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治療の選択について、単純なモデルを考えてみよう。ある重大な病態で、選択可能な治療法が二つあるとする。危険性はどちらも同じで、5%の確率で死亡する恐れがあるが、片方の方がずっと苦痛が少ないものとする。苦痛の少ない方をA、苦痛の多い方をBとしよう。
患者Cが、放置すれば死亡する病態となり、AかBを選択することになった。重症度を無視すれば、治療前の段階で、Cの死亡する確率はどちらの治療を受けるにしても5%である。通常苦痛の少ないAを選ぶだろう。
Aを選択した結果、不幸にも亡くなってしまった。結果が出てからであれば、Aを選択した結果の死亡率は100%である。もしBを選択していたら、重症度は無視するのであるから、死亡する確率は5%のままだ。100%と5%の死亡率を考えたら、5%の死亡率の方を選択するに決まっている。これを結果論または後出しジャンケンという。
手術後死亡の遺族と和解 解決金200万円 大津市民病院
記事:毎日新聞社 【2008年2月19日】
大津市民病院(大津市本宮)は18日、狭心症の手術をした後に亡くなった女性患者(当時78歳)の遺族から損害賠償請求訴訟を起こされ、200万円の解決金を払って和解すると発表した。関連議案を2月議会に提案する。
市や同病院によると、この患者は03年5月23日に手術を受けたが、循環器内科の医師は事前に、血管を風船と合金製の器具で広げる手術と血管バイパス手術の2種類を家族に説明。結局、前者の手術をしたが、血管が破れ、女性は3日後に死亡した。遺族の長男と長女が04年4月、医療ミスがあったとして総額5200万円の損害賠償訴訟を大阪地裁に起こしたが、地裁は「病院側に対応ミスは無かった」との判決を下した。遺族の控訴を受け、大阪高裁は「もう一つの手術の可能性について、より詳しく説明する余地があった」と病院の一部責任を認め、和解を勧告していた。【鈴木健太郎】
危険性については架空の数字だが、侵襲度は明らかに「血管を風船と合金製の器具で広げる手術」(A)の方が、「血管バイパス手術」(B)よりも低い。どちらでも良い症例であれば、通常Aを選ぶ。前述のモデルでは、Aで死亡した症例でもBの死亡率は同じとしたが、実際には、Aで死亡するような症例では、心臓の血管(冠動脈)が脆くなっていると考えられ、Bでも死亡率は高くなる。
この事例では、侵襲の少ない治療を選択し、ミスはなかったが結果として患者は亡くなった。亡くなってから、もう一つの治療を選択したら良かったのではないかと裁判官が言いだした。敗訴でないだけマシだけど、こんな理屈がまかり通る世の中で、国際的に見たら極めて安価な統制価格で、この先も医療をやっていけるのだろうか。