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都賀川の水難事故は、改めて自然の脅威を思い知らされる出来事だった。今では行方不明だった男性の遺体も発見され、計5名の方が亡くなった。ご冥福をお祈りいたします。
不幸なニュースの中でも、一つだけ救いだったのは、指導員らの責任を問う声が挙がらなかったこと。想定外の異常な事態だったことが誰の目にも明らかだったからだろう。わかりにくい事態であれば、また業務上過失致死での取り調べと、メディアによるバッシングがが待っていたかも知れない。
何しろ10分間に1メートル以上の水位の上昇で、しかも急流と来ている。大の大人の男性作業員ですら逃げ出せなかったのであるから、子供連れの指導員は良くやった方なのだろう。
もちろんこの教訓を生かして、警報機の設置など、何らかの防災対策を講じる必要はあるだろう。誰かを罰することより、同じことを起こさないことが大切なのだ。川遊び襲った鉄砲水、ひざ下の水一気に1m以上…神戸
7月28日22時43分配信 読売新聞
六甲山系の急傾斜を流れ落ちてきた濁流が、水辺にいた子どもらをのみこんでいった。
28日午後、神戸市灘区の都賀川(とががわ)で発生した〈鉄砲水〉が4人の命を奪った。普段は子どもたちのひざ下ほどしかない水かさが、突然襲った集中豪雨のために、わずか10分で1メートル以上も増え、凶暴な流れに変わった。猛暑の中、涼を求めた楽しい夏休みのひとときが暗転した。
関係者らによると、民営の「六甲学童保育所どんぐりクラブ」(同市灘区)に通う小学1~6年の児童19人はこの日午後1時半ごろから、女性指導員ら3人に引率され、河川敷の公園で川遊びをしていた。
1時間後、雷と雨がひどくなったため、子どもたちは都賀川に架かる橋の下の遊歩道に移動して雨宿り。さらに雨が激しくなり、水かさがみるみる増えていった。指導員らは、遊歩道から上がるよう、子どもたちを走らせたが間に合わず、最後は子どもたちを放り投げるようにして避難させた。
しかし、亡くなった神戸市立六甲小6年、河合玲緒(れお)さん(12)と同4年、泉谷(いずたに)瑠希也(るきや)君(10)、女性指導員(47)ら5人が、押し寄せてきた流れに落ちた。指導員らは自力ではい上がるなどしたが、河合さんら2人の行方が分からなくなった。
泉谷君が濁流にのまれる瞬間を見た小3女児(9)の父親(36)は、「娘は『瑠希也君の手を必死で握っていたけど、手が離れてしまった』と泣いていた」と唇をかんだ。
一方、同川の別の場所で流され、亡くなった友地(ともじ)こころちゃん(5)が通う大石保育園の松岡千恵子園長(60)によると、この日は塾に行くためふだんより早い午後2時半ごろ、迎えに来た母親の妹の妻鹿愛美(つましかまなみ)さん(29)と手をつなぎ、体操服姿で園を出た。 松岡園長は「驚いているとしか言葉がでません」と絶句した。
また、新都賀川橋では、耐震補強工事をしていた4人のうち現場責任者の男性(49)が増水した川に取り残された。橋脚にしがみついていた男性は、市消防局員らの降ろした縄ばしごにつかまり、同3時15分ごろ、救助された。男性は「急激に流れが速くなり、逃げられなかった」と話した。
最終更新:7月28日22時43分
最近は看板に偽りありで、少しも医療報道ネタではないのですが、今日も別ネタです。平にご容赦。
昨日は久しぶりにビデオテープの映画を見てみました。大好きな作品で、デーヴと言います。どんな作品なのかはリンク先のレビューを見てください。とても心温まる作品です。
勝ち組になって大金持ちになったら楽しいかというと、経験がないから分からないけど、あまり楽しくないような気がします。それより、デーヴのように、困っている人たちのために働くことの方がずっと楽しいのではないかと思います。格差社会と言われるようになりましたが、最低限人間らしい生活が保障されるような、弱者に優しい社会の方が生きやすいと思いませんか。本気でそのような社会を目指す政治家を見つけることが出来たら、応援したいなあ。
我が身を振り返れば、おかしな訴訟や理不尽なクレームが無く、頑張れば頑張っただけの評価を受けるシステムがあれば、医師という仕事はとてもやりがいのある仕事だと思います。つまらない心配をせずに仕事の出来る環境を求めるのは、贅沢でしょうか。
苦情だけを見ているとそれ程非常識だとは分からない。それに対する返答を見ると、苦情の主はとんでもない奴だと分かる。「こんな気難しい客」というよりは、無法者と言っても過言ではないだろう。以下は返答。立地や、食事、部屋はよかったのですが。対応のスタッフに不満。木で鼻をくくったような一方的、マニュアル的。領収書一枚の書き方もこっちの都合も聞かず、規則ずくめ・・まるでお役所か警察署か、裁判所の窓口みたいに不快!
