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ロタウィルス下痢症自体は良くある疾患だ。2歳くらいまでにほとんどの子がかかる。ありふれた病気と言えばそうなのだが、脱水を来しやすく、時には死に至る。有効な治療は水分(電解質を含む)の補給が一番。少しずつイオン飲料などを与えればよいのだが、点滴が必要になることもある。
死亡女児の両親が損賠提訴 医師の措置誤りと青森市に07/12/25 記事:共同通信社
青森市の青森市民病院で3月、女児=当時(1)=が死亡したのは医師が適切な措置を怠ったのが原因として、東京都杉並区の両親が25日までに、青森市に慰謝料など約4500万円の損害賠償を求める訴訟を青森地裁に起こした。
訴状によると、青森の実家に帰省中だった母親らは3月24、25日の2回、女児が嘔吐(おうと)や下痢をしたため市民病院で点滴などの治療を受け、帰宅した。26日、女児がぐったりするなどしたため市内の別の医院に行き、危険な状態と診断された。市民病院に救急搬送され、ウイルス性胃腸炎による脱水症状と判明、同日夜、多臓器不全で死亡した。
両親側は「医師が当初からウイルス性胃腸炎などを疑い、適切な措置を取っていれば死亡は避けられた」と主張。市民病院総務課は「訴状を検討中で、弁護士と相談して対応する」としている。
医師は当初からウイルス性胃腸炎を疑っていなかったわけではないだろう。たいていは経口的に水分を補給するだけで十分なのだが、ある程度重症と考えて点滴もしている。その時の症状からは、帰宅させても大丈夫と踏んだのだろう。結果的には重症化して死に至ったわけだが、結果だけから医師を責めても仕方がない。多くの医師が「こんな状態の患者を入院もさせずに帰したのか」とあきれるような状況であったのなら別だが。
この事例には、不幸な状況も重なっていたようだ。地元の報道を読むと、もう少し詳しい状況が分かる。
女児死亡で両親が青森市を提訴
2007年12月22日(土) 東奥日報
今年三月、青森市の青森市民病院で診察を受けた当時一歳の女児が、二日後に容体が急変して死亡していたことが、二十一日分かった。女児の両親は「医師が適切な診断や治療をしなかった」として、同病院を管理する青森市を相手に約四千五百万円の損害賠償を求める訴訟を青森地裁に起こした。市側は「医療過誤ではない」とし、争う姿勢。
訴状によると、女児は母親とともに、同市の母親の実家に帰省していた。三月二十四日夜、嘔吐(おうと)などの症状があるため、母親らが同病院に連れて行った際、診察した小児科医は点滴などをしただけで女児を帰宅させた。母親は翌二十五日も女児を同病院に連れて行ったが、小児科医は点滴や薬を出して帰宅させた。
二十六日、白目がちになるなど女児の様子がおかしくなったため、母親は同病院に連絡したが病院側は多忙を理由に受け入れを拒否。個人病院で危険な状態と診断された女児は、救急搬送された同市民病院で、ロタウイルスによる重い脱水症状を合併したウイルス性胃腸炎と診断され、同日中にショック状態となり、多機能不全で死亡した。
訴訟にまで至った原因は、この「受け入れを拒否」なのかも知れない。実情は他の患者の診療で手一杯で、受け入れ不能だったのだろう。メディアは悪意を込めて「受け入れを拒否」と書くが、満席の飛行機に乗れないからといって「受け入れを拒否」と言うだろうか。
残念ながら、小児救急をいくらでも受け入れられる施設は少ない。まして、医療過疎が問題となっている青森県だ。既に別の救急患者の診療をしている状況では、他の患者を受け入れる余裕はないだろう。一番医療を必要としているときに受け入れられなかった無念は分かるが、それがこの国の実情だ。改善するには、多くの時間と金がかかる。でも、政府は医療費をもっと下げようとしている。状況は悪くなる一方だ。
