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2010.06.24 05:53 |  診療  |  その他(一般)  |  その他(医療関連)  |  bamboo  | 推薦数 : 3

越権行為では?

 当たり前のことですが、解剖は亡くなってからでないと出来ません。医療が適切であったかどうか、解剖所見を元に論ずるのは後出しジャンケンのそしりを免れないでしょう。もちろん今後に生かすためのカンファランスで論ずるのは問題ありませんが、診断や治療を批判するのであれば、生前のデータを用いるべきです。

 また、法医学者は臨床医ではなく、いわゆる基礎医学者です。アルバイトで診療を行うことはあるかも知れませんが、基本的には、診療技術はプロではありません。法医学者は解剖所見だけを提示し、診療内容の可否の判断は臨床医に任せるべきでしょう。

「治療適切なら救命も」 殺人事件で解剖医証言
10/06/23記事:共同通信社

 同居の男性を刺殺したとして殺人罪に問われ一審で懲役9年とされた無職出口志津子(でぐち・しづこ)被告(40)の控訴審公判が22日、札幌高裁(小川育央(おがわ・いくおう)裁判長)であり、司法解剖を担当した医師が、搬送先の病院が適切な治療をしていれば「助かった可能性があった」と証言した。

 医師は弁護側証人として出廷した旭川医大の清水恵子(しみず・けいこ)教授。証言は、殺意や刺傷行為と死亡の因果関係を否定した被告側主張に沿った内容で、殺人罪の成否をめぐり二審の判断が注目される。

 清水教授は証人尋問で、男性の搬送先の病院が、胸部にたまった血や空気を適切に除いていれば救命可能性があったとした上で、司法解剖の鑑定書に記した同趣旨の指摘について「(検察に)一部削除を求められた」と明かした。

 また、一審判決は「首に向け包丁を振り下ろした」として殺意を認定したが清水教授は「刃の向きは水平だった」と指摘。「解剖内容を理解してもらっていたら、(判決は)違った」と述べた。

 一審旭川地裁判決によると、出口被告は昨年2月、北海道興部町で同居していた会社員渡辺明宏(わたなべ・あきひろ)さん=当時(38)=の首を包丁で刺し、出血性ショックなどで死亡させた。


 いつものことですが、記事には治療が適切であったかどうか分かるような情報はほとんどありません。でも、記事から推察するに、解剖所見から法医学者は緊張性血気胸で死亡したと判断したようです。それだけ報告してお終いにすれば何も問題はなかったのですが、治療の是非にまで口を出すのはやり過ぎです。

 口蹄疫に関しても、自分の守備範囲をわきまえない女性医系技官のトンデモ発言が話題になっていますが、この記事の越権行為の法医学教授も女性ですね。私自身は女性だからと言うつもりはありませんが、両方を見て、「だから女は」と言う人はいるんだろうなあ。

 男でも女でも自分の守備範囲をわきまえることは大切ですが、女性への偏見が現実にある以上、特に女性は慎重に行動して欲しいと思います。肩肘張らないと生きていけない女性専門家は、つい、守備範囲を逸脱しやすいのかも知れませんが。

 臨床医のひとりとして言わせて貰えば、現に首(頸)から大量出血していれば、まずは止血と輸血に専念するでしょう。血気胸があったとしても、そちらが後回しになるのは仕方ありません。血気胸が死因であったのが事実としても、それを適切に治療できたのかどうかはその時の状況に依ります。

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 子育てをした人ならご存じでしょうが、生後9ヶ月ともなれば、寝返りはもちろん、ハイハイする子も少なくありません。そのような子をうつぶせ寝にしただけで死亡するでしょうか。うつぶせ寝が死につながったのだとすれば、ほかに何らかの原因があったはずです。それを書かずに記事にすれば、誤解を振りまくことになります。

 おそらくはどこかが発表した内容をそのまま垂れ流しただけなのでしょうが、報道するからには自分でも取材し、考え、おかしいところがあれば納得のいくまで調べてから記事にすればいいのにと思います。少なくとも私は、9ヶ月の子が他に何の理由もなく、うつぶせ寝で死亡したという事実認定には納得できません。

