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3医師を業過致死容疑で書類送検 京都府警「初歩的ミス」 京大病院脳死移植
記事:毎日新聞社【2008年3月14日】
京大病院脳死移植:3医師を業過致死容疑で書類送検 府警「初歩的ミス」
京都大病院(京都市左京区)で06年3月に脳死肺移植を受けた女性(当時30歳)が脳障害に陥り7カ月後に死亡した事故で、府警は13日、執刀した同大呼吸器外科医(46)と元心臓血管外科医(44)、元麻酔科医(48)の計3医師を業務上過失致死容疑で京都地検に書類送検した。事前に十分な打ち合わせをしないなど初歩的なミスがあったと判断した。【細谷拓海、熊谷豪】
厚生労働省によると、臓器移植法施行(97年)後、生体・脳死移植手術をした医師が業務上過失致死容疑で書類送検されるのは初めてとみられる。
調べでは、執刀医らは06年3月21日、肺リンパ脈管筋腫症の女性に対し、血液を人工心肺装置で循環させる「体外循環状態」での移植手術を実施。ところが、血流を示すモニターの確認を怠り、不完全な状態で人工呼吸を停止させた。このため、酸素不足の血液が脳に流れたことで脳障害を引き起こし、7カ月後に多臓器不全で死亡させた疑い。
さらに、人工心肺装置から体に新鮮な血液を戻す「送血管」を刺す位置を間違えたことも脳障害につながったとみられる。
府警によると、心臓血管外科医と麻酔科医は、人工心肺装置を流れる血液量を見ただけで体外循環状態になったと思い込み、モニター監視を怠った。また手術を統括する執刀医は事前に合同カンファレンス(打ち合わせ)を開かなかった。
調べに対し、執刀医は容疑を認めている。一方、心臓血管外科医と麻酔科医は事実関係を認めているが、注意義務はなかったと主張しているという。
女性の脳死肺移植は同病院5例目。病院は06年10月、患者の全身管理を担当する医師が手術室を長時間離れるなど「重大な過誤」があったと認め、府警に届け出た。女性側とは示談が成立している。同病院はこの事故以後、肺移植を自粛しているが、岡山大から招へいした伊達洋至教授を中心に早ければ今春にも再開する方針。
◇「チームワーク悪い」 日本の肺移植の第一人者で、京都大病院が肺移植手術再開に向けた「エース」として岡山大病院から招へいした呼吸器外科の伊達洋至教授は、手術に関係した3科が互いに何をしているか知らなかった点を問題視する。
今回の事故に伴う調査委に外部委員として加わった伊達教授は「この患者さんは胸膜癒着が強く、そもそも極めて難しい手術」と指摘。「人工心肺を装着した医師が『もう自分のテリトリーじゃない』という感じで手術室を出て行っている。考えられないことだ」と驚く。
報告書によると、患者の心臓と肺を流れる血液をすべて体外の人工心肺装置で循環させるはずが、一部の血液が体内に残った状態で人工呼吸器を停止。このため残された血液が酸素の供給を受けられないまま約30分間、循環していた。さらに、麻酔科医が既に血圧を下げる薬を投与していたのに、心臓血管外科医はそれを知らず、異常な血圧低下の最中も同種の薬を投与し続けた。
これらは患者の全身管理の責任者が不明確になった時間帯に発生していた。伊達教授は「チームワークが明らかに悪かったとしか言いようがない」と話している。【鶴谷真】
◇病院会見せず
この医療事故を巡っては、病院側が自ら京都府警に届ける異例の経緯をたどっただけに、書類送検にも大学や病院当局に大きな動揺はなかった。しかし、病院内では、関係者が「起訴されるんだろうか。そんなことになったら間違いなく有罪だろうし、大変だ……」と声を潜める姿も。
病院は「検察当局の今後の動きを見守る。手術再開の準備を進めているが時期は未定」とする内山卓病院長名のコメントを発表。その書面には「この件に関して記者会見は予定しておりません」と書き添えられていた。 …………………………………………………………………………… ◆手術の流れ◆
06年3月21日
17:06 執刀開始
19:50 ドナー肺到着。人工心肺装置装着後の移植を決定
