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昨日は大淀病院が被告となった第二回の公判が行われました。このような愚かな訴訟が一刻も早く取り下げられ、何の罪もない医師がいわれのない非難から解放されることを心から祈ります。
まだやるか 「たらい回し」 の誤報道
また毎日新聞が「たらい回し」とやりました。大淀病院の件と同様の誤りです。教訓は生かされなかったようです。と言うのは、実は少しだけフェアじゃありません。引用する記事がアップされていたのは30分くらいで、すぐに訂正されていました。カルテだったら改竄と言われるところです。詳しくは「NATROMの日記」の訂正?改ざん?「たらい回し」が「救急車事故」にをご覧ください。
以下は魚拓です。
大淀病院の件で奈良県の産科医療が崩壊したことと、今回の受け入れ先が決まらなかったこととの関連はどの程度なのだろう。今回の件で、受け入れなかった病院に対するバッシングが起きたりすれば崩壊を加速するだけだと思うが、メディアや住民は理解しているだろうか。病院たらい回し:妊婦衝突事故後に流産 救急搬送中 大阪
29日午前5時10分ごろ、大阪府高槻市富田丘町の国道171号交差点で、妊娠3カ月の女性(36)を搬送中の救急車と、茨木市の自営業の男性(51)の軽乗用車が出合い頭に接触した。けが人はなかったが、女性は搬送先の病院で胎児の死亡が確認された。また、女性は119番通報から約1時間半も受け入れ先の病院が決まらなかったことも判明。府警高槻署は、事故と流産の関連を捜査する。妊婦の搬送では、昨年8月に奈良県大淀町の病院を巡る問題をきっかけに、周産期医療の救急体制の不備が浮き彫りになった。
調べによると、女性は同日午前2時44分ごろ、「下腹部が痛い」と同居の男性を介して119番通報した。女性が妊娠していたため、奈良県の橿原消防署(中和広域消防組合)の救急隊員は同県立医科大に受け入れを要請したが、「手術中のため不可能」と回答された。このため、同消防署は大阪府内の産婦人科など要請したがいずれも「処置中」などを理由に断られ、延べ12件目の高槻市内の病院に決まったのは同4時19分だった。
同消防署によると、女性は搬送中の午前5時ごろ、救急車内で破水を起し、その約10分後に事故に巻き込まれた。病院に搬送されたのは同5時47分だった。
同消防組合は「事故による容態の変化は見られなかった。流産との関連は警察の捜査に委ねたい」と話している。 昨年8月、大淀町立大淀病院で、分娩中に意識不明になった妊婦が転送を同県と大阪府内の19病院に断られた末、約60キロ離れた国立循環器病センター(大阪府吹田市)に運ばれ、約1週間後に死亡した。これを受け、国は今年度中に、総合周産期母子医療センターを整備することとしていたが、奈良県など4県で困難な状況に陥っている。
奈良県では、緊急に高度な治療を要する妊婦を県外の病院に転送する比率が、04年で約37%に上り、全国最悪のレベルだった。母体・胎児の集中治療管理室(MFICU)を備えている病院も、県立医科大学付属病院(橿原市)と県立奈良病院(奈良市)の2カ所だけだった。
この問題を受け、奈良は未整備だった「総合周産期母子医療センター」を来年5月に設置し、母体や新生児の救急搬送に対応する予定だった。 毎日新聞 2007年8月29日 11時48分
パーフェクト 人には無理だ 神でなきゃ
緊迫した状況での治療を、後から誰が見ても文句の付け所がないほど完璧にこなし、なおかつ、完璧に記載することなど出来ない。そもそも医療に誰から見ても正解というものはない。医師が100人いれば、厳密に言えば100通りの考え方があるものだ。結果が悪かったとき、後から難癖を付ける余地は必ずあるのだ。その難癖を認めてしまえば、病院で人が死ぬたびに賠償責任が発生してしまう。そして、病院とは、人が死ぬ場所なのだ。
700万円支払いで和解へ 岐阜・大垣病院の投薬ミス