過酷な勤務やメディアによる医療バッシング、トンデモ判決などによって、救急の現場から医師の逃散が相次いでいる。そのため、本当の救急患者を受け入れられる施設は限られており、行き場のない患者が生ずると、「たらい回し」だの「診療拒否」だのと、またまた医療機関が非難される。
このような状況で、地域によっては、「診療が出来ようが出来まいがとにかく受けろ」と言う乱暴な方針を打ち出したところもある。そんな折り、このような判決が出た。
既に多量の出血の見られる産婦をたらい回しにしなかったことが非難されている。この病院ですぐに帝王切開をしなかったら、おそらく子供も助からなかっただろう。実際に他の施設に送っていて、母児ともに死亡したら、この病院はどのような扱いを受けていたのだろうか。この事例からの教訓は、このような重症患者は決して受けてはいけないと言うことだろう。重症の救急患者は、今後ますます受け入れ先が無くなる。本当にこれでよいのだろうか。出産時、医師に処置ミス 3300万余の賠償命令
07/12/25 共同通信社
出産時の大量出血で死亡したのは適切な処置を怠ったためとして、福岡県前原市の女性=当時(39)=の遺族が、渡辺産婦人科クリニック(福岡市)に計約4900万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、福岡地裁は21日、約3360万円の支払いを命じた。
判決理由で永松健幹(ながまつ・たけもと)裁判長は「医師が早急に高次医療機関への転送を指示していれば、大量輸血などの治療を受け、状態は悪化しなかった」と述べ、過失と死亡との因果関係を認めた。
判決によると、女性は2003年1月29日、多量の出血で「渡辺クリニック姪浜」に救急搬送され、帝王切開手術を受けて男児を出産。男児は無事だったが、女性は出血性ショックの状態となり、さらに運ばれた別の病院で同年3月1日に死亡した。
硬膜外腔というのは脊椎骨の後ろの方、硬膜とその外側の黄靱帯の間にある。そこは神経の通り道なので、そこに局所麻酔薬を入れると、神経に対応した部分を麻酔することが出来る。これを硬膜外麻酔という。麻薬を入れても鎮痛作用があり、手術後の鎮痛に、よく使われる。
硬膜外麻酔をするためには硬膜外腔に針を刺さなければならないが、硬膜外腔に針が届いたことは、針に付けた注射器のピストンを押して、その抵抗の変化で判断する。この判断を誤り、硬膜を穿刺して脊髄腔内まで針を刺してしまうことを英語では"dural puncture"と言うが、麻酔科の業界内ではドラポンとかドラパンと称され、バカにされる対象である。でも、実を言うと、技術によって確率は異なるものの、絶対にドラポンをしないという方法はない。
「がん医療ミスで死亡」 遺族、1億円の賠償求め2病院側を提訴
記事:毎日新聞社【2007年12月19日】
損賠訴訟:「がん医療ミスで死亡」 遺族、1億円の賠償求め2病院側を提訴 /茨城
麻酔の刺し間違い、縫合不全、腹膜炎見落としなどのミスを重ね、早期の胃がん手術を受けた土浦市木田余の会社員、酒井宏行さん(当時47歳)を死亡させたとして、遺族が県内の病院を経営する2法人に約1億545万円の損害賠償を求める訴訟を水戸地裁土浦支部に起こした。
14日付の訴状によると、酒井さんは02年12月26日、つくば市天久保1の筑波メディカルセンター病院で手術を受けた。その際、麻酔医が針を刺し間違えて両足をまひさせた。
さらに手術中に胃と十二指腸を不均衡に縫い合わせたため、内容物が腹腔(ふくくう)内に散らばって腹膜炎を発症した。酒井さんは転院を勧められ、牛久市柏田町のつくばセントラル病院に移ったが、同病院の医師も腹膜炎の発症を見落として食事の開始などを指示。翌年1月6日に死亡した。
遺族は、2病院で計9人の医師が治療にかかわったと主張。県警は、うち3人を業務上過失致死容疑などで書類送検したが、不起訴処分になっている。
酒井さんの妻(53)は「夫の無念を晴らすのは私しかいないというつもりで準備してきた。こんな理不尽な死に方があるだろうか。訴状を読むと今でも涙が出る」と話した。両病院側は「訴状が届いていないのでコメントできない」としている。【山本将克】