もう二度と行かないと思いました。(ホテル側も「こんな気難しい客はにどとこなくていい」と思っているでしょうけど)
【ご利用の宿泊プラン】
☆朝食(和食バイキング)付きプラン☆
・O◎カップルに人気のダブルAタイプ【喫煙】◎O・
病院も、モンスターペイシャントに対しては、こんな芸風が必要なのかも知れない。ところで、苦情の主はどんなカップルだったのかが気になる私は、やはり下衆なのだろうか。今回、数あるホテルの中から当ホテルをお選びになり、ご宿泊いただいたにも関わらず、領収書の件でご満足していただけず心苦しい限りでございます。 領収書の件につきましては、性格上、日常生活に密着した法律文章となりますので業務を行う中で、どうしても厳格に行う必要がございます。
今回お客様が希望された「宛名の空欄」希望や「実際に支払った額以上の金額で領収書を書く」などの希望は、如何なる場合においてでも当ホテルでは承ることができません。
また今回の件とは別となりますが「自動販売機の領収書」や「日付の変更」、「実際とは異なる但し書きの変更」も承ることができません。
この領収書の点に関しましては例えお客様からの要望であっても、サービス業務の観点とは別となりますのでご了承の程お願いいたします。
しかしながら領収書を書く際にフロント係の対応で、お客様にご理解いただけるご説明が充分にできず、ご不快なお気持ちになられましたこと心から深くお詫び申し上げます。
誠に勝手を申し上げますが、是非またご利用頂く機会を賜わりたくお願い申し上げます。お客さまのまたのお越しをスタッフ一同心からお待ちしております。
私の勤務先でも、ご多分に漏れず医師の逃散が続いている。その理由の一つが当直だ。眠れずに次の日も仕事をする、いわゆる32時間連続勤務がつらいと言うこともあるだろう。でも、本当につらいのは、救急医としての訓練も無しに救急医療をさせられることのようだ。
日本の救急医療は、実際には行政が病院に頼み込んで行われている。きちんとした体制を整えた病院が申請して救急指定病院の許可を受ける建前になってはいるが、実際には建前だけで、救急病院等を定める省令を満たす施設はほとんど無い。特に第1条の1の「救急医療について相当の知識及び経験を有する医師が常時診療に従事していること」と言うのは、ごく一部の施設を除いて実現不可能だ。
多くの施設では、救急医療は救急医療の訓練を受けていない各科の医師が行っている。眼科医や耳鼻科医と言った、いわゆるマイナー科の医師が行うこともあるだろう。あるいは経験不足の、後期研修医が行うこともあるかも知れない。そうでもしなければ回らないのだ。建前通りの医師をそろえることは不可能なので、それを強制するのであれば、救急医療をやめるほか無い。
もう医師は救急医療を辞めたくて仕方がない。でも、病院自体は行政と事を構えるわけにはいかない。行政の要請とは、様々な縛りの結果、実質的には強制なのだ。病院当局は何とかなだめすかして当直という名の実質夜勤を維持しようとしているが、専門外の誤診を責められるようでは、もう逃げるしかないだろう。
以下の記事の事例は、結果として誤診であったわけであるが、もちろん実際に非があるかどうかは詳細が分からないので何とも言えない。単に正確な診断が付けられないと非難される実例だと思って欲しい。
「不完全検査が死亡原因」 栗林病院のミスと賠償命令
記事:毎日新聞社【2008年7月24日】
医療訴訟:「不完全検査が死亡原因」 栗林病院のミスと賠償命令--地裁判決 /香川
04年に背中の痛みを訴え社会保険栗林病院(高松市栗林町3)に搬送された高松市内の女性(当時55歳)が半日後に大動脈解離が進行して死亡したのは、同病院で十分な検査がなく大動脈解離を発見できなかったためとして、女性の夫(58)らが、同病院を経営する全国社会保険協会連合会(東京都港区)を相手に、約5380万円の損害賠償を求めて起こした訴訟の判決が23日、高松地裁であった。森実将人裁判長は「検査の不完全な履行と女性の死亡との間には相当な因果関係がある」として、同連合会にほぼ請求額に近い約5193万円の支払いを命じた。