乳児うつぶせ死訴訟で和解 都などが両親に解決金
2010年6月18日 提供:共同通信社

 2006年に東京都立豊島病院(現・都保健医療公社豊島病院)で生後9カ月の川村優太(かわむら・ゆうた)ちゃんが死亡したのは保育士がうつぶせに寝かせたのが原因だとして、両親が都などに損害賠償を求めた訴訟は18日、東京地裁(植垣勝裕(うえがき・かつひろ)裁判長)で和解が成立した。両親に解決金4800万円を支払うことなどが条件。

 事故を教訓に、保育施設の指導要綱にある「乳児を寝かせる際はあおむけにする」との規定を双方が確認し、「都などは安全で充実した保育の実現と再発防止を目指して努力する」との文言が和解条項に盛り込まれた。

 優太ちゃんの母親順子(じゅんこ)さん(34)は「これまで子どものことを忘れたことはない。今後は子どもにとって安全な態勢をつくってほしい」と話した。

 両親は07年12月に提訴。植垣裁判長はことし4月「都などに責任があると判断せざるを得ない」との見解を示し、和解を勧告していた。

 訴状によると、豊島病院に勤務していた順子さんが06年7月19日、職員用保育室に優太ちゃんを預けたが、泣いていたところを保育士からうつぶせに寝させられ死亡した。

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2010.06.19 14:10 |  診療  |  医療制度 / 行政  |  医療事故  |  bamboo  | 推薦数 : 4

不注意してみる?

 できるだけ注意することはできますが、「不注意」することはできません。また、人間の注意力には限界がありますから、絶対にミスをしないように注意し続けることもできません。「不注意」で片付け、ミスの原因を個人の注意力の欠如としてペナルティーを課すやり方では再発防止は図れません。本人も「なぜ間違ってしまったのか分からない」というのに、刑罰を与えても得るものは何もありません。

 再発防止のためには、ミスの起こりがたいシステムを構築するべきなのです。具体的には、確認リストと指差呼称の採用やダブルチェックなどです。また、間違いやすい指示を出さないことも重要です。

 実を言えば、点滴に用いる輸液ポンプは小数点以下の精度はありません。ですから、うちの病院で使っている輸液ポンプには小数点以下の設定はありません。おそらくほとんどの輸液ポンプも同様だと思います。その状況で小数点以下の指示が出れば、桁を間違うことはありそうですね。小数点以下の指示自体がミスの一因と言っても良いと思います。

速度10倍で栄養剤を点滴 業過致死容疑、書類送検
2010年6月18日 提供:共同通信社



 警視庁府中署は17日、誤って通常の10倍の速度で栄養剤を点滴し、患者を死亡させたとして、業務上過失致死の疑いで、東京都府中市の都立府中病院(現・都立多摩総合医療センター)の女性看護師(22)を書類送検した。

 同署によると、看護師は容疑を認め「なぜ間違ってしまったのか分からない」と供述している。

 送検容疑は昨年6月11日午後、末期がんで入院していた男性患者=当時(79)=に栄養剤を点滴した際、速度の数値を「毎時25・3ミリリットル」と入力しなければならないのに、小数点を入れずに「毎時253ミリリットル」と誤って10倍の速度を入力。そのまま投与し、患者を死亡させた疑い。

 この点滴は本来、投与に48時間かかるはずだったが、5時間弱で終了。患者は終了直後に容体が急変し、2日後に亡くなったという。

 同医療センターは「ミスがあったのは事実。患者のご冥福をお祈りします」とコメントした。


 ところで、この記事を読んで、一般の方は何が起きたのか分かるのでしょうか。普通の輸液であれば、毎時253ミリリットルの点滴速度は死につながるようなものではありません。おそらくは高濃度のブドウ糖の入った高カロリー輸液だったのでしょう。そうだとすれば、10倍の速度で投与すれば、致命的な高血糖を起こしても不思議はありません。

 ほとんどの読者は一般の方なのですから、読んで分かるような記事を書いた方がいいと思うのですが、記者はどういうつもりでこの記事を書いたのでしょうか。そもそも、この記事を書いた記者自身が、自分の書いた記事を理解しているのでしょうか。

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2010.06.09 18:08 |  診療  |  医療制度 / 行政  |  医療事故  |  bamboo  | 推薦数 : 3

誤診は過誤?

