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麻酔処置で医師の過失認定 札幌地裁、賠償命じる
記事:共同通信社【2007年10月26日】
北海道帯広市の医療法人社団「高山泌尿器科」で前立腺肥大の手術中に呼吸が停止し、その後死亡した男性=当時(79)=の遺族が損害賠償を求めた訴訟で、札幌地裁が手術前の麻酔処置について医師の過失を認め、病院側に約5800万円の支払いを命じる判決を出していたことが25日、分かった。
原告側の弁護士によると、病院側は控訴せず、判決が確定したという。 先月26日に出された判決によると、男性は2003年12月、手術の途中で呼吸が停止し、意識が戻らないまま約7カ月後に死亡した。
手術前、医師は麻酔の2分後に男性をあおむけにするなどしていたが、判決理由で奥田正昭(おくだ・まさあき)裁判長は「少なくとも5分間は座った状態で安静を保つべき注意義務を怠った」と指摘し、医師の過失と死亡との因果関係を認定した。
原告側代理人の伊東秀子(いとう・ひでこ)弁護士は「医師だけでなく患者にも注意を促す判決だ」と話している。
肛門の周りにだけ脊椎麻酔を効かせたいとき、脳脊髄液に比べて高比重の麻酔薬を座位で使用する。薬液は下に沈み、馬に乗ったときに鞍に当たる部分だけに麻酔作用を及ぼす。そのためサドルブロックと呼ばれる。
報道だけから判断すると、この件はサドルブロックを行った際、5分間座位を続けるべき所2分で仰向けにしたので呼吸が停止したと判断されたようだ。でも、この見解には大きな疑問がある。
脊椎麻酔が原因で呼吸が止まるためには、かなりの高位麻酔になる必要がある。サドルブロックを行う際、麻酔薬は必ず高比重液でなければならない。高比重液であれば、たとえ注入後2分間であっても、多くは下に溜まっているはずだ。そこから仰向けになっても、第3腰椎が盛り上がっているので、薬液は上に上がれない。つまり、麻酔で呼吸が止まることはないのだ。
また、前立腺肥大の手術がどのような術式だったのか分からないが、手術ではなく、前立腺にガンが含まれているかどうか調べるための前立腺生検という検査でない限り、サドルブロックでは出来ない。尿道から器具を入れて削る手術でも、腹部を切開して行う手術にしても、サドルブロックでは無理なのだ。
また、5800万円という高額の賠償判決でありながら、控訴もせず、一審で確定させてしまった病院側の対応にも疑問がある。
どうも実際には報道では分からない事情がありそうなのだが、医学的に明らかに誤った情報が一人歩きするのは困る。たぶん今回もトンデモ鑑定医の活躍があったのではないかと思うのだが、私のように、はじめから座位にもしないで横向きで麻酔を行う麻酔科医の立場はどうなる。
奈良県という所は恐ろしい所だ。日本の妊産婦死亡率はトップクラスの低さだ。世界と比べて少ない産科医の努力のたまものなのだが、それでも死亡例は出る。妊産婦死亡率をゼロにすることは不可能だろう。
当然のことながら、出産時に産婦が亡くなることはある。もちろん初歩的な言い訳の出来ないミスであれば別だが、予期しない大出血への対応が遅れることまで刑事罰の対象にされてはたまらない。
元医師の不起訴不当 検察審議決 大和高田市立病院の妊婦死亡事故
記事:毎日新聞社【2007年10月25日】
◇「処置に重大な過失」
大和高田市立病院で04年、出産した30歳代の妊婦が死亡する事故があり、業務上過失致死容疑で書類送検された同病院の元産婦人科医(34)を奈良地検が不起訴処分(嫌疑不十分)としたことに対し、奈良検察審査会が不起訴不当を議決したことが24日、分かった。
議決書などによると、04年10月、入院中の女性は出産中に血圧が急激に上昇。医師は投薬で数値を下げたが、女性は大量に出血し死亡した。
県警は昨年3月、医師を業務上過失致死容疑で書類送検、奈良地検は今年3月に不起訴処分にしていた。審査会は「医師は出血を疑い、速やかに救命処置をするべきで、女性を出血性ショックで死亡させたことに重大な過失がある」と判断した。
奈良地検の野島光博次席検事は「議決内容を踏まえ、再捜査する」とコメントした。【阿部亮介】