記事:共同通信社 【2007年8月28日】
岐阜県の大垣市民病院で1992年に死亡した男性=当時(78)=の遺族が、死亡は医師らの投薬ミスが原因として同市に約1億円の損害賠償を求めていた訴訟で、同市は27日、700万円を支払い和解すると発表した。9月の議会で賠償に関する議案の可決を受け、支払う予定。
大垣市によると、和解は7月末に名古屋高裁が勧告していた。血圧を測らずに狭心症治療薬を投与するなど、病院側の過失を一部認めた内容で、同病院は「再発防止に努める」としている。
男性は92年11月に腎疾患で入院。同年12月31日に高熱を出し、投薬治療を受けたが同日死亡した。95年10月に遺族が提訴。2005年7月の1審岐阜地裁判決では病院側が勝訴し、遺族側が控訴していた。
大垣市民病院損賠訴訟:700万円支払いで和解 投薬でのミス、否定できず /岐阜
記事:毎日新聞社 【2007年8月28日】
大垣市民病院は27日、腎不全などで92年に入院し、死亡した市内の70代の男性に薬を投与した際に、用法や用量にミスがあったなどとして、遺族に解決金700万円を支払うことで和解したと発表した。市議会の議決を得て支払う。
同病院によると、男性は92年11月10日に入院し、集中治療を受けたが原因不明の血小板減少症が続き、大量の輸血や対症療法を受けた。同年12月31日午後に38度の発熱があったため座薬を投与。その後、狭心症発作ではないかとみてニトロペン(ニトログリセリン)を投与したが、男性は同日深夜に死亡した。
遺族は95年10月、薬の投与に問題があったなどとして、1億195万4915円の損害賠償を求めて岐阜地裁に提訴。05年7月に原告の請求棄却の判決があり、遺族は同年8月、名古屋高裁に控訴した。先月25日、高裁から▽薬の投与やその前後の患者の身体状況の把握に何らかの過失があったのではないか▽死亡後13年以上経過している--として和解勧告があったという。
病院は▽座薬の投与量が高齢者には多すぎたほか、効能に解熱の記載がなかった▽ニトロペン投与の前に血圧を測定しなかった--など瑕疵(かし)があったことを否定できないとして和解を受け入れた。【子林光和】
男性の78歳と言えば平均寿命だ。平均寿命に達した人が、原因不明の重体となり、かなり濃厚な治療を受けたが、結局は助からなかったと言うことだろう。何が問題なのだろうか。
そもそも瑕疵があったことを否定できなかったら賠償責任があるのだろうか。実際に瑕疵があり、それが死亡の原因と高い蓋然性を持って推察できるとき、賠償責任が生じるのではないのだろうか。
否定できなかったらいつでも賠償させられるおそれのある社会、そんな社会は恐ろしくて嫌だ。
あっぱれだ 巨象に向かう アリの意地
日本では、名誉の値段は芥のごとくですね。巨大メディアにとって、100万円なんてはした金でしょう。ホリエモンとのやりとりのことを考えたら、笑ってしまうほどの金額です。1人の有能な心臓外科医の名誉をとことん踏みつけにしても、せいぜい100万円ですか。原告からしたら、裁判の経費も出ないのではないでしょうか。
無罪判決の報道で名誉棄損 医師がフジテレビに勝訴
東京女子医大病院で2001年、心臓手術を受けた群馬県の少女=当時(12)=が死亡した事故をめぐり、業務上過失致死罪で1審無罪となった元担当医が、判決を報じたフジテレビの4番組で名誉を傷つけられたとして、同社に1500万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁は27日、うち1番組の名誉棄損を認め、100万円の賠償を命じた。
土肥章大裁判長は「無罪に疑問があることを示唆する情報を多数提供しており、元担当医が未熟で過失があったため事故が生じた可能性があるとの印象を与えたことは否定できない」と指摘。「当初は罪を認めた」との報道内容についても「事実とは認められない」と判断した。
