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私の勤務先でも、ご多分に漏れず医師の逃散が続いている。その理由の一つが当直だ。眠れずに次の日も仕事をする、いわゆる32時間連続勤務がつらいと言うこともあるだろう。でも、本当につらいのは、救急医としての訓練も無しに救急医療をさせられることのようだ。
日本の救急医療は、実際には行政が病院に頼み込んで行われている。きちんとした体制を整えた病院が申請して救急指定病院の許可を受ける建前になってはいるが、実際には建前だけで、救急病院等を定める省令を満たす施設はほとんど無い。特に第1条の1の「救急医療について相当の知識及び経験を有する医師が常時診療に従事していること」と言うのは、ごく一部の施設を除いて実現不可能だ。
多くの施設では、救急医療は救急医療の訓練を受けていない各科の医師が行っている。眼科医や耳鼻科医と言った、いわゆるマイナー科の医師が行うこともあるだろう。あるいは経験不足の、後期研修医が行うこともあるかも知れない。そうでもしなければ回らないのだ。建前通りの医師をそろえることは不可能なので、それを強制するのであれば、救急医療をやめるほか無い。
もう医師は救急医療を辞めたくて仕方がない。でも、病院自体は行政と事を構えるわけにはいかない。行政の要請とは、様々な縛りの結果、実質的には強制なのだ。病院当局は何とかなだめすかして当直という名の実質夜勤を維持しようとしているが、専門外の誤診を責められるようでは、もう逃げるしかないだろう。
以下の記事の事例は、結果として誤診であったわけであるが、もちろん実際に非があるかどうかは詳細が分からないので何とも言えない。単に正確な診断が付けられないと非難される実例だと思って欲しい。
「不完全検査が死亡原因」 栗林病院のミスと賠償命令
記事:毎日新聞社【2008年7月24日】
医療訴訟:「不完全検査が死亡原因」 栗林病院のミスと賠償命令--地裁判決 /香川
04年に背中の痛みを訴え社会保険栗林病院(高松市栗林町3)に搬送された高松市内の女性(当時55歳)が半日後に大動脈解離が進行して死亡したのは、同病院で十分な検査がなく大動脈解離を発見できなかったためとして、女性の夫(58)らが、同病院を経営する全国社会保険協会連合会(東京都港区)を相手に、約5380万円の損害賠償を求めて起こした訴訟の判決が23日、高松地裁であった。森実将人裁判長は「検査の不完全な履行と女性の死亡との間には相当な因果関係がある」として、同連合会にほぼ請求額に近い約5193万円の支払いを命じた。
判決によると、04年1月18日朝、女性は背中の痛みを訴えて同病院に搬送された。同病院の医師は、尿路結石と診断。大動脈解離などの診断に必要なCT検査などをしなかった。女性は帰宅後の同日夕、呼吸停止のような状態となり、高松市内の病院で死亡した。死因は胸部大動脈瘤破裂とされた。
判決について同連合会は「判決文が届いていないのでコメントできない」と話している。【吉田卓矢】
救急医や循環器の専門家が診ていれば、おそらく診断の付いた症例なのだろう。でも、それらの専門医を常時そろえることは不可能だ。実現不可能な質を求めるのなら、もう、救急医療をやめるほか無い。
不完全な救急医療でもあった方が良いのか、全く無くなってしまった方が良いのか、どちらを選びますか。
コメント
コメント一覧
先生の病院であれば診断可能だったとしても、それを支えているのは本来の勤務開始時刻より早く出勤する、Paul Carpenter先生の献身的な努力ですよね。献身的な努力を司法が強制するのはおかしな話だと思います。
04年1月18日は日曜日だったようですから、当直または日直医が対応したのでしょうが、地域間格差や施設間格差はもちろん、同じ病院でも医師によっても格差があるのが現実ですから、いつでも正確な診断をつけろと言うのは無理だと思います。それを実現しろと言うなら、巨額の費用をつぎ込んで大々的な医療改革をする必要があるでしょう。
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