れたがつながらなかった。
(あとの状況を見るとシャワーで聞こえなかったのかも)

13:00頃 患者さん自宅電話より電話。
  

患 「お腹が痛い 動けない」
ク 「救急車を呼んでください!」
患 「救急車を自分で呼ぶ自信がない」
ク 「この電話で119かけてください!」
患 「やってみます」

13:26 救急車の入電も来院もなく
外来主任助産師が手が空いたので救急隊要請

13:40 救急隊現地到着。心肺停止状態。
シャワーを浴びたか着替えの途中で全裸で倒れていた。

 
14:05 病院着。心肺停止状態。
14:40 蘇生し心拍再開。
16:19 右卵管切除手術(病理結果;右間質部妊娠)
10月5日 17:03 死亡確認。



 前にも書きましたが、当時のうちの病院では一週間後に検査結果を聞きに来るよう指示するのみで、病院から連絡するようなことはしていません。それと比べたら遙かに手厚い対応だと思うのですが、死亡という結果を見ると、どうしても誰かの責任にしたくなるのでしょう。判決は病院と医師の過失を認め、6700万円の賠償でした。でも、やはりこれは後知恵バイアスで、誤りです。

 賠償責任が病院と医師の両者にあるとの判決でもあったようで、これにはびっくりしました。よほど医師に悪質なミスがなければ、医師個人の責任は問われないと思っていたからです。私から見たら、この事例の医師にミスがあるようには見えません。恐ろしいことです。

 錯覚の科学 を読むと、他人に要求できると思われる注意義務が、実際には無理な注文であることがよく分かるでしょう。法律家必読の書だと思います。


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 今日の朝日新聞の声の欄に「産むのか」娘詰問した私と言う投書が載りました。幸いなことに、娘さんの旦那さんが「2人で一生懸命育てます」と応じて、無事に出産したそうです。

 このお子さんは、詰問した母にとっては初孫だと言うことで、生まれてみれば手放しの可愛がりようで、娘さんにもあきれられているようです。でも、もう少しで可愛い初孫の命を根拠のない不安で摘み取るところでした。他の事例を丹念に調べれば、実際に摘み取られた命もあるのでしょうね。

 ネット上には無責任に不安を振りまく言葉があふれています。その様な言葉を書き散らす奴らに一言言いたい。
 根拠のない不安を振りまく人たち、君らは人殺しだ。

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2012.02.02 21:20 |  診療  |  仕事 / 職場  |  医療事故  |  bamboo  | 推薦数 : 1

危険が危ないかも

 前回のエントリの事例について、勤務先の産婦人科医に聞いてみた。記事からは分からないこともあるので、以下のような仮定での話。

腹痛などの症状のない女性が妊娠の有無の確認のため受診。
妊娠反応陽性で、エコー検査で子宮内妊娠が確定できない。
HCG検査で子宮外妊娠の可能性も十分にあることが判明。(受診終了後)

この場合でも、電話で検査結果を知らせることはしない。
検査結果は受診して告げられるもので、電話で知らせる契約があるとは認識していない。
知らせた方が親切であるかも知れないが、親切と法的義務は異なる。

今は辞めた高齢の医師(私より若い)が中心だった頃は、一週間後に来るよう指示していた。
今はさすがにもっと早く受診するように話している。
以上が答えだった。

うちも6700万円賠償するのだろか。

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