元担当医は05年11月30日、東京地裁で無罪判決を受けた。 判決によると、フジテレビは同日夕のニュース番組で、判決内容を報道した際、医師が未熟だったとする趣旨の弁護士のコメントを紹介。また、元担当医と被害者遺族の双方が記者会見をしたのに、遺族のコメントだけを放送した。 2007/08/27 19:21 【共同通信】
賠償金額は決して納得のいくものではないでしょうが、勝訴は勝訴です。フジテレビ側に非があったことが認められたのです。個人を悪者に仕立てて、好きなように叩くことはいけないことだと認められたのです。たとえ小さな一歩でも、前進は前進です。おめでとうございます。
たとえ勝訴しても、各メディアの取り扱いは決して大きくはなく、名誉の回復はわずかなものかも知れません。でも、多くの医療ブログで取り上げられれば、それだけ人の目に付きやすくなります。ここはあまりアクセスも伸びない弱小ブログですが、少しでも名誉回復のお手伝いが出来れば嬉しく思います。
詳しくはご本人の「勝訴 フジテレビ訴訟 本人訴訟第1号」をご覧ください。
この暑さ 過労死したか 扇風機
今日は医療ネタではありません。三洋電機の扇風機からの出火で火災が起き、2名が亡くなりました。37年前の製品と言うことで、さすがにメーカーの非をあげつらう報道ではありませんでしたが、三洋電機の社長らが最敬礼する場面が何度もテレビで放映されました。私には違和感のある映像でした。
確かに人命が失われているのですから、重大な事故と言えば言えるでしょう。でも、どんな製品だって経年劣化します。長年使っていれば故障することは当然ですし、電化製品であれば出火もします。あまりに長く使い続けるのであれば、リスクに対しては自己責任だろうと思います。危険性の周知のために何度もニュースを流すこと自体は分かりますが、社長の最敬礼を何度も流すのは、誤ったメッセージを伝えることになりかねないという不安があります。
そもそもこのような事故は今までにもあったはずなのですが、これほど大騒ぎになったのは初めてではないでしょうか。何かあれば責任のすべてをメーカーに丸投げするような風潮は、何でも病院や医師のせいにする風潮にも通ずるものがありそうで、見ていて不快感がありました。
メーカーにかかわらず、今までにも多くの火災が起きていることが分かります。テレビでは映像の印象が大きくて、報道陣がどのようなコメントをしても、最敬礼をする社長の姿を何度も見せられれば悪いのはメーカーだという印象を与えるのではないでしょうか。サンヨーの製品だけでなく、古い製品を使い続けることの危険性を、もっとアピールするような報道を心がけて欲しいと思います。扇風機火災10年で453件、5都県で10人死亡…消防庁
(読売新聞)
扇風機が出火原因となった火災が、昨年までの10年間で全国で453件発生し、10人が死亡、76人が負傷していたことが、総務省消防庁の調べでわかった。 メーカー別の内訳は集計していないが、経済産業省所管の独立行政法人の調査では、今月20日に東京都内で2人が死亡した火災の原因となった三洋電機製以外のメーカー製品でも確認されており、「メーカーにかかわらず古い扇風機は火災の恐れがある。異常があれば、ただちに使用を中止し、メーカーや販売店に連絡を」と呼びかけている。
同庁によると、扇風機が原因の火災は毎年約30~50件発生。
このうち、死亡者が出た火災は、東京都内と千葉、佐賀、愛知、岡山各県で計8件あった。 [ 2007年8月25日3時7分 ]
儲からぬ 不手際責めて 潰すのか
不正請求と言えば、請求してはならないものを請求して、濡れ手で粟のぼろ儲けというイメージがある。本来なら手に入らないはずの金を、不正な手段で手に入れた悪徳病院のように聞こえるだろう。実際にその様な事例であれば、どれだけ厳しい処分でもかまわないと思う。でも、記事を読めば分かるように、そうではないのだ。
本来なら全額患者に請求しなければならなかった医療費を、誤解または見解の相違から、保険請求してしまっただけなのだ。厳重注意の上で返還させるだけでも相当のペナルティーだと思う。本来病院の収益になるはずの金を返すことになるのだから。今更患者に請求出来ないだろうから、全部病院の損害となる。