20:31 体外循環開始。人工呼吸停止。麻酔科医は患者管理の主導権を心臓血管外科医へ預ける
20:45 体外循環を担当した心臓血管外科医が退室
21:29 右肺摘出
22:40 左肺摘出。徐々に血圧低下、50ミリHg以下へ
22:56 左肺移植
3月22日
0:33 右肺移植。血圧30ミリHgまで下降。血圧を下げる血管拡張剤の投与中止
2:39 体外循環終了
5:50 手術終了
6:03 瞳孔散大を発見
6:38 頭部CT撮影で全脳虚血を認める
記事読んでの全くの想像なのだが、こういう事だろうか。全身を回ってきた静脈血の全部ではなく一部を脱血して人工心肺に導く。人工心肺で酸素化された血液は、大動脈起始部ではなく、大腿動脈に挿入された送血管から、患者に送られていた。この状態だと、下半身には人工心肺で酸素化された血液が循環し、上半身には患者の肺で酸素化された血液が循環する。この状態で呼吸器を止めれば、脳には酸素化されない血液が循環することになる。
こんな事が本当に起きたのだとしたら、どうしてそんなことになったのか是非知りたい。当事者を罰して終わりにするのではなく、他でも起こりうることなのか検証することが必要だ。自分自身が同じ事をしないためにも、どんな細かいことでも明らかにして欲しい。 そのためには、刑事罰の心配をしないで報告できるような体制が必要だ。
事故やミスは起きない方が良いに決まっている。でも、起きてしまったのであれば、そこから学ぶことは出来るはずだ。当事者を罰して得るものは何だろう。この事例では遺族も処罰は望んでいないという。罰することで溜飲を下げる人すらいないのだ。罰するのではなく、出来るだけ正確な記録を残し、そこから教訓を得る方がよほど亡くなった患者に報いることになると言えないだろうか。
コメント
コメント一覧
私も定年までたいした期間があるわけではないのですが、危険な症例を扱わないで済む病院でのパート勤務に転向することも考えています。
普段心臓血管外科の麻酔は部下に任せているのに、徹夜で解離性胸部大動脈瘤の弓部置換の麻酔はきついです。今回の書類送検は他人事ではないです。
しかし夜中の緊急手術で,翌日も働かなければならない現状では,人工心肺中には麻酔科医は休息を取っておくことの方が大事です.麻酔科医の仕事は人工心肺立ち上げ直前からfullになりますから.
人工心肺を麻酔科医が廻している施設もあるとは聞いていますが,うちも含め京都大学でも心臓外科医が担当してたのですから,その間の管理は心臓外科医が行なうのが筋でしょう.(今回の問題はfull pumpではなくpartial pumpになっていたのに,それを誰もが主導せず心臓外科医も麻酔科医もコミュニケーション不足になってしまった点なんでしょうね.)
それでも,黒いとは言えある程度以上の酸素が含まれた血液が脳には流れていたはずですから,なぜ若い患者さんで全脳虚血になってしまったのか理由が解りません.
partial pump で、大腿動脈に送血、無呼吸であれば脳虚血となっても良い気もしますが、ひょっとして、大腿静脈への誤送血も考えられるでしょうか。
「モニター監視を怠った」と言うのは、パルスオキシメータのことだと思っていたのですが、動脈圧波形の可能性もあるでしょうか。
何が起きたのか本当のところを知りたいのですが、この事例については、警察の関与以外にも人事も絡んでいて、真実が明らかになりそうもない気がしています。
高齢者ならともかく,若年者ですから75-80%の酸素含量の血でも脳に灌流されていれば脳虚血は考えにくいのです.
partial pumpではパルスオキシメータでのモニターは困難であったことも考えられます.末梢循環が悪かったり,脈圧が小さかったりすれば脈動が捉えられませんから.
ご教授ありがとうございます。
それ以上悪いことを考えたくないというのもあるのですが、本文で引用した記事の中の「起訴されるんだろうか。そんなことになったら間違いなく有罪だろうし、大変だ……」と言うのが気になっています。事実だとしたら、何があったのでしょうね。
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