術後の縫合不全も、技術によって確率は異なるものの、なくすことは出来ない。この症例が外科医の責任を問われて当然だったのかどうか、記事からは全く判断できないので、門外漢の私はコメントを差し控える。専門分野の硬膜外麻酔についてだけ言及する。
おそらくこの麻酔科医は、かなり落ち込んだだろう。ドラポンを絶対に防ぐ方法はないとはいえ、脊髄まで穿刺することは滅多にない。この記事を読んだ麻酔科医の多くも、ミスだと判断することだろう。でも、私はそのように決めつけることはしない。注射器の抵抗が変化しないまま、脊髄まで穿刺することだってあり得ると考えるからだ。
針が硬膜外腔にはいると注射器の抵抗が変化するのは、硬膜外腔は組織がスカスカだからだ。針が黄靱帯を貫いて硬膜外腔に達すると、急に抵抗が消失するのだ。もし、極めて希に、丈夫な黄靱帯の持ち主が居たらどうだろう。針は黄靱帯を押すものの、刺さらない。黄靱帯は押されて、硬膜や脊髄までも圧迫する。ついに針が黄靱帯を貫いたとき、硬膜も一緒に貫き、脊髄まで届いてしまう。この状態では、抵抗消失法で行う限り、防ぐことは出来ないだろう。
もちろんこれは、私の想像にすぎない。麻酔科医の多くは賛同しないかも知れない。でも、あり得るメカニズムだと思っている。
最期にもう一つ。この症例は亡くなってしまったので麻痺が回復していないだろうが、脊髄を刺しても、時間はかかるが通常は回復する。もちろん死亡と脊髄穿刺は何の関係もない。この記事だと、麻酔科医も死亡に責任があるかのような書き方だが、それは誤りだ。
日赤に200万円支払い命令 医療損賠訴訟
記事:毎日新聞社【2007年12月18日】
医療損賠訴訟:日赤に200万円支払い命令??地裁支部判決 /兵庫
MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)に感染後、病院間の連携不足で適切な治療を受けられなかったため骨髄炎を発症し、左足を切断せざるを得なくなったとして、たつの市の男性(52)が、日本赤十字社(東京都港区)と県社会福祉事業団(神戸市西区)を相手取って慰謝料計1000万円を求めた損害賠償訴訟の判決が17日、神戸地裁姫路支部であった。田中澄夫裁判長は「原告に重大な後遺症が残らなかった可能性を侵害した不法行為責任がある」として、日本赤十字社にのみ200万円の支払いを命じた。一方、同事業団への請求については「過失はない」などとして棄却した。
訴状などによると、男性は01年3月、交通事故で姫路赤十字病院に入院。7月下旬、同事業団経営の県立総合リハビリテーションセンター中央病院に転院した際、MRSAに感染していることが分かり、8月下旬に赤十字病院へ再入院。そこで感染による骨髄炎の悪化が判明し、左足切断の処置に至った。
判決では、左足切断が回避できた可能性を認定したうえで、「赤十字病院の医師は経過観察義務を怠り、適切な検査・治療を行わなかった」と指摘した。【馬渕晶子】
1000万円の請求に対して、200万円の支払い命令というあたりが、いかにもうさんくさい。本当に被告にミスがあったのであれば、そんな額では済まないだろう。「被害」があったのだから、裁判費用くらいは出してあげなよという、いつものパターンのように思える。どうせ保険で払うんでしょ、という判断なのだろうが、いつでも結果から見て正しい診断を要求されるのでは、医療は成り立たない。賠償額の問題ではなく、このような理屈がまかり通ることが医療を崩壊させていることに気がついて欲しいものだと思う。
当然のことながら、骨髄炎を起こした原因も、足の切断に至った原因も、交通事故である。運が良ければ治癒するが、悪ければ死亡の可能性だってある。その中間の結果だったのだから、病院を恨む筋合いではないと思うのだが。