保険不正請求:藤枝市立病院が歯科治療で 指定取り消しへ
静岡県藤枝市の藤枝市立総合病院(23科、654床)が、保険診療外のインプラント(人工歯根)治療で保険を不正請求したとして、厚生労働省と静岡社会保険事務局は10月1日にも健康保険法に基づいて保険医療機関指定を取り消す方針を固めた。取り消されれると、公立の総合病院で保険がきかなくなる異例の事態となる。
インプラント治療では歯がなくなった部分に金属製の部品を埋め込み、義歯を安定させる。保険がきかない「自由診療」とされ、治療費が高額になることもある。
同病院は、治療前段階のあごの骨の移植手術などは保険が適用できるとして、02~06年の5年間で2400件、約1億2200万円を保険請求していた。一方、同省などは「インプラント治療を前提とした処置に保険適用は認められない」と判断した。病院側もこれを認め、受給額の返還を進めている。同事務局は同病院に弁明を聞く聴聞会を22日に開き、28日に静岡地方社会保険医療協議会に指定取り消しを諮問し、最終決定する。
指定取り消しで、治療費の患者自己負担は現在の原則3割から全額負担になり、多くの患者が同病院を利用できなくなると予想される。取り消し期間は原則5年だが、地域医療への影響や再発防止策などを考慮し、1カ月程度で再指定が認められる可能性もある。
毎日新聞 2007年8月21日 11時34分
最終決定はまだだが、保険医療機関指定を取り消されたら存続は難しいだろう。おそらく今までだって赤字だったはずだ。公立病院の場合、減価償却分を支出に計上しないこともあるので、帳簿上は赤字ではないかも知れないが、実質は赤字だと思う。公立である以上、不採算部門や支払い能力のない患者を避けて通ることは出来ないからだ。 記事を読む限り、藤枝市立総合病院が悪辣だったとは思えない。地域医療を崩壊させてでも処分をしたいのはなぜなのか。地域の住民がどうなってもかまわないと言う発想はどこから来るのか。結局は金なんだろう。何が何でも医療費を削減したいのだ。間抜けだから病院が潰れるような諮問をしたのではなく、本気で潰すつもりで諮問したのだと疑いたくなる。医療を受けられなければ医療費もかからないからだ。
この記事は多くの医療ブログで取り上げられている。実は他人事ではないのだ。保険診療を厳密に守ると、まともな医療が出来ないと言う現実がある。医学の発達に保険診療が追いつかないからだ。保険診療であっても、出来ればまともな医療を行いたいのは医師なら誰でも思うことだ。そこで保険病名というものが登場する。保険を通すためにあえて付ける病名だ。厳密に言えば不正請求だ。でも、そうしなければ、保険で効果のない治療を受けるか、全額自費で効果のある治療を受けるか患者が選択しなければならない。
更に、たとえ保険が通らなくても、医学的に十分なレベルの治療をしなければ裁判で負けるという現実もある。実情を話して患者に選択して貰っても、選択に関してのトンデモ判決を免れない。訴えるのなら厚生労働省を訴えて欲しいものだが、実際に訴えられるのは病院や医師だ。何をやってもやらなくても、医療に出口は見えない。
診療は 人間ドックじゃ 無いのだが
医療訴訟の記事を読むと、何でこんな訴訟が起きるのかと思うことがあります。「踏むべきステップは多く、簡単には訴訟にはならない」と言う弁護士もいますが、このような記事を読むと、とても信じられない。
損賠提訴:大腸がん死亡は病院の検査ミス 遺族が小山市を相手取り /栃木
記事:毎日新聞社 【2007年8月21日】
大腸がんで死亡した真岡市の女性(当時66歳)の夫ら家族3人が、小山市民病院の検査に「見落としがあった」などとして、同市を相手取り約3400万円の損害賠償を求める訴えを宇都宮地裁に起こしたことが、分かった。同病院が20日、同市議会議員全員協議会に報告した。