元医師といえば今は医師ではないということなのだが、そうなのだろうか。年齢から見て、医師そのものを辞めたとは考えにくいのだが。以前も職場を変わっただけの医師に同じ表現をしているので、同じ轍を踏んだのではないかと思う。また、出血性ショックで死亡したのであって、させたわけではなかろう。死なせたのと、死亡するはずの所を助けられなかったこととの間には大きな違いがある。どうしていつも同じ間違いをするのだろう。
実を言うと、お産の時に大量出血することを予期しないかと言えば、予期しているだろう。実際に大量出血することは希だが、そのようなことが起こりうることは知っているはずだ。だとすれば大量出血に備えて万全の準備をしておくべきだという素人判断が幅をきかすことは分からないでもない。
でも、医療は有限のコストの中でやっているのだ。何処まで対応可能な体制を取るのかは、かけられるコストで決まってくる。日本のような低コストで、今までのような安全なお産が可能であったことを褒めるべきなのだ。滅多にない大量出血でも必ず間に合うような体制が取れないのは無理のないことであり、決して刑事罰を与えるような犯罪ではない。しかも、本来万全の体制を整えるべき行政や病院上層部ではなく、医師個人に責任を負わせるなどとんでもないことだ。
このような状況であるにもかかわらず、奈良県ではさらに産科医を奴隷化しようとしている。奈良県妊婦救急搬送会議2とか厚労官僚の超強力電波 を見て貰えば分かるが、奈良県では産科医の労働環境など全く考えていない。牛馬のように扱われ、たとえ不可抗力であっても、死亡例が出れば刑事罰。早く逃げ出した方が身のためですよ。
広島県に330万賠償命令 県立病院の過失認定
記事:共同通信社【2007年10月25日】
出産の際に脳内出血を起こし、転送先の病院で死亡したのは医師が適切な措置を怠ったためとして、広島市の女性=当時(32)=の家族が、県立広島病院(広島市)を運営する県などに約7800万円の損害賠償を求めた訴訟で、広島地裁は24日、県に330万円の支払いを命じた。
判決理由で野々上友之(ののうえ・ともゆき)裁判長は、出産した病院の過失は認めなかったが、女性が転送された県立病院について「適切に治療していれば、死亡した時点で、なお生存していた可能性は認められる」と述べた。
判決によると、女性は2002年2月、島根県邑南町の病院で帝王切開により出産。その際に脳内出血を起こしたため、県立広島病院に転送され血腫を取り除く手術を受けたが、翌3月に死亡した。
県立広島病院の医療過誤訴訟:県が敗訴、330万円支払い命じる----地裁 /広島
記事:毎日新聞社【2007年10月25日】
妊娠中毒症だった女性(当時32歳)が島根県の公立邑智病院で適切な処置を受けられず、出産後に転院した県立広島病院でも術後の管理が不十分で死亡したなどとして、夫の会社員の男性(36)=広島市南区=らが、邑智病院と広島県に計約7800万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が24日、広島地裁であった。野々上友之裁判長は「県立広島病院で適切な身体管理や治療が施されれば救命できた」などとして県に330万円の支払いを命じた。邑智病院については、産婦人科医師が脳出血の原因診断を専門医のいる病院に委ねたのは十分な措置として、訴えを退けた。
判決などによると、女性は02年2月1日、陣痛が始まり通院先の邑智病院で外来診察を受け、そのまま入院。軽度の妊娠中毒症で高血圧症状が半日以上続き脳内出血を起こした。帝王切開で出産後、脳出血の血腫を取るために転院した県立広島病院で手術を受けたが、身体管理がなされずに同3月1日に死亡した。
三宅静香広島県県立病院室長は「主張が認められず残念。判決内容を精査し、対応を検討したい」とした。【井上梢】
県立広島病院の治療の何処が不適切だったのか書いていないので、不適切かどうかの判断は出来ません。でも、元々救命の困難な疾患でも、結果が悪ければ賠償責任が認められてしまうという印象を受けます。