よその病院での出来事ですが、火葬場でハサミのようなものが出てきて大騒ぎになったことがあります。実際にはペアン鉗子という手術用の器具でした。手術をしたとき、おなかの中に置き忘れたのでしょう。結局は癌で亡くなったのですが、死因との因果関係が取りざたされるのはやむを得ません。
しばらくして、同じ病院で、同じように火葬場からペアン鉗子が発見されて大騒ぎになりました。でも、このときは術直後のレントゲン写真を撮っていたので、手術の際ではなく、病理解剖の時に残したことが証明されました。これでも問題ですが、死因との関係が取りざたされることだけは回避出来ました。
数が合っていたのに残っていたという経験はありませんが、よその病院での事例なら記事で見たことがあります。数が合わないのに残っていなかったという経験ならたくさんあります。数合わせは万能ではありません。このブログでは何度も同じことを書いているので、しつこいと思われるかも知れませんが、麻酔覚醒前のレントゲン撮影を強くお奨めします。手術でガーゼ置き忘れ 「大きいから」と数えず
記事:共同通信社【2007年12月14日】
京都府京丹後市弥栄町の市立弥栄病院で10月、手術した40代の女性患者の体内にガーゼ1枚を置き忘れるミスがあったことが14日、分かった。約1週間後に判明して取り出し、女性の健康状態に異常はないという。
病院によると、10月10日に女性患者の開腹手術を実施。その際、「ハンカチガーゼ」と呼ばれる約30センチ四方のガーゼ1枚を下腹部に丸めた状態で置き忘れた。同16日にエックス線検査でミスが判明。女性に謝罪して再手術し、取り出した。
弥栄病院は「大きいガーゼであり取り忘れはないと考え、枚数を数えていなかった。再発防止に努める」としている。
処方箋の書き方は、ある程度慣習によるもので、年代や地域によって異なることもある。日本では伝統的に内服薬では一日量を書くことが多いが、アメリカでは一回量を書くのだそうだ。また、日本でも注射になると一回量を書く。
日本の処方は、たとえばこんな風だ。
Rp) ロキソニン3Tab
3xn.d.e.x7T.D
意味するところは、ロキソニン一日量3錠、3回に分けて食後に内服、7日分。
これがアメリカ式ならこうなる。
Rp) ロキソニン1T
t.i.dx7days Disp #21
処方箋の書き方、その2にはそのあたりのことが書かれているが、きちんと決まっていないと事故の元だ。一日量を一回量だと思って、一日に4回投与すれば4倍量を投与することになる。
松阪中央病院の抗がん剤過剰投与:業過致死容疑で医師を書類送検 /三重
記事:毎日新聞社【2007年12月11日】
松阪市の松阪中央総合病院に入院していた男性患者が今年2月、抗がん剤を過剰に投与された後に死亡した問題で、松阪署は10日、当時同病院に勤務していた男性主治医(33)=京都市=を業務上過失致死容疑で津地検松阪支部に書類送検した。
調べによると、主治医は今年2月、消化器系のがんの治療のため入院した当時60歳代の患者に、通常の4倍の抗がん剤を投与するよう誤ってカルテに記載。5日間にわたって記載通りに投与された患者を呼吸不全で死亡させた疑い。主治医は容疑を認めているという。【岡大介】〔伊賀版〕
この事例が処方箋の書き方の問題で間違えたのかどうかは分からない。そもそも内服薬なのか注射薬なのかも記事には出ていない。でも、4倍投与したら死ぬような薬を扱うこともあるのだから、処方箋の書き方は厳密に統一するべきだろう。
いつものことだが、医師個人の責任を問うばかりで、ヒューマンエラーを前提としたシステムの構築を怠るのであれば、いずれまた同じ事が起きるだろう。過失に刑事罰を科すよりも、過失があっても重大事にならないようなフェイルセーフ機構を充実させる方がずっと効果があるのだから。
手術の内容にもよるが、手術をする場合には抗凝固療法(血液の凝固を抑える治療)を中止することは一般的だ。必要があって抗凝固療法を行っているのだから、元の病気に悪影響が出る可能性はある。手術の必要性と、元の病気への悪影響を秤にかけて、手術の必要性の方が勝ると思うから手術をするのだ。