訴状によると、女性は98年、同病院で胃がんの手術を受け、04年9月までに内視鏡、CTなど計4回の検査を受け、「再発転移なし」との診断を受けた。しかし女性は05年3月、自治医大病院で大腸がん、肺転移と診断され、手術を受けたが同年5月、死亡した。
家族は「必要な検査を尽くさず、CT検査では大腸がんを見落とした」として、遺失利益や慰謝料などの請求訴訟を7月提訴した。
市民病院側は「検査に落ち度はない。極めて急速に進行した悪性腫瘍で、診断時には把握できなかった」と説明している。【佐野信夫】
胃癌の手術をして、その後5年間以上に渡って経過観察をして、転移はなさそうだと判断されたようです。その後どう転ぶか分かりませんが、とりあえず5年間転移せずに済んだのであれば、一応完治したものと見なされます。ところがその半年後、今度は大腸癌にかかり、既に肺転移もあったと言うことです。まことにお気の毒ですが、運が悪いとしか言いようがありません。
当たり前の話ですが、胃癌の経過観察では大腸癌の検査はしません。通常の診療は人間ドックではないのです。まして、「CTで大腸癌を見落とした」というのは大変な言いがかりです。CTで大腸癌が見落とし無く診断出来るのであれば、恥ずかしくもあり苦痛もある大腸ファイバー検査を受ける人などいません。
ある疾患の経過観察中に他の病気が見つかること自体はあります。でも、見つかることがあると見つけなければならないの間には、大きな違いがあります。
医療関係者から見ると、この訴訟は言いがかりとしか思えません。とても「踏むべきステップが多いので、おかしな訴訟は起こりにくい」とは言えないでしょう。 まあ、訴訟すること自体は国民に認められた権利ですから、訴訟するなとは言えませんが、こんな事例で医療側が敗訴したら、その悪影響は計り知れません。
また、訴訟があったからといって医療に問題があったというわけではないのですから、結論が出てから記事にして欲しいと思います。どうせ原告敗訴だったら記事にしないのですから。
正確な 情報得てから 書きなさい
警察の発表と病院の発表が異なるのならば、どちらが正しいのか取材するのが報道機関というものなのじゃないのか。よく分からないまま、警察の発表を垂れ流す見出しを付けるのはいかがなものか。
術後ミスで医師書類送検 適切な治療欠き男性死亡
記事:共同通信社 【2007年8月16日】
栃木県足利市の足利赤十字病院で、手術後に気胸を発症した男性患者=当時(74)=に適切な治療行為を欠き死亡させたとして、足利署は16日までに業務上過失致死容疑で担当した男性医師(34)を書類送検した。
調べでは、患者の男性は2004年6月、別の医師による心臓のバイパス手術を受けたが、3日後に肺から漏れた空気が胸にたまる気胸を発症した。男性医師はエックス線を撮っただけで経過観察とし、適切な治療行為を怠った疑い。患者は発症の約15時間後に呼吸不全で死亡した。
足利赤十字病院は、男性医師が胸から空気を抜くチューブ取り付けなどの措置を取ったと説明。「ミスがあったかどうかはこれからの捜査を見守りたい」と話している。医師は既に別の病院に移っている。
書類送検されるのは、たいてい死亡の原因を作った医師なのだと思うのだが、今回は治療をするべきと見なされた医師だ。気胸を作った医師はお咎め無しで、気胸の治療がまずかったと見なされた医師が刑事責任を問われている。なんだかいつもと違う。どうしてなのだろう。きっと基準なんて無いんだろうな。
警察は気胸の患者を放置したと見ているようだが、病院はきちんと処置をしたと反論している。どちらが正しいのか取材したようには、記事を見る限り、思えない。それなのに、見出しは「適切な治療欠き男性死亡」だ。何で断定できるのだ。記事にする以上、事実関係が理解できるような情報を提供する義務があるのではないのだろうか。この見出しを見る限り、何でもいいから医者を悪者にしておけばいいという意図を感じてしまう。
年寄りも この際だから いたわって