判決によると、04年1月18日朝、女性は背中の痛みを訴えて同病院に搬送された。同病院の医師は、尿路結石と診断。大動脈解離などの診断に必要なCT検査などをしなかった。女性は帰宅後の同日夕、呼吸停止のような状態となり、高松市内の病院で死亡した。死因は胸部大動脈瘤破裂とされた。
判決について同連合会は「判決文が届いていないのでコメントできない」と話している。【吉田卓矢】
救急医や循環器の専門家が診ていれば、おそらく診断の付いた症例なのだろう。でも、それらの専門医を常時そろえることは不可能だ。実現不可能な質を求めるのなら、もう、救急医療をやめるほか無い。
不完全な救急医療でもあった方が良いのか、全く無くなってしまった方が良いのか、どちらを選びますか。
医療事故調/捜査とどう距離を置くか
診療行為で患者が亡くなったとしよう。病院はミスを否定するが、遺族は納得しない。公正・中立な機関が原因究明に乗り出し、結果を公表する。再発防止にとどまらず、医療への不信解消にもなるだろう。
これが、厚生労働省が設置しようとしている医療事故調査委員会である。
現在はそんな組織がないから、遺族は裁判で争うか、泣き寝入りするしかなかった。それが深刻な医療不信を招いたことは、いうまでもない。 そうした意味でも、信頼の置ける第三者機関を設けることに異論はないだろう。問題は中身であり、どんな機能を持たせるかである。ところが、厚労省の試案や論議に目を向けると、期待よりも医療現場の委縮につながらないかと心配が先に立つ。
試案によると、事故調は医師や法律関係者らで構成し、「診療行為に関連した予期しない死亡」を扱う。現在は医師法に基づき警察への報告を義務付けているが、これを事故調への届け出に一本化する。
個別の評価は委員会の下に設ける地方ブロックが行い、遺族からの申し出による調査も可能とする。遺体の解剖、診療記録の評価、遺族への聞き取りなどから、死因や死に至る経緯、要因を突き止め、調査報告書にまとめて公表する。
調査の手順を明確に示したのは評価できる。だが、調査報告書が刑事手続きで使用されることもあるとした点は、事故調のあり方にかかわる重大な意味を持つ。捜査との関係はより慎重にすべきだろう。
組織の中立性が疑われるだけではない。訴追の恐れがある中で、真実を話せるだろうか。責任追及に傾けば、真相究明という本来の設置目的から大きく外れる。
医療事故調の設置論議は、二〇〇四年の妊婦死亡事件がきっかけになった。帝王切開で出産した妊婦が死亡し、医師が逮捕された。「不可抗力ともいえる事例に結果責任だけで医療に介入するのは好ましくない」と日本医学会が抗議し、中立的な届け出機関の設置を求める声が高まった。
厚労省の試案は、届け出機関の設置には応えたが、捜査とどう距離を置くかという点で、なお議論の余地を残している。
事故調を厚労省の下に置けば、組織としての独自性が問われる。また、遺族に参加してもらうなら、どういう形がいいのか。こうした点についても、もっと踏み込んだ議論がほしい。
検討が始まって一年。法制化を急いで不十分なものにするより、医療への影響を見極めてからでも遅くない。
(2/11 08:51)神戸新聞社説
もう始めからミスだと決めつけていたことが分かります。医師が気の毒です。原告側弁護士
9月1日、産婦人科医先生と師長さんがお悔やみにこられましたよね。「子供の養育費を払え」とか「病院をめちゃめちゃにしてやる」といって胸倉をつかんだというのは事実ですか?
高崎さん
お悔やみではなく、ミスを謝りに来られるということで私たちは理解していたので。そうではなくてお悔やみだときいて。。。「全財産を使ってでも裁判に勝ってやる」といった覚えはありません。胸倉をつかんだということもないと思います。でも、父が先生の両肩をもってゆすって「ミスやったんでしょ!?」と言った。胸倉をつかんだという記憶はありません。
なかなか手厳しい。でも、真実を知りたいのではなく、何が何でもミスと言うことにしたいだけであることが明白になった。実はこの質問の前にも、病院との約束を一方的に反故にしたやりとりもあって、かなり弁護側はポイントを稼いだと思われる。病院側弁護士(金)
先週ね、国循にみんなで揃っていって産婦人科の先生と脳外科の先生にお話をきいてきました。でもあなたはこなかった。どうしてですか?