また、共同通信と毎日新聞の記事は、微妙に表現が違います。強調したところを比べてみれば分かりますが、共同通信では、救命自体は困難だったが、もう少し延命できたのではないかという判決のように読めます。一方毎日新聞では、救命自体が可能であったという判決に読めます。本当の判決の趣旨はどちらだったのでしょう。賠償額が大幅に減額されているところを見ると、共同通信の方が正しいように思えます。いつも感じることですが、毎日新聞の表現には、出来るだけ医師を貶めようという意図があるのではないかと疑いたくなります。
最近はブログネタが減ったと感じていましたが、学会で留守にしている間にネタにしたくなるような報道が相次ぎました。当分ネタには困らないでしょう。
今まさに寿命が尽きそうな人に「大丈夫ですか」と声をかけ、肩を揺すったら、肩を揺すったから死んだのだと訴えられる。そんな時代を彷彿とさせる記事だと思います。
損賠訴訟:入院患者の遺族、水ようかん摂取が死因 病院ミス否定----鳥取地裁 /鳥取
記事:毎日新聞社【2007年10月25日】
入院中に看護師が水ようかんを摂取させ、呼吸困難になったため男性(当時82歳)が死亡したとして、男性の妻で倉吉市内の70代の女性が、信生病院(倉吉市清谷町)を運営する医療法人専仁会と担当した看護師を相手取り、約2350万円の損害賠償などを求めた訴訟の第1回口頭弁論が24日、鳥取地裁(古賀輝郎裁判長)で開かれた。病院側は争う姿勢を示した。
訴状によると、男性は03年10月上旬、肺炎などで同病院に入院した直後から医師に絶食を指示された。ところが同月中旬、担当の看護師が水ようかんを食べさせた約1時間後に死亡。原告側は死因は水ようかんが気管に入ったことによる呼吸不全と主張していた。
病院側は答弁書などで水ようかんを男性に摂取させたことは認めたものの、直後に吸引器を使って摂取物を吸引したところ吸引物がなかったことから、死因は水ようかんを与えたことではないとして医療過誤を否認した。【宇多川はるか】
絶食を指示されたことから考えると、おそらく誤嚥性肺炎だったのでしょう。つまり、自分ではものを飲み込めない状態だったと思われます。もう、何時お迎えが来ても不思議のない状態だったのでしょう。
ここからは想像ですが、患者は最期に水ようかんを食べたかったのでしょう。それで看護師に頼んだ。頼まれた看護師も、末期の頼みと感じて応じた。すでに死は避けられないものとの認識で、まさか自分の好意が死の原因と見なされるとは夢にも思わなかったのではないでしょうか。
最近は寿命が尽きて亡くなるような症例でも、最期に関わった医療関係者の落ち度であるかのような訴訟が多いように感じます。人間は誰でも最後は死にます。それを受け入れるような社会であって欲しいと思います。ね、裁判官の皆さん。
14歳死亡は「医師の過失」 両親が県に損害賠償請求
記事:共同通信社【2007年10月25日】
岩手県立二戸病院で気管切開手術を受けた少年=当時(14)=が死亡したのは医師らの過失が原因として、両親が24日までに、2200万円の損害賠償を県に求める訴訟を盛岡地裁に起こした。
訴状によると、少年は2004年4月、肺炎などのため同病院に入院。11月18日、筋力低下で呼吸不全となり人工呼吸器を装着。気管切開して、空気を送るチューブを取り付ける手術を受けた。しかし翌19日、チューブが抜けかかっているのを看護師が発見。医師らがチューブの再挿入を試みたが失敗、少年は呼吸不全で同日死亡した。
両親側は、医師らが呼吸器の固定などを怠ったと主張している。
県医療局は「医師らは最善を尽くしたと聞いている。訴状の内容をよく読み、今後の対応を検討したい」としている。
どう見ても、この記事を書いた記者は自分の書いた記事の内容を理解していない。肺炎で入院するのは良い。でも、他に病気がなければ筋力低下は起こらないだろう。背景に重篤な筋疾患か神経疾患があったはずだ。そうであれば、元々健康だった人が亡くなった場合と比べれば、賠償責任の重さに差が出てくるのではないだろうか。