麻酔科医は今までに充足したことがない。だからいつでも人手不足だ。私はつい最近まで海外旅行はグアムかサイパンまでで、遠くまでは行けなかった。土日を含めても、せいぜい4日しか休めなかったからだ。自分が病気になっても休めない。39度以上の熱があっても座薬を入れて仕事だ。患者に移すかも知れないが、休めば手術を中止にするほか無い。そんな調子で今まで仕事をしてきた。もちろん家庭のことはすべて家内に丸投げだ。こんなことを家庭を持った女医が出来るわけがない。
忙しいのは麻酔科医だけではないだろう。産科医や小児科医はもっと大変だろう。主治医制のもとで、患者をたくさん抱えている医師も大変だ。今までのようなことを続けていては、家庭を持ちたい女医はやめざるを得ない。そんな状況の中、日本医師会が第3回男女共同参画フォーラム ・宣言と言うのを発表した。内容は以下の通り。
宣 言
女性医師のキャリアアップを困難にし、その社会的使命を果たすことを阻む全ての要因を除去し、女性医師が、単に育児と仕事を両立させ得るに止まらず、質・量共に、自信と誇りをもって、輝きながら、医師としての使命を達成し得るよう、社会的基盤の整備と施策の実践が極めて重要であり、喫緊の課題であることを、このフォーラムに参集した皆の総意により、ここに宣言する。
平成19年7月28日 日本医師会第3回男女共同参画フォーラム
要するに、家庭を顧みることや勉強をすることを可能にする仕事量にしてくれと言うことだろう。もちろん大賛成だ。でも、どうやって実現するのだろう。その分男をこき使うのだったら反対だ。私だって還暦間近なのに、地位だって高いのに、奴隷のように働かされているのだ。女性を奴隷のような仕事から解放するのであれば、私だって解放して欲しい。
医師の仕事量を減らすには、アクセス制限しかないと思う。命に関わるような重病人、耐え難い苦痛、重大な機能障害など、どうしても医療が必要な人以外は我慢して貰わないと、今の医師数では女医が家庭を持って働き続けることは出来ないだろう。そして、それでも病院の経営が可能になるためには、医療費を大幅に引き上げなければならないだろう。一度完全に焼け野原にならなければ、国民が賛成するとはとても思えない。
賛成してくれますか?
ポイントを 省略したら ダメじゃない
前エントリの毎日新聞の記事には重要な情報が抜けている。次の記事の強調部分を見て欲しい。
つまり、総合病院で肺塞栓症と診断され、そこで2週間治療をして、落ち着いたところであさひ松本病院に転送されたと言うことだ。でも、毎日新聞の記事では、単に次のように書かれているだけだ。不適切治療で賠償命令 血栓の患者死亡 病院に2500万円 地裁小倉判決
北九州市小倉南区のあさひ松本病院(松本信司院長)で、2004年に肺血栓塞栓(そくせん)症の治療を受けた女性=当時(76)=が治療直後に死亡したのは、不適切な療法を続けたためとして、女性の妹(61)が病院を運営する医療法人に約4700万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が9日、福岡地裁小倉支部であり、岡田健裁判長は約2500万円の支払いを命じた。
判決などによると、女性は04年2月に同市の総合病院で、血栓が肺の動脈に詰まる肺塞栓症の疑いと診断された。
2週間の治療後、あさひ松本病院に転院。複数の血栓溶解剤を投与する治療を受けたが、2日後から血尿が出たり意識レベルが下がったりした。その後も投薬が続き症状が悪化。家族の希望で総合病院に戻されたが、3月に脳内出血で死亡した。
判決で岡田裁判長は、血栓溶解剤の投与は発症直後の重篤な病状で有効だが、転院時の女性の症状ではこの治療法は適切でなく、投薬の副作用で出血が起きたと認めた。
松本院長は「転院時に女性の病状が重篤でなかったとする裁判所の判断は納得できない」と話し、近く控訴する意向。
=2007/08/10付 西日本新聞朝刊=
