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(改行には手を入れましたが、番号は原文のまま)■□ イギリスにおける診療関連死への警察介入に対するガイドライン □■
葛西循環器脳神経外科病院・内科
関根 利藏
日本でも議論となっている診療中の「予期せぬ死亡」と「重大な障害」について、イギリス保健省が2006年にガイドラインを作成しています。 Guidelines for the NHS: In support of the Memorandum of Understanding- Investigating patient safety incidents involving unexpected death orserious untoward harm(http://www.dh.gov.uk/en/Publicationsandstatistics/Publications/PublicationsPolicyAndGuidance/DH_062975) このガイドラインには、「わかりやすい覚書」(Memorandum ofunderstanding: Investigating patient safety incidents involving unexpected death or serious untoward harm)も掲載されています。
その序言には、「イギリスでも以前は診療関連死が起きた場合は当事者である医療従事者を処罰する方向でしたが、処罰を前提にすることで他の医療職や医療機関が今後の診療に役立てる為の大事な情報が出てこなくなり、むしろマイナスに働くことがわかってきました。そしてNational Patient Safety Agencyへの診療関連の有害事象報告が、報告者を罪に問わないという条件でなされるようになりました。」と記載されています。
また、有害事象の報告に関するNational Health Service (NHS)ガイドラインも別途作成されています。具体的には、「予期せぬ死亡」と「重大な障害」の報告の中には警察の介入を認める事例があり、どんな事例が警察の介入を認めて、どのような手続きが取られるのかも、詳しく述べられています。
イギリスにおける予期せぬ診療関連死への警察の介入は、日本のように一方的に警察が資料の全てを押収して検察に送検して、検察が独自の医学判断をして刑事事件化するシステムとは根本的に違っています。まず始めに、医療機関であるNational Health Service (NHS)、警察当局Association of Chief PoliceOfficers、医療安全システムの政府部局Health and Safety Executive(HSE)の3者が話し合いをして、調査していきます。その際に、複数の臨床の専門医と医療安全の専門家が必ず調査チームに加わります。このチームは個々の事例ごとに召集されるので、参加するメンバーも違ってきます。そして、警察の介入の検討を要する症例とは、ガイドラインの文言を引用すると、
*evidence or suspicion that the actions leading to harm were intended (意図的に障害を起こす診療行為をした証拠あるいは疑いがあるもの)
*evidence or suspicion that adverse consequences were intended (意図的に有害な結果を起こした証拠あるいは疑いがあるもの)
*evidence or suspicion of gross negligence and/or recklessness in a serious safety incident, including as a result of failure to follow safe practice or procedure or protocols. (安全な診療手技やプロトコールに従わなかった結果、重大な事故につながった怠慢あるいは無謀な治療である証拠あるいは疑いがあるもの)
とされています。それ以外の診療行為における予期せぬ死亡はHSEの中で処理され、当然のごとく警察の介入の検討とはならず、有害事象報告者も免責されます。
上記の3点が強く疑われた場合での警察の介入の検討は、あくまで医療側と医療安全の部局と警察の3者の話し合いで結論が下されます。患者の死亡または重大な障害の医学的判断は、警察当局も加わったチーム内の複数の臨床の専門医と医療安全の専門家が判定します。
イギリスでは診療関連死の多くがcoronerと言われる行政官の指示で解剖になりますが、日本のように原告側の鑑定だけが裁判の証拠として取り上げられることもなく、解剖の所見も3者の話し合いの中で共通情報となり重要意見として取り上げられます。
検討の結果、上記の3点の疑いの確証が得られれば、警察の介入となり、そうでなければ、この時点で警察当局は手を引き、NHSやHSEに引き継がれます。
ガイドラインには、「公正で公平な判断を行うことが一番重要である」とも書かれています。そのために情報が共有されるのです。また、「一般の患者や、関係していないNHS内の医療スタッフの動揺を起こさせないように充分な配慮をすることも必要である」とも書かれています。
このガイドラインから得られることは、
(1)警察介入の検討の基準が明確である、
(2)警察と検察が先に単独では動かない、あくまで検討チームの判断を仰ぐ
(3)医学的判断をする場合に複数の臨床医と医療安全の専門家が警察も交えたひとつのテーブルで話し合って情報を共有する、
(4)医学的判断はあくまで複数の臨床の専門医が行う、
(4)解剖が多く、解剖所見が重要な資料となりデータが共有される、
(5)一般の患者や医療機関のスタッフに動揺を起こさせないような配慮をし、それを保証する、
(6)ガイドライン遵守するように警察当局と法的に決めている、等の点です。日本が学びとる点は多いでしょう。
コメント
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また厚生省の担当者も臨床の専門知識や経験に乏しく、海外の医療安全の専門家を読んで意見を聞く機会すら設けていません。
患者団体の意向は取り入れられているかもしれませんが、現場で働く人たちの意向は無視されている印象です。
厚生省や患者側からは、医師側に、配慮してやった、譲歩してやった、と恩着せがましい発言が目指します。
配慮も譲歩もなにも、世界の流れにそった考え方で進めていくべきと、言っているだけなんですが。
様々な政策を考える上で、省益を全く考えるなとは言わないけれど、世界の動向くらいは参考にして欲しいものだと思います。医療に限らず、こんなに日本の官僚が無能だとは知りませんでした。
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