生兵法は怪我の元と言いますが、医療でもまさしくそうです。最初の頃はおっかなびっくりで、効率は悪いものの、慎重に何事も行います。ある程度慣れ、あ まり恐ろしい目にも遭わなかった場合が一番危ないのです。ほんの少し確認すれば何でもなかったことでも、慣れのために惰性で事を行うと、時に大きな落とし 穴が待ち受けています。
人間はミスをするもので、単純で愚かなミスであろうと、しない人はいません。単に大きな被害が出ることが希なだけです。でも、時には人命に関わることも あります。だからこそ、間違いの起こりにくい、あるいは間違いが起こっても重大な被害を及ぼさないようなシステムが必要なのです。
静脈に空気誤注入 2歳男児低酸素症に 福島県立医大病院
福島県立医大病院(福島市)は3日、7月29日に実施した腹腔(ふくくう)鏡手術で麻酔科医が誤って患者の静 脈に空気を注入、福島県内に住む男児(2)が脳に十分な酸素が送り込まれない低酸素症になる事故があったと発表した。男児は現在、集中治療室で低体温療法 を行っている。状態は安定しているが、脳に障害が残る可能性もあるという。医大病院は来週中にも学外の専門家を交えた調査委員会を設置し、原因究明を進め る。
病院によると、男児は胃食道逆流症で手術を受けた。手術しやすいよう胃を膨らますため、鼻に挿入した管の途中にある三方活栓から麻酔科医が注射器で空気 を送り込むはずだったが、誤って右足の静脈に入れた点滴用の管の三方活栓に空気を2度注入した。量は計100ミリリットルだという。
その直後に脈拍の異常を知らせる警報が鳴り、手術を中断したが、男児の脳に十分な酸素が送り込まれない状態が約10分続いたという。
手術は外科医3人と麻酔科医の4人が担当。麻酔科医は20代女性で医師3年目の後期研修医だった。手術中は医療用の布で男児の体全体が覆われ、麻酔科医は手探りで作業していた。麻酔科の指導医が手術室に出入りしていたが、高度な技術が必要な手術ではなかったという。
県庁で記者会見した横山斉副院長は「麻酔科医は直接手元を見ることができず、管も交差していて間違ったようだ。治療に全力を尽くすとともに再発防止に努めたい」と説明した。医大病院は再発防止策として、用途別に三方活栓の口径を変えた。
2009年08月04日火曜日 河北新報
他の報道では、この麻酔科医の麻酔経験は10ヶ月とのことでした。10ヶ月の経験というと、自分だけで麻酔を担当する自信はないが、いざというときの バックアップ体制があれば、かなりの部分まで自分で出来そうな気がする頃でしょう。大きな事にならないような「ヒヤリハット」を経験していれば、このよう なことは起きなかったのかも知れません。
でも、一番の問題は、間違いを許すシステムです。胃管用と点滴用の三方活栓の区別が無く、ごちゃごちゃとした状況で手探りでの操作を強いていたのは問題 です。胃管には注射器が接続できないようにしておけば、間違えようがありません。また、点滴回路や胃管を整然と並べておくだけでも間違いは起こりにくかっ たでしょう。
記事が正確だとすれば、この事例では賠償責任は免れないでしょう。でも、この麻酔科医個人の刑事責任を問うて欲しくありません。結果は重大ですが、誰で も時には愚かなミスをするものです。フェイルセーフ機構を怠り、コスト重視で現場のがんばりだけに頼ってきたツケが回ってきたのですから。
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