女性は04年2月、息切れを訴えて肺塞栓(そくせん)症の疑いと診断され、市内の総合病院から転院。
これでは、総合病院で肺塞栓症と診断され、あさひ松本病院に直ちに送られて、そこで治療を受けたと思うじゃないか。総合病院で2週間治療を受けて、落ち着いたところであさひ松本病院に送られたようには絶対に思えない。
新たな事実が分かってみると、以前とは違った感想もあることはあるのだが、いかんせん、情報が足りない。やはり詳細を知らないくせに、治療についてあれこれ言うのは差し控えた方がいいだろう。と言うわけで、やはり治療の是非については触れないことにする。
この時代 患者の希望 優先か
患者側の意に背いた医療行為を行えば、今の時代では、結果が悪ければ責任を問われるのは仕方がないのだろう。たとえ医療者側の意見が正しくても、それを受け入れるかどうかは患者側の権利なのだ。もちろん結果責任は患者側が取ると言うことが前提だが。
医療過誤:2500万円賠償命令 入院の76歳死亡----地裁小倉
記事:毎日新聞社 【2007年8月10日】
北九州市小倉南区のあさひ松本病院に入院した女性(当時76歳)が死亡したのは不必要な治療が原因だったとして、遺族が病院を運営する医療法人に約4700万円の損害賠償を求めた訴訟で、福岡地裁小倉支部(岡田健裁判長)は9日、法人に約2500万円の支払いを命じた。
判決によると、女性は04年2月、息切れを訴えて肺塞栓(そくせん)症の疑いと診断され、市内の総合病院から転院。主治医の院長は複数の血栓溶解剤などを投与する血栓溶解療法を行ったが、血尿が続いた。女性や妹は中止を求めたが院長は続行した。女性は翌月6日にこん睡状態になって脳内出血が確認され、元の総合病院に移った後の8日に死亡した。
遺族側は「血栓溶解療法が脳内出血を引き起こした」と主張。判決は「副作用を考慮すれば、同療法を回避する義務があったのに怠った」と病院側の過失を認めた。医療法人側は判決を不服として控訴する方針。
この事故を巡っては遺族が業務上過失致死容疑で院長を福岡地検小倉支部に告訴。昨年12月に嫌疑不十分で不起訴処分とされ、遺族は検察審査会に不服申し立てをしている。【太田誠一】
実を言うと、この記事を読むと何かおかしい感じを受ける。肺塞栓症という、結構危険な状態の患者を、総合病院から個人病院に転院させたのはどうしてだろう。転院先のあさひ松本病院の目的は次のように書かれている。
私達の病院の目標の第一歩は先ず「プライマリー・ケア」です。具体的にはどのような病気の患者の方も診察し、私達の病院で十分診断治療ができる場合は治療を行い、より高度に診断治療が必要であれば適切な施設に紹介していくと云うものです。
総合病院に患者を転送することはあっても、重症患者を総合病院から引き受ける病院じゃなさそうなのだが、どうしてこのようなことになったのか疑問だ。どのような病態にどのような治療をしたのか不明なので、医療行為の妥当性については触れない。でも、患者側が拒否していた治療を強行したのが事実なら、民事での敗訴は仕方がないかも知れない。健康な人が過失によって亡くなったわけではなく、死亡も考えられる病気の患者が、治療の副作用で亡くなったのであれば、賠償額はもっと少なくなるはずだという思いはあるが。
遺族は刑事事件としての立件も求めているようだが、それには反対だ。肺塞栓症は死ぬ可能性も十分にある病態だ。治療には危険もあるが、それを承知の上で、やらないよりはやった方がメリットが大きいと考えて行うのだ。あくまで確率的にその方が良いという判断で行うのだ。当然悪い結果になることもある。それなのに、結果が悪ければ刑事罰というのでは、重症患者を治療することは出来なくなる。
当事者は感情的になっているから無理だろうが、新聞を読んでいる読者には是非理解して欲しい。元々の病気や怪我から患者を救うために、ある程度の危険があることを承知の上で、医療というものは行われるのだ。その危険を背負う覚悟がないなら、はじめから医療を受けないで欲しい。