もちろん抗凝固療法を行っている科との連携は大事だ。病院全体として、体制を整える必要はあると思う。でも、いちいち記者会見をするようなことだとは思えない。命を救うためには、どちらかに賭けなければならないケースだったのだから。亡くなったのは、それだけ重症だからであって、ミスがあったわけではない。心臓の手術を断ったのも患者自身だ。院内で、今後は連携しようと意思統一すれば済む話だと思う。
外科循環器科「情報交換すべきだった」 対応不十分認める 富士吉田市立病院
記事:毎日新聞社【2007年12月7日】
富士吉田市立病院(江口英雄院長)で8月、外科に肝臓病で入院し心筋梗塞(こうそく)で死亡した70代の男性患者が、心臓疾患で循環器科を受診していたにもかかわらず、2科の医師間で情報交換をしていなかったことが分かった。6日に会見した江口院長は「心臓も肝臓も重症だった。どちらの治療を優先的にやっていくのか、医師同士が相談すべきだった」と話し、対応が不十分だったと認めた。今後は他科との連携体制強化などで、再発防止策を進めるとした。
同病院によると、男性は97年7月、循環器科で不安定狭心症と心筋梗塞と診断され入院した。医師は心臓バイパス手術を勧めたが、本人の希望で手術は行わず、同年8月以降は1潤オ3カ月に1度の通院外来で投薬による治療を続けていた。
今年7月、肝機能障害などで同病院外科に入院し、各種検査と胆汁を体外に出す手術を行ったが、最終的に肝臓にがんがあると診断された。外科医は手術にあたり、男性が循環器科で処方された血液の流れを良くする薬の服用を、国際的なガイドラインに従ってやめさせた。
男性は8月21日午前4時ごろ、容体が突然悪化し、約3時間後に死亡が確認された。死因に結びつくものがはっきりしないとして、同病院は事故調査委員会を設置して調査を行った。心臓の薬を止めたことと死亡との因果関係は断定できなかったが、循環器科の医師と外科医の間で一度も情報交換がされていなかったことが判明した。外科の医師は男性が循環器科にかかっていたことは承知していたが、詳細な病状は知らなかったという。 江口院長は、再発防止策として▽服用中の薬や病状が分かる書類を他科の医師も見ることを義務付け、外来を含めて十分な連携を取る▽今まで主治医1人が行ってきた治療を、医師数人によるチーム医療体制に変える▽患者と家族に十分な説明を行い理解してもらう??ことを挙げた。
一方、同病院はプライバシーを理由に患者の氏名や遺族の連絡先などの取材には応じなかった。【藤野基文】
文字化けはママ
肝臓は血液凝固に関わる臓器なので、肝臓の手術では出血しやすい。当然、抗凝固療法は中止すべきだ。すでに心臓の手術は拒否されているので、抗凝固療法を中止して肝臓の手術をするか、心臓への影響を考えて、手術をせずに肝臓癌で死ぬかの究極の選択をすることになる。気が変わって心臓の手術を先にすることになっても、肝臓癌による肝機能の低下があれば、手術後の出血が止まらないかも知れない。
出来れば両方の科で相談した方が良かったことは間違いないが、いずれにしてもリスクの高い症例であったことも間違いないだろう。今後の体制を構築すればよいことであり、記者会見をして、主治医をさらし者にする必要など無いと思うぞ。
はしか感染死、病院側に1審の10倍4400万円賠償命令
ぜんそくで福岡県飯塚市の飯塚病院に入院した二女(生後9か月)がはしかにかかり、急性心筋炎で死亡したのは不適切な治療が原因として、同市内に住む女児の両親が、病院を経営するセメント会社「麻生」に約7600万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が6日、福岡高裁であった。
丸山昌一裁判長は医師の診療上の過失を認め、説明義務違反の過失のみを認めた1審・福岡地裁判決の賠償額の約10倍となる約4400万円の支払いを命じた。
