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2007.10.13 15:11 |  診療  |  医療制度 / 行政  |  医療事故  |  bamboo  | 推薦数 : 5

医師を襲うトンデモ医療裁判

 日経メディカル10月号で、「医師を襲うトンデモ医療裁判」という特集が組まれている。医師向けの雑誌とは言え、掲示板などではなく一般の雑誌に 「トンデモ医療裁判」という表現が載るとは思わなかった。記者にとっても「いい加減にしろ!」という事例が目に付くと言うことだろうか。

  内容は、前半が総論、後半が各論に分かれている。総論では、医療の限界や不確実性を無視した判決や、いわゆる後出しじゃんけんなどに触れた後、トンデモ判決の出るパターンを4つ上げている。

 最高水準要求型(医療側に求める医療水準があまりにも高すぎるタイプ)

 医師は全員神のような存在でなければならない。

どのような疾患であろうとたちどころに診断を下し、最適な治療をする。合併症が起きることなどあり得ない。

 説明義務過剰型(医療側に求める説明義務があまりにも広すぎるタイプ)

 医師に過失が無くて患者が不満なら説明義務違反。

乳房温存手術の適応が無くても、違う意見の医師を紹介する義務さえある。

 因果関係こじつけ型(医療行為やミスを、患者の転帰と無理矢理こじつけるタイプ)

 医療行為を後から検証すれば、何らかのミスはたいていある。

結果が悪ければ、ミスとの因果関係が無くても、可能性で断罪される。

 医学的根拠希薄型(医学的に誤った根拠をもとに医師の過失を断じているタイプ)

 トンデモ判決の真骨頂。

実例として「心タンポナーデ事件」を提示。

  いくつもの実例を目にすると、まるでヤクザに因縁を付けられているようだと感じるのは私だけだろうか。もちろん多くの心ある患者は因縁を付けるような訴訟はしない。たとえ結果が悪くても、きちんと説明すれば、たいていの患者や遺族は納得したかどうかは別にして、訴訟まではしない。病気や大けがをすれば、死ぬことだってあることを知っているからだ。それが理解できない人や、最初から金目当ての人がトンデモ訴訟を起こす。もちろん本物の医療ミスに対する訴訟は別だ。そこは誤解しないようにして欲しい。

 各論では実例を4例挙げている。

 1)太い糸で縫合したからガス壊疽が起きた?!

2)脳外科医も心嚢穿刺が出来て当然?!

3)添付文書で禁忌なのに投与しなかったのは過失?!

4)1日の診断遅れとステロイドで帯状疱疹後神経痛になった?!

  1)2)についてはリンク先の日記ですでに触れたことがある。3)4)の事例は知らなかった。4)も医学常識に照らして理不尽な判決ではあるが、3)の事例は、「いったいどうしろと言うのだ」という思いでいっぱいだ。

  3)の事例とは、外傷性クモ膜下出血および脳出血の患者に対し、術前にマンニトールを投与しなかったことが過失と認定された事例だ。マンニトールの添付文書には以下のように禁忌が記されている。

【禁忌(次の患者には投与しないこと)】 急性頭蓋内血腫のある患者[急性頭蓋内血腫を疑われる患者に、頭蓋内血腫の存在を確認することなく本剤を投与した場合、脳圧により一時止血していたものが、頭蓋内圧の減少とともに再び出血し始めることもあるので、出血源を処理し、再出血のおそれのないことを確認しない限り、本剤を投与しないこと]
 これを読む限り、出血源を処理していない術前にはマンニトールは使用できない。最高裁の見解として、医師の裁量より添付文書の方が優先度が高いのだ。医療と法律の諸問題の中から引用してみる。

3.最高裁判例による行為規範の創出

 (1)医師の行為規範の創出 診療契約が文書化されていない現状を前提にして、最高裁はその判例法理を通じて、医師の行為規範を創出しつつある。

 行為規範であるから一義的に明白であることが要請され、その結果、文書化されたものを過度に尊重する傾向が強くなっている。すなわち、医療関連文書を偏重することになっているのである。

 一例を挙げれば、次のとおりである。

 (1)医薬品の添付文書 平成8年1月23日判決(麻酔剤ペルカミン添付文書事件)や平成14年11月8日判決(フェノバール添付文書事件)からして、明瞭である。

 このように、過度に尊重されている医療関連文書の筆頭に添付文書がある。それなのに、添付文書で禁忌とされている医療を行わなかったからミスだと言うのでは、いったい医者にどうしろと言うのだ。

  脳出血に対しては、添付文書に禁忌と書かれている関係で、脳外科医は有効な降圧薬が使えなくなっている。その同じ脳外科医に対して、マンニトールは禁忌でも使えと言うのでは、何が何でも医者叩きをするつもりなのだと判断するほか無い。裁判官には、医者に対する敵意があるのだろうか。

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