気管切開のカニューレ(記事ではチューブ)の再挿入は意外と難しい。慣れないと入らないこともある。入らないからと焦ると、なお入らない。この症例もそうだったのかも知れない。それにしても、カニューレが抜けた原因は何だろう。固定が甘いと、気道内圧に負けて抜けることはある。患者の体動でも(筋力低下では考えにくいが)抜けることもある。でも、呼吸器が動いて抜けたと言うことはあるだろうか。原告が「医師らが呼吸器の固定などを怠った」と主張しているのであれば、そう考えるほか無いのだが、本当にそうなのだろうか。
本当に効果がないのであれば処方するべきでないだろう。でも、それで患者は納得するだろうか。日本の医療の場合、信仰に近いものがあるような気がする。理屈では説得できないだろう。6歳未満の風邪薬中止を 米医薬品局諮問委が勧告
記事:共同通信社 【2007年10月22日】
【ワシントン19日共同】米食品医薬品局(FDA)の小児医療に関する諮問委員会は19日、医師の処方なしに買える風邪薬やせき止め薬は、子どもへの効果が確認されていないとして、6歳未満の子どもに使うべきではないとFDAに勧告した。AP通信などが伝えた。
FDAは薬の販売中止や表示の変更、効果確認のための臨床試験の実施などを製薬会社に求めるかどうか検討する。
米国では今月中旬、主要な製薬会社が「飲み過ぎにつながる恐れがある」との理由で、2歳未満の乳幼児向けの風邪薬14種類を自主的に回収していた。
専門家22人からなる諮問委は、せき止めや去たん剤、抗ヒスタミン剤などを含み、風邪の症状を抑えるとされる一般的な市販薬について、6歳未満への効果を裏付ける研究成果はないと結論付けた。大人を対象にした研究からの推論しかなく、この年齢層は薬の副作用を最も受けやすいとの意見が出された。
FDAによると、この50年間で子どもを対象にした薬効の研究は11しかなく、効果を確認したものはないという。
製薬会社側は、年間38億回も使われており、用法用量を守れば安全だとしている。
防衛医大病院医療過誤訴訟:国に880万円支払い命令 説明義務違反認める
記事:毎日新聞社 【2007年10月19日】
◇差し戻し審
防衛医科大病院(埼玉県所沢市)で脳動脈瘤(りゅう)破裂を防ぐ手術を受け死亡した男性大学教授(当時61歳)の遺族が、手術法の説明が不十分だったとして国に約9600万円の賠償を求めた訴訟の差し戻し控訴審で、東京高裁は18日、880万円の支払いを命じた。太田幸夫裁判長は担当医師に説明義務違反があったと認めたが、死亡との因果関係は否定した。
判決は「手術の問題点について分かりやすい説明があったとは認められない。教授は30-40分の説明を受けただけで、熟慮の機会を与えられなかった」と述べた。一方、説明を尽くせば教授が手術に同意しなかったとまでは言えないとした。
教授は96年2月に手術を受けた後、脳梗塞(こうそく)で死亡。東京地裁は、医師が説明を尽くしていれば手術を受けなかった可能性が高いとして約6640万円の賠償を命じたが、東京高裁は説明義務違反を認めず遺族側逆転敗訴とした。最高裁は06年10月、審理を差し戻していた。【北村和巳】
医療内容そのものに非を認めていないので、脳梗塞が起こりうる合併症であることは認められたのでしょう。そこで伝家の宝刀説明義務違反の登場です。どのような説明をすれば「説明を尽くした」と言えるのか明らかにせず、事後的に「説明を尽くしたとは言えない」と言うのは、どのような言いがかりもやりたい放題と言うことではないでしょうか。
おそらく医療側は「説明を受け、理解して同意した」と言う署名付きの書面を受け取った上で手術をしていることでしょう。それでも結果が思わしくないと「理解出来るような説明を受けていなかった」と主張し、それが通るのですね。法律の条文の問題と言うより、法曹の医療への敵意を感じます。
医療関連死:届け出ぬ医師に罰則 厚労省が「事故調査委」試案
記事:毎日新聞社【2007年10月18日】
厚生労働省は17日、医療死亡事故の原因究明をする第三者機関「医療事故調査委員会(仮称)」の試案を公表した。年間2000-3000件に上る診療行為に関連した死亡例について、医師に国への届け出を義務付け、怠れば刑事罰や行政処分を科すことで医療の透明性確保や再発防止を図る。一般から意見を募集したうえで、早ければ来年の通常国会に関連法案を提出する方針。