高崎さん
。。。。仕事が入っていまして。。。。特別な仕事で。
病院側弁護士(金)
一ヶ月以上前から予定日は決まっていたはずです。予備日もあったはずです。シフトを変えてもらったりできなかったのですか?
高崎さん
。。。。仕事の日にちはかえられないものと私は認識していました。
病院側弁護士(金)
あなたは真実を知りたいと常々言ってきましたが、「真実より仕事」と言うわけですね。
高崎さん
。。。。。。
(裁判官にまぁまぁと言われる。)
危機に際して医師が冷静さを失うようじゃ困るのだが、冷静に対処すると必死さが無いと訴えられてしまうと言うことでしょうか。お気の毒です。また、父親が町議を動かして、事実がどうであれミスを認めるよう迫ったようです。病院側弁護士(米)
今回は救急システムが上手くいかなかったわけですが、雑誌などを見ると病院が悪いと言っておられますね。でも必死で病院スタッフが搬送先を探していたのはあなたもご存知だったはずです。ちょっとやりすぎではありませんか?
高崎さん
でも必死さがあまり伝わってきませんでした。産婦人科の先生の声が小さかったり。
病院側弁護士(米)
必死さは声の大きさなんですか?その「あまり」の部分が裁判なんですね。ところでお父さまのお仕事は何ですか?
高崎さん
。。。。いわなければならないのですか?
病院側弁護士(米)
いいたくなければ結構です。
高崎さん
建築業です。
病院側弁護士(米)
地元では相当大きな力を持った建築業者さんだそうですね。これは聞いた話ですが、大淀町の町議会議員の特定の方が、早く病院のミスを認めて謝罪しろ!とおっしゃっていたという話はご存知ですか?
高崎さん
ボクは知りません。
病院側弁護士(う)
0:14の意識消失から1:37の痙攣までの間が今争点になっていますよね。 素朴な疑問なんですけれどね、0:14の時点ではCTを撮らなくていい、脳疾患ではないと決めたのは内科医の先生なんですよね。1:37にはCTの話はともかく搬送の準備を始めています。 どうして訴えている相手が、内科医じゃなくって、産婦人科医なんでしょうか。
高崎さん それは。。。。。。。(黙り込む)
ここは私も疑問。何で産婦人科医を訴えたのだろう。前の方の質問で、家族がCTを撮ってくれと言ったのは2時過ぎであることに争いはない。この時点では搬送の方向で動いているので、結果として搬送までに時間がかかったとしても、CTを撮るより搬送を急いだことに問題があるとは言えないだろう。
夫の証言を見ると、この訴訟が無理筋だという印象が強い。医師の目からは前から分かっていたことだが、たぶん素人目にも無理筋なのではないだろうか。どう見ても夫の証言はボロボロなのだが、もちろん発端を作った新聞は、そのような報道はしない。
午前0時14分ごろにCTを撮らないことを決めたのは内科医だと言うことは全くスルー。むしろ逆であるかのような報道だ。遺族「診断に疑問」 主治医は過失を否定 奈良・妊婦転送死亡
記事:毎日新聞社 【2008年7月15日】
大淀町立大淀病院で06年8月、分娩(ぶんべん)中に意識不明となり、19病院に搬送を拒否された後、転送先で脳内出血で死亡した五條市の高崎実香さん(当時32歳)の夫晋輔さん(26)らが町と主治医だった産婦人科医を相手に起こした損害賠償請求訴訟の第3回弁論が14日、大阪地裁(大島眞一裁判長)で開かれ、晋輔さんや主治医らに対する尋問があった。主治医は「子癇(しかん)(妊娠高血圧症候群の一種)だと思った。あの時の(処置の)進め方に間違いはなかった」と過失を否定した。晋輔さんは「(妻は)頭が痛いと叫んだ。素人の判断でも、脳の血管が切れたのではないかと思った」と主治医の診断に疑問を投げ掛けた。【高瀬浩平】
原告側は「午前0時14分ごろに意識を失って数分後に頭部CT(コンピューター断層撮影)検査をし、脳内出血と診断していれば、実香さんは一命を取り留めた」などと主張。被告側は「主治医が子癇発作と判断し、安静を優先させ、CT検査をしなかったことは適切。けいれんを起こした直後に転送先を探すよう依頼した措置も適切」と反論している。