判決によると、二女は2001年6月、気管支ぜんそくなどのため入院。隣のベッドの男児がはしかにかかっていることがわかり、医師は治療薬を勧めたが、説明が不十分だったため、両親が必要と判断せず投薬されなかった。二女はいったん退院したが、翌7月、はしかと診断されて再入院、まもなく急性心筋炎で死亡した。
丸山裁判長は「男児と接触して3日以内に投薬したら、二女の死亡を避けることができた」と医師の注意義務違反を認めた。 (2007年12月6日21時45分 読売新聞)
2審は賠償命令10倍に増額 女児死亡、病院に4000万余
記事:共同通信社【2007年12月7日】
福岡県飯塚市の女児=当時(9カ月)=が入院中にはしかにかかり死亡したのは不適切な治療が原因として、両親が飯塚病院を経営するセメント製造会社「麻生」に約7600万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、福岡高裁は6日、1審福岡地裁判決の賠償額を10倍に増額、約4400万円の支払いを命じた。
判決理由で丸山昌一(まるやま・しょういち)裁判長は、はしかを予防する血液製剤の影響について、女児の母親に間違った情報を伝えたと述べ、1審判決に続き、医師の説明義務違反を指摘。
さらに「適切な説明を受けていれば、母親は投与を承諾したと推認され、投与していれば、はしかの重症化を防ぎ死亡を避けることができた」と死亡との因果関係も認めた。別の薬の投与量を減らさなかった治療ミスも認定した。
判決によると、女児は2001年6月、気管支炎などで入院。その後入退院を繰り返し、7月にはしかによる急性心筋炎で死亡した。
飯塚病院は「判決文を読んで、今後について検討したい」としている。
読売の記事では治療薬が血液製剤であることが分からないし、共同の記事では、はしかにかかった経緯が分からない。おかげで二つの記事を引用しなければならず、スペースの無駄だ。どうせ記事にするのなら、分かるように書けばいいのに。ここで言う血液製剤とはガンマグロブリンのこと。免疫を高める作用がある。
説明義務違反の400万円ほどでも嫌になるだろうが、「男児と接触して3日以内に投薬したら、二女の死亡を避けることができた」と素人に断定され、4000万円以上の賠償額を課される医療ミス扱いされたら口惜しいだろう。これは高裁判決だけど、医療関係は最高裁に門前払いされやすい印象があるので、このまま確定する可能性もある。
今後は患者側が勝手に治療を拒否しても、結果が悪ければ説明が悪いとして高額の賠償金を獲得できると言うことなのだろう。この際だから、私も貰う方に回ろうかな。そんな風に考える人も出てくるだろう。
ガン患者が少しでも早く手術をして欲しいと思う気持ちはよく分かる。でも、ガンセンターには多くのガン患者が集まるから、どうしても順番待ちが生ずる。検査も手術も順番を待つガン患者はたくさんいるのだ。特に最近は麻酔科医の不足で、十分に手術予定を組めなくなっている。うちの病院も、私だけが何人もいて麻酔をしているのであれば、もっと手術を引き受けるのだが、部下の身の安全を考えると、あまり無茶も出来ない。
ガン患者の手術を急ぐ理由は手遅れにならないようにするためだ。転移する前に手術をしたいのだ。だから、すでに転移していて根治術の対象にならなければ、特別に急ぐ理由はない。
この症例は最初に転移性骨腫瘍が見つかったようだ。つまり、どこかにガンがあり、それが骨に転移した病巣が最初に見つかったと言うことだ。この時点で手術による根治は望めない。何処のガンなのか見つけることに意義がないとは言わないが、特別に急ぐ理由もない。むしろ、末期を安楽に過ごせるような緩和医療が必要だ。そして、その通りの治療が行われた。原告の主張には全く根拠がない。何が「公知の事実」だ。手術すれば何でも治るわけではないのだ。病院も災難だ。お気の毒に。県立がんセンター医療過誤損賠訴訟:地裁、原告の請求を棄却 /栃木
記事:毎日新聞社【2007年12月7日】