医療死亡事故については、医師法21条で「異状死」の警察への届け出が義務付けられているが、「異状」の定義があいまいで、遺族が不審に思っても医師が通報せず解剖の機会が失われるケースが少なくない。これがミスの隠ぺいや医療訴訟の多発・長期化を招く一因になっており、厚労省は今年度から専門家会議を設け、民事裁判や刑事捜査によらない死因究明の在り方を検討していた。
試案によると、医療事故調は公正・中立な立場の医療関係者や法律家らで構成。国土交通省の航空・鉄道事故調査委員会と同様の調査権限を持ち、報告書は個人情報を伏せて公開される。医師側に責任があったとの結論が出た場合、行政処分の対象になる。専門家会議では「真相解明のため、調査に協力した医師の刑事処分を免除すべきだ」との意見もあったが、試案は調査内容の刑事手続き利用を認めた。
死亡事故の届け出先は事故調を所管する厚労相に一本化し、警察へ通報する事案かどうかは、医療事故調が判断する。遺族から解剖の同意が得られれば調査を開始し、医学的な分析のほか、患者・遺族と医師側のコミュニケーションの妥当性も評価する。また、医療機関からの届け出がなくても遺族の相談に応じて調査を始めたり、調査に被害者団体など遺族側の代表も参加できるようにするなど、患者側の視点が入るよう配慮した。
第三者機関による死因究明を巡っては、日本内科学会が05年9月から国の補助を受けたモデル事業を全国8地域で実施し、医療機関からの任意の届け出で57件の調査を受理している。【清水健二】
医療の現場では、死は日常だ。異常死の定義が曖昧なまま、届けなければ罪になるのではたまらない。また、届けた場合、刑事訴追の恐れがあるのでは、黙秘権の否定になり、憲法違反だ。
届けた後の判断にも不安がある。医師も人間であるからミスもする。もちろん言い訳の出来ない酷いミスが糾弾されるのは構わないが、誰でも時にはするようなミスまで糾弾されるのではたまらない。何しろ判断する側は結果を知った上で判断するのだ。結果論による判断は、それ自体ミスなのだが、そのことに気が付いている人は少ない。後出しじゃんけんで刑事訴追されるのではないかと恐れ、真実を明らかにしない医師も出るだろう。
真実を明らかにしたいのならば、証人の刑事罰免責は絶対に必要だ。
前回ガン検診について書いたら、またガン検診がらみの記事を見つけた。実際には結核のための検査だったのだと思うが、胸部エックス線写真で影があったのに放置し、末期ガンとなったと言うことらしい。
単純胸部レントゲン撮影・喀痰検査による肺ガン検診の有効性はほとんど認められていないようだ。ここにもそのような記載がある。また、こちらのサイトには、胸部レントゲン写真で発見された肺ガンの生存率は30~40%と書かれている。
刑務所健診で国に賠償命令 医務官がん見落とし
記事:共同通信社 【2007年10月17日】
山形刑務所の健康診断で医務官が肺がんの兆候を見落としたとして、服役していた仙台市の男性(55)=刑の執行停止で釈放=が、国に約7400万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、仙台地裁は16日、約4850万円を支払うよう命じた。
潮見直之(しおみ・なおゆき)裁判長は「エックス線画像だけで肺がんの可能性を否定した医務官の判断は誤りで、速やかに検査すべき注意義務があった」と指摘。「医務官の過失がなければ、手術で根治した可能性が高い」と述べた。
判決によると、男性が服役中だった2004年10月、胸部エックス線検査で左肺に陰影が見つかったが、医務官は肺がんかどうか診断するための検査をしなかった。その後、外部の病院で末期の肺がんと診断された。
男性は強盗致傷罪などで山形刑務所に服役していたが、治療のため刑の執行が停止された。
法務省矯正局成人矯正課は「判決内容をよく検討し、適切に対応したい」としている。