尋問で晋輔さんは「主治医は子癇だと言って、当直の内科医は『脳だと思います』と言っていた」と証言。一方の主治医は、内科医から脳の病気を疑ってCTを撮るよう進言を受けたかどうか問われ、「記憶にない」とした。子癇を止めるには帝王切開しなければならないという医学的知識を聞かれ、「帝王切開には産婦人科医2人が必要だが、私しかいなかった。高次の医療機関に搬送することを考えた」などと説明した。
昨日、大淀病院の産婦が病死した事例の民事訴訟の口頭弁論があった。そのもようが以下のブログにアップされている。それぞれ何部かに分かれてアップされているので、リンクはトップページに貼らせて頂いた。どうしてこんなに細かく正確に記録をとれるのだろうかと、驚くような出来映えです。それぞれのブログの著者に感謝いたします。大切な情報源です。
順不同
確率がどの程度のものであろうとも、生命の危険を肌で感じる恐怖というものは、当事者でないと分からないものなのだろう。手術を受ける患者を毎日のように見ている私でも、患者が感じている恐怖を理解しているとは言い難い。
6月23・24日の日記で毎日新聞英語サイトの変態ニュースを取り上げた。その時は、嫌な思いをする女性が多いだろうなという感想を持ったが、生命の危険を感じる人がいるとは思わなかった。でも、実際に生命の危機を感じている人たちがいる。エクアドル在住の方のブログ、なぜ、私が毎日新聞の記事を危惧するのか を読んでみて欲しい。
残虐な犯行に対しては、法で裁くより天誅を下すという心理は日本人にも分かる。ラテンの熱い血は、日本よりもその傾向は強いだろう。遊び感覚で子供を銃で狩るというのは、リンチに値する犯罪だと思う人がいても不思議ではない。
以下に示す引用文にもあるとおり、実際に殺害される確率は決して高くないだろう。でも、今まで全くなかった殺害理由が出来てしまった恐怖は、肌で感じることは出来なくても、理屈では分かる。以下は引用。
ところで、私が大使館の安全保障担当領事とお会いした時、双方で一致したのは、「おそらく、何も起きないだろう」という点でした。しかし、同時にこれも一致した見解は「もし、起きたなら、重大事件以外ありえない。」でした。ここでの重大事件とは、日本人が殺害される、という以下の意味はありません。これがどう言う意味を持つのかお判りでしょうか?「何も起きない」という予測は、「危険が無い」ではありません。危険はあっても、様々な要素から「何も起きない」と予測しただけであって、その予測により危険が取り除かれたわけでは無いのです。つまり、私たちは、この毎日新聞の記事により、それでなくても、上記のような治安状況の国で、さらにもう一つの危険、それも発生したなら、ほぼ100%命に関わる危険を背負い込む事になったのです。
昨日の日記もそうなのですが、最近税金での和解が多いように感じます。公務員上層部の場合、敗訴の危険を冒すより、さっさと和解した方が保身のためには有利なのでしょうか。どれだけ金を払っても、どうせ自分の金ではないし、責任は現場に取らせて任期が切れるのを待てばよいと言うことなのでしょうか。
現場には現場の言い分があって、最後まで争って欲しいと思っているかも知れませんし、何より、安易な和解は医療側に不利な見方を広めます。達成不可能な義務を課されたり、賠償額の高騰を招くことは明らかです。国公立病院以外は、賠償金は自前です。もちろん保険には入っていますが、賠償の機会や賠償額が増えれば、保険金も大幅に増えるでしょう。今の医療収益で払える額を超えることは間違いないと、私は思っています。
遺族と病院側が和解 機構が3200万円支払い 滋賀・東近江の医療訴訟
記事:毎日新聞社【2008年7月10日】
東近江の医療訴訟:遺族と病院側が和解 機構が3200万円支払い /滋賀
東近江市五智町の国立病院機構・滋賀病院で06年1月、市内の主婦(当時42)が死亡したのは誤診が原因として、遺族が慰謝料など約7700万円の損害賠償を求めた訴訟は9日、同機構が3200万円を支払うことで和解が成立した。
訴状によると、主婦は同月20日に気管支炎と診断されて入院。点滴を受けたが、23日に死亡した。病理解剖で、心臓と外側の心膜の間に凝固した血液などがたまる心臓疾患が死因とされた。
原告側は担当医が▽女性が胸の痛みを訴えたのに十分診察せず、短絡的に気管支炎によるせきが原因とした▽胸部のX線画像を正確に解析しなかった▽放射線医師によるCT画像の所見を見ていなかった--などと主張していた。