県立がんセンター(宇都宮市)の適切な治療が遅れたため、延命の可能性が奪われたとして、転移性骨腫瘍(こつしゅよう)で死亡した同市の女性(当時67歳)の遺族が県に損害賠償を求めた訴訟の判決が6日、宇都宮地裁であり、福島節男裁判長は原告側の請求を棄却した。原告側は控訴する方針。
判決で福島裁判長は「がんセンターは原発巣の探索として、適切な検査を順次行ったうえで具体的な治療方法を提案しており、これらの検査が通常必要な期間を上回ったという事情も認められない。痛み緩和のため薬も処方していた」と認定。「腹腔鏡で骨生検を行った時期が遅れたことや、腎がんを疑うという誤った判断で治療開始が遅れた」とする原告側の主張を退けた。
判決後、原告側は会見で「がんセンターで約2カ月間受診していたが、一切治療が行われなかった。進行がんなので1、2週間で検査を終わらせ手術に入るのは公知の事実」と改めて主張した。【山下俊輔】
私が密かに恐れているのは、脳卒中や心筋梗塞など、突然に起こる致命的な病気に麻酔中に出くわすことだ。いくら病気で亡くなったと言っても、麻酔のせいにされる恐れはある。幸いなことに、今までそのような目にあったことはない。手術室のドアの前で亡くなったというニアミスはあったが。
顔面神経麻痺も、脳卒中や心筋梗塞ほど劇的ではないが、ある日突然に起こる。発症少し前に顔面の手術をしていたら、クレームを受けることもあるだろう。
鹿大医療ミス損賠訴訟:「説明不十分」と220万円賠償命令--地裁判決 /鹿児島
記事:毎日新聞社【2007年12月6日】
鹿児島大歯学部付属病院であごの手術をした県内在住の20代の自営業女性が、担当医のミスで術後に顔面神経がマヒしたとして、鹿児島大学に約2280万円の損害賠償を求めた裁判の判決が5日、鹿児島地裁であった。小田幸生裁判長は「神経マヒに対する説明が不十分だった」として、220万円の賠償を言い渡した。
判決では、女性は02年9月に、鹿児島大歯学部付属病院であごの手術をしてから5日後、右目が閉じられないなどの顔面神経マヒの症状が認められた。さらに、唇付近の感覚もなくなり、時折麻酔を通した左手に痛みがあるという。
小田裁判長は「医療機関側は、治療行為について事前に十分な説明を行う義務があるが、顔面神経マヒの具体的内容や発生頻度、予後について十分な説明がされたとは認めがたい」として、220万円の賠償を命じた。だが、原告が主張する手術中の過誤による神経損傷については、顔面神経マヒが手術直後から発生していなかったことなどから退けた。
判決後、原告の女性は「(過誤が認められなかったことは)納得いかない。相手の誠意も不十分。控訴を考える」と話した。大学側は「判決文を読みこんでから今後の対応を考えたい」とコメントした。【川島紘一】
ちょっとこの判決の理屈がよく分からない。術後5日経ってから麻痺が出現したのだから、確かに手術による神経損傷ではない。と言うことは、そもそも顔面神経麻痺は手術とは関連がないと言うことではないのか。手術と関連がないのであれば、あごの手術で一定の割合で顔面神経を損傷することがあるとしても、そして、その説明が不十分であるとしても、実際に顔面神経を損傷したわけではないのだから、説明が不十分であったこととは関係がないのではないだろうか。
「説明不十分」と言う判決は、手術をすれば一定の割合で顔面神経麻痺が起きるのに、その説明をせず、実際に手術が原因で顔面神経麻痺が起きたときに下されるはずだ。と言うことは、顔面神経を傷つけてはいないが、手術が原因で麻痺が起きたという認定なのだろうか。それとも、手術をしたとき、手術とは無関係に顔面神経麻痺が起こることがありますと説明せよと言うことだろうか。
話は変わるが、麻酔を通した左手とは何だろう。たぶん左腕に点滴をして、その回路から静脈麻酔薬を投与したのだろうけど、もっとまともな表現はないのだろうか。それはともかく、静脈麻酔薬として広く使われているプロポフォールには血管痛がある。だから、麻酔導入時に血管痛があったのだろうが、術後も痛むのは心理的な影響がうかがわれる。まだまだ揉めそうな予感。