実際に服役囚がどのような犯罪を犯したのか、医務官にとってガンの検査をするのにどのような障害があったのか、私には分からないので、「自分の欲望のためには他人を傷つけても構わないのに、自分が誤診されたら文句を言うのか」とか、「たとえ服役囚といえども人権があるのだから検査をするべきだった」などと言うつもりはない。ただ単に、医学的におかしい点についてだけ述べることにする。
すでに述べたように、肺ガンの予後は決して良くはない。胸部レントゲン写真で影があり、それが肺ガンだとすれば、助かる可能性の方が少ないだろう。そのような医学的事実を無視した判決が、どうして出たのだろう。また、トンデモ鑑定医が活躍したのだろうか。「医務官の過失がなければ、手術で根治した可能性が高い」と言うのは全くの誤りだと思う。
始めに白状しておきますが、私は癌検診については全くの素人です。今回のエントリでは、全くの戯言を述べている可能性があります。特に非医療者が読む場合、そのことを忘れないでください。私は医師ではありますが、今回は門外漢として書いています。
かなり前の話になりますが、『患者よ、がんと闘うな』という本がありまして、癌検診に対して疑問が呈されました。その時の検診推進派の反論を見た限りでは、癌検診の意義というのは、大規模な調査をして、やっと有意差が出るかどうかと言うレベルであると感じました。検診で引っかかったときに侵襲的な検査を受けなければならないとしたら、自分自身が検診を受けるのは、健診で見つかればほとんど助かるが、症状が出てからではほとんど助からない場合でしょう。
癌検診を勧めるCMはテレビでも盛んに行われています。でも、検診でどの程度救命率が上がるのかと言うデータは公表されません。癌検診は癌死を減らすために行うのですから、そうしたデータの公表は必要だと思います。どの程度の意義があるのか公表せずに、只CMを流すだけでは、産業としての思惑があるのではないかと勘ぐりたくなります。
前立腺がん:厚労省研究班、分裂…5人脱退へ 泌尿器科医、検診否定に反発
記事:毎日新聞社【2007年10月16日】
前立腺がん検診の有効性を検討する厚生労働省研究班(主任研究者、浜島ちさと・国立がんセンター室長)が、「PSA(前立腺特異抗原)検査による集団検診は勧められない」との報告書案をまとめたことに関し、メンバーや研究協力者の泌尿器科医5人が研究から脱退する意向を示していることが分かった。「内容に責任を持てない」ことが理由。PSA検査による集団検診は市町村の7割が実施しており、研究班の分裂は自治体に混乱を招きそうだ。
研究班は主任研究者と分担研究者9人(うち泌尿器科医1人)で構成。研究協力者11人(同4人)も研究に参加する。脱退を表明した5人はいずれもPSA検診推奨の立場を取る日本泌尿器科学会の会員。連名で研究班に文書を送り、脱退のほか、今月末完成予定の報告書に名前を掲載しないことも求めている。
分担担当者で脱退を表明した伊藤一人・群馬大准教授は「議論は最初から結論ありきで泌尿器科医の意見は受け入れられなかった」と話す。一方、浜島室長は「議論を重ね、経緯も報告書に盛り込まれている」と説明する。
PSAは、前立腺の組織が壊れると血液中に漏れ出るたんぱく質。報告書案は、国内外の研究論文を評価した結果から、「PSA検査を使った集団検診に、死亡率減少効果があるかどうかを判断する根拠が不十分だ」とした。一方、泌尿器科学会はPSA検診を推奨する見解を表明し、学会独自の前立腺がん検診の指針を刊行する準備を進めている。【須田桃子】
記事にするのであれば、泌尿器科医の意見を是非載せて欲しかった。説得力のあるものだったのかどうか、見てみたい。と言うのは、癌検診の中でも、特に前立腺に関しては疑問を持っていたからです。
PSAの測定はどうと言うことはありませんが、それで引っかかると前立腺生検を受けることになります。更に、生検でも陽性となれば、手術などの治療を受けることになります。
ラテント癌の性質と頻度はどのくらいか?を見ると、50歳以上になれば、放っておいても良い前立腺癌が30%くらいに見られるようです。その様な状況で、つらい検査や治療を受ける気にはなりません。
これはあくまで、多少寿命が縮もうとも、つらいことはイヤだという私の意見であり、他の人に勧めているわけではありません。軽々しく賛同したりしないようにお願いします。