病院側は「結果を真摯(しんし)に受け止め、再発防止に努めたい」としている。【金志尚】
訴状は原告側の一方的な言い分を書いたものですから、実際に何があったのか、記事を読んでも全く分かりません。とにかく何らかの原因で心タンポナーデになったと言うことのようです。もちろん病死です。医療側が手を下したわけではなく、病死を防げなかったことを責められているのです。健康な人を車ではねた交通事故とは、この点で大きな違いがあります。
もちろん診断は正しいに越したことはありませんし、防げる死亡が避けられるに越したことはありません。もっと有能な医師であれば助けられたのかも知れませんが、医師の能力にも病院の設備にも格差はあります。有能な医師と設備その他の環境が完璧な病院だけでは日本の医療が成り立ちません。藪医者や劣悪な環境の病院も頑張って日本の医療を支えているのです。
よほどスタンダードから外れていなければ責任を問われないような体制でないと、今のような格安料金での医療は継続できないでしょう。前にも使ったせりふで締めくくります。
ラーメン代金でフランス料理のフルコースを求めるのだけはやめてください。
函館市:「手術で後遺症」 患者に8290万賠償で示談 /北海道
函館市は8日、市立函館病院の手術で右腕まひの後遺症が生じた渡島管内の30歳代の男性患者に8290万円余を賠償する示談が成立した、と発表した。麻酔の薬液が誤ってくも膜下に入り神経を損傷した可能性があり、同病院は「施術にミスはなく原因は不明」と説明しているものの、全身と局所を併用する現在の麻酔方法を改めることにした。
市によると、男性は右肩関節の慢性脱臼の治療のため昨年4月、関節形成の手術を受けたが、右腕が機能しない障害2級のまひが残った。この手術では術後に強い痛みが残るため、全身麻酔と右首下部への局所麻酔を併用。しかし、局所麻酔の薬液が脊髄(せきずい)神経の束になっている部分を通じ、くも膜下に入り込んだ跡が確認されたという。【昆野淳】 毎日新聞 2008年7月9日 地方版
記事を読む限りでは、全身麻酔と何らかの局所麻酔を併用して肩関節の形成術を行い、術後に右腕の麻痺が残ったと言うことのようです。どうして手術ではなくて麻酔が原因だったと判定したのか知りたいものです。肩関節形成術では、筋皮神経麻痺が起こりうることが知られていますが、麻痺の範囲はどのようなものだったのでしょうか。
記事では「局所麻酔の薬液が脊髄(せきずい)神経の束になっている部分を通じ、くも膜下に入り込んだ跡が確認された」とありますが、そのような「跡」と言うものを思いつきません。いったい何なのでしょうか。
そもそも併用した局所麻酔とは何でしょうか。「右首下部への局所麻酔」ですから、おそらく斜角筋間ブロックでしょう。これは、肩を含む腕全体に効く麻酔で、上腕神経叢という神経の束に麻酔薬を浸す麻酔法です。神経の束の所に針を刺すわけですから、超音波画像や電気刺激を用いない従来の方法では、当然神経に針が刺さる事になります。神経に針が刺さっても、たいてい問題はありません。たいてい問題がないから、長いことこの麻酔法が用いられてきたのです。でも、時にしびれが残ることもあり、この記事の症例でも、麻酔が原因である可能性はゼロではありません。
けれども、記事にあるように、局所麻酔薬がくも膜下に入ったとしても、麻酔薬が切れれば元に戻ります。また、頸部でくも膜下に局所麻酔薬が入れば、全脊麻という状態になりますから、全身麻酔前であればもちろん、全身麻酔下であっても血圧や脈拍数の変動から気がつきそうなものだと思います。と言うわけで、くも膜下に局所麻酔薬が入ったという説はありそうもありません。
おそらくは病院側が記事のような発表をしたのでしょうが、だとすると、麻酔科医としては素直にうなずくわけにはいきません。ありそうもないシナリオを発表するからには、何か隠したいことがあるのではないかと勘ぐりたくなります。ましてや、示談としては破格の8290万円という賠償金です。また、「ミスをした」当事者にされた麻酔科の、この病院での立場も気にかかります。何かあると麻酔のせいにされることはよくありますので。発表を勝手に誤解して記事にした可能性ももちろんありますが。