 医療過誤として訴訟が起こされることはしばしばありますが、その報道からまともな情報を得ることはほとんど困難です。たいていの場合、過誤があったのかどうか判断する上で重要な情報が欠落しています。結果として、「なんか××病院で医療ミスがあって訴えられたみたいよ」という印象だけが残ります。

 そして、もう一つ心配なことは、「誤診したら訴えてもいいんだ」という風潮が広まることです。野球で三遊間を抜ける打球はエラーではなくヒットです。 同様に、実際に病気があっても、診察や検査をすり抜けることもあります。 これはミスではなく、医療の限界なのです。

 ですから、誤診による訴訟の記事を書くなら、ミスによる誤診なのか、医療の限界(インフラを含む)から正しい診断に至ることができなかったのか、判別可能な記事を書いてほしいと思います。

医療過誤訴訟 病院側争う姿勢 地裁下関で初弁論
2010年6月8日 提供:毎日新聞社

 関門医療センター(下関市長府外浦町)に入院中の下関市内の女性(当時46歳)が診断ミスで死亡したとして、女性の遺族が病院を運営する国立病院機構(東京都目黒区)に損害賠償約1100万円を求めた訴訟の第1回口頭弁論が7日、地裁下関支部(曳野久男裁判長)であった。被告側は全面的に争う姿勢を示した。

 訴状によると、女性は08年10月-09年4月に計8回、同病院の女性外来と総合診療科で受診。胸部のレントゲン写真を撮るなどしたが肺がんが発見されず、半年近く診断が遅れたとしている。女性はがんのため09年9月、別の病院で死亡した。

 被告側は意見陳述書で「認否は追って表明する。請求は全面的に棄却する」としている。
〔下関版〕



 必要な情報が書かれているかという観点からは、この記事は全くだめな記事です。そもそもなぜ受診したのか、その理由すら書いていません。受診したのは女性外来と総合診療科ですから、患者自身も肺癌を意識していたとは思えません。もし、子宮や乳腺の病気で受診したのであれば、肺癌を見つけろと言っても無理でしょう。

 総合診療科の方は、咳や喀痰といった呼吸器の症状で受診したのかもしれません。それでも、上気道炎(風邪)に普通に見られる症状であれば、胸部レントゲンなどで特に所見がなければ対症療法で済ませるでしょう。

 たいていの癌には特有の症状はありません。癌を早く発見したければ癌検診を受けるほかないのです。それとても万能ではありません。せいぜい、「受けないより受けた方がその癌で死ぬ確率が少なくなりますよ」というレベルです。

 この記事の事例で病院側に責任があるとすれば、レントゲンにはっきりと異常陰影が写っているのに見逃した場合だけでしょう。 Paul Carpenter 先生、いかがでしょうか。

 

 

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 去年の今頃、新型インフルエンザの初期対応として水際作戦なるものが行われていました。誰が見てもデモンストレーションに過ぎないことは見え見えで、私も批判しました。そして、現役の厚労省医系技官である木村盛世氏が歯に衣を着せぬ物言いで批判したときには喝采したものです。もともと厚労省の場当たり的医療行政が腹に据えかねていたのも影響していたでしょう。

 最近は木村盛世氏のことはすっかり忘れていたのですが、愛読している「NATROMの日記」の最新エントリを見ると、木村盛世氏が取り上げられています。なんだかとても香ばしい。

 早速「まとめ」を見てみると、これは酷い。木村氏は誤りを認められない人なんですね。さすがにブログの方は下品な表現を抑えては居ますが、言っていることは厚労省の技官としては無責任。どう無責任なのか分かりやすく書かれているのがここ。(内容に全面的に賛成というわけではありませんが)

批判することで名をあげた人は、批判に対して謙虚であるべきです。批判はするが自分への批判は許さないという態度では単なるクレーマーですし、そもそも公的な立場なんだから、あんまり思いつきでいい加減なことは言わない方が良いと思います。いい加減なことを言いたければ、私のように匿名でね。